第2話「雛鳥達のConcerto -協奏曲-」
「その練習、手伝おうか?」
「!?」
突然背後からかけられた声にティアナは驚いて飛び上がりそうになった。慌てて振り返るとそこには
「ヴァイス陸曹! どうして、病院に行ったはずじゃ?」
その声に応えてヴァイス・グランセニックは瓦礫に腰掛けつつ『ヨッ』っと手を挙げる。
「!?」
突然背後からかけられた声にティアナは驚いて飛び上がりそうになった。慌てて振り返るとそこには
「ヴァイス陸曹! どうして、病院に行ったはずじゃ?」
その声に応えてヴァイス・グランセニックは瓦礫に腰掛けつつ『ヨッ』っと手を挙げる。
彼は機動六課が戦闘機人に襲撃された際手術する程の大怪我を負っていた筈で、それを押してゆりかご突入時にサポートしてくれた。
何でも無い素振りをしていたから、回復したのだと思っていた。
しかし、ゆりかごから脱出して合流した後ザフィーラが呟いた一言
「まだ傷も癒えていないのに無茶をする…」
その言葉に全員が大いに慌てた。
彼が手術後の抜糸もせずに出動していたのを知り、なのはは彼を問答無用に病院へと連れて行き、そのまま彼女と同じ病院へ入院する手続きを取った。
でも、あれから数日しか経っていない今、彼はティアナ目の前にいる。
そんな心配を余所に
「ああ、退屈だったんでな…抜け出してきた♪」
「…抜け出して来たってスクールの学生みたいに…ハァッ」
気軽に応えられるとこっちの力も抜けてしまう。
本当に心配していたのにニカッと笑われるとこっちの方が馬鹿に見えてしまう。そういう所がどこかスバルとよく似ている。
「それよりもだ、ティアナ長距離射撃の練習だろ。俺がコーチしてやろうか? 俺もちょっと腕が鈍ってるしな」
「ウソッ! アレで鈍ってたんですか?」
ヨッと腰を下ろしていた瓦礫から飛び降りるとヴァイスは自分のデバイスを取り出した。
実戦部隊のエリート、武装隊出身のヴァイスのコーチ。凄く魅力的な話。飛行中のヘリの中から見た精密射撃、ティアナにとってあれで腕が鈍っていたと言われれば驚くしかない。
「ヴァイス陸曹…まだ怪我治ってないんじゃ…」
怪我人に無理をさせられない。また病院送りなんて事になったらと思うとうかうかとは頼めない。
「ゆりかご突入の時にティアナも見ただろ? 大丈夫だって。それよりコーチして欲しいのか欲しくないのか? 要らないなら勝手に訓練するだけだが…」
そんなティアナ気持ちを察したのか迫ってくる。
「はいっお願いしますっ!」
一人で練習するより効率が良いと思った。でも、それ以上に何故か嬉しい様な少しくすぐったい様な感じがティアナの中で生まれていた。
ヴァイスは元々武装隊に所属していたが人に教えるのがあまり得意では…むしろ苦手だった。
教導時も訓練生に手取り足取り教えずにコツとイメージだけを教えて後は実戦で体に覚えさせるいわゆる【体育会系の教え方】だった。
しかし、機動6課にヘリパイロットとして呼ばれて合間になのはやヴィータの教導を見ている内に彼女達の目指す
『伸ばす先を見据えて教える意味』
自分なりに考え始めていた。
ティアナは正になのはの教導を受け中長距離を制す【センターガード】として才能を開花させつつある。
ヴァイスは彼女のコーチをしようと考えた時、自身の技ではなくなのは達が教えようとしている先を踏まえより高きを目指す事に徹しようと決めていた。
「それで、練習メニューは?」
「シュートバレットで遠距離サポートが出来ないかなって、AMFの中じゃ誘導弾は使えないし、もし使えても途中で制御取られちゃうと大変だから」
「成る程な、それで成果がアレという訳か…的…ティアナもいい根性してるな」
「いえっ、あれはその…」
命中したのが数発だけ…少し恥ずかしい。
でも、彼が言ったのは標的についての感想。起動させた時普段見かけないオプションがあったから追加してみた。まさかあんな物が出てくるとはティアナも思ってもみなかった。
「まぁいい。最初は誰でも失敗する。もう一度やってみろ」
「はいっ!」
こうして2人だけの訓練が始まった。
彼の吐息が強く聞こえる。
集中すればする程その吐息が強く聞こえる
(ヤダ、何考えてるのよ。こんな時にっ)
「聞いてるのか?」
「は、はいっ!」
意識を的になっているガジェットドローンへと向ける。
「相手を狙うな視界に入れるんだ。そうすりゃデバイスが手伝ってくれる。1人でするんじゃない。」
「はいっ」
ここに来るまで、来てからもわからず、わかってもすぐにはできなかった。パートナー、自分のデバイスに頼るのではなく、一緒に目指すということ。
でも今はもう彼の言いたい事はわかっていた。
見る者が見たら微笑ましい関係ともハードな訓練とも見て取れる光景、そんな2人の訓練も長くは続かなかった。
機器の故障、それは思わぬ形で現れる。
ほんの微かな異常が他の異常を呼び起こしそれが更なる異常を作り出す。
結果として設計者にも予想のつかない結果を生み出す事になる。
…そしてそれらは必ず突然現れるのだ。
訓練の最中ティアナが集中して撃った魔法弾の一発、それがガジェットドローンに当たったと思った瞬間反射された。そしてそのままティアナめがけて戻って来る。
AMFシュミレーションの誤作動が招いた結末
「!?」
「危ないっ!」
訓練中の弾は誘導できないシュートパレット。運悪く相殺しようにも残パレットも空。
直撃コース、咄嗟の事で防ぐ事も出来ない。
「当たるっ」
そう思った瞬間、目の前が影で覆われた。
「ティアナ…大丈夫か?」
聞こえた言葉に咄嗟に庇った腕を下ろす。目の前にヴァイスが立っている。
「‥はい、私はだ、だいじょうぶです。」
ヴァイスはその言葉を聞いてニカッと笑った後、その場に崩れた。
「…ヴァイス‥陸曹? ヴァイス陸曹っ、ヴァイスさん!!」
ティアナの呼びかけに彼が応えることは無かった。
~~こめんと~~
機動六課●物語は以前、ポータルサイト時空管理局様発行の時空管理局通信に掲載したものに加筆したものです。
他のSSでもそうですが今回は特に「ティアナだったらどんな風に~」とか「もしヴァイスだったら~」というのを私的に強くイメージしてみました。
あくまで私的な印象ですので読んで下さっている貴方様とは違うと思いますが、その辺は軽く見過ごして下さい。
何でも無い素振りをしていたから、回復したのだと思っていた。
しかし、ゆりかごから脱出して合流した後ザフィーラが呟いた一言
「まだ傷も癒えていないのに無茶をする…」
その言葉に全員が大いに慌てた。
彼が手術後の抜糸もせずに出動していたのを知り、なのはは彼を問答無用に病院へと連れて行き、そのまま彼女と同じ病院へ入院する手続きを取った。
でも、あれから数日しか経っていない今、彼はティアナ目の前にいる。
そんな心配を余所に
「ああ、退屈だったんでな…抜け出してきた♪」
「…抜け出して来たってスクールの学生みたいに…ハァッ」
気軽に応えられるとこっちの力も抜けてしまう。
本当に心配していたのにニカッと笑われるとこっちの方が馬鹿に見えてしまう。そういう所がどこかスバルとよく似ている。
「それよりもだ、ティアナ長距離射撃の練習だろ。俺がコーチしてやろうか? 俺もちょっと腕が鈍ってるしな」
「ウソッ! アレで鈍ってたんですか?」
ヨッと腰を下ろしていた瓦礫から飛び降りるとヴァイスは自分のデバイスを取り出した。
実戦部隊のエリート、武装隊出身のヴァイスのコーチ。凄く魅力的な話。飛行中のヘリの中から見た精密射撃、ティアナにとってあれで腕が鈍っていたと言われれば驚くしかない。
「ヴァイス陸曹…まだ怪我治ってないんじゃ…」
怪我人に無理をさせられない。また病院送りなんて事になったらと思うとうかうかとは頼めない。
「ゆりかご突入の時にティアナも見ただろ? 大丈夫だって。それよりコーチして欲しいのか欲しくないのか? 要らないなら勝手に訓練するだけだが…」
そんなティアナ気持ちを察したのか迫ってくる。
「はいっお願いしますっ!」
一人で練習するより効率が良いと思った。でも、それ以上に何故か嬉しい様な少しくすぐったい様な感じがティアナの中で生まれていた。
ヴァイスは元々武装隊に所属していたが人に教えるのがあまり得意では…むしろ苦手だった。
教導時も訓練生に手取り足取り教えずにコツとイメージだけを教えて後は実戦で体に覚えさせるいわゆる【体育会系の教え方】だった。
しかし、機動6課にヘリパイロットとして呼ばれて合間になのはやヴィータの教導を見ている内に彼女達の目指す
『伸ばす先を見据えて教える意味』
自分なりに考え始めていた。
ティアナは正になのはの教導を受け中長距離を制す【センターガード】として才能を開花させつつある。
ヴァイスは彼女のコーチをしようと考えた時、自身の技ではなくなのは達が教えようとしている先を踏まえより高きを目指す事に徹しようと決めていた。
「それで、練習メニューは?」
「シュートバレットで遠距離サポートが出来ないかなって、AMFの中じゃ誘導弾は使えないし、もし使えても途中で制御取られちゃうと大変だから」
「成る程な、それで成果がアレという訳か…的…ティアナもいい根性してるな」
「いえっ、あれはその…」
命中したのが数発だけ…少し恥ずかしい。
でも、彼が言ったのは標的についての感想。起動させた時普段見かけないオプションがあったから追加してみた。まさかあんな物が出てくるとはティアナも思ってもみなかった。
「まぁいい。最初は誰でも失敗する。もう一度やってみろ」
「はいっ!」
こうして2人だけの訓練が始まった。
彼の吐息が強く聞こえる。
集中すればする程その吐息が強く聞こえる
(ヤダ、何考えてるのよ。こんな時にっ)
「聞いてるのか?」
「は、はいっ!」
意識を的になっているガジェットドローンへと向ける。
「相手を狙うな視界に入れるんだ。そうすりゃデバイスが手伝ってくれる。1人でするんじゃない。」
「はいっ」
ここに来るまで、来てからもわからず、わかってもすぐにはできなかった。パートナー、自分のデバイスに頼るのではなく、一緒に目指すということ。
でも今はもう彼の言いたい事はわかっていた。
見る者が見たら微笑ましい関係ともハードな訓練とも見て取れる光景、そんな2人の訓練も長くは続かなかった。
機器の故障、それは思わぬ形で現れる。
ほんの微かな異常が他の異常を呼び起こしそれが更なる異常を作り出す。
結果として設計者にも予想のつかない結果を生み出す事になる。
…そしてそれらは必ず突然現れるのだ。
訓練の最中ティアナが集中して撃った魔法弾の一発、それがガジェットドローンに当たったと思った瞬間反射された。そしてそのままティアナめがけて戻って来る。
AMFシュミレーションの誤作動が招いた結末
「!?」
「危ないっ!」
訓練中の弾は誘導できないシュートパレット。運悪く相殺しようにも残パレットも空。
直撃コース、咄嗟の事で防ぐ事も出来ない。
「当たるっ」
そう思った瞬間、目の前が影で覆われた。
「ティアナ…大丈夫か?」
聞こえた言葉に咄嗟に庇った腕を下ろす。目の前にヴァイスが立っている。
「‥はい、私はだ、だいじょうぶです。」
ヴァイスはその言葉を聞いてニカッと笑った後、その場に崩れた。
「…ヴァイス‥陸曹? ヴァイス陸曹っ、ヴァイスさん!!」
ティアナの呼びかけに彼が応えることは無かった。
~~こめんと~~
機動六課●物語は以前、ポータルサイト時空管理局様発行の時空管理局通信に掲載したものに加筆したものです。
他のSSでもそうですが今回は特に「ティアナだったらどんな風に~」とか「もしヴァイスだったら~」というのを私的に強くイメージしてみました。
あくまで私的な印象ですので読んで下さっている貴方様とは違うと思いますが、その辺は軽く見過ごして下さい。
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