第07話「継ぐもの継がれるもの(後)」
- リリカルなのは AgainStory4 > 第1章 繋がる世界
- by ima
- 2021.05.30 Sunday 11:14
「気持ちいい~♪」
湯に入って移動の疲れが湯に溶けていく気がする。
来た坂道を降りて少し歩いた所に露天風呂はあった。
良い泉質の公衆浴場なんだけれど、人里から離れているから隠れた名湯とか秘湯と呼ばれているらしい。
「寒くなると猿や鹿、狸が入りに来たり、怪我した猫が足だけ浸けに来てたこともあったかな~」
横で美由希が言う。そんなことを話していると温泉の反対側の木々がガサガサと鳴って狸の親子が現れた。私達を少し見た後そのまま湯に入って頭だけ出して目を細めた。
かわいすぎて思わず立ち上がる。
湯に入って移動の疲れが湯に溶けていく気がする。
来た坂道を降りて少し歩いた所に露天風呂はあった。
良い泉質の公衆浴場なんだけれど、人里から離れているから隠れた名湯とか秘湯と呼ばれているらしい。
「寒くなると猿や鹿、狸が入りに来たり、怪我した猫が足だけ浸けに来てたこともあったかな~」
横で美由希が言う。そんなことを話していると温泉の反対側の木々がガサガサと鳴って狸の親子が現れた。私達を少し見た後そのまま湯に入って頭だけ出して目を細めた。
かわいすぎて思わず立ち上がる。
「こんな風にね♪ ここは人間だけの湯じゃないの、静かに入らせてあげようね。」
「…そうですね。」
あまりのかわいさに撫でたり抱きつきたいと思いながらも、驚かせないように再び湯に入る。
「アリシア、少し筋肉ついてきたんじゃない? 毎日練習してるんでしょ」
「朝と夜と時々放課後に…色々忙しいですけど正月よりは強くなっていると思います。教わった技も少しずつ使える様になってます。でも…まだまだ届かないし、そんな私が美由希さん達と同じ儀式を受けるなんて本当に良いのか…迷ってます。」
「お父さんも言ってたけど、そこまで深く考えなくていいよ。昔はこんなことをしてたんだよ~みたいに思ってくれれば。それにね…」
「アリシアちゃんは私…ううん、お父さん、恭ちゃん、雫…今まで同じ技を修めた人と違って魔法を使うでしょ。ミッドチルダだっけ? お父さん、あっちでみんなに見て考えて欲しいんだと思う。私達の剣の強さと守るってどういう意味なのかを…。」
「向こうで誰かに教えることになればアリシアが師匠になるんだから、頑張ってね」
「はい…」
美由希に背を押されて私は後ろ向きだったことに気づき、反省して前を見ることにした。
その日の夜、士郎と恭也は帰って来なかった。
美由希と一緒に宮司の娘が用意してくれた食事を食べていると雫が戻って来た。
「父さんから伝言、明日は朝が早いから早めに寝るようにって」
そう言って食事を済ませると、私達が入ってきた温泉へと向かった。
そして翌日、日が昇る前に私は神社の社の中に居た。
こっちの世界の礼装なのか正月に着た服に似ているが軽く純白の上着と赤色の長いスカート、緋袴姿で正座をする。普段両サイドでまとめていた髪は下ろして背中の途中で1つにまとめている。
同じ服を着た雫が並び横には士郎・恭也・美由希、昨日の刀匠が正座をして並んでいる。
松明が揺らめくなかで宮司が背を向けて細かな装飾が施された複数の像に何かを言っている。
日本語が話せても彼の言葉は時々しか聞き取れない。
静かに、厳かに進む儀式。ひんやりとした空気が緊張感を失わせない。
「月村雫」
宮司の呼ぶ声に雫が立ち上がり彼の前に行くと再び正座する。
刀匠が祭壇にあった木製の台に乗せた2本1対の小太刀を宮司の前に持っていき、雫は一礼をした後、両手で小太刀を手にしそのまま元居た場所に正座する。
「アリシア・テスタロッサ」
呼ばれて私も立ち上がり、雫と同じ様に宮司の前に正座する。
刀匠が祭壇にあったもう1つの木製の台を持ってアリシアの前に置く。
(これが…私の…えっ!?)
その形を見て驚いた。
雫が受け取った小太刀は恭也や美由希が持っているいわゆる「日本刀」と呼ばれるように唾や鞘といった独特の形をしていた。
しかし目の前にあったのは刀身は日本刀独特の少し湾曲した形状だけれど、鞘や持ち手と思われる部分はまるで違っていた。
(これ…バルディッシュに…!)
振り向いて士郎を見ると彼は深く頷く。
手に馴染ませる必要が無かった理由がわかった。作った人は計る必要が無かったのだ。だって毎日会っているのだから…。
私は深く頭を下げた後、2本1対の小太刀を受け取り再び元いた場所で正座をした。
…こうして儀式は終わった。
「士郎さん、みんなも黙ってるなんて酷いです。びっくりして声あげちゃいそうになりましたよ。」
緋袴から私服に着替えて境内で話す。
「ごめんな、驚かせるつもりは無かったんだ。受け取る前に見ない、教えないのが決まりだから。プレシアさんにも教えないで欲しいって頼んでいた。」
「雫も手に合わせるだけで自分の小太刀を見るのは今日が初めてだっただろう?」
士郎と恭也が答える。
雫は自分専用の小太刀が貰えた事が嬉しかったらしく、普段の鋭い眼差しが幾分緩んでいた。
「雫、少し振ってみてくれ。」
「うん」
雫が小太刀を脇に刺して鞘から抜く。銀色の刀身が朝日を帯びる。
「アリシアちゃんも…あっ、アリシアちゃんは鞘を抜かなくていい。プレシアさんが『デバイスと繋げばわかる』と言っていた。」
どういう意味だろうと思いながらもプレシアが作っているなら何かあるに違い無いと考え、言われて持っていた小太刀をそのまま持った。
「バルディッシュ、ジャケットは良いから繋いでみて」
【Yes Sir】
デバイスと繋がると黒い金属質だった束の根元と刃部分が水色に光る。
美由希は綺麗…と呟いている。
「へぇ…デバイスから魔力を受けてるんだ…、そっかこれを使えばバルディッシュはジャケットに集中できるから軽くなるのか。」
アリシアのバルディッシュ・ガーディアンはフェイトのバルディッシュ・アサルトを元に作られている。
魔力資質の高いフェイトだと攻防の両方に自身の魔力を存分に使えるけれど弱いアリシアは魔力コアに頼らないと魔法は使えない。
そうなるとどれだけ有効に魔力を使うかが課題になる。
そこでプレシアは小太刀を使う時にはバルディッシュの魔力を防御側に集中させたのだろう。
バルディッシュはジャケットの維持に集中出来るし、武装デバイスを構成する分の魔力を振り分ける余裕が生まれるということだ。
「勿論鞘を抜けば刀身もある。ただ…殺傷力が強すぎるから鞘が安全装置になっているって聞いている。日々の手入れは後で教えるよ。」
「お願いします。」
「ああ、それとこれを忘れていた。アリシア、ヴィヴィオにこれを返しておいてくれ。」
「もう出来たの?」
士郎が近くに置いていたバッグから1本の筒を取り出した。
布袋から出すと白木鞘の小太刀が現れる。受け取ると持って来た時より一回り細くなった気がする。
確かに持ちやすくなった。
親指で鞘口を押し上げて抜く。年始にヴィヴィオが見せた時、よく見てなかったけれど薄汚れていた感はあった。
でもこれは綺麗な輝きを取り戻していた。
恭也や美由希、雫も気になるらしい。
「ああ、刃を落として細めの鞘に変えただけだからな」
美由希がもっと見たそうにしていたので、1度鞘に戻して彼女に渡す。受け取ると同じ様に抜いて光を当てた。
「? 研ぎ直してる?、でも刃がない? 刃引きしてる?」
束口近く刃部分を人差し指で撫でる。研ぎ立てだと普通は薄く切れて血が滲むが全く切れていなかった。
「手入れもしてない練習刀だったから軽く研ぎ直して貰ってその際に刃も落として貰ったんだ。ヴィヴィオは『刀そのものが要るだけで切れ味は関係無い』って言ってたから中途半端に刃が残っていると怪我しかねないと思ってな。」
なるほどと頷く。
ヴィヴィオがこの剣を使う時は聖王の力を媒介として使う時だ。
媒介無しでも使えるけれど力加減が上手くいかないと言っていたし、実際媒介なしでナイフ位の大きさの剣を使って切ったら対象物は形を留めず、背後にあった山を真横に切ってしまっていた。
切れ味というか威力は刃の有無のレベルじゃない。
「アリシアちゃん、ヴィヴィオに気になるところがあれば遠慮無く言うようにと伝えてくれないか」
「はい」
笑顔で頷き美由希から小太刀を返して貰うとデバイスの中に入れた。
「あの事故があって、再興はもう諦めていたが…長生きはするもんだな…」
「本当に…」
2人の老人は社の中でお茶を片手に目を細めていた。
昔は毎年の様に儀式を受けにここに来ていたし、多くの者の小太刀を打っていた。
だがあの事故で宗家を含む多くの者が亡くなり、唯一残ったのが彼と彼の妹だけとなっていずれは過去の話となって消えていくしかないと諦めていた。妹の方は1度来た後は見かけなくなったが彼は子供達に教えて道を繋いでいた。それでも1つの家族の中だけの話だ。
だが去年の暮れ間近、彼から儀式の依頼と小太刀を2振り作って欲しいと連絡があった。
孫と孫の友達が道に進んでいると言ったのだ。そして年始に彼が彼の妻と一緒に2人の女性を連れて来た。
妻の友人達で1人は小太刀を使う者の親だと話した。
そこで打ち明けられたのは彼女達の力だった。
魔法と言っていたが聞きなじみのない言葉とその力は凝り固まっていた老人達の頭の中を砕いてかき混ぜる程の強烈な衝撃を与えた。
その場で親の女性は刀身以外の部分を作らせて欲しいと頭を下げた。
今までの慣習も彼から聞き調べた上で娘が剣を振るう理由を話した。彼女の話を聞いて心が震えた刀匠は勿論その場で快諾した。
「新しい芽、このまま育っていけばいいですな」
そう言いながら祭壇に祭ってあった巻物に手を伸ばし広げる。
それは宮司が儀式を行ってきた者達の目録だった。筆を取って最後に書かれていた高町美由希の後の空白に
「月村雫とアリシア…」
「テスタロッサじゃよ」
「そうそう、テスタロッサ」
彼女の名前がその剣の名と共に広まるのはそれから約4ヶ月後の事である。
~コメント~
アリシアの前後編の後編になります。
元々この話は番外編みたいな形で持っていきたかったのですが、彼女の考え方を思いっきり切り替える為に必要だったのでここに持って来ました。
「…そうですね。」
あまりのかわいさに撫でたり抱きつきたいと思いながらも、驚かせないように再び湯に入る。
「アリシア、少し筋肉ついてきたんじゃない? 毎日練習してるんでしょ」
「朝と夜と時々放課後に…色々忙しいですけど正月よりは強くなっていると思います。教わった技も少しずつ使える様になってます。でも…まだまだ届かないし、そんな私が美由希さん達と同じ儀式を受けるなんて本当に良いのか…迷ってます。」
「お父さんも言ってたけど、そこまで深く考えなくていいよ。昔はこんなことをしてたんだよ~みたいに思ってくれれば。それにね…」
「アリシアちゃんは私…ううん、お父さん、恭ちゃん、雫…今まで同じ技を修めた人と違って魔法を使うでしょ。ミッドチルダだっけ? お父さん、あっちでみんなに見て考えて欲しいんだと思う。私達の剣の強さと守るってどういう意味なのかを…。」
「向こうで誰かに教えることになればアリシアが師匠になるんだから、頑張ってね」
「はい…」
美由希に背を押されて私は後ろ向きだったことに気づき、反省して前を見ることにした。
その日の夜、士郎と恭也は帰って来なかった。
美由希と一緒に宮司の娘が用意してくれた食事を食べていると雫が戻って来た。
「父さんから伝言、明日は朝が早いから早めに寝るようにって」
そう言って食事を済ませると、私達が入ってきた温泉へと向かった。
そして翌日、日が昇る前に私は神社の社の中に居た。
こっちの世界の礼装なのか正月に着た服に似ているが軽く純白の上着と赤色の長いスカート、緋袴姿で正座をする。普段両サイドでまとめていた髪は下ろして背中の途中で1つにまとめている。
同じ服を着た雫が並び横には士郎・恭也・美由希、昨日の刀匠が正座をして並んでいる。
松明が揺らめくなかで宮司が背を向けて細かな装飾が施された複数の像に何かを言っている。
日本語が話せても彼の言葉は時々しか聞き取れない。
静かに、厳かに進む儀式。ひんやりとした空気が緊張感を失わせない。
「月村雫」
宮司の呼ぶ声に雫が立ち上がり彼の前に行くと再び正座する。
刀匠が祭壇にあった木製の台に乗せた2本1対の小太刀を宮司の前に持っていき、雫は一礼をした後、両手で小太刀を手にしそのまま元居た場所に正座する。
「アリシア・テスタロッサ」
呼ばれて私も立ち上がり、雫と同じ様に宮司の前に正座する。
刀匠が祭壇にあったもう1つの木製の台を持ってアリシアの前に置く。
(これが…私の…えっ!?)
その形を見て驚いた。
雫が受け取った小太刀は恭也や美由希が持っているいわゆる「日本刀」と呼ばれるように唾や鞘といった独特の形をしていた。
しかし目の前にあったのは刀身は日本刀独特の少し湾曲した形状だけれど、鞘や持ち手と思われる部分はまるで違っていた。
(これ…バルディッシュに…!)
振り向いて士郎を見ると彼は深く頷く。
手に馴染ませる必要が無かった理由がわかった。作った人は計る必要が無かったのだ。だって毎日会っているのだから…。
私は深く頭を下げた後、2本1対の小太刀を受け取り再び元いた場所で正座をした。
…こうして儀式は終わった。
「士郎さん、みんなも黙ってるなんて酷いです。びっくりして声あげちゃいそうになりましたよ。」
緋袴から私服に着替えて境内で話す。
「ごめんな、驚かせるつもりは無かったんだ。受け取る前に見ない、教えないのが決まりだから。プレシアさんにも教えないで欲しいって頼んでいた。」
「雫も手に合わせるだけで自分の小太刀を見るのは今日が初めてだっただろう?」
士郎と恭也が答える。
雫は自分専用の小太刀が貰えた事が嬉しかったらしく、普段の鋭い眼差しが幾分緩んでいた。
「雫、少し振ってみてくれ。」
「うん」
雫が小太刀を脇に刺して鞘から抜く。銀色の刀身が朝日を帯びる。
「アリシアちゃんも…あっ、アリシアちゃんは鞘を抜かなくていい。プレシアさんが『デバイスと繋げばわかる』と言っていた。」
どういう意味だろうと思いながらもプレシアが作っているなら何かあるに違い無いと考え、言われて持っていた小太刀をそのまま持った。
「バルディッシュ、ジャケットは良いから繋いでみて」
【Yes Sir】
デバイスと繋がると黒い金属質だった束の根元と刃部分が水色に光る。
美由希は綺麗…と呟いている。
「へぇ…デバイスから魔力を受けてるんだ…、そっかこれを使えばバルディッシュはジャケットに集中できるから軽くなるのか。」
アリシアのバルディッシュ・ガーディアンはフェイトのバルディッシュ・アサルトを元に作られている。
魔力資質の高いフェイトだと攻防の両方に自身の魔力を存分に使えるけれど弱いアリシアは魔力コアに頼らないと魔法は使えない。
そうなるとどれだけ有効に魔力を使うかが課題になる。
そこでプレシアは小太刀を使う時にはバルディッシュの魔力を防御側に集中させたのだろう。
バルディッシュはジャケットの維持に集中出来るし、武装デバイスを構成する分の魔力を振り分ける余裕が生まれるということだ。
「勿論鞘を抜けば刀身もある。ただ…殺傷力が強すぎるから鞘が安全装置になっているって聞いている。日々の手入れは後で教えるよ。」
「お願いします。」
「ああ、それとこれを忘れていた。アリシア、ヴィヴィオにこれを返しておいてくれ。」
「もう出来たの?」
士郎が近くに置いていたバッグから1本の筒を取り出した。
布袋から出すと白木鞘の小太刀が現れる。受け取ると持って来た時より一回り細くなった気がする。
確かに持ちやすくなった。
親指で鞘口を押し上げて抜く。年始にヴィヴィオが見せた時、よく見てなかったけれど薄汚れていた感はあった。
でもこれは綺麗な輝きを取り戻していた。
恭也や美由希、雫も気になるらしい。
「ああ、刃を落として細めの鞘に変えただけだからな」
美由希がもっと見たそうにしていたので、1度鞘に戻して彼女に渡す。受け取ると同じ様に抜いて光を当てた。
「? 研ぎ直してる?、でも刃がない? 刃引きしてる?」
束口近く刃部分を人差し指で撫でる。研ぎ立てだと普通は薄く切れて血が滲むが全く切れていなかった。
「手入れもしてない練習刀だったから軽く研ぎ直して貰ってその際に刃も落として貰ったんだ。ヴィヴィオは『刀そのものが要るだけで切れ味は関係無い』って言ってたから中途半端に刃が残っていると怪我しかねないと思ってな。」
なるほどと頷く。
ヴィヴィオがこの剣を使う時は聖王の力を媒介として使う時だ。
媒介無しでも使えるけれど力加減が上手くいかないと言っていたし、実際媒介なしでナイフ位の大きさの剣を使って切ったら対象物は形を留めず、背後にあった山を真横に切ってしまっていた。
切れ味というか威力は刃の有無のレベルじゃない。
「アリシアちゃん、ヴィヴィオに気になるところがあれば遠慮無く言うようにと伝えてくれないか」
「はい」
笑顔で頷き美由希から小太刀を返して貰うとデバイスの中に入れた。
「あの事故があって、再興はもう諦めていたが…長生きはするもんだな…」
「本当に…」
2人の老人は社の中でお茶を片手に目を細めていた。
昔は毎年の様に儀式を受けにここに来ていたし、多くの者の小太刀を打っていた。
だがあの事故で宗家を含む多くの者が亡くなり、唯一残ったのが彼と彼の妹だけとなっていずれは過去の話となって消えていくしかないと諦めていた。妹の方は1度来た後は見かけなくなったが彼は子供達に教えて道を繋いでいた。それでも1つの家族の中だけの話だ。
だが去年の暮れ間近、彼から儀式の依頼と小太刀を2振り作って欲しいと連絡があった。
孫と孫の友達が道に進んでいると言ったのだ。そして年始に彼が彼の妻と一緒に2人の女性を連れて来た。
妻の友人達で1人は小太刀を使う者の親だと話した。
そこで打ち明けられたのは彼女達の力だった。
魔法と言っていたが聞きなじみのない言葉とその力は凝り固まっていた老人達の頭の中を砕いてかき混ぜる程の強烈な衝撃を与えた。
その場で親の女性は刀身以外の部分を作らせて欲しいと頭を下げた。
今までの慣習も彼から聞き調べた上で娘が剣を振るう理由を話した。彼女の話を聞いて心が震えた刀匠は勿論その場で快諾した。
「新しい芽、このまま育っていけばいいですな」
そう言いながら祭壇に祭ってあった巻物に手を伸ばし広げる。
それは宮司が儀式を行ってきた者達の目録だった。筆を取って最後に書かれていた高町美由希の後の空白に
「月村雫とアリシア…」
「テスタロッサじゃよ」
「そうそう、テスタロッサ」
彼女の名前がその剣の名と共に広まるのはそれから約4ヶ月後の事である。
~コメント~
アリシアの前後編の後編になります。
元々この話は番外編みたいな形で持っていきたかったのですが、彼女の考え方を思いっきり切り替える為に必要だったのでここに持って来ました。
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