10話 朝の一時

【ピピピピピピ・・・・】
「ん・・ぅん・・・・」

 朝日が部屋にさしこみ始めた頃、まだ目が覚めていないエリオは音の鳴る方へ手を伸ばした。しかし、彼の手が届く前に目覚ましは【ピッ】という音と共に静かになる。

「ん・・・・んん?」

 違和感に気付き、寝ぼけ眼な瞳を開けてみると

「クスッ♪ おはよ、お兄ちゃん」

 キャロが居た。しかも自分を見て少し恥ずかしそうに微笑んでいる。

「ん・・・キャロ??おはよぉぉおおおお!!」

 最初は半分寝ぼけていたエリオだったが、挨拶の途中で目の前にいるキャロを見て飛び上がった。

「おはよ、お兄ちゃん♪」

 再び挨拶をするキャロ

「な・・なんで、またキャロが一緒にっ!ってここって??」
「昨日、フェイトママと約束した事覚えてないの?」
「あ・・・」

 目覚めていきなり慌てて熱くなったエリオの頭がスーっと覚めていく。

『そっか・・昨日一緒に寝ちゃったんだ・・・・』

 キャロと一緒に眠っていたのに、昨日までの様に気を張らずに眠れた事にエリオは内心驚いていた。

「それよりお兄ちゃん、時間いいの?」

 ポソッと言われたキャロの言葉に時計を見ると、いつもより10分近く遅れていた。

「うわっ、ギリギリだっ!」

 慌てて訓練用の服を取り出し、シャツを脱ごうとした時ハッと気づく。背中にキャロの視線を感じる。振り向くとジーっと見つめるキャロ

「あの・・キャロ?」
「なぁに?」
「あの・・向こう向いてて欲しいんだけど、着替えたいから・・」
「あっ、ごめんなさい」

 キャロが背中を向けた事を確認して、エリオは急いで着替えだした。
 『兄妹なんだから別にいいのに』とキャロが恐ろしいことを考えている事は彼には全く予想もしてもいなかった。



「エリオ、おっはよ~~」
「よく眠れた?」
「・・・・・」

 先に準備をするのに来ていたスバルとティアナに向かって謝るエリオ

「すっすみません」

 しかし、2人はエリオの顔を見て

「エリオ良く眠れたみたいじゃない」
「顔色すっごく良くなってるよ」

 ニッコリと笑って言われる。エリオも気怠かった身体が凄く軽く感じていた。

「そうですね、よく眠れましたから」

 エリオも気持ちよく答えた。スバルがニヒヒと笑いながら

「でも、いくら元気になったからってキャロを病院に連れて行かなきゃダメな事しちゃだめだよ」
「え、病院??そんなに寝相悪くないですよ。僕は」

 何のことを言われたのか判らないエリオ

「そうじゃなくて、フェイト隊長をあの年で『お婆さん』にしちゃ・・」

 スバルが続きを言いかけた瞬間、ティアナが思いっきりクロスミラージュの柄で彼女の後頭部を殴った。
 【ドゴッ】とも【ミシッ】ともつかない痛い音が木霊する。
後頭部を押さえて蹲まりながら

「いったーい!何すんだよ、ティア!」
「それはこっちのセリフよ。エリオに何を吹き込んでんの!!それに・・・」
「それに?」

 涙目で聞き返すスバルに

「それに、後でフェイト隊長にバレたらただじゃ済まないわよ」
「・・・・」

 スバルはフェイトがバルディッシュを構えて向かってくるのを想像した。まるで死神が鎌を構えているみたいだ・・・・
 エリオは終始何のことを言ってるのか理解出来ずにいた。

「あの・・・」
「「ん?」」

 頭を押さえるスバルと殴った手をさするティアナはエリオの声に振り向いた。

「それで・・フリード・・どうしちゃったんです?凄く元気なさそうなんですけど」

 足下に座り込んでいるフリードはエリオの方も見向きもしない。

「あ~昨日ね、エリオと一緒にキャロの部屋で寝れると思ってたみたいで・・」
「私達の部屋で預かったんだけど・・ね」
「・・・なるほど・・・」

 昨夜、エリオがキャロの部屋で暫くの間暮らす事を聞いたフリードはとても喜んだ。いつも一緒にいたのに自分の事も忘れられてショックを受け、その後もエリオと一緒に暮らしていたのだからエリオと一緒にキャロの部屋に戻って寝られると言うことでその喜び様は凄かった。
 しかし、キャロの言葉は

「・この子・・怖い・・」

 の一言だった。
 だがその言葉が全てを物語っていた。せめてスバルとティアナが預かると言うことになったがそのショックの度合いは天国から文字通り地獄に重り付きで突き落とされるくらい、フリードには大きかった。
 昨夜は傷心のままスバル・ティアナの部屋に預けられ2人はそのまま訓練にも連れてきた訳である。

「フリード・・・ゴメンな、朝ご飯はキャロも一緒に食べるから少しずつ慣れてもらうから。そうしたら一緒に暮らせる様に頼むから。もうちょっと我慢して、な!」
「・・・・・・」
「フリード、お願いっ」
「・・・・・・」

『ねぇティア、フリード暫く1人にしてあげた方が良くない?』
『そうね・・・よっぽどショックだったんでしょうね・・エリオ、確か今日はリイン曹長がオフシフトだったと思うから預かって貰ってくるね』
『お願いします。戻ったらキャロにそれとなく頼んでみます』

話がまとまったのでティアナがフリードを抱き上げ

「そうだ、フリード今日調子悪そうだから休んだ方が良いかも!」
「そうだよ、フリード。元気になれば今日の分も頑張ればいいんだし!」
「そうね、じゃあちょっと宿舎に連れて行くね」
「・・・・」

 もはやぬいぐるみか剥製の様に沈んだフリードはそのままリインフォースに預けられる事になった。

「スバル、エリオおはよう。あれ?ティアナは?」

入れ違いざまになのはがやって来た。

「フリードを預けに宿舎まで、すぐに戻ってきます」
「そう、エリオよく眠れたみたいだね!」

なのはがエリオの顔をみて聞いた。

「はい、心配おかけしました」

元気に答えたエリオの表情をみて

「うん♪でも、元気なのは良いけど、元気すぎてフェイト隊長をお祖母ちゃんにしちゃだめだよ。フェイトちゃん困っちゃうから」

少し笑いながら言った。

「???それって、さっきスバルさんも言ってたのですが・・どういう意味ですか?」

 首をかしげるエリオとエヘヘと笑うスバルを見て
 
「ん~ん何でもない。エリオ、この事フェイト隊長には秘密ね!」
「了解です」
「はい・・???」

「すみません~~遅れました~~」

 遠くからティアナの声が聞こえた。こっちに駆けだしている。

「それじゃ朝練はじめよっか」
「「「はいっ!」」」

 この時4人が後に小さな事件に発展するとは誰も思っていなかった。

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