第17話「出発の朝」

『おはようございま~す』
「…ん…んん?」
『ヴィヴィオ、起きてますか?』
「リインさん?」

 翌朝、突然念話で起こされてヴィヴィオは眠い目を擦って布団から起きる。

「ヴィヴィオ…さむい…」
「う~ん…」


 
 昨夜星光の身の回りの物を買って帰った後、彼女の部屋をどうするのかを話し合いながらそのまま寝てしまった。
 なのはのベッドは流石に3人一緒に眠れる程の広さもなく、ヴィヴィオは客間を借りようとした。
 しかし星光が追い出すみたいで嫌だと受け入れず、既に日も暮れていたし明日から旅行に行くのも決まっていたので1つのベッドに無理矢理3人で寝たのだけれど…流石に狭かったらしい。

(3人くっついて寝るってすごい状況だよね)

 2人を起こさぬように静かにベッドから降りて念話に答える。

『おはようございます。リインさんどうしました?』
『アリシアから聞いてませんか。今日からはやてちゃん達がミッドへ研修に行くので私も一緒に旅行に行くですよ』
『えっ!?』

 一気に目が覚める。

『リンディ提督からも許可貰ってるです♪ 本当に聞いてませんか?』

 どうしてリインがと思ったが、よくよく考えれば彼女がアースラを通って本局やミッドに転送されると彼女自身が未来のユニゾンデバイスだというのがばれてしまう。
 しかも未来から来た事まで…
 そこまでリンディは考えていたのだろう。

『すみません、ビックリしちゃって。リインさん今どこに?』
『あとで合流するからこっちに来てと言われまして、今家の前ですよ』
「いえ? …い…え…いえっ!?」

慌てて階段を駆け下りて玄関のドアを開けると

「ヴィヴィオ、おはよーですよ♪」

 門の前でリインが手を振って合図していた。



 外で待って貰う訳にもいかず、とりあえず中に入って貰ってリビングに向かうと既に桃子が起きており朝食の仕度をしていた。

「桃子さん」
「ヴィヴィオ、おはよう。なのは達はまだ寝ているのかしら? リインちゃんね、リンディさんから話は聞いているわ。旅行の間よろしくね」
「こちらこそよろしくです」

 どうやら知らなかったのはヴィヴィオだけらしい…

「桃子さん、リインさん私着替えてきます」
「朝食そろそろ出来るからなのは達も起こしてきてくれるかな」
「は~い♪」

 今日からの旅行に一抹の不安もあったけれど考えていても仕方がない。頭を切り換えて

「おはよ~もう朝だよ。」

 と2人を起こしに行った。



一方同じ頃…

「ねえさま…おきて」
「起きてもう朝だよ。今日から旅行に行くんだよっ」
「むにゃ…あと1時間」
「1時間って出発してるよっ、アリシアっ、お姉ちゃんおきてっ!」

 アリシアは朝がとても弱い。一昨日起きたのは本当に気まぐれだったらしい。ヴィヴィオが驚いた理由がよくわかる。
 フェイトとチェントがベッドで彼女を揺らしても起きる気配はなかった。

「本当に違うのね~」
「ここまでして起きないのも才能ですよね」
「魔法で起こしちゃえ。エルニシアダガー…じゃなくてフェイトので」
「ねえさま、いつもリニスがおこしてた」

 呆れた声をあげるリンディとエイミィの横で雷刃がさらりと怖いことを言うが、あえて聞き流しリニスが起こしたというチェントの言葉にひっかかる。

「チェント、アリシアが起きてくる時っていつもどんな風に起きてくるの?」
「ねえさまたのしそうにおきてる」

 楽しそう…笑ってる? リニス…私の知ってるリニスじゃなくて素体の…猫のままだから…あ!
「ねぇ、あのねゴニョゴニョ」
「うん、それ乗った♪」

 思いついた事を雷刃に話すと腕まくりをして乗ってきた。

「提督、エイミィ、チェントも先にリビングでまってて、アリシアすぐに起こすから」

 リンディとエイミィは訝しげに互いの顔を見合わせながら部屋を出てリビングへ数歩歩いた時、先程まで居た部屋から悲鳴の様な笑い声が聞こえてくる。

「ねえさまたのしそう」
「ああ、そういうこと♪」
「みたいですね」 

 10分後酷く疲れた姿でにアリシアが起きて来たのは言うまでもない。



「う~ん、やっぱり空気がおいしい♪」
「少し寒いですが、気持ちいいです~♪」

 車から降りて背伸びをしつつ深く息を吸うとリインも真似をするように深呼吸する。

「アリサとすずかも来られたら良かったのにね」
「2人とも毎年年末年始はご挨拶で忙しいから。それに…」

星光達が増えたのを知ったらまた驚かせてしまうだろう。なのはにちょっぴり罪悪感が残っているのに気づいて苦笑する。

「人工物ばかりだと思っていましたが自然も残しているのですね」

 雪がまだ残っていて少し寒いけれど冷たい風が逆に気持ちいい。星光が辺りを見回しながら呟く。

「あっ、そうだ忘れてた。着いたよ、周りは私達しか居ないから今なら大丈夫♪」

 RHdを取り出して話すと声が帰ってくる。

『うん、じゃあ行くね。リンディさん』

 そう言うとヴィヴィオの前に魔方陣が現れる。そして消えた時にはアリシア達ハラオウン家の面々が立っていた。
 ヴィヴィオ達が来る前までは大きな車を借りて来る予定だったのだけれど、ヴィヴィオ達4人と星光・雷刃と急遽参加人数が増えた為、ハラオウン家の面々は現地まで転移魔法で来ることになったのである。
 こういう時は魔法は便利だ。
 一緒におしゃべりしながら来れないのはちょっと寂しいけれど…

「温泉温泉~♪ クロノ君一緒にはいろっか。前みたいに」
「いつ一緒に入った! 勝手に話を作るな!! っていうかエイミイ腕を引っ張るな」
「じゃあ私も一緒に~♪」
「…美由希、お前まで…」
「わぁ~♪ 冷たい-。ねぇねぇこれデバイスになんないかな?」
「レヴィ、あなたはそれをずっと持っていくつもりですか?」

 クロノを引っ張って宿へと向かうエイミイと彼女達について行く美由希と恭也、傍らでつららを持って構える雷刃、皆それぞれ楽しんでる。

「ねぇ…賑やかなのは良いことだよね?」
「た、多分…」
「アハハハ…」
「チェントは真似しちゃだめだよ」
「うん」

 宿から追い出されたりはしないかと不安を覚えるヴィヴィオとアリシアだった。

~コメント~
 もし高町ヴィヴィオ達が「なのはAs-TheBattleOfAces」の世界に来たら? 闇の欠片事件は解決しましたが、マテリアル達が残りました。4章はそんな感じで進んでいます。
 小さい頃軒先に出来た氷柱が綺麗で居間に置いておいたらいつの間にか無くなって悲しい思いをした事があります。
 今思えば当たり前ですが初めて氷柱を見たらそう思いますよね?

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