As03 未来の道は?
「騎士カリム、少しよろしいでしょうか?」
「ええ、どうぞ」
その声に気づいた部屋の主、カリム・グラシアは手元にある書類にサインをしてペンを置いた。
「シャッハ1人で歩けますからっ。そんなに強く掴まないで」
「でしたら早く入りなさいっ」
扉の向こう側から揉めている声が聞こえる。
「ええ、どうぞ」
その声に気づいた部屋の主、カリム・グラシアは手元にある書類にサインをしてペンを置いた。
「シャッハ1人で歩けますからっ。そんなに強く掴まないで」
「でしたら早く入りなさいっ」
扉の向こう側から揉めている声が聞こえる。
(またセインが何かしたのかしら?)
戦闘機人の中で一際明るいセイン。
色々と問題も起こして教育担当のシャッハは頭を抱えているらしい。でも旗から見れば人一倍厳格なシャッハの近寄りがたさを和らげているのはセインのおかげとも思え、彼女の担当になってからシャッハの表情も豊かになってきている。
それに…
(今日は何をしたのかしら?)
カリム自身、彼女達のトラブルは1つの楽しみになっていた。
「早く入りなさいっ」
「え~っ先にシャッハが…」
やりとりをもう少し聞いておきたいところだけれど話が進まないので、クスッ笑って席を立ち
「2人揃って入ればいいでしょう?」
扉を開けた。
「今日は何ですか? そうそうセイン、調理担当者がまた来て欲しいと言っていましたよ」
「本当ですか! じゃあ早速」
余程逃げ出したいらしい。
早速出て行こうとするセインの襟首をシャッハが捕まえる。
「報告が先です。先程話していた話をもう1度しなさい」
1歩前に押し出されて息をついてから彼女は話し始めた。
「はい…先日、掃除をサボって教会内をウロウロしていたんですけど」
「セイン、あなたは教会の奉仕を何だと…」
「シャッハ、先にセインの話を聞きましょう」
怒るシャッハをなだめて続きを話すように促す。
「その時通りがかった部屋から何か相談してる声が聞こえてきたんです。聖王という言葉が聞こえたから気になってIS使って聞き耳立ててたんですが聖王の血を引く者を代表に立てようって…」
「何ですって!」
思わず席を立ってしまう。
「外から声が聞こえたから慌てて出ちゃってそれ以上聞けなくて、陛下の話だからどうしようかってウエンディと話していたら…」
「私がそれを見かけたのです。ウェンディ・ナカジマにも口外しないように言ってあります」
(とうとう動き始めたのね…)
2人の話を聞いて最初に思いついたのは先日の管理局騒動。
聖骸布から生まれた高町ヴィヴィオに魔力制限を行おうとする動きが管理局で起きた。
彼女の保護者である高町なのはとフェイト・T・ハラオウンや地上本部とコネクションを持つ八神はやてが担当の上司に直談判をしに向かった。
しかし既に強行派がヴィヴィオを確保し先に制限を付けようと動き始めていたのを予見し、はやてがプレシアの施設でヴィヴィオを預かりプレシアと戦闘機人だった者達7名を置いて「教導訓練」の名の下に迎撃した。
JS事件において、地上本部自体が戦闘機人によって相当な被害を受けていた。
ヴィヴィオを確保だけを考えていた1部隊とプレシアと戦闘機人8名では勝負にならなかったらしい。
顛末を後で聞いたカリムはため息をついていたのだけれど、まさか教会側でも同じ考えの者がいるとは…
(あの時は管理局は何をしているのかしらと呆れたけれど、人のことは言えないわね…)
「騎士カリム…私達はどうすれば良いでしょう?」
「…そうね、セイン。暫く教会内を見回って貰えるかしら。それで又似た話を聞いた時は私にすぐ連絡して貰えて。シャッハもいいかしら?」
「了解!」
「承知しました。」
2人が出て行ってからカリムは思いを巡らす。
「ヴィヴィオとチェント…教会から近すぎたかしら…」
(Stヒルデ学院は教会系の学校で、プレシアの施設も教会直属…知ろうと思えばすぐに判るでしょう。でも教会から離れれば守る事も出来ないわ。)
「あの騒動まで進む前に片付けたいわね。」
窓から外に居る2人の少女を眺めながら呟いた。
そして数日後、理事の1人と会談しているとセインから念話が届く。
『騎士カリム、前の人達が集まってます。』
『ええ、ありがとう。』
それを聞いたカリムはフゥと一息だけついて
「申し訳ありませんが、少しだけ席をはずさせて頂きますわね」
そう言って部屋を後にした。
数分後、
【コンコンッ】
部屋をノックする。予想通り扉には鍵がかかっている。
「セイン、中から鍵を外して下さい」
彼女の手が扉の向こうに伸びてカチャっと音が鳴った後
「失礼しますわね」
と開けて入って行った
「ごきげんよう、教会の代表者の皆様が集まって何か相談されていると聞きまして。皆様だったのですね」
「なんの話だ。」
「そうですか、ある幼い子供達を籠の中に入れてしまおうという計画を練っている方達が居ると聞きまして、皆様ではありませんでしたか」
手前に居た2人の目が泳いだのを見逃さない。睨みつけたいところだけれど、今は笑顔で通す。
「そんな話は知らん。会議中だ、出て行ってくれ」
「先日管理局の方で同じ様な話を聞きましたもので。その時は魔力の伸び盛りな優秀な少女に制限をつけようと考えた者が居りまして、結局計画は失敗し関係者は全員病院送りになったそうですわ。全治2ヶ月から半年だそうです。」
数人が息を呑む。
「…その少女がしたのか?」
「いいえ、その局員達は強制的に制限を付けようとある私邸に乗り込んだのです。しかし少女の友人達が迎撃し、。少女は当時別の場所に居り知りさえしておりませんでした。」
「…………」
公にはなっていない話。
でも教会本部の近所で起きたのだから噂位耳にしているだろう。
「少女が自ら望まない限り、少女自身や少女の家族・友人の返り討ちを考慮に入れた方がいいでしょう。」
そこまで言って踵を返し入って来た扉に向かう。ノブに手が触れた時
「その覚悟をお持ちでしたら相談にいらしてください。人数分のベッドと傷薬を用意いたしますわ。看護の者はそれぞれに手配くださいませ。失礼いたしますわ」
そう言って部屋を出た。
「騎士カリム、良かったんですか? アレだけで」
部屋から出てきたところをセインが追いかけて来た。
「ええ十分よ。あなた達が良い前例を作ってくれていたもの。これで大人しくなるでしょう。」
数日後、思惑通り計画は取りやめになったと耳にして
「本人が来たいと思わなければ意味がありませんのに…」
と呟きティーカップをとって1口飲むのだった。
~~コメント~~
AgainStory2「ヴィヴィオ封印指令」の聖王教会的な話でした。
普段ニコニコしてる人が怒ると1番怖いです。
戦闘機人の中で一際明るいセイン。
色々と問題も起こして教育担当のシャッハは頭を抱えているらしい。でも旗から見れば人一倍厳格なシャッハの近寄りがたさを和らげているのはセインのおかげとも思え、彼女の担当になってからシャッハの表情も豊かになってきている。
それに…
(今日は何をしたのかしら?)
カリム自身、彼女達のトラブルは1つの楽しみになっていた。
「早く入りなさいっ」
「え~っ先にシャッハが…」
やりとりをもう少し聞いておきたいところだけれど話が進まないので、クスッ笑って席を立ち
「2人揃って入ればいいでしょう?」
扉を開けた。
「今日は何ですか? そうそうセイン、調理担当者がまた来て欲しいと言っていましたよ」
「本当ですか! じゃあ早速」
余程逃げ出したいらしい。
早速出て行こうとするセインの襟首をシャッハが捕まえる。
「報告が先です。先程話していた話をもう1度しなさい」
1歩前に押し出されて息をついてから彼女は話し始めた。
「はい…先日、掃除をサボって教会内をウロウロしていたんですけど」
「セイン、あなたは教会の奉仕を何だと…」
「シャッハ、先にセインの話を聞きましょう」
怒るシャッハをなだめて続きを話すように促す。
「その時通りがかった部屋から何か相談してる声が聞こえてきたんです。聖王という言葉が聞こえたから気になってIS使って聞き耳立ててたんですが聖王の血を引く者を代表に立てようって…」
「何ですって!」
思わず席を立ってしまう。
「外から声が聞こえたから慌てて出ちゃってそれ以上聞けなくて、陛下の話だからどうしようかってウエンディと話していたら…」
「私がそれを見かけたのです。ウェンディ・ナカジマにも口外しないように言ってあります」
(とうとう動き始めたのね…)
2人の話を聞いて最初に思いついたのは先日の管理局騒動。
聖骸布から生まれた高町ヴィヴィオに魔力制限を行おうとする動きが管理局で起きた。
彼女の保護者である高町なのはとフェイト・T・ハラオウンや地上本部とコネクションを持つ八神はやてが担当の上司に直談判をしに向かった。
しかし既に強行派がヴィヴィオを確保し先に制限を付けようと動き始めていたのを予見し、はやてがプレシアの施設でヴィヴィオを預かりプレシアと戦闘機人だった者達7名を置いて「教導訓練」の名の下に迎撃した。
JS事件において、地上本部自体が戦闘機人によって相当な被害を受けていた。
ヴィヴィオを確保だけを考えていた1部隊とプレシアと戦闘機人8名では勝負にならなかったらしい。
顛末を後で聞いたカリムはため息をついていたのだけれど、まさか教会側でも同じ考えの者がいるとは…
(あの時は管理局は何をしているのかしらと呆れたけれど、人のことは言えないわね…)
「騎士カリム…私達はどうすれば良いでしょう?」
「…そうね、セイン。暫く教会内を見回って貰えるかしら。それで又似た話を聞いた時は私にすぐ連絡して貰えて。シャッハもいいかしら?」
「了解!」
「承知しました。」
2人が出て行ってからカリムは思いを巡らす。
「ヴィヴィオとチェント…教会から近すぎたかしら…」
(Stヒルデ学院は教会系の学校で、プレシアの施設も教会直属…知ろうと思えばすぐに判るでしょう。でも教会から離れれば守る事も出来ないわ。)
「あの騒動まで進む前に片付けたいわね。」
窓から外に居る2人の少女を眺めながら呟いた。
そして数日後、理事の1人と会談しているとセインから念話が届く。
『騎士カリム、前の人達が集まってます。』
『ええ、ありがとう。』
それを聞いたカリムはフゥと一息だけついて
「申し訳ありませんが、少しだけ席をはずさせて頂きますわね」
そう言って部屋を後にした。
数分後、
【コンコンッ】
部屋をノックする。予想通り扉には鍵がかかっている。
「セイン、中から鍵を外して下さい」
彼女の手が扉の向こうに伸びてカチャっと音が鳴った後
「失礼しますわね」
と開けて入って行った
「ごきげんよう、教会の代表者の皆様が集まって何か相談されていると聞きまして。皆様だったのですね」
「なんの話だ。」
「そうですか、ある幼い子供達を籠の中に入れてしまおうという計画を練っている方達が居ると聞きまして、皆様ではありませんでしたか」
手前に居た2人の目が泳いだのを見逃さない。睨みつけたいところだけれど、今は笑顔で通す。
「そんな話は知らん。会議中だ、出て行ってくれ」
「先日管理局の方で同じ様な話を聞きましたもので。その時は魔力の伸び盛りな優秀な少女に制限をつけようと考えた者が居りまして、結局計画は失敗し関係者は全員病院送りになったそうですわ。全治2ヶ月から半年だそうです。」
数人が息を呑む。
「…その少女がしたのか?」
「いいえ、その局員達は強制的に制限を付けようとある私邸に乗り込んだのです。しかし少女の友人達が迎撃し、。少女は当時別の場所に居り知りさえしておりませんでした。」
「…………」
公にはなっていない話。
でも教会本部の近所で起きたのだから噂位耳にしているだろう。
「少女が自ら望まない限り、少女自身や少女の家族・友人の返り討ちを考慮に入れた方がいいでしょう。」
そこまで言って踵を返し入って来た扉に向かう。ノブに手が触れた時
「その覚悟をお持ちでしたら相談にいらしてください。人数分のベッドと傷薬を用意いたしますわ。看護の者はそれぞれに手配くださいませ。失礼いたしますわ」
そう言って部屋を出た。
「騎士カリム、良かったんですか? アレだけで」
部屋から出てきたところをセインが追いかけて来た。
「ええ十分よ。あなた達が良い前例を作ってくれていたもの。これで大人しくなるでしょう。」
数日後、思惑通り計画は取りやめになったと耳にして
「本人が来たいと思わなければ意味がありませんのに…」
と呟きティーカップをとって1口飲むのだった。
~~コメント~~
AgainStory2「ヴィヴィオ封印指令」の聖王教会的な話でした。
普段ニコニコしてる人が怒ると1番怖いです。
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