As07 成長を見守る者
「…これ、本当にヴィヴィオのデバイスなのよね…」
「ええ、定期メンテナンスだからって今日ヴィヴィオ本人が持ってきましたから。形状もそうですしIDも合っています。」
「そうだよね…」
時空管理局、本局技術部のある部屋では2人の局員が頭を悩ませていた。
「ええ、定期メンテナンスだからって今日ヴィヴィオ本人が持ってきましたから。形状もそうですしIDも合っています。」
「そうだよね…」
時空管理局、本局技術部のある部屋では2人の局員が頭を悩ませていた。
1人はマリエル・アテンザ。技術部所属でなのはのレイジングハート、フェイトのバルディッシュ、はやてのリインフォースⅡのメンテナンスや修理も担当している。ヴィヴィオのRHdも彼女が製作し、その後もメンテナンスをしている。
もう1人はシャリオ・フィニーノ、フェイトの執務官補佐でありながらデバイス製作にも通じており彼女もRHd製作に携わっていた。
そんな2人が揃って悩ませていた原因、それはそのデバイスだった。
【Sorry】
「いや、謝らなくて良いんだよ。RHdは悪くないんだから」
「そうそう」
「ただね、私達が作ったのは古代ベルカ式の魔法に耐えてレリックと同調するユニゾンデバイスだったんだよね…」
「そうなんですよね~、でも今はどう見ても…」
形は同じでも相当違うモノになっていたのだから悩まずには居られなかったのだ。
元々ヴィヴィオのデバイス【レイジングハートセカンド】通称『RHd』はヴィヴィオが魔法を覚えていく為に作られたデバイス。当初、念話や検索魔法等の魔法を制御する為のリソースを割り振る【ノーマルモード】だけ組み込んでいた。しかし制作中に『古代ベルカ式特有の魔法資質を持っているヴィヴィオが自分を守る機能も入れて欲しい』と八神はやてから進言があった。
ヴィヴィオの母、高町なのはとフェイト・T・ハラオウンもはやての言葉に何か思い至る所もあったらしく、JS事件でヴィヴィオが纏ったジャケットを基本として組み込み【アクティブモード】を追加し、暴走防止用として起動キーを2つも組み込んだ。
1つは使用者であるヴィヴィオが使用を望んだ時に起動する
1つは管理者である高町なのはの認証があった時起動する
それら2つの起動キーが揃わなければアクティブモードが起動しない様に。
ヴィヴィオが教会関連のStヒルデ学院に入学した時点で、もし何かあってもアクティブモードを使う機会や事件に巻き込まれる事もある筈がないだろうと2人は考えていた。
実際にヴィヴィオがRHdを貰ってから1年は何も起きなかった。
しかし…今年初めに起きたヴィヴィオが無限書庫で昏睡してからは2人の想像をかけ離れた物になってしまっていたのだ。
まず、デバイス製作者の名前がマリエルからリンディ・ハラオウンに変わっていた。しかも登録されたのはRHdが作られるよりも10年以上前。アクティブモードの変化はもっと顕著で組み込んでいたフレームが全て除かれ、代わりに高エネルギー体が入っていたのだ。
それも消失した筈のジュエルシードが。
慌ててマリエルがリンディに連絡を取ったのだが
「ええ、知っているわ。メンテナンスご苦労様」
と一言で片付いてしまった。
幸いレリック片・ジュエルシードが共に安定しており、無理に取り除くのは危険と考えてその時はそのままメンテナンスだけをしてヴィヴィオに返した。
次のメンテナンスでマリエルは意見を聞こうとシャリオを呼んで一緒に見てみると、今度は訳の判らないプログラムが幾つも断片化して組み込まれていた。
ヴィヴィオに返した際、新しいジャケットを作ったと言っていたから多分それなのだろう。
次回はレイジングハートと同じベルカ式ユニゾンデバイスであるリインフォースⅡに協力して貰ってチェックをしようと言う事でその場は片付いた。
そして今がその次回のメンテナンス。レイジングハートとリインフォース2への協力は結果として不要になってしまった。
除去されたフレームが再び組み込まれ、そして…
【Were there any problems? 】
人と会話で意思疎通出来るシステム。インテリジェントシステムがRHdに入っていたのだ。
「私達以外にも誰か触ってるんじゃないです?」
シャリオの言い分にマリエルも頷く。
「うん…最初は私もそう考えてたんだよね。でもメンテナンスの履歴見てるんだけど私達しか中には触れてないんだよ。それに…」
幾つものモニタを出し、中のグラフを見せる。
「もし触っていてもストレージデバイスにインテリジェントシステムを入れるのは基本設計からし直さなきゃいけないんだよ。」
「そうですよね。元から設計し直さなきゃいけませんよね。」
「ここまで変わっちゃうと、この子に制御任せるしかないんだよね。RHd、システムエラーと各パーツの負荷蓄積データ見せて。」
中を見るのをあきらめて頭を切り換えメンテナンスを始める。
【Yes】
RHdから送られて来る表示を見て、そこから交換が必要なパーツを選び出し取り替える準備をする。
「ノーマルモードは問題無し、アクティブの方は…やっぱりフレームに負荷かかっちゃってるね。交換してもう少し強いのに変えた方がいいかな…」
「いいんですか? フレーム負荷があるのはそれだけ使ってるんですよね?」
彼女が心配しているのは強化すればそれは更に激しい使い方、より激しい事件に巻き込まれるのではないかという事。
「いいよ。もしヴィヴィオが本当に使いたいって思った時壊れちゃってたら大変だし、使ってる最中に怪我しちゃうのも嫌だからね。」
デバイスは求められて必要だから作る。そして定期的にメンテナンスをする。メンテナンスは壊れる前に壊れそうな部分を見つけ直さなければならない。マリエルはデバイスがどの様に使われるのかは気にしていない。
デバイスは所有者と助け合い力を出す物だと信じているから。
「それに私達が変わりすぎてメンテ出来ないって匙投げちゃったら、RHdはロストロギアになっちゃうでしょ? シャーリーと2人で作って、ヴィヴィオと凄く良い相性なのに…」
「そう…ですね。そうです。」
シャリオもわかってくれたようだ。
「ね♪、バリアジャケット生成時のデータ送って」
【Yes】
送られて来たデータに目を通す。
少し前にヴィヴィオがシグナムと模擬戦をして勝ったという噂を耳にした。その際に来ていたジャケットは白基調で胸にリボンのあるバリアジャケットではなく、白と黒のツートンカラーになったジャケットだったそうだ。
ヴィヴィオとRHdの関係は一般の魔導師とデバイスの関係とは少し違う。ヴィヴィオを通して得た魔力をRHdが増幅し、その魔力をヴィヴィオが増幅・使用する。RHd自らも魔法を起動させる事が可能だから、相棒・パートナーと言うより更に近い存在。
ヴィヴィオ【達】と似た関係を持っているのは八神はやてとリインフォースⅡくらいなものだろう。
だからこそRHdは念入りにチェックしなければならない。些細な故障が増幅されてヴィヴィオに返ってくるのだから。
「ジャケットの生成は…ちょっと変わった方法だけど大丈夫。それよりも問題はこっちだね。もう1つのジャケットデータの破損。前に取ったデータと比べてみてもデータ欠損多いね…自動修復機能に異常ある?」
【No, I 'm altogether normal. (全て正常です)】
特に問題も無いらしい。でもジャケット生成のプログラム破損はマリエルが見てもかなり深刻な状態だ。
「そう…ならいいけど、バックアップに正常なデータ置いておくからエラー起きたらこれ使って直して」
【ThankYou】
「じゃあ次は…シャーリー、部品交換の準備出来た?」
「はい、RHdパーツ交換始めますよ~」
彼女達とRHdのやりとりはその後暫く続いた。
~数日後~
「失礼します。無限書庫司書高町ヴィヴィオです。デバイスを受け取りに来ました。」
「ヴィヴィオいらっしゃい。出来てるわよ、え~っと…はいコレ」
マリエルが小箱を取り出しヴィヴィオに渡す。彼女はそれを受け取って中から待機状態のRHdを取り出した。
「マリエルさん、ありがとうございます。RHdおかえり、また一緒頑張ろうね」
ペコリと頭を下げて礼を言った後、彼女は部屋を出て行った。
主と一緒に居ることで変わっていくデバイス。それはつまり…
「また一緒に…主と一緒に成長するデバイスか…いいな」
高町ヴィヴィオを見守る者はたくさん居る。
家族や友人達の様に共に笑ったり心配したりする事はないけれど、彼女を信じ彼女から信じられるからその信頼に応えたいと思う者がいる。
マリエル・アテンザとシャリオ・フィニーノ、彼女達もその1人。
~コメント~
Vividのヴィヴィオにはセイクリッド・ハート=クリスが居ます。同じ様に本作のヴィヴィオにも専用のデバイスがあります。ヴィヴィオを支えるデバイス、それを支えている彼女達がいるからこそヴィヴィオもRHdも全力全開できるのではないでしょうか。
次作本編についてですが大体まとまってきましたので、こちらは次話更新あたりに書かせて頂きたいと思っております。
もう1人はシャリオ・フィニーノ、フェイトの執務官補佐でありながらデバイス製作にも通じており彼女もRHd製作に携わっていた。
そんな2人が揃って悩ませていた原因、それはそのデバイスだった。
【Sorry】
「いや、謝らなくて良いんだよ。RHdは悪くないんだから」
「そうそう」
「ただね、私達が作ったのは古代ベルカ式の魔法に耐えてレリックと同調するユニゾンデバイスだったんだよね…」
「そうなんですよね~、でも今はどう見ても…」
形は同じでも相当違うモノになっていたのだから悩まずには居られなかったのだ。
元々ヴィヴィオのデバイス【レイジングハートセカンド】通称『RHd』はヴィヴィオが魔法を覚えていく為に作られたデバイス。当初、念話や検索魔法等の魔法を制御する為のリソースを割り振る【ノーマルモード】だけ組み込んでいた。しかし制作中に『古代ベルカ式特有の魔法資質を持っているヴィヴィオが自分を守る機能も入れて欲しい』と八神はやてから進言があった。
ヴィヴィオの母、高町なのはとフェイト・T・ハラオウンもはやての言葉に何か思い至る所もあったらしく、JS事件でヴィヴィオが纏ったジャケットを基本として組み込み【アクティブモード】を追加し、暴走防止用として起動キーを2つも組み込んだ。
1つは使用者であるヴィヴィオが使用を望んだ時に起動する
1つは管理者である高町なのはの認証があった時起動する
それら2つの起動キーが揃わなければアクティブモードが起動しない様に。
ヴィヴィオが教会関連のStヒルデ学院に入学した時点で、もし何かあってもアクティブモードを使う機会や事件に巻き込まれる事もある筈がないだろうと2人は考えていた。
実際にヴィヴィオがRHdを貰ってから1年は何も起きなかった。
しかし…今年初めに起きたヴィヴィオが無限書庫で昏睡してからは2人の想像をかけ離れた物になってしまっていたのだ。
まず、デバイス製作者の名前がマリエルからリンディ・ハラオウンに変わっていた。しかも登録されたのはRHdが作られるよりも10年以上前。アクティブモードの変化はもっと顕著で組み込んでいたフレームが全て除かれ、代わりに高エネルギー体が入っていたのだ。
それも消失した筈のジュエルシードが。
慌ててマリエルがリンディに連絡を取ったのだが
「ええ、知っているわ。メンテナンスご苦労様」
と一言で片付いてしまった。
幸いレリック片・ジュエルシードが共に安定しており、無理に取り除くのは危険と考えてその時はそのままメンテナンスだけをしてヴィヴィオに返した。
次のメンテナンスでマリエルは意見を聞こうとシャリオを呼んで一緒に見てみると、今度は訳の判らないプログラムが幾つも断片化して組み込まれていた。
ヴィヴィオに返した際、新しいジャケットを作ったと言っていたから多分それなのだろう。
次回はレイジングハートと同じベルカ式ユニゾンデバイスであるリインフォースⅡに協力して貰ってチェックをしようと言う事でその場は片付いた。
そして今がその次回のメンテナンス。レイジングハートとリインフォース2への協力は結果として不要になってしまった。
除去されたフレームが再び組み込まれ、そして…
【Were there any problems? 】
人と会話で意思疎通出来るシステム。インテリジェントシステムがRHdに入っていたのだ。
「私達以外にも誰か触ってるんじゃないです?」
シャリオの言い分にマリエルも頷く。
「うん…最初は私もそう考えてたんだよね。でもメンテナンスの履歴見てるんだけど私達しか中には触れてないんだよ。それに…」
幾つものモニタを出し、中のグラフを見せる。
「もし触っていてもストレージデバイスにインテリジェントシステムを入れるのは基本設計からし直さなきゃいけないんだよ。」
「そうですよね。元から設計し直さなきゃいけませんよね。」
「ここまで変わっちゃうと、この子に制御任せるしかないんだよね。RHd、システムエラーと各パーツの負荷蓄積データ見せて。」
中を見るのをあきらめて頭を切り換えメンテナンスを始める。
【Yes】
RHdから送られて来る表示を見て、そこから交換が必要なパーツを選び出し取り替える準備をする。
「ノーマルモードは問題無し、アクティブの方は…やっぱりフレームに負荷かかっちゃってるね。交換してもう少し強いのに変えた方がいいかな…」
「いいんですか? フレーム負荷があるのはそれだけ使ってるんですよね?」
彼女が心配しているのは強化すればそれは更に激しい使い方、より激しい事件に巻き込まれるのではないかという事。
「いいよ。もしヴィヴィオが本当に使いたいって思った時壊れちゃってたら大変だし、使ってる最中に怪我しちゃうのも嫌だからね。」
デバイスは求められて必要だから作る。そして定期的にメンテナンスをする。メンテナンスは壊れる前に壊れそうな部分を見つけ直さなければならない。マリエルはデバイスがどの様に使われるのかは気にしていない。
デバイスは所有者と助け合い力を出す物だと信じているから。
「それに私達が変わりすぎてメンテ出来ないって匙投げちゃったら、RHdはロストロギアになっちゃうでしょ? シャーリーと2人で作って、ヴィヴィオと凄く良い相性なのに…」
「そう…ですね。そうです。」
シャリオもわかってくれたようだ。
「ね♪、バリアジャケット生成時のデータ送って」
【Yes】
送られて来たデータに目を通す。
少し前にヴィヴィオがシグナムと模擬戦をして勝ったという噂を耳にした。その際に来ていたジャケットは白基調で胸にリボンのあるバリアジャケットではなく、白と黒のツートンカラーになったジャケットだったそうだ。
ヴィヴィオとRHdの関係は一般の魔導師とデバイスの関係とは少し違う。ヴィヴィオを通して得た魔力をRHdが増幅し、その魔力をヴィヴィオが増幅・使用する。RHd自らも魔法を起動させる事が可能だから、相棒・パートナーと言うより更に近い存在。
ヴィヴィオ【達】と似た関係を持っているのは八神はやてとリインフォースⅡくらいなものだろう。
だからこそRHdは念入りにチェックしなければならない。些細な故障が増幅されてヴィヴィオに返ってくるのだから。
「ジャケットの生成は…ちょっと変わった方法だけど大丈夫。それよりも問題はこっちだね。もう1つのジャケットデータの破損。前に取ったデータと比べてみてもデータ欠損多いね…自動修復機能に異常ある?」
【No, I 'm altogether normal. (全て正常です)】
特に問題も無いらしい。でもジャケット生成のプログラム破損はマリエルが見てもかなり深刻な状態だ。
「そう…ならいいけど、バックアップに正常なデータ置いておくからエラー起きたらこれ使って直して」
【ThankYou】
「じゃあ次は…シャーリー、部品交換の準備出来た?」
「はい、RHdパーツ交換始めますよ~」
彼女達とRHdのやりとりはその後暫く続いた。
~数日後~
「失礼します。無限書庫司書高町ヴィヴィオです。デバイスを受け取りに来ました。」
「ヴィヴィオいらっしゃい。出来てるわよ、え~っと…はいコレ」
マリエルが小箱を取り出しヴィヴィオに渡す。彼女はそれを受け取って中から待機状態のRHdを取り出した。
「マリエルさん、ありがとうございます。RHdおかえり、また一緒頑張ろうね」
ペコリと頭を下げて礼を言った後、彼女は部屋を出て行った。
主と一緒に居ることで変わっていくデバイス。それはつまり…
「また一緒に…主と一緒に成長するデバイスか…いいな」
高町ヴィヴィオを見守る者はたくさん居る。
家族や友人達の様に共に笑ったり心配したりする事はないけれど、彼女を信じ彼女から信じられるからその信頼に応えたいと思う者がいる。
マリエル・アテンザとシャリオ・フィニーノ、彼女達もその1人。
~コメント~
Vividのヴィヴィオにはセイクリッド・ハート=クリスが居ます。同じ様に本作のヴィヴィオにも専用のデバイスがあります。ヴィヴィオを支えるデバイス、それを支えている彼女達がいるからこそヴィヴィオもRHdも全力全開できるのではないでしょうか。
次作本編についてですが大体まとまってきましたので、こちらは次話更新あたりに書かせて頂きたいと思っております。
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