第13話「私として」
- リリカルなのは AffectStory > 第2章 3人の聖王
- by ima
- 2012.02.20 Monday 17:02
「あ…あれ…本当にヴィヴィオですか?」
ティアナは自分の得意魔法、クロスファイアーシュートをヴィヴィオが放つのを見て驚きの余り言葉を詰まらせた。
「そうだよ、機動6課に居た頃見てたみたい。ヴィヴィオ、前からバスターとシューターはよく使うんだけどクロスファイアシュートも相性良いんじゃないかな。制御が難しい魔法だけどちゃんと制御してる。」
なのはが真剣な眼差しでモニタを見つめつつ答える。
ティアナは自分の得意魔法、クロスファイアーシュートをヴィヴィオが放つのを見て驚きの余り言葉を詰まらせた。
「そうだよ、機動6課に居た頃見てたみたい。ヴィヴィオ、前からバスターとシューターはよく使うんだけどクロスファイアシュートも相性良いんじゃないかな。制御が難しい魔法だけどちゃんと制御してる。」
なのはが真剣な眼差しでモニタを見つめつつ答える。
「簡単に言いますけど…操作系シューターからバスターへの属性変更のスキルって魔法ランクAAランクですよ。簡単に出来るレベルじゃ…」
「…SS。ヴィヴィオがあの騎士甲冑着てる時の推定ランク。維持出来る時間が限られちゃってたり魔法も偏ってるから魔導師ランクの認定はAランク。でも得意な魔法だけならね。」
「シグナムから聞いた話じゃオリヴィエはそれ以上…やっぱり無傷」
土煙から現れたオリヴィエ。鎧も服も傷1つない。
「ダブルエス…ヴィヴィオが…」
呟きながら再びモニタに視線を戻すティアナだった。
「効いてない。鎧に防がれた。」
彼女は1歩も動いていない。でもそれはいい、これは離れる時間を稼ぐ為の魔法。
土煙が消える前に今度はインパクトキャノンを放った後、そのまま飛んで一気に距離を詰める。オリヴィエは前と同じ様にカウンターを狙う。
「何度も同じ手を、ッ!?」
しかしヴィヴィオの拳を見て鎧を作り出す。
「そこだぁあああああっ!!」
インパクトキャノンが聖王の鎧にぶつかる瞬間、追いついたヴィヴィオも全力で殴る。
【ガキッツ!】
鎧が砕ける音がした後、虹色の光が飛び散りオリヴィエがヴィヴィオの拳を受け止めていた。
「気づいたのですね、鎧の本質に」
「うん♪」
ヴィヴィオがチェントとの戦いで培った経験。【聖王同士の戦いでは聖王の鎧は生まれない】それは確かに真を得ていた。
でも彼女は鎧を作っていた。その様子を思い出して疑問を持った。
意識しなくても生まれ主を守るのが聖王の鎧なのに彼女は意識して作っていた。
そこから彼女は聖王の鎧と言っているけど強化された魔力シールドではないかと。
そしてヴィヴィオの拳をオリヴィエが最初に受けなかったのにも理由があった。魔力に電気属性を追加し帯電化させていたのだ。帯電化した拳を直接受けるわけにはいかない。インパクトキャノンを反射しても相殺しきれない。気づいた瞬間に取れる方法は鎧を出す方法だけ。
ヴィヴィオはそこまで読んであえて彼女に聖王の鎧を出させ壊したのだ。
ニコッと一瞬笑った後、零距離で再びインパクトキャノンを撃ち込んで一気に離れる。
鎧の持つ特性【物理・魔法の無効化】が無いなら只の強力なシールド。削ってしまえばいい。
煙が消えた後オリヴィエの姿が現れる。彼女の両腕を守っていた鎧が壊れて落ちていた。壊されるとすぐには作れないらしい。
「これが本当のあなた達の力なのですね。ヴィヴィオ、私も本気で相手してよろしいでしょうか?」
「うん、頑張る。」
「頑張ってください。期待していますよ♪」
彼女がそう言って笑った直後、背後に寒気がした。慌てて飛び上がる。振り返ってさっき居た場所を見る。
そこに居たのはオリヴィエ、彼女は既に手刀を放っていた。。
(ぜ…全然見えなかった…)
動かなければ無防備な背中へのダメージ…
(これが…本気の…オリヴィエさん…)
「勝負あったな…」
「そうだね…後はどれだけ持つか…だね」
「ああ…盾を壊すところ迄は良い線行ってたんだけどな…全然追いついてない」
モニタで見ていたシグナム、なのは、ヴィータは口々に頷く。
オリヴィエの動きが変わった後からヴィヴィオは翻弄されていた。
砲撃は避けられ、シューターは追いつけない。窮地に陥る度に離れようとして無駄にシューターを放ちまくっている。。
ヴィヴィオもなのは達同じく打つ手が無いのに気づいていた。
(もっと強い力を…オリヴィエさんより速く動ければ)
その方法は1つだけある。ゆりかごでなのはと戦った時、チェントと戦った時みたいに怒りで心を染める方法。でもあれは私じゃない。
【自分より強い相手にどうやって勝てばいい?】
機動6課に居た時「隊長・副隊長で1番強いのは誰か?」という話が出たのを思い出す。
結論は…誰が強いかじゃなくて相手より有利な状況へ持ち込む事。
自分より速い相手、追いかけられない相手をどうやって捕まえればいい?
オリヴィエより有利な所はどこ?
それは…
「ねぇなのは、覚えてる? 私と全力で戦った時の事…」
監視室で2人の模擬戦を見ていたフェイトが聞く。
「戦ったって…模擬戦じゃなくて?」
「ううん、海鳴市で。勝った方が集めたジュエルシードを貰うって…」
ジュエルシード事件で何度目かの勝負
「覚えてるよ。」
モニタから視線を離さずになのはが続けて話す。
「あの時なのははまだ魔法使いになったばかりで、魔法の使い方も、戦い方も、スピードも全部私の方が上だった。」
「……うん…」
「今の2人、あの時の私達に似てない? 誰が見ても魔法の使い方も・経験もスピードもオリヴィエの方が数段上。でも…ヴィヴィオは諦めてない。何か狙ってる」
フェイトが言った時、ヴィヴィオが距離を取る為か魔法弾を撒き散らす様に作り出す。明らかに無駄な魔法を使っている。
その魔法弾をオリヴィエは難なく避け、再度作った鎧で弾く。
それでもヴィヴィオは作り続けオリヴィエの周りが埋め尽くされた時全部を同時に爆発させた。
訓練場一帯に煙が巻き起こり視界が消え魔力濃度が一気に跳ね上がる。
「…まさか…この量で使うつもりじゃ…」
「私との模擬戦と状況は似ているな。相手の視界を奪い周囲の魔力濃度を一気に上昇させ、再収集する…」
シグナムが言うのと同時に魔力濃度が急速に下がり始めた。
なのはの中で予想が確信に変わる。
「アリシアちゃん、ヴィヴィオはアレを何回使ったか知ってる?」
「えっ、えっと初めて見たのはゆりかごで、海鳴で2回、異世界で1回…」
「私との模擬戦でも1回」
「5回以上…ヴィヴィオダメェエエエエエエッ! 模擬戦止めてっ! ヴィータちゃんはやくっ!」
さっきまで静かに見ていたなのはがいきなり慌てだしたのを見て全員が驚いた。
「なんだ!? 何かあるのか?」
「お願い早く止めてっ。アレはブレイカーは発射直後の反動が激しいの。こんな短期間に何度も使ってたら今までの疲労も体に残ってる。こんな魔力量で使ったら…いくらデバイスと一緒でもっ。墜ちる前に早くっ!!」
なのはに墜ちると言われてヴィータはハッと気づいて大声で叫ぶ。なのはが墜ちる…雪を赤く染めた光景がヴィータの脳裏に蘇る。
「も、模擬戦中止っ 2人とも止めろっ!!」
しかし…
「遅かった様だな…」
土煙が晴れていく中で一際輝く光が見えたのだ。
近接戦では不利になる相手との勝負。
ヴィヴィオが狙っているのは回避不能、広域発射のスターライトブレイカー…
訓練場は只でさえ濃度の高い場所。なのにわざと魔力を撒いて上げていた。いくら集束砲でも集めた分を一気に使えば術者とデバイスも只では済まない。
(ヴィヴィオ…無茶はしないで…)
(あと、もう少しだけ…)
距離を取ってオリヴィエが魔法弾を相手にしている間に集束を始める。魔力を全部持って行かれる訳にはいかない。
「これが通らなかったら私達の負けだね…」
【Yes,But…】
「でも何もしないで負けるよりやって勝ちにいこう」
【Let's win together. (一緒に勝ちましょう)】
デバイスに語りかけもう1つの魔法をセット、起動させる。
「いっけぇええ、スターライトッブレイカーっ!」
叫ぶのと同時に撃ち出された魔法はオリヴィエめがけて伸びる。
「あれがヴィヴィオのブレイカー…」
ティアナがモニタを見つめながら呟く。
なのはと自身以外のブレイカーを目の前の少女が放ったのだ。
「違う」
モニタで見つめるなのはとフェイト、シグナムとヴィータはブレイカーの種類が違うのに気づく。
「前に見た物より威力が弱いし拡散もしていない。あれはただ魔力を集めただけの集束砲撃だ」
オリヴィエは残り少ない魔力を使った砲撃魔法、最後の力押しだと笑みを浮かべ鎧を広げ受け止めようと広げる。受けきってしまえば精神的に優位に立てる。
だがブレイカーが鎧に触れひび割れるかの様に亀裂が入った瞬間笑みが消えた。直後に鎧が砕け散り光の奔流を浴びそうになってジャンプして避けた。
だがそこには既にある魔法が仕掛けられていた。
飛び出した直後彼女の四肢が虹色のブロックに固定される。
ヴィヴィオが先に仕掛けた遅延拘束魔法。
それを見たなのははその時になってやっと気づいた。フェイトが感じていた物の正体が何なのかを。
ジュエルシード事件でフェイトと戦った時、彼女が言った通りほぼ全てにおいて彼女の方が上だった。だからあえて魔法を受け油断した際に拘束し最大威力の魔法を放ったのだ。
ディバインバスターで彼女の残り魔力を削り、スターライトブレイカーで勝負をつける。
なのははその方法で辛勝したが、ヴィヴィオは切り札になる筈のブレイカーを既に撃っている。
「……まさか…連射…」
さっきのブレイカーが拡散せず結界破壊属性付加しただけの砲撃魔法だった理由…わざと威力を抑えていただけで、集めた魔力とコアからの魔力を使おうとしているなら…
「連射だめーっ!!」
オリヴィエの魔力シールドはスターライトブレイカーで壊した。さっきのですぐに作れないのは判ってる。追いつけないから拘束魔法で捕まえた。
あとは今セットしている魔法を起動するだけ…外すと勝機はない。
でももう引くつもりはない。
これが私…私達のっ
「まだちゃんと使えないけど…これが私達の全力全開っ」
【Let's both win.(一緒に勝ちましょう)】
「星よぉぉおおっ!!」
なのは達は目の前で何が起こったのかすぐに理解できなかった。
上空に居たはずのヴィヴィオがいつの間にか地面に立っていて、土煙がかき消され、彼女を中心に大きな魔法球が6つが輝き、両手の平をオリヴィエに向けていた。そしてヴィヴィオの目の前には凝縮され一際強く輝く光があった。
「星よぉぉおおっ!!」
知っている魔法
それはオリジナルの魔法で誰にも教えていない。
相手が速くて追いかけられないなら先回りして逃げられないようにすればいい。
魔法弾と砲撃魔法の並列起動。1人で出来なくてもパートナーと…相棒と一緒に作れば良い。
レイジングハートと一緒だから使える魔法。
「…ストライク…スターズ…」
それが今目の前に、新たな使い手が…生まれる。
威力はオリジナルより酷く劣る。でも今はそれでいい。
集めた魔力は全部こっちに持ってきた。
『ヴィヴィオにこの魔法教えてあげる』
『砲撃魔法と魔法弾の威力を相乗させて組み合わせた複合魔法。バスターを一点集中で防御出来ても同時にシューターまで防ぐのは大変。』
『バラバラに動くと威力も落ちちゃうから砲撃と魔法弾を同時に制御しなきゃいけない。制御力が凄く求められる。本当はもっと強い魔法なんだけど、ここで使ったら怒られちゃうから』
『ママはベルカ式魔法使えないから見せてあげるのが精一杯。でも2つの魔法を使えるヴィヴィオならいつかきっと使えるよ。』
並行世界のなのはが教えてくれた。
『動く先を読んで回り込むのも1つの方法ですね』
『同時に違う魔法を使いたいならヴィヴィオだけがどんなに頑張っても難しいと思うな。』
シャッハとユーノがヒントをくれて、何度も何度もRHdと一緒にイメージトレーニングして作ってきた。
いつかきっとは今じゃなくてもかまわない。
だから…今はこれが私の全力
「星よぉぉおおっ!!」
ヴィヴィオが叫んだのと同時に両手からスターライトブレイカーと見間違わんばかりの砲撃魔法が放たれ、周りにあった魔法球が追随する。
撃ちだした直後ストライクスターズの反動を抑えきれず膝をつく。しかしすぐに上空を見る。
目標へと迫る光の行方を
「ァアアアアアッ!」
だがオリヴィエはその拘束魔法を無理矢理壊し、ストライクスターズを魔力を集めた剣を作り居合いの様に切り裂いてしまった。
(…やっぱり…凄いよ…お姫様は…)
「ヴィヴィオには驚かされました…」
「…ハァッハァッ…でもっ、もう今日は…」
勝負はついた。
魔力も戦意が無くなって騎士甲冑がバリアジャケットへ替わり、そのまま私服に戻る。
1人で立てないほどの疲れきっている。
ヴィヴィオの完敗。差し出された手を取ってふらつきながら立ち上がった。
「…私とは違うのですね。姿を追えていなかった時点で勝負あったと思っていましたが…」
「私は高町ヴィヴィオだから。もう魔法使う元気もなくて…暫く練習もお休みしないと駄目だけど」
「それに…私より…あの子の方がオリヴィエさんにずっと近いよ」
隊舎からなのは達がこっちに走ってくる。その奥に一際目を輝かせた小さな少女も…
肩を貸して貰いなのは達の方へと歩き出す。その時
「ヴィヴィオ、あなたは私に1撃以上のものを与えました。約束通りヴィヴィオの願いを聞き入れましょう。願いはありませんか? 私がここで出来る事には限りがありますが…」
ヴィヴィオは考えていた事を言おうか迷う。そして暫く考えた後で言葉にした。
「私が判るまで…ここに居て貰えませんか?」
彼女は元の時間に戻れば戦争で死んでしまう。でも彼女が帰らなければこの時間が変わってしまう。その迷いに納得出来る答えは出ていない。
せめてそれまでの間だけ…
「…ええ、その願い聞き入れましょう」
オリヴィエは頷き答えた。
「なのはちゃんもそうだけどヴィヴィオも無茶するんだから、全くもう…子供は親の背中を見て育つって言うけれど本当ね。」
「シャマルさん、私のせいなんですか?」
「…言葉にしないとダメ?」
「そうみたいですね…」
「…いえ、十分です。」
模擬戦後、ヴィヴィオはなのはに背負われフェイトに付き添われ医療班へと連れて来られた。
突然来た3人にシャマルは驚きの声をあげたが、話を聞いた後その声は呆れ声に変わっていた。
「怪我は大したことないけれど、リンカーコアは酷く消耗しているし反動で疲労も…。診断書書いておくから最低1週間、管理局は勿論学院でも魔法は使っちゃダメ。ママみたいに怪我する前にちゃんと休んで治しましょうね。」
「は~い」
「凄く耳が痛いんですけれど…」
「自覚はあるようですよ。」
「定期的に診た方がいいのに全然来てくれないのよ。フェイトちゃんからも何か言って」
「私も言ってるんです。でも言う事聞いてくれなくて」
ヴィヴィオはそんな3人のやりとりを見ていた。
「ヴィヴィオ、今日はご機嫌ね。模擬戦で勝ったの?」
「いいえ、負けちゃいました。もうコテンパンに…でも…」
「でも?」
『ヴィヴィオよく頑張ったね。凄く格好良かったよ』
なのはに背負われてる間、彼女が言ってくれた言葉
過去や異世界、移りゆく時間の中で会ったなのはに褒められた事はあった。
でも、本当のママである今目の前に居るなのはに褒めて貰えたのは何よりも嬉しい事だったのだから。
「何でもないですよ~♪」
同じ頃模擬戦を行った隊舎の一室では、オリヴィエがシグナムからティーカップを受け取り1口飲み
「フゥ…」
と息をつく。
『王女から見てヴィヴィオはどうでした?』
モニタ越しにその様子を見てはやてが声をかけた。
はやても模擬戦を直に見に行きたかったのだが、運悪く会議と重なってしまいヴィータから送られた記録映像を見るしかなかった。
「…私が言うのも変ですが、とても優秀な王…ここでは騎士ですね。私のところでもあの年でここまで出来る者は何人いるか…」
元々ヴィヴィオとの模擬戦は彼女の能力を測る為のもの。シグナムから前回の模擬戦の様子を聞いてはやても判っていた。
もし彼女の能力が低く【騎士】と名乗れぬ程度の力量であれば、彼女はヴィヴィオに魔法を教えるつもりだろうと言う事を、その為の腕試しをしたいのだろうと言う事も。
「先日はアリシア達を側に置いたが為に躊躇いを持たせてしまった様です。今日の彼女が本当の力でしょう。」
授業では周りの目が気になり、研究施設でもアリシアとチェントが間近に居た事で躊躇わせ、それが魔法にも近接戦にも出てしまって評価すら出来なかった。しかしさっきの模擬戦は十分な内容だった。
先の戦いから得た情報・経験を元に戦略を作り実践する。聖王の鎧だからと思い込まず常に考えて動く。
魔力シールドを強力な砲撃魔法で壊してしまえばシールド再生までの時間がかかる。そこに更に強力な砲撃魔法を打ち込めばと考えた。
集束砲の直撃を受けていたら倒れはしないが、相当の魔力ダメージを受けていた。その上で更なる砲撃を受けていれば…膝を屈していたのはオリヴィエの方だっただろう。
しかしその2つの魔法は気づかせてくれた。
「彼女は『高町ヴィヴィオ』であって『ベルカ聖王のヴィヴィオ』ではないのですね…」
近接戦に優れたベルカにおいて中長距離で大威力魔法を使える者は少ない。オリヴィエ自身もそうだから。でもヴィヴィオは違う。
それが彼女は聖王ではなくあくまで高町ヴィヴィオだという意思の顕れ。
『そうですね。ここでもそうですよ。私達も彼女と同じ年頃は優秀なベルカの騎士とか魔導師と言われてましたけど、ヴィヴィオは私達を一気に飛び越える位伸びてます。』
ヴィヴィオを褒めると言うことはオリジナルの自身を褒めているのだから、自画自賛になってしまう。それに気づいて頬を赤め話を変える。
「彼女達はまだ伸びます。心優しき夜天の主と騎士達、彼女を守り愛する家族や友人に囲まれていれば…きっと私よりも…」
オリヴィエに褒められて頬を少し赤めるシグナムとヴィータ。しかしはやては表情を変えずに
『…そうかも知れませんね。こちらに来た【目的】は終わられたようですし、これからどうするんです?』
「…約束もありますから暫くは…まずはもう1人の私と仲良くなりたいですね」
一瞬オリヴィエが後ろを向く。そこに居たのはアリシアと一緒にお菓子を食べているチェントの姿。
この時間に来てから暫く経つ。彼女とは1度仲良くなった。しかし今は逃げていると言った方が良い位。ヴィヴィオとの模擬戦で相当怖い印象を持たれたらしい、オリヴィエの姿を見ただけで姉か母の影に隠れてしまう。
今も振り向いたのに気づいて、慌てて椅子から降りアリシアの腰に抱きついた。
はやてからもその様子が見えたらしく。
『クスッ、応援してます。シグナム、ヴィータ、なのはちゃん達帰ってきたらみんな連れてまっすぐ帰ってきてな。久しぶりに腕振るうよ。ティアナもこの後用事無ければ来て。アリシア、お母さん、プレシアさんに聞いて貰える?『久しぶりに食事しながらお話しませんか?』って、勿論アリシアとチェントも一緒にな。」
「承知しました」
「はやての手作り!!」
「私も…ありがとうございます。」
「はい、ママに聞いてみます」
「王女、よろしければ一緒にどうです? 応援ついでに初戦の舞台位は用意しますよ」
「是非」
そう答えはやてに会釈した。
~コメント~
もしオリヴィエがヴィヴィオの時間にやってきたら?
ヴィヴィオがオリヴィエと違う所。それは相棒のRHdとなのは、フェイト、はやて、プレシア、アリシア、チェント、ユーノ達、書ききれない位の名前の家族、友達、ヴィヴィオを見守ってくれている多くの人がいるというところでしょう。
書き終えた後でふと1期やAsのなのはと似ているかも
「…SS。ヴィヴィオがあの騎士甲冑着てる時の推定ランク。維持出来る時間が限られちゃってたり魔法も偏ってるから魔導師ランクの認定はAランク。でも得意な魔法だけならね。」
「シグナムから聞いた話じゃオリヴィエはそれ以上…やっぱり無傷」
土煙から現れたオリヴィエ。鎧も服も傷1つない。
「ダブルエス…ヴィヴィオが…」
呟きながら再びモニタに視線を戻すティアナだった。
「効いてない。鎧に防がれた。」
彼女は1歩も動いていない。でもそれはいい、これは離れる時間を稼ぐ為の魔法。
土煙が消える前に今度はインパクトキャノンを放った後、そのまま飛んで一気に距離を詰める。オリヴィエは前と同じ様にカウンターを狙う。
「何度も同じ手を、ッ!?」
しかしヴィヴィオの拳を見て鎧を作り出す。
「そこだぁあああああっ!!」
インパクトキャノンが聖王の鎧にぶつかる瞬間、追いついたヴィヴィオも全力で殴る。
【ガキッツ!】
鎧が砕ける音がした後、虹色の光が飛び散りオリヴィエがヴィヴィオの拳を受け止めていた。
「気づいたのですね、鎧の本質に」
「うん♪」
ヴィヴィオがチェントとの戦いで培った経験。【聖王同士の戦いでは聖王の鎧は生まれない】それは確かに真を得ていた。
でも彼女は鎧を作っていた。その様子を思い出して疑問を持った。
意識しなくても生まれ主を守るのが聖王の鎧なのに彼女は意識して作っていた。
そこから彼女は聖王の鎧と言っているけど強化された魔力シールドではないかと。
そしてヴィヴィオの拳をオリヴィエが最初に受けなかったのにも理由があった。魔力に電気属性を追加し帯電化させていたのだ。帯電化した拳を直接受けるわけにはいかない。インパクトキャノンを反射しても相殺しきれない。気づいた瞬間に取れる方法は鎧を出す方法だけ。
ヴィヴィオはそこまで読んであえて彼女に聖王の鎧を出させ壊したのだ。
ニコッと一瞬笑った後、零距離で再びインパクトキャノンを撃ち込んで一気に離れる。
鎧の持つ特性【物理・魔法の無効化】が無いなら只の強力なシールド。削ってしまえばいい。
煙が消えた後オリヴィエの姿が現れる。彼女の両腕を守っていた鎧が壊れて落ちていた。壊されるとすぐには作れないらしい。
「これが本当のあなた達の力なのですね。ヴィヴィオ、私も本気で相手してよろしいでしょうか?」
「うん、頑張る。」
「頑張ってください。期待していますよ♪」
彼女がそう言って笑った直後、背後に寒気がした。慌てて飛び上がる。振り返ってさっき居た場所を見る。
そこに居たのはオリヴィエ、彼女は既に手刀を放っていた。。
(ぜ…全然見えなかった…)
動かなければ無防備な背中へのダメージ…
(これが…本気の…オリヴィエさん…)
「勝負あったな…」
「そうだね…後はどれだけ持つか…だね」
「ああ…盾を壊すところ迄は良い線行ってたんだけどな…全然追いついてない」
モニタで見ていたシグナム、なのは、ヴィータは口々に頷く。
オリヴィエの動きが変わった後からヴィヴィオは翻弄されていた。
砲撃は避けられ、シューターは追いつけない。窮地に陥る度に離れようとして無駄にシューターを放ちまくっている。。
ヴィヴィオもなのは達同じく打つ手が無いのに気づいていた。
(もっと強い力を…オリヴィエさんより速く動ければ)
その方法は1つだけある。ゆりかごでなのはと戦った時、チェントと戦った時みたいに怒りで心を染める方法。でもあれは私じゃない。
【自分より強い相手にどうやって勝てばいい?】
機動6課に居た時「隊長・副隊長で1番強いのは誰か?」という話が出たのを思い出す。
結論は…誰が強いかじゃなくて相手より有利な状況へ持ち込む事。
自分より速い相手、追いかけられない相手をどうやって捕まえればいい?
オリヴィエより有利な所はどこ?
それは…
「ねぇなのは、覚えてる? 私と全力で戦った時の事…」
監視室で2人の模擬戦を見ていたフェイトが聞く。
「戦ったって…模擬戦じゃなくて?」
「ううん、海鳴市で。勝った方が集めたジュエルシードを貰うって…」
ジュエルシード事件で何度目かの勝負
「覚えてるよ。」
モニタから視線を離さずになのはが続けて話す。
「あの時なのははまだ魔法使いになったばかりで、魔法の使い方も、戦い方も、スピードも全部私の方が上だった。」
「……うん…」
「今の2人、あの時の私達に似てない? 誰が見ても魔法の使い方も・経験もスピードもオリヴィエの方が数段上。でも…ヴィヴィオは諦めてない。何か狙ってる」
フェイトが言った時、ヴィヴィオが距離を取る為か魔法弾を撒き散らす様に作り出す。明らかに無駄な魔法を使っている。
その魔法弾をオリヴィエは難なく避け、再度作った鎧で弾く。
それでもヴィヴィオは作り続けオリヴィエの周りが埋め尽くされた時全部を同時に爆発させた。
訓練場一帯に煙が巻き起こり視界が消え魔力濃度が一気に跳ね上がる。
「…まさか…この量で使うつもりじゃ…」
「私との模擬戦と状況は似ているな。相手の視界を奪い周囲の魔力濃度を一気に上昇させ、再収集する…」
シグナムが言うのと同時に魔力濃度が急速に下がり始めた。
なのはの中で予想が確信に変わる。
「アリシアちゃん、ヴィヴィオはアレを何回使ったか知ってる?」
「えっ、えっと初めて見たのはゆりかごで、海鳴で2回、異世界で1回…」
「私との模擬戦でも1回」
「5回以上…ヴィヴィオダメェエエエエエエッ! 模擬戦止めてっ! ヴィータちゃんはやくっ!」
さっきまで静かに見ていたなのはがいきなり慌てだしたのを見て全員が驚いた。
「なんだ!? 何かあるのか?」
「お願い早く止めてっ。アレはブレイカーは発射直後の反動が激しいの。こんな短期間に何度も使ってたら今までの疲労も体に残ってる。こんな魔力量で使ったら…いくらデバイスと一緒でもっ。墜ちる前に早くっ!!」
なのはに墜ちると言われてヴィータはハッと気づいて大声で叫ぶ。なのはが墜ちる…雪を赤く染めた光景がヴィータの脳裏に蘇る。
「も、模擬戦中止っ 2人とも止めろっ!!」
しかし…
「遅かった様だな…」
土煙が晴れていく中で一際輝く光が見えたのだ。
近接戦では不利になる相手との勝負。
ヴィヴィオが狙っているのは回避不能、広域発射のスターライトブレイカー…
訓練場は只でさえ濃度の高い場所。なのにわざと魔力を撒いて上げていた。いくら集束砲でも集めた分を一気に使えば術者とデバイスも只では済まない。
(ヴィヴィオ…無茶はしないで…)
(あと、もう少しだけ…)
距離を取ってオリヴィエが魔法弾を相手にしている間に集束を始める。魔力を全部持って行かれる訳にはいかない。
「これが通らなかったら私達の負けだね…」
【Yes,But…】
「でも何もしないで負けるよりやって勝ちにいこう」
【Let's win together. (一緒に勝ちましょう)】
デバイスに語りかけもう1つの魔法をセット、起動させる。
「いっけぇええ、スターライトッブレイカーっ!」
叫ぶのと同時に撃ち出された魔法はオリヴィエめがけて伸びる。
「あれがヴィヴィオのブレイカー…」
ティアナがモニタを見つめながら呟く。
なのはと自身以外のブレイカーを目の前の少女が放ったのだ。
「違う」
モニタで見つめるなのはとフェイト、シグナムとヴィータはブレイカーの種類が違うのに気づく。
「前に見た物より威力が弱いし拡散もしていない。あれはただ魔力を集めただけの集束砲撃だ」
オリヴィエは残り少ない魔力を使った砲撃魔法、最後の力押しだと笑みを浮かべ鎧を広げ受け止めようと広げる。受けきってしまえば精神的に優位に立てる。
だがブレイカーが鎧に触れひび割れるかの様に亀裂が入った瞬間笑みが消えた。直後に鎧が砕け散り光の奔流を浴びそうになってジャンプして避けた。
だがそこには既にある魔法が仕掛けられていた。
飛び出した直後彼女の四肢が虹色のブロックに固定される。
ヴィヴィオが先に仕掛けた遅延拘束魔法。
それを見たなのははその時になってやっと気づいた。フェイトが感じていた物の正体が何なのかを。
ジュエルシード事件でフェイトと戦った時、彼女が言った通りほぼ全てにおいて彼女の方が上だった。だからあえて魔法を受け油断した際に拘束し最大威力の魔法を放ったのだ。
ディバインバスターで彼女の残り魔力を削り、スターライトブレイカーで勝負をつける。
なのははその方法で辛勝したが、ヴィヴィオは切り札になる筈のブレイカーを既に撃っている。
「……まさか…連射…」
さっきのブレイカーが拡散せず結界破壊属性付加しただけの砲撃魔法だった理由…わざと威力を抑えていただけで、集めた魔力とコアからの魔力を使おうとしているなら…
「連射だめーっ!!」
オリヴィエの魔力シールドはスターライトブレイカーで壊した。さっきのですぐに作れないのは判ってる。追いつけないから拘束魔法で捕まえた。
あとは今セットしている魔法を起動するだけ…外すと勝機はない。
でももう引くつもりはない。
これが私…私達のっ
「まだちゃんと使えないけど…これが私達の全力全開っ」
【Let's both win.(一緒に勝ちましょう)】
「星よぉぉおおっ!!」
なのは達は目の前で何が起こったのかすぐに理解できなかった。
上空に居たはずのヴィヴィオがいつの間にか地面に立っていて、土煙がかき消され、彼女を中心に大きな魔法球が6つが輝き、両手の平をオリヴィエに向けていた。そしてヴィヴィオの目の前には凝縮され一際強く輝く光があった。
「星よぉぉおおっ!!」
知っている魔法
それはオリジナルの魔法で誰にも教えていない。
相手が速くて追いかけられないなら先回りして逃げられないようにすればいい。
魔法弾と砲撃魔法の並列起動。1人で出来なくてもパートナーと…相棒と一緒に作れば良い。
レイジングハートと一緒だから使える魔法。
「…ストライク…スターズ…」
それが今目の前に、新たな使い手が…生まれる。
威力はオリジナルより酷く劣る。でも今はそれでいい。
集めた魔力は全部こっちに持ってきた。
『ヴィヴィオにこの魔法教えてあげる』
『砲撃魔法と魔法弾の威力を相乗させて組み合わせた複合魔法。バスターを一点集中で防御出来ても同時にシューターまで防ぐのは大変。』
『バラバラに動くと威力も落ちちゃうから砲撃と魔法弾を同時に制御しなきゃいけない。制御力が凄く求められる。本当はもっと強い魔法なんだけど、ここで使ったら怒られちゃうから』
『ママはベルカ式魔法使えないから見せてあげるのが精一杯。でも2つの魔法を使えるヴィヴィオならいつかきっと使えるよ。』
並行世界のなのはが教えてくれた。
『動く先を読んで回り込むのも1つの方法ですね』
『同時に違う魔法を使いたいならヴィヴィオだけがどんなに頑張っても難しいと思うな。』
シャッハとユーノがヒントをくれて、何度も何度もRHdと一緒にイメージトレーニングして作ってきた。
いつかきっとは今じゃなくてもかまわない。
だから…今はこれが私の全力
「星よぉぉおおっ!!」
ヴィヴィオが叫んだのと同時に両手からスターライトブレイカーと見間違わんばかりの砲撃魔法が放たれ、周りにあった魔法球が追随する。
撃ちだした直後ストライクスターズの反動を抑えきれず膝をつく。しかしすぐに上空を見る。
目標へと迫る光の行方を
「ァアアアアアッ!」
だがオリヴィエはその拘束魔法を無理矢理壊し、ストライクスターズを魔力を集めた剣を作り居合いの様に切り裂いてしまった。
(…やっぱり…凄いよ…お姫様は…)
「ヴィヴィオには驚かされました…」
「…ハァッハァッ…でもっ、もう今日は…」
勝負はついた。
魔力も戦意が無くなって騎士甲冑がバリアジャケットへ替わり、そのまま私服に戻る。
1人で立てないほどの疲れきっている。
ヴィヴィオの完敗。差し出された手を取ってふらつきながら立ち上がった。
「…私とは違うのですね。姿を追えていなかった時点で勝負あったと思っていましたが…」
「私は高町ヴィヴィオだから。もう魔法使う元気もなくて…暫く練習もお休みしないと駄目だけど」
「それに…私より…あの子の方がオリヴィエさんにずっと近いよ」
隊舎からなのは達がこっちに走ってくる。その奥に一際目を輝かせた小さな少女も…
肩を貸して貰いなのは達の方へと歩き出す。その時
「ヴィヴィオ、あなたは私に1撃以上のものを与えました。約束通りヴィヴィオの願いを聞き入れましょう。願いはありませんか? 私がここで出来る事には限りがありますが…」
ヴィヴィオは考えていた事を言おうか迷う。そして暫く考えた後で言葉にした。
「私が判るまで…ここに居て貰えませんか?」
彼女は元の時間に戻れば戦争で死んでしまう。でも彼女が帰らなければこの時間が変わってしまう。その迷いに納得出来る答えは出ていない。
せめてそれまでの間だけ…
「…ええ、その願い聞き入れましょう」
オリヴィエは頷き答えた。
「なのはちゃんもそうだけどヴィヴィオも無茶するんだから、全くもう…子供は親の背中を見て育つって言うけれど本当ね。」
「シャマルさん、私のせいなんですか?」
「…言葉にしないとダメ?」
「そうみたいですね…」
「…いえ、十分です。」
模擬戦後、ヴィヴィオはなのはに背負われフェイトに付き添われ医療班へと連れて来られた。
突然来た3人にシャマルは驚きの声をあげたが、話を聞いた後その声は呆れ声に変わっていた。
「怪我は大したことないけれど、リンカーコアは酷く消耗しているし反動で疲労も…。診断書書いておくから最低1週間、管理局は勿論学院でも魔法は使っちゃダメ。ママみたいに怪我する前にちゃんと休んで治しましょうね。」
「は~い」
「凄く耳が痛いんですけれど…」
「自覚はあるようですよ。」
「定期的に診た方がいいのに全然来てくれないのよ。フェイトちゃんからも何か言って」
「私も言ってるんです。でも言う事聞いてくれなくて」
ヴィヴィオはそんな3人のやりとりを見ていた。
「ヴィヴィオ、今日はご機嫌ね。模擬戦で勝ったの?」
「いいえ、負けちゃいました。もうコテンパンに…でも…」
「でも?」
『ヴィヴィオよく頑張ったね。凄く格好良かったよ』
なのはに背負われてる間、彼女が言ってくれた言葉
過去や異世界、移りゆく時間の中で会ったなのはに褒められた事はあった。
でも、本当のママである今目の前に居るなのはに褒めて貰えたのは何よりも嬉しい事だったのだから。
「何でもないですよ~♪」
同じ頃模擬戦を行った隊舎の一室では、オリヴィエがシグナムからティーカップを受け取り1口飲み
「フゥ…」
と息をつく。
『王女から見てヴィヴィオはどうでした?』
モニタ越しにその様子を見てはやてが声をかけた。
はやても模擬戦を直に見に行きたかったのだが、運悪く会議と重なってしまいヴィータから送られた記録映像を見るしかなかった。
「…私が言うのも変ですが、とても優秀な王…ここでは騎士ですね。私のところでもあの年でここまで出来る者は何人いるか…」
元々ヴィヴィオとの模擬戦は彼女の能力を測る為のもの。シグナムから前回の模擬戦の様子を聞いてはやても判っていた。
もし彼女の能力が低く【騎士】と名乗れぬ程度の力量であれば、彼女はヴィヴィオに魔法を教えるつもりだろうと言う事を、その為の腕試しをしたいのだろうと言う事も。
「先日はアリシア達を側に置いたが為に躊躇いを持たせてしまった様です。今日の彼女が本当の力でしょう。」
授業では周りの目が気になり、研究施設でもアリシアとチェントが間近に居た事で躊躇わせ、それが魔法にも近接戦にも出てしまって評価すら出来なかった。しかしさっきの模擬戦は十分な内容だった。
先の戦いから得た情報・経験を元に戦略を作り実践する。聖王の鎧だからと思い込まず常に考えて動く。
魔力シールドを強力な砲撃魔法で壊してしまえばシールド再生までの時間がかかる。そこに更に強力な砲撃魔法を打ち込めばと考えた。
集束砲の直撃を受けていたら倒れはしないが、相当の魔力ダメージを受けていた。その上で更なる砲撃を受けていれば…膝を屈していたのはオリヴィエの方だっただろう。
しかしその2つの魔法は気づかせてくれた。
「彼女は『高町ヴィヴィオ』であって『ベルカ聖王のヴィヴィオ』ではないのですね…」
近接戦に優れたベルカにおいて中長距離で大威力魔法を使える者は少ない。オリヴィエ自身もそうだから。でもヴィヴィオは違う。
それが彼女は聖王ではなくあくまで高町ヴィヴィオだという意思の顕れ。
『そうですね。ここでもそうですよ。私達も彼女と同じ年頃は優秀なベルカの騎士とか魔導師と言われてましたけど、ヴィヴィオは私達を一気に飛び越える位伸びてます。』
ヴィヴィオを褒めると言うことはオリジナルの自身を褒めているのだから、自画自賛になってしまう。それに気づいて頬を赤め話を変える。
「彼女達はまだ伸びます。心優しき夜天の主と騎士達、彼女を守り愛する家族や友人に囲まれていれば…きっと私よりも…」
オリヴィエに褒められて頬を少し赤めるシグナムとヴィータ。しかしはやては表情を変えずに
『…そうかも知れませんね。こちらに来た【目的】は終わられたようですし、これからどうするんです?』
「…約束もありますから暫くは…まずはもう1人の私と仲良くなりたいですね」
一瞬オリヴィエが後ろを向く。そこに居たのはアリシアと一緒にお菓子を食べているチェントの姿。
この時間に来てから暫く経つ。彼女とは1度仲良くなった。しかし今は逃げていると言った方が良い位。ヴィヴィオとの模擬戦で相当怖い印象を持たれたらしい、オリヴィエの姿を見ただけで姉か母の影に隠れてしまう。
今も振り向いたのに気づいて、慌てて椅子から降りアリシアの腰に抱きついた。
はやてからもその様子が見えたらしく。
『クスッ、応援してます。シグナム、ヴィータ、なのはちゃん達帰ってきたらみんな連れてまっすぐ帰ってきてな。久しぶりに腕振るうよ。ティアナもこの後用事無ければ来て。アリシア、お母さん、プレシアさんに聞いて貰える?『久しぶりに食事しながらお話しませんか?』って、勿論アリシアとチェントも一緒にな。」
「承知しました」
「はやての手作り!!」
「私も…ありがとうございます。」
「はい、ママに聞いてみます」
「王女、よろしければ一緒にどうです? 応援ついでに初戦の舞台位は用意しますよ」
「是非」
そう答えはやてに会釈した。
~コメント~
もしオリヴィエがヴィヴィオの時間にやってきたら?
ヴィヴィオがオリヴィエと違う所。それは相棒のRHdとなのは、フェイト、はやて、プレシア、アリシア、チェント、ユーノ達、書ききれない位の名前の家族、友達、ヴィヴィオを見守ってくれている多くの人がいるというところでしょう。
書き終えた後でふと1期やAsのなのはと似ているかも
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