第02話「原因はヴィヴィオ?」

「魔力色が変わるというのは面白いですね、魔力コアというものは」
「出来たらいいなって思ってるだけなんです。でも、プレシアさんが言うには試した事は無いけれど属性が無いから好きな色に変えられるんじゃないかって。」

 その夜ヴィヴィオはオリヴィエに学院であった事を話していた。
 学院でヴィヴィオが下級生に教えた話を彼女は嬉しそうに聞いている。元々彼女が来なければこういう事にもならなかったと最初は恨みもしたが今はもう無い。
 初めて魔法が使えた時の喜び、あの感動を得られる手助けになるならという思いが強くなっている。

 
 
「私の世界にも大きな力を秘めた媒体はありました。制限が壊れたり効かずに暴発た物も多数ありました。媒体の中に制限を加えるとは…プレシアは本当に優秀な研究者ですね。」

 オリヴィエの居た時間、そこは今より魔法文化が進んでいた世界。
 そんな所から来ていてもプレシアが優秀だと言うのだから凄い技術なのだろう。

「本当に変わった時間ですね…戦いの為では無く平和利用の為に作られる魔法技術…」

 でもそんな技術の殆どは戦乱を起こし、人を傷つけ、悲しませる為に使われている。
 窓から外を見る彼女の呟きと背中がそれを物語っている。

「だ…こそ…ここは…」
「オリヴィエさん?」
「いえ何でもありません。そろそろなのはさん達が帰ってくる頃ですね。」

 言われて時計を見る。そろそろなのはが帰ってくる頃だ。

「そうですね。私お風呂用意してきます。」

 そう言ってヴィヴィオが立った時

【PiPiPi…】

 RHdからコール音が鳴った。相手はアリシアだ。

「は~い、ヴィヴィオです。」
『…ィオ、助け…っママがっ、わたしも…えちゃう…』
「!? どうしたの!! アリシアっ!! 」

 だがヴィヴィオが話す間もなく通信は切れてしまった。突然の事で何が起きたのかわからない。

「ヴィヴィオ行きましょう。背後に研究所の壁が見えました。彼女は今そこに居る様です。」
「でもここからじゃ…そうか空間転移」

 部屋に駆け戻り机の上に置いていた刻の魔導書を持つ。オリヴィエが肩に手を置いた。一緒に行くつもりだ。

「お願い、私達をアリシアの所に連れてって」

 プレシアの研究施設をイメージして魔導書へ送る。そして魔導書から生まれた光の玉に向かって飛び込んだ。

「ヴィヴィオただいま~、遅くなってごめんね~」

 数分後、帰って来たなのはの声に答える者は誰も居なかった。



「ママ、ママおきて~、ねえさま~」
「アリシアっ!、プレシアさん!?」

 光の中から飛び出た直後、目に入ったのは倒れたアリシアとプレシアの姿。そして2人の間で声をかけるチェントの姿だった。更に驚かせたのは倒れた2人の姿だった。
 更に驚かせたのは2人の状態。床が透けて見えている。

「透けてる…どうして…アリシアっ、プレシアさん!!」

 どうすればいいのか狼狽えているとオリヴィエが言う。

「2人を鎧で包んで、急いで」
「は、はいっ」

 慌てて2人の間に入って聖王の鎧を意識する。するとヴィヴィオを中心に虹色の膜が生まれた。

「もっと広げて、2人を全て包み込む様に」
「はい」

 集中して半径2m位の光の膜を作り出す。2人がその中に入った直後、透けていた身体は元に戻り

「…ん…んんっ」
「…ヴィヴィオ…来てくれたのね…」

 プレシアとアリシアが目を覚ました。

「アリシア、プレシアさん何があったんですか?」

 安堵して集中が鈍った瞬間

「鎧を解いてはダメです。彼女達はその中でしか居られません」
「!?」

 慌てて意識を集中させる。



「何があったんですか?」

 そのままでの鎧維持は流石に難しく、バリアジャケット姿になったヴィヴィオが2人に聞く。

「わかんない…凄く身体が重くなってママの所に来たらママが倒れていて…」
「私も同じよ。モニタを見ていたら身体が重くなって意識が遠のく感じがして…あとは覚えてないわ。この中なら特に変わった所はないわね。」

 2人とも何が起きたのかがさっぱり判らないらしい。

「………」
「この中で居ると大丈夫…アリシア、ペンダントを見せて」
「ん? はい。」

 プレシアがペンダントに触れてモニタを出して何度か触る。

「魔力が空になってるわね。時間の影響…私とアリシアは動けないから…チェント、そこの箱をママの所に持ってきて頂戴」

 指さした方にある小箱を見て

「はい」
「ありがとう。この指輪を持っていれば…」

 そう言って鎧の外へ足を踏み出す。慌てるヴィヴィオ。

「プレシアさんっまた倒れ…」
「予想通りね。フィールドが起動したわ」

 鎧の外に出た彼女の手元で指輪が輝いていた。


 
「私とアリシアだけ…過去の私達の身に何かあった…とは考えにくいわね。でも…この指輪が無いと消えてしまう」
「プレシアさん、その指輪は?」
「この子、チェントの事件でに大きく時間が変わったでしょう。あの時チンク達に渡していたブレスレットと同じ物よ。防衛戦でブレスレットが壊れたら彼女達は消えてしまうから予備で持っている様にって。でもどうして今私達だけがこんな事になったのか…判らないわ。」
「そうですね。じゃあ私が過去に行って…て何時に行けばいいの?」
「………」
「………」

 プレシアとアリシアが消える原因を考えると時間はジュエルシード事件ではなく彼女達が転移してきた後になる。でも範囲が広すぎて海鳴に行けばいいのか? それともミッドに来た時に行けばいいのか? 
 何もわからない。
 しかし

「ヴィヴィオ…何処にどの時間に行けばいいかは魔導書が示してくれます。」

 黙って会話を聞いていたオリヴィエが口を開いた。

「彼女達は最初に影響を受けただけです。ヴィヴィオ、これまで時空移動を何度行いましたか?」
「えっ? え~っと…ジュエルシード事件と闇の書事件、チェントの時は3回、別の世界にも2回…でも1回は私が行った訳じゃないから…」
「チェントの時連続で移動したでしょ」
「海鳴市にも行ったわね」
「行かなければそのまま進んでいた時間。そこに時空転移したヴィヴィオが行けば新しい時間を生み出してしまいます。今ここに居る時間以外に同じ様な時間が並ぶように進んでいるのはわかりますか?」

 新しい時間…ユーノが教えてくれた時間の考え方。

「木の枝の様に分かれた時間…ですか?」
「木の枝、良い例えです。木の枝の様に伸びた時間があったとして、もし枝同士がぶつかってしまったらどうなると思いますか? 互いに避けられない状態で」
「折れちゃう…んですか?」
「折れません。しかし大きく曲がってしまいます。本来あるべき、進むべき未来とは違った未来へ。2人は元々この時間に居ない存在です。不安定な彼女達が真っ先に影響を受けたのでしょう」

 『最初に』ということは…声が震える。

「…まさか、最初って事は…」
「ええ、近い未来この世界…この時間に居る全てのものが2人の様になるでしょう」
「!?!?」

 何度も気軽に移動してきたがまさかそんな危ない魔法だったとは思ってもみなかった。
 過去が変われば現在や未来も変わる。その恐怖だけだと思っていたのに。

「私の…わたしのせいで…みんな消えちゃう…」

 気づいて足が震える。

「ヴィヴィオ…」
「落ち込む時間はありません。別の世界と衝突するならその原因を調べ食い止めるのもヴィヴィオ、あなたの役目ですよ。」
「そんなことが…」
  
 行った時間で幾つもの世界が出来てその世界同士がぶつかるなんて…
 何をすればいいのか判らずヴィヴィオは告げられた言葉を飲み込めなくて焦りだけが生まれていた。


~コメント~
 ジュエルシード事件に始まったヴィヴィオの時間移動魔法、時空転移。ヴィヴィオは今まで事件を解決する側でした。でも今回の原因はヴィヴィオが今まで行ってきた時空転移です。
 

 

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