15話 悲しき召喚師

「「シャマル先生っ!」」

 エリオとティアナが医務室に駆け込むとそこにはシャマルがキャロの周りに色々な器具を用意していた。どうやら医療器具系みたいだ

「キャロは?」

 エリオがキャロの顔を見ると、出て行った時と変わらず健やかな寝顔をしている。寝息も規則正しく聞こえた。
 隣にきたティアナもキャロの顔を見て安堵した

「シャマル先生、ビックリさせないで下さいよ。ただ眠っているだけじゃないですか」

しかしシャマルは無言で機器を操作している。

「あの?・・シャマル先生?」
「ちょっとだけそっちで待ってて、すぐに終わるから」
「はい・・」
「・・・わかりました」

 エリオとティアナはお互いに顔を見合わせ隅に置かれた椅子に座って待つことにした。



(ねぇ聞こえてるんでしょ)
(・・・・・・)
(何もしないで・・このままでいいの?)
(・・・・・・・・)
(もうっ、何かこたえてよ!)
(・・・・・あなたに・・なんかわかんないよ・・・)
(わかるよ、だって私もあなたと同じだから・・・聞こえないふりして、そのまま蹲ってるだけじゃ)
(・・・・そんなのあなたに関係ないじゃない。)


「ごめんね、待たせちゃって」

 シャマルがエリオとティアナの所に戻ってきた。エリオはたまらずシャマルに聞く

「シャマル先生、キャロは?別に何とも無いように思えるんですが?」
「うん・・・私もそう思ってたの。それで、さっきリンカーコアの状態を調べさせて貰おうと思ってセットしてたら・・エリオ気づかない?キャロの事」

 いきなり問いかけを問いかけで返されたエリオはキャロの方を見る
今朝医務室を出る前と同じ様に寝息をたてて眠っている

「特に変わった様には今朝と同じように眠ってるだけの様に見えるんですが?」
「私も特に変わった様には・・・」

 隣のティアナも頷く。シャマルはポンと端末のキーを叩いてある画像を見せた。

「それじゃ・・・これは昨日エリオとキャロがここに運び込まれた直後なんだけど・・・」

 エリオは傷だらけで服の何カ所かは赤く滲んでいたが、キャロはそのまま寝かされていた。

「あれ?」
「何か?」

 ティアナが何かに気づいたようにキャロを見比べる。

「エリオ、今朝起きたときもキャロって寝てたって言ったよね?」
「はい、寝息をたてて熟睡しているみたいでした」
「その時のキャロって今みたいな感じで寝てた?」

 エリオは思い出しながら

「そうです。今みたいな感じで・・・」
「!じゃあ、やっぱり」

 シャマルは頷く。ティアナはどう言おうか迷いながら

「あのね、私達ってず~っと眠っている間同じ状態で寝る事は無いの、定期的に寝返りをうったり、少しは体を動かすものなのよ。」

 エリオも思い出す、確かに寮に忍び込まれていた時もいつの間にかエリオの腕を枕代わりに眠っていた。自分も眠っていたが、いきなり腕を枕代わりにされていれば起きていただろう。

「でも、さっき画像のキャロと今のキャロじゃ全然動いていないの。そうですよね?」

 頷くシャマル。

「薬を使ってる時とか極度に疲労した場合はこういう事もあるからって少し様子を見てたんだけど、さっきリンカーコアの状態を見ようとして、こっちの方が少し深刻。今ね詳しく調べてる最中だけど異常な波形を作ってるの」
「じゃあキャロは?どうなるんですか?」
「・・・・・」

 エリオは心配そうに問いかける。しかしシャマルも何も答えることはできなかった。


(関係あるよ・・・だって、私もあなただもん)
(・・・そんなの知らない。あなた私じゃないじゃない。だって私はここに居るもの)
(・・でも、あなたも一緒に見てきたでしょう?)
(・・・・うん、でもそれはあなたが体験してきたこと。私じゃない。)
(・・・それは・・・そうかもしれないけど。私もあなたが体験したことはわかんない・・だから一緒に・・・)
(そんなの出来ない!だってあなたは私じゃないんだよ。)
(・・・・わかってるよ。でも、わたしもあなたの様に暮らしたかった)



「これがそのリンカーコアの波形なん?」
「すごく、慌ただしく動いてるみたいだけど」
「それで、シャマルさん、シャーリー解析は?」

 その夜、なのは・フェイト・はやてはシャマルからの話を聞いて集まっていた。

「昼過ぎに気づいて調べてたんですけど、こんな症例聞いたことなくて・・・」
「波形に何かあるかと思って色々としてみたのですが・・・」

どうもシャマルにもシャーリーにもお手上げの状態らしい。

「本局に頼むって手もあるけど・・・ロストロギアの調査報告が出るまで待つしかないかな」
「そうだね・・・」
「うん、今はまだ大事にしないほうが良いと思う」

 フェイトはキャロが大変な状態なのに、見ているしかない事しかない自分に忸怩たる想いだった。

「わかりました、キャロは医務室で暫く看ることにします」
「うん、頼むなシャマル」

 部隊長室から出て行こうとするシャマルにフェイトが声をかける。振り返りフェイトをみる

「はやて、シャマルさん。今夜は私がキャロの側にいるよ」
「でも、フェイトちゃん捜査で疲れてるんじゃ?」
「それははやてちゃんもシャマルさんも一緒。私、キャロの保護者なのに何もできてない・・・せめて側にいさせて・・お願い」

 シャマルに駆け寄り頼むフェイト、シャマルは『はやてちゃ~ん』と困ったようにはやてを見る

「わかった、でも無理だけはせんといてな・・ただでさえフォワード陣人手がないんやから」
「何かあったらすぐに連絡してね」
「うん、ありがとう」

 フェイトははやてやシャマルの心遣いに感謝した。

Comments

Comment Form

Trackbacks