第06話 「望む未来」

 私達が海鳴にやってきて数日が経ちました。
 こっちに来てからプレシアさんとアリシアは体が重くなったり消えかけたりは起きてません。
 2人も口には出さないけどホッとしているみたいです。
 プレシアさんはここに居る間翠屋で働いてます。
 翠の文字が入ったエプロンを持参していたから桃子さんと士郎さんにどうして持っているのか聞かれて困ったらしいけど、それ以降は厨房で3人楽しそうです。
 私もここに居る間手伝うつもりでしたが年末程忙しくないのと…
「私の仕事を取らないでください」とシュテルに言われちゃいました・・・。


 
 ここ数日でフェイトが凄く変わりました。自然に笑うようになって私を含めてみんな驚いてます。時間は違ってもプレシアさんと会えたのが良かったのかな・・・

 RHdの端末を呼び出して日記を書く。
 なのはとフェイトは学校に行っている間、ヴィヴィオは町をブラブラと歩いていた。

「平和な時間なのに…本当に何か起きるのかな?」

 そんな事を考えていると…

「あーっ、私の外に出したなーっ! 後で覚えてろっ」
「へへっ、さっきおじーちゃんに教えて貰ったんだ。僕凄い♪ ってあ~っ!僕のも…」

 聞き覚えのある声が聞こえてくる。
 行ってみるとそこでは

「ヴィータさんと…レヴィ…」

 ボールをステッキで叩くスポーツらしい。

(なんだか似てる♪)

 彼女達の目の前で言えば怒られそうだと思いつつふと思う。
 闇の書の守護騎士とマテリアル、2人の様子を微笑ましく見ている大人達は彼女達が数百年と言う長い時を過ごしてきたとは思わないだろう。
 レヴィに言わせれば少し退屈な世界だけど、闇の中や戦乱より居心地はいいらしい。
 巻き込まれたら大変だと思いヴィヴィオは2人に見つからないようその場を後にした。



 こんな日が何日か続いて戻ったら何も無くてまたいつもの日々が戻ってくる。そういう時が来ればいいと思っていた。

 しかし、その願いは翌日打ち消されてしまった。

『ヴィヴィオ、シュテル知らない?』
『えっ? 今、翠屋でしょ』
『お母さんから連絡があったの。そっちに行ってないかって』

 美由希に料理を教わっている最中、なのはから念話が届いた。ほぼ同時に高町家の電話も鳴る。

「はい高町です。母さん…えっ シュテル? 帰ってきてないよ。うん…わかった」
「美由希さん?」
「ヴィヴィオ、シュテルがお店から居なくなっちゃったんだって…」
「私探してきます。美由希さんはここで待ってて、もしシュテルが帰ってきたらなのはに連絡してください。」
「わかった。」

 エプロンをテーブルに置いてキッチンから走って出て行く。

「シュテル…何も言わずに居なくなるなんて…変」

 商店街の方へと走っていくと途中で買い物袋が落ちていた。駆け寄ってみると大根やジャガイモの下にメモを見つける。

「これ…買い物メモ?」

 メモには買ってくる物と最後に【何か好きなお菓子1つ買っていいよ」という文字の横に似顔絵が描かれていた。

(この似顔絵…はやて…まさか…)

 急いではやてに念話を送る。

『はやて…はやて…聞こえる?』
『ヴィヴィオちゃん? 念話なんか使ってどうしたん?』
『ディアーチェ、居る?』
『今買い物行って貰ってるんよ。もうすぐ帰ってくると思うけど…』
(やっぱり…)

これを落としたのはディアーチェだと確信する。
シュテルとディアーチェが続けて居なくなった。

『帰ってきたら連絡するけど…急いでるん?』
『…今商店街の近くにいるんだけど、そこに野菜が入った袋が落ちてたんだ。中にはやてのメモも一緒に…それと翠屋からシュテルが消えたって…』
『ええっ!?』
『シグナムさん達に伝えて。シュテルとディアーチェを探してって』

 何かが起きている。もうそれは確信に変わっていた。

『う、うん。わかった。』

 念話を切った後、直ぐさまアリシアに通信する。

『ヴィヴィオ、どうしたの?』
「アリシア、レヴィ居る?」
『レヴィ? 一緒にテレビ見てるよ。今喉が渇いたってキッチンに、ちょっと待ってて』
(良かった…レヴィは居るみたい)

 全員が消えた訳ではないらしい。ホッと息をついた直後

『レヴィ~ヴィヴィオから通信が…あれ? 冷蔵庫開けたままになってる。靴はあるから家の中に居ると思うんだけど…』

 パタパタと幾つかの部屋を探すアリシアだが、結局彼女は見つからなかった。

「アリシア、リンディさんに連絡して。シュテル、レヴィ、ディアーチェの3人が消えちゃったって。翠屋でプレシアさんに話した後私も探すから。」
『ええっ!? わ、わかった!』

 その後、ヴィヴィオはなのは達と共に3人を探した。
 リンディが知らせを聞いてアースラのセンサーまで使ったが彼女達を見つける事は出来なかった。
 翌日、なのはとフェイト、はやてやリインフォース、シグナム達はマテリアルの捜索を始めた。話を聞いたユーノも駆けつける。
 なのは達は近隣の世界に足を伸ばし、ヴィヴィオは何かあった時の為に海鳴に残った。
 一方その頃アースラのセンサーに正体不明な高エネルギーの反応があった。

「なのはちゃんごめんね。シュテルちゃんが心配だとは思うけど…確認してきて貰えないかな」
「はい。もしかしたらシュテルが居るかも知れませんし」

 エイミィから連絡を受けたなのはは反応のあった近隣世界へと向かった。


 
 同時刻

「やっと追いついた」
「ホントにもう…追ってこないでってあんなに言ったのに…おバカさんなの?」
「馬鹿はどっち? 馬鹿な事をしようとしてるのを止めない訳ないでしょ!」
「とにかく私はこの時代、この場所でやる事があるの。こっちの世界の人にもなるべく迷惑かけないように頑張る。いいから邪魔しないで!」
「させません! 縄で縛ってでも私達のあの家に連れて帰りますっ!」
「力ずくは望むところ♪ やってみたら! 私に勝てないって事見せてあげる」

 2人はそれぞれ構え、直後その場のエネルギー量が一気に増大した。



「艦長、先程エネルギーを感知した世界で再度確認。もの凄い量、戦闘中と思われます。2人…3人?」

 未知のエネルギーを検知したアースラではリンディが考え込んでいた。マテリアルの3人が居なくなった直後。何か関係しているのか? 

「なのはさんだけじゃ危険ね。フェイトさん、アルフとユーノさんに通信。なのはさんと合流。なのはさんにはに現状報告、危ないと感じたら離れるように。」
「了解。フェイトちゃん、アルフ、ユーノ君、近隣世界で…」

 何が起きようとしているのか事態が進む前に先を読まなくてはならない。その時アースラにヴィヴィオから通信が入った。

『リンディさん、なのはの居る世界を私を転送してください』
「ヴィヴィオさん…今は駄目。ヴィヴィオさんは何かあるからこの時間の97管理外世界に来たのよね。あなたが離れた時何か起きたらどうするの?」
『それは…でもっ!』
「今は私達、なのはさんやフェイトさん達を信じて待っていて。そうだわ、シュテルさんが帰ってくるまで翠屋のお手伝いしてはどうかしら? 桃子さん達も喜ぶわよ♪」
『…はい、わかりました。』
「笑顔、笑顔。ヴィヴィオさんまで沈んでいたらみんな不安になるわ。気になるでしょうけれど、今は高町家のみんなを安心させてあげて。きっとシュテルさんが居なくなったから心配しているわ」
『はいっ♪ リンディさん達も頑張って下さい』

 笑顔のヴィヴィオがそう言うと通信が切れた。

「…良い子ですね。本当に」
「ええ。私達は後手に回って3回も彼女に助けられた。今度くらい楽して貰わなきゃね」

 リンディの言葉にエイミィは無言で頷いた。



「ホゥ…これは珍しい。管理局の佐官殿と聖王教会の騎士が面会とは」
「1度おめぇさんと会いたかった。娘達を作った奴がどんな奴かをな」
「私もです。セイン・オットー・ディードの主がどんな人物だったのかと…」

 その頃オリヴィエはゲンヤとカリムに連れられ、第9無人世界グリューエンの軌道拘置所にやってきていた。目的は

「素直な良い子達だろう? タイプゼロファースト、セカンド、ヴィヴィオ、チェントも含めてみんな私の最高傑作だよ。」

 戦闘機人と聖王のマテリアル、ヴィヴィオとチェントを作り出した研究者。ジェイル・スカリエッティと会うため。
 彼の言葉を聞いて目の前のゲンヤの背中が震わせる。

「…そうだな。娘達は俺がきっちり育てる、人間としてな。・・・今日はそんな事を言いに来たんじゃねぇ。おめぇさんに聞きてぇ事があって来たんだ。」

 そう言われて2人の前に出る。

「…君は? マテリアル…に似ているが」
「ジェイル・スカリエッティ。私はオリヴィエ・ゼーゲブレヒト。あなたがヴィヴィオ達の基にした聖骸布の主です。」
「主…時間移動魔法は本当に…」

 今まで座って余裕を感じさせていた彼が驚いた後そのままこっちに歩いてきてフィールドすれすれまで顔を近づける。

「お目にかかれ光栄です。陛下」
「貴方に聞きたい事があって来ました。単刀直入に聞きます。ヴィヴィオに適合したレリックはありましたか? あればナンバーを教えてください。」
「…その瞳と髪、顔立ち…正しく彼女達の複製母体。陛下、情報交換はいかがでしょう。私の質問に答えて頂けるならその質問に答えましょう。」

 聞いていたカリムが口を挟む。

「そんな要求は通りません。」
「なら私も答えるつもりはない。」
「……」
「……」

 彼女では相手にならない。

「私に答えられる事であれば。見ての通り私にはこの世界で何の権限もありません。ここに来るのも皆の力を借りています。」
「難しい質問ではありません。私の質問は…陛下から見て彼女達、私の最高傑作達は皆笑っているでしょうかという1点です。ここに面会に来るのは事件がらみの管理局の連中だけ。聞いても正しい答えは返ってこないし信じるに値しない。色眼鏡をかけていない陛下の言葉は信じるに値します。陛下から見た彼女達は笑っていますか?」

 振り返りカリムとゲンヤの顔を見る。2人とも頷く。見たとおり答えていいと判断し

「ヴィヴィオ、チェントは良く笑います。時々悩み泣く事もありますが…私が会ったのはスバル、チンク、オットーの3人だけですが彼女達も自然な笑顔を見せてくれました。」
「…ありがとう。No14。これが聖王のマテリアル、ヴィヴィオと適合すると予想されるレリックNoです。予想されると言ったのはまだ発見されていないレリックだからです。先の事件ではやむなくヴィヴィオを調整しNo14と1番近いNo7に近づけて使わせました。」
「14…他のレリックとの適合状態はどうだったのですか?」
「No7破壊され、他は高確率で暴走・崩壊する。28・35…いくつか適合率の高い物も候補になったが発見時に破損しており修復中に爆発。回収された中で使えるならNo70。だが…適合率は他の物より多少良い程度。私が知るのは以上です」

 レリックの適合状態は個々に違う。それを調べ上げレリック側に合わせる技術を持った彼が犯罪者として拘束されているのは酷く惜しい。
 彼とプレシアが同じ場所に立てていたなら自ら危惧を知らせぬとも気付き、対処していただろう。そう思いつつも彼を拘束したこの世界の統治機関については介入すべきではない。
 そのジレンマに悩まされた。
 
「そうですか…最後に…私からヴィヴィオ達を作ってくれて感謝します…ありがとう。」

 そう言うと踵を返し拘置所を後にした。

 
~コメント~
 ヴィヴィオ、なのはGODの世界へ。なのはGODにヴィヴィオ参戦と時間移動魔法という情報が飛び込んできた時から遅かれ早かれ行ってみたいと思ってました。
 スカリエッティはStrikerSの「ドゥーエ喪失」を弔うシーンがありました。もしかすると、元戦闘機人やヴィヴィオについても思いを馳せているのではないでしょうか。
 さて、4/8に開催されるStandByReady4にリリカルなのはAsおもちゃ箱準備号&AgainStory2イラストレーションが頒布するそうです。
 私もイラストレーションでコメント入れさせて貰いましたので手にとってやってください。
 また、準備号に続いてリリカルなのはAsおもちゃ箱も近日公開されると思いますのでお楽しみにお待ち下さい。

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