第07話 「交差の中心」

『そう…僕も何か手伝えたらって良かったんだけど…』
「仕方ないよ。未発見のレリックじゃ何処にあるかわからないんだから…」

 オリヴィエの報告を受けて借りる準備をしていたユーノになのはが連絡した。はやては部屋の角で膝を抱えて落ち込んでいる。
 こういう可能性もあったのに見落としていたのが許せないらしい。

『僕はNo.70のレリックを借りられる様に申請する』
「うん、お願い。」
『なのは、ヴィヴィオは僕も心配だけど、なのは達も無理しないでね』
「ありがとう、ユーノ君」
 
 通信が切れた後、なのはは振り返り彼女の様子をみてため息をつく。

「はやてちゃん、私達も行くよ。黙認を取り付けても色んな所に手伝って貰うんだから、私やフェイトちゃんもあっちこっち行ってるのに責任者が行かなくてどうするのっ。1回位の失敗がなによ、みんな最初から狸じゃないんだから、今は可愛い子狸娘でいいじゃない」
「………なのはちゃん…励ました後に奈落の底へ落としてどうすんの。…でもその通りやな。私らも出来る事しに行こか♪」 
「うん。」

 2人は頷きそのまま部屋を後にした。



「あの~異世界渡航者の方ですよね? 私は時空管理局嘱託魔導師、高町なのはです。渡航目的を教えて貰えませんか? それと渡航許可証と」

 未知の高エネルギー所持者同士が戦っていると連絡を受けていた。リンディ達は1人では危ないからフェイト達と合流してから行くようにと言っていたが、なのはは戦闘と聞いて止めようと全速力でその地点へと向かった。しかし着いた時には戦闘は終わっていて空に浮かんでいた女性を見つけに声をかけた。
 顔を歪め苦しそうにしている。

「怪我してるんですか?」
「治癒術を使える方かAC93系の抗ウィルス剤をお持ちじゃないですか?」

 そう言いながら彼女は銃を構えた。

「え、えっと…ごめんなさい。治癒術も抗ウィルス剤も持ってないですけど治癒術使える友達がこっちに向かってまして…あの、話辛いので銃を下ろしてお話しませんか。」
「非礼は重々承知ですが、当方非常に急いでおりまして、妹を止めないと大変な事になるんですっ!」
「あの、友達が来るまで降りて…ってああっ」

 そのまま彼女は凄いスピードで飛んで行ってしまった。

『なのは、ゴメン遅れた。大丈夫?』
「私は大丈夫。大丈夫じゃ無い人がさっきまで一緒だったんだけど、凄い速度で飛んで行っちゃった。追いかけた方がいいかな?」
『ううん1度戻ろう。かなり遠くまで来ちゃったから。』
「そうだね。」

 その時2人に新たな通信が飛び込んできた。
 はやてからディアーチェ達を見つけたと。


 
 2時間後、なのは・ユーノとフェイト・アルフとはやて・リインフォースがアースラで合流した。
 スタッフルームに集まった彼女達の話をプレシアとヴィヴィオも駆けつけリンディもその場で聞いている。

「私が会った人赤い髪の人がお姉さんで、はやてちゃんが会ったキリエさんが妹みたいだね。キリエさんが何か大変な事をしようとしててお姉さんがそれを止めに来た。2人とも未知のエネルギーを使ってる…今判ってるのはそれくらい?」

 まとめようとするなのはにユーノも頷く。

「それでいいんじゃないかな…僕はディアーチェの持ってるシステムU-Dがどんな物なのか気になるんだけど…」
「う~ん…ディアーチェ…私の事『子鴉』って呼んでた…はやてって呼んでくれてたのに…ヴィヴィオちゃんと一緒に壊したデバイスも復活してたし、また闇の書を復活させようとしてると思うとな…」
「はやてちゃん、シュテルはどうだった?」
「レヴィも…」



 はやては2人に言われて思い出すように話し始める。

「見ぃつけた♪ ちょっと色彩が違う気がするけど適合率的にはバッチリ」
「え~っと初対面やと思うのですがどちら様でしょうか?」
「エルトリアのギアーズ、キリエ・フローリアン。あなたが持ってる無限の力『システムU-D』それを渡してくれたら痛くしないでおいてあげる。闇統べる王さん」

 突然目の前に現れたキリエ・フローリアンと名乗る女性。どうも話が噛み合わないと思ったら…

「あ~やっぱり。あのですね、それ人違いです。私がその子と似てる理由も心当たりもあります。そやけど、私とちゃいますよ。」
「じゃ、じゃあその子は何処にいるの?」
「ああ…少し前まで一緒に住んでたんですけどパッと消えてしもて私も探してるとこなんです。」
「えっ…」

 そう答えたら固まってしまった。

「それとですね…非常に言いにくいんですけど、ディアーチェの持ってる物を探してるそうですが…ディアーチェ、何も持ってないですよ」
「はい?」
「3ヶ月前に持ってた魔力源とデバイス壊して、今は私の魔力を共用してます。」
「ガーン!!」

 最後のがトドメだったらしい。
 彼女は呆然となっている。気の毒だとは思いながらも近隣世界で未知のエネルギー反応があったのを思い出す。

(もしかしてこの人が…)
「あの…キリエ・フローリアンさん…異世界渡航者の方ですよね。もし良かったらお話聞かせて…!!空間震動!?」

 突然起きた震動。そしてそこから感じた気配、その正体が…

「この感じ、ディアーチェ…ううん、闇の書のマテリアル」

 はやてが感じた通り、空間震動が収まり現れたのがディアーチェ達だった。


「でもな、ディアーチェ…シュテルとレヴィもなんか変なんよ。まるで私達の事忘れてた感じで、3ヶ月間の記憶が無いみたいやった」
「シュテルとレヴィちゃんもそうだったの?」
「う~ん…シュテルちゃんとレヴィちゃんは2言3言位しか話さんだから…あんまりようわからんけど、前に遊びに来た時とはちゃう感じやった。」



『ヴィヴィオ、外に…』

 はやて達の話を聞いていた時念話が届く。振り返るとプレシアが手招きしていた。彼女と共にスタッフルームを出る。

「アリシアから前の事件の事は聞いてるわ。ヴィヴィオ、このメモを持って戻ってオリヴィエ…ううん、応援を連れてきて頂戴。」
「!?」
「異世界からの未知のエネルギーを使う姉妹、記憶を無くした闇の書のマテリアル、思念体も現れるでしょう。システムU-Dが何を意味するものなのかわからない。今のアースラじゃ戦力が足りないわ。リンディは武装局員を呼ぶでしょうけどそれで対応出来るとは思わない。」

 思念体が現れる。闇の書事件で取り込んだデータの思念体であれば何とかなるだろうが、闇の欠片事件のデータであれば…苦戦は必至だ。

「でも…私の思念体が出て来たら…」

 騎士甲冑のヴィヴィオが現れたら相手出来るのはヴィヴィオ、自分しかいない。

「それくらい任せなさい。私も魔導師ランクSSなのよ。思念体の10人や20人位軽く相手するわ。それにここまで色々な事件が続けて起きるという事はここが交差の軸になる可能性が高いと思わない?」

 それはヴィヴィオも考えていた。
 マテリアルが消えて記憶を無くして現れ、未知のエネルギーを使う異世界渡航者がやってきた。
 彼女に頷いて答え、デバイスから刻の魔導書を取り出す。

「…わかりました。すぐに戻って来ます。それまで…お願いします」
「ええ、待ってるわ。」
「元の世界へ」

 魔導書にイメージを送り、ヴィヴィオは元の時間へと向かった。   



「…そうは言ったけれど。…訓練室借りようかしら、魔法使うの何年ぶりかしら…」

 彼女が消えた後、プレシアは呟きスタッフルームへと戻っていった。
 
~コメント~
 ヴィヴィオにとってプレシアは親友ともう1人の自分の母であり、ヴィヴィオの母であるフェイトの母という少し複雑な関係です。でもそんな関係以上に大切な人という気持ちがあると考えています。
 ではプレシアから見たヴィヴィオはどうなのか? と考えたのがこの回でした。

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