~刻の移り人外伝~ 第4話 「見知った姉(後編)」
近い未来時間軸同士の衝突が起こる。
ヴィヴィオはそれを避けるべくなのは達を連れて異世界の海鳴市にやってきた。これは深刻な事件の傍らで暇を持て余した者達が織りなす少し変わったお話です。
ディエチを探して海鳴市街にやってきた私、ヴィヴィオとアリシア。
ディエチも無事見つかって帰ろうとした時、私達はある男性からポーチを受け取った。どうもアリシアのお姉さんが忘れていった物らしいんだけど…お姉さんって誰??
ヴィヴィオはそれを避けるべくなのは達を連れて異世界の海鳴市にやってきた。これは深刻な事件の傍らで暇を持て余した者達が織りなす少し変わったお話です。
ディエチを探して海鳴市街にやってきた私、ヴィヴィオとアリシア。
ディエチも無事見つかって帰ろうとした時、私達はある男性からポーチを受け取った。どうもアリシアのお姉さんが忘れていった物らしいんだけど…お姉さんって誰??
「ねぇアリシア、もしかすると忘れた人も私達を捜してるんじゃない?」
「そうだね。ちょっと探してみよっか」
そう言って建物の影に入りリインとの通信を繋ぐ。ディエチが帰って来ないのを心配している筈だ。
『はい、こちらアースラ。』
「リインさん、ディエチと合流しました。捜し物を手伝っていて遅くなった様です。」
そう言うと彼女の顔に笑みが戻った。
『ありがとうございます。ディエチ、次からはメッセージ送って下さいです。』
『ヴィヴィオ、ついでやからここの私達の様子見て来てくれる? あとなのはちゃんとフェイトちゃんとこに行って怪我の様子見て来て。』
ヴィヴィオとアースラが到着した日、そこは既にU-Dと思念体によってアースラは両舷を破壊され、なのは達も怪我をして動ける魔導師がクロノのみという悲惨な有様だった。
リンディから現地指揮権を渡された八神はやては、現地魔導師全員を帰宅させて休養を取るように言い、代わりに元機動6課と元ナンバーズが思念体対策にあたらせた。その際、ここのなのはとフェイトからはデバイスを取り上げている。彼女達にデバイスを持たせたままでは治りきらないまま動くと考えたからだ。
『なのはちゃんとフェイトちゃんはああゆうてたけど、やっぱりデバイス無い心細いしな…元気そうなら帰りに連れてきて。マリエルさん夕方くらいにメンテナンス終わるそうやし』
ヴィヴィオがなのはとフェイトと再会した時、彼女達は負傷し全身に包帯やガーゼを巻かれ八神家のベッドで寝かされていた。
彼女達ですらそんな状況まで追い込まれたのだからレイジングハートとバルディッシュも無傷ではない。2人からデバイスを取り上げるのは2機のメンテナンスも含まれていたらしい。
「わかりました。」
『頼むな~♪』
通信を切って考える。今いる場所だと八神家はともかく高町邸とハラオウン邸は反対方向にある。
「なのはさんの家か翠屋に行けばいいんじゃない? だってフェイト家に居てもリンディさん達やアルフは全員居ないし、1人にしないと思うよ。」
リンディ、エイミィ、アルフはU-Dに壊されたアースラと一緒に管理局に戻っているし、クロノも捜査で出たままだろう。アリシア達もこっちのアースラに居を移したからフェイトが家に帰っても1人になる。
(なのはママ…桃子さん達も1人にしないよね)
「そうだね。先に翠屋へ行こう。」
ヴィヴィオは頷きアリシアの手を取り翠屋へと歩き出した。
「あれ? 帰らないみたい…どこかに寄るのかな?」
「あっちって商店街…翠屋か。チャンス♪」
「……お姉ちゃん…本当にするの?」
「ウン、だって良い方法でしょ。」
3人連れの後を追いかけた。
「いらっしゃいませ~、ヴィヴィオ、アリシア♪」
翠屋のドアベルが鳴って真っ先に声をかけたのはなのはだった。
「こんにちは~」
「アリシア、ヴィヴィオいらっしゃい。」
2人の名前を聞いてフェイトも厨房から顔を出す。
「やっぱり一緒だった。言った通りでしょ。」
アリシアに頷き、案内されたテーブルへと向かう。
「怪我は平気?」
「うん、もう治ったよ。ヴィヴィオ達の方は? 思念体いっぱい出てきてない?」
「うん…出て来てる。紹介するね、私の…友達ディエチ、今はフェイトママのチームでさっきも思念体を倒してたんだ。」
ディエチについてはどこまで話せばいいのか判らない。記憶を消すにしてもあまり詳しい話をしないほうが良いと思い適当にはぐらかす。彼女もその辺は把握しているのか会釈で返す。
「高頻度で現れていますが、ローテーションを組んでいますし全員得に消耗もしていません。むしろ空いた時間を潰す方が大変みたいで…」
「ふぇ~凄いんですね~」
なのはは感心する。
(ここのみんなが実戦経験をいっぱい積んで、教導したスバルさんやティアナさん、エリオ、キャロやノーヴェ、ウェンディ、ディエチ、ディードが入ってるんだから…当たり前なんだけどね…)
個々の能力も上がっているし人数も違う。ディエチの言葉通り体調優先のローテーションを立てているからそれこそ思念体が10人規模で現れない限り大丈夫な様に考えられている。
「大丈夫そうだね。なのは、フェイト夕方くらいにこっちに来られる?」
他のお客に料理を運んで行った後、アリシアが2人に声をかける。
「どうして?」
「何かあるの?」
「レイジングハートとバルディッシュのメンテ終わるんだって。怪我が治ってたら返したいから来て欲しいんだ。」
そう言うと2人は駆けてきて身を乗り出す。
「「本当!?」」
「う、うん…夕方くらいに、どうかな?」
「「行く行く~っ!!」」
2人は手を取り合って喜んだ。はやてが言った通り2人ともデバイスと離れて寂しかったようだ。
「ヴィヴィオ~、ちょっとこっちに来て~」
ココアを頼み少し経った時、桃子に呼ばれる。何かあるのか?と首をかしげつつ厨房へと向かうとテーブルに幾つものトレイを並べた桃子が待っていた。
「なのはとフェイトちゃんから聞いたんだけど、沢山の人と一緒に来てるんでしょ? お土産にクッキー持って帰って貰いたいんだけど、全員で何人いるのかしら?」
「えっ? ちょ、ちょっと待って下さい。ママ達とアリシア達と…」
慌てて指で数える。機動6課フォワード陣、整備スタッフ…
「た、多分40人位…」
「そんなに!?、よし桃子さん頑張っちゃう!」
「私達もお手伝いします。アリシアも呼んできますね」
そう言ってアリシアを呼びにテーブルへと向かった。
一方で…
「ヴィヴィオ~、ちょっと来て」
厨房の奥からヴィヴィオを呼ぶ声を聞き彼女は席を立って行ってしまった。
「何かあったのでしょうか?」
ディエチの問いかけにアリシアはクッキーを摘みながら
「すぐに戻ってくるんじゃない?」
そう言っているとすぐにヴィヴィオが戻って来た。
「おかえり、何だったの?」
「う、うん…ちょっと聞かれただけ。それでねさっき窓からフェイトさ、ママに似た人が見えたんだ。アリシア、さっきのポーチ持ってない?」
ここに来たらテーブルに中の物を広げて見ようと思っていたのをなのはとフェイトの話ですっかり忘れていた。
「フェイトに似てるなら私を妹と勘違いしちゃったのかな。」
「うん、だ、だからね。ちょっと持って行って聞いてくる。」
「私も行くよ。」
「だ、大丈夫。近くにいるから。行ってくるね」
「そう? じゃあここで待ってる。」
そう言うと彼女はポーチを持って小走りでドアの方へ向かった。でもそこで少し立ち止まってくるりとこっちを向いた。
「…またね」
「えっ? 何?」
アリシアが立ち上がるより先にヴィヴィオはするりとドアから出て行ってしまった。
「アリシア、またねとはどういう意味でしょう?」
「またね?? わかんない」
2人して首を傾げていると
「アリシア~、ディエチも手伝って。桃子さん今からみんなの分のクッキーを焼いてくれるんだって~。」
その時厨房からヴィヴィオが現れた。
「ヴィヴィオ!? さっき外に出て行った筈じゃ?」
「私? さっき桃子さんに呼ばれて厨房に行ったじゃない。」
首を傾げるヴィヴィオ。出て行ったヴィヴィオとここに居るヴィヴィオ…まさか…思念体?
でも思念体にしてはあまりにはっきりしすぎていた。
(ここに居るのもヴィヴィオだしさっき出て行ったのもヴィヴィオだよね…)
一瞬目眩がして眉間を抑える。
「どうしたの?」
「ん…何でもない。アリサさん…こういう感じだったんだって今わかった。うん、クッキー一緒に作ろう!」
「えっ、どうしたの? そんなに押さなくてもいいって~」
ヴィヴィオの背中を押して厨房へ向かうアリシアの様子にヴィヴィオは只慌てるだけだった。
その頃…
「作戦成功♪ お疲れ様、チェント…どうしたの? 疲れちゃった?」
「ううん、あっちのお姉ちゃん…私とヴィヴィオ見分けつかなかったから…」
「それだけ似てるって事でしょ…えっ? 嫌だった?」
「嫌じゃないんだけど…でも何だか嫌かも…もういい…」
そう言って歩き出した少女の背は憂いを帯びていた。
~コメント~
もしヴィヴィオがなのはGODの世界に行ったら?
本編と番外編のフォローをしつつ、入れ替わる話を書いてみたかったのでやってみました。
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