20話 ルシエの巫女(後編)
- キャロSS 守りたいものはありますか? > 第03部 ルシエの巫女
- by ima
- 2007.10.10 Wednesday 19:03
私は独りぼっちだった。みんなと一緒に暮らしたかったのに、みんな私の力を怖がった。
こんな力欲しくなかった。怖がらせようと思ったことも一度も無かった。それでも私は独りぼっちになった。
そんな私にお母さんみたいな暖かい人が私に声をかけてくれた。
私はその人に「何をするか」じゃなくて「何をしたいか」といわれた。私はその人を手伝いたいと思った。
一緒に居る時に同じくらいの男の子と出会った。凄く真面目で頑張り屋でとっても優しい人。私はその男の子と一緒に居ることが嬉しかった。男の子も凄く喜んでくれた。
でも、知らない私と一緒にいるその人達は凄く嬉しそうだった。男の子もそうだった。
その時はっきりとわかった。
私はやっぱり要らない子なんだって
もうどうなってもいい・・・・
もうどうなっても・・・
でも・・・・
こんな力欲しくなかった。怖がらせようと思ったことも一度も無かった。それでも私は独りぼっちになった。
そんな私にお母さんみたいな暖かい人が私に声をかけてくれた。
私はその人に「何をするか」じゃなくて「何をしたいか」といわれた。私はその人を手伝いたいと思った。
一緒に居る時に同じくらいの男の子と出会った。凄く真面目で頑張り屋でとっても優しい人。私はその男の子と一緒に居ることが嬉しかった。男の子も凄く喜んでくれた。
でも、知らない私と一緒にいるその人達は凄く嬉しそうだった。男の子もそうだった。
その時はっきりとわかった。
私はやっぱり要らない子なんだって
もうどうなってもいい・・・・
もうどうなっても・・・
でも・・・・
目の前でフェイトママが崩れ落ちるように倒れた。
背後でヴィヴィオが飛ばされて倒れていた
その横にフリードが羽を焼かれて倒れていた
そして足下にお兄ちゃんが赤い水たまりの上に倒れていた。
でも、今私は立っている。みんなに助けられて
ギンガとユーノはフェイトの抜けた穴を埋めるように次々とガジェット・ドローンを駆逐していった。
『いい?キャロの中には間違いなくロストロギアがある。しかもそれはリンカーコアから出る全ての魔力を食らい糧にしている。』
ユーノはギンガの補助をしながら全員に念話を送り続けた。
『そして、一定の魔力を溜めきった時その魔力を使って元の人格を全て消し去るんだ。これがこの感染型ロストロギアの特徴』
『それで対処方法は?』
別の場所でガジェット・ドローンを打ち払いながらなのはが聞いた。
『対処方法としては溜め込む前にリンカーコアが魔力を作らなくなれば感染型ロストロギアは自然に消滅する。だからキャロの中のリンカーコアを一度完全に封印すれば・・・』
『でも、その前にキャロの魔力が一定量を超えてしまったらどうなる
んですか?』
又別の場所で聞いていたティアナが聞く
『その時は元のキャロの人格が消え、今のキャロが残る。でも前に見たキャロの様子だともうかなり一定近くまで集まってる。それで急いで来たんだ』
『ユーノ君ならなんとか出来るん?』
又違う場所で今度ははやてが聞いた
『僕なら、長期的にリンカーコアからの魔力発生を止める事はできる。それなら一時的に治す事も』
『それならば、一気にこいつらを叩いて』
『戻るとしようかっ!』
シグナムとヴィータはカートリッジをロードし一気にガジェットの集団に突入していった。
立ちつくしたキャロの前には先程のガジェットが立っている。
【イニシエヨリノタネヲモツモノヨワレトイッショニコイ】
同じ言葉を繰り替えしキャロに向かって組み込まれた様に発しつつ。しかしキャロは立ちつくしていた。
(私の大切な人、優しいお母さん、いつも一緒に居てれたお兄ちゃん、一緒に遊んだ妹、最初は怖かったけど凄く優しい子。それを・・それを・・)
キャロの視線の先から外が見えた、そこには大きな木が立っていた筈なのに、今は完全に折れてしまっていた
(仲良くなった小鳥さん・・・子供も生まれて頑張っていたのに)
【イニシエヨリノタネヲモツモノヨワレトイッショニコイ】
再びガジェットが近づく。足下にあったバルディッシュの欠片を踏んだ時、割れて飛び散り一部がキャロの頬をかすめた。頬に赤い線が入る。
その時どこからか声が聞こえた。
その声はキャロにしか聞こえない様で目の前のガジェットは微動だにしていない、しかし、その声は今までよりずっと強くはっきりと聞こえていた。無意識的にガジェットに振り向いて睨む。
(許さない)
その声に合わせるようにキャロも呟く
「許さない」
(絶対に許さない!あなたを)
「絶対に許さない!あなたを)
(許さない。私の大切な人達を傷づけた。)
(許さない。私の大切な人達を傷つけた。)
そして、2人の意識は一つの答えを生み出した
(「絶対に許さないんだからぁぁぁぁぁぁっ!」)
叫んだ瞬間、キャロ自身から魔力奔流が溢れかえるように生まれた。そしてミッドの魔法陣とベルカでもミッドでもない魔法陣が現れる。
そんな中をキャロはゆっくりとガジェットに向かって1歩また1歩と近づいた。
(「ケリュケイオン、セットアップ」)
キャロが呟いた時、手にしていたデバイスが反応し、バリアジャケットが彼女の身を包んだ。
近づくキャロと同じ距離を保つように1歩また1歩下がるガジェット。キャロは倒れたフェイトの足下まで来たとき、右手を正面にかざす。
浮き上がるフェイトやエリオやヴィヴィオにフリード。
更に左手を右手と併せるように翳した瞬間3人と1匹が桃色の光に包まれる。それは一瞬の事だったが、全員の傷を完全に癒していた。
(「ごめんね・・・」)
と呟いて両手を上に上げた瞬間、今度は3人と一匹が・・・いや、散らばっていたなのは達全員の足下に魔法陣が一瞬のうちに消えた。
「なに?これ?・・・」
「転送魔法?」
「でも、この色って」
「「キャロ!」」
再び手を下ろしたキャロはガジェットに向かって近づきだした
(「みんな大丈夫・・・これであなたを倒すことが出来る。でもあなたは一部。・・・・ねぇ見えてるんでしょ。窓の向こうで」)
後ろを壁に阻まれ逃げられなくなったガジェットにキャロが触れた。一瞬ガジェットの一部が光り、魔力奔流が押さえられたかと思ったが、直ぐさま元の奔流が戻る
(「AMFなんて効かないよ。絶対に許さないって言ったよね」)
キャロが睨むと2つの魔法陣が重なったものが現れキャロと共にガジェット達は全て消え去った。
「なにが起こってるの・・・」
宿舎の前にいたシャーリー達の前にいくつもの魔法陣が現れる。そしてその中からは
「なのはさん!・・・みんなっ!」
なのはやはやてにシグナム・ヴィータ、スバル・ティアナ・ギンガ、そしてユーノも現れた。
「えっ?ここ宿舎?」
「どうやって??」
なのは達が辺りを見回していると再び4つの魔法陣が現れ、そこからはフェイト・エリオ・ヴィヴィオにフリードが現れた。
意識を失っているのを瞬時に把握したなのはは、すかさずフェイトとヴィヴィオを支える。スバルもエリオを支え、ティアナはフリードを抱いた。
「フェイトちゃん!」
「う・・ん??あれ??ここは?ガジェットは?」
少し頭を振りながらだったがフェイトが気づいた。
「ここは宿舎の前です。退避命令を出したあと、全員が一度非難していたんですが。急に静かになって」
「そうだ!キャロは?」
ハッと思い出した様にフェイトが辺りを見回す。しかしキャロの姿はどこにも無い
「あの魔法はキャロの?」
「だと思う。でもキャロは今魔法が・・・」
考えている間に隊舎の真上に桃色に輝く魔法陣が現れ消えた。
【PiPiPiPi】
グリフィスの端末にアラーム音がなった。
「はい、機動六課グリフィスです。ええ・・・ええっ!」
「どうかした?グリフィス君」
驚きの声を上げたグリフィスにはやてが聞く
「陸士隊からの連絡です。先程まで戦っていたガジェット・ドローンが全て消えたと・・・」
「?」
「空に桃色の魔法陣が現れたかと思ったら全て消えてしまったそうです」
「桃色ってことはキャロ?」
その時フェイトに一抹の不安がよぎった
「ねえ、シャーリー今キャロがどこに居るかわかる?なんか凄く嫌な予感がするんだ・・・」
「わかりました調べてみます」
とプライベート端末を引き出して調べ始めた。
7カ所のガジェット全てはミッドから少し離れた場所に現れていた。そして、その中には1人の男も含まれていた
「ここはっ?私はどうしてここに?」
辺りを見回していると小さな魔法陣が現れそこから1人の少女が降りてくる。
閉じていた瞳が開き男を見つめる。それはいつもの明るい瞳ではなく暗く沈んだ蔑む目
(「あなたが・・・みんなを傷つけたのね」)
「お前の中には私には必要なんだ。他の人や物がどうなろうと知ったことか! 罪なのはわかっている。だが、この罪を拭おうとは思わん」
男は言い切った。
(こんな者の為に・・・)
「こんな者の為に・・・」
(みんな傷ついて・・・)
「みんな傷ついて・・・」
目の前の少女から同じ声が繰り返し聞こえる。怒りに満ちた眼が再び閉じられ暗く沈んだ眼を開いた
(「なら、私が・・・あなたの罪を裁いてあげる」)
少女、キャロが言い放ち両手をバッと上に翳した瞬間、辺りにいたガジェット全てが一気に爆発した。濛々とした煙が辺りに漂う。
煙が風に舞い散らされていく中で男1人だけが残された。左手を男に向ける。
手のひらに光が集まっていく。集束させるのではなく、自らの魔力を集めて限界まで圧縮した魔力の塊
あまりに圧倒的な力の差、それを感じながらも男はキャロから眼を背けなかった。
(「バイバイ」)
と右手で塊を叩く。
限界まで圧縮された魔力の塊は外部からの衝撃に左右される。そしてバランスが崩れた塊は密度の薄い方向へ向かって勢い良く放出された。
それはある意味キャロが師事する魔導師の得意技である。
魔力の奔流が一気に男に向けて駆け抜ける。目の前が一気に魔力色に変わった。ドンッと大きな音と共に海上に大きな水しぶきが立ち上り辺りを包んだ。
水しぶきが治まった後、そこには
「な・・なんとか・・・」
「まにあった・・・・・」
「ギリギリだった」
「ほんまに・・・・」
男とキャロの間になのはとフェイト、はやてとユーノが立っていた。それぞれにシールド型の魔法を展開し、キャロの莫大な魔力放出の中、男を守ったのである。
流石にこの魔法を受けるとは思わなかったのであろう。4人が4人とも肩で息をしていた。その中でフェイトがキャロの方に飛んでいき抱きしめる
「キャロっもう大丈夫だからエリオもフリードもヴィヴィオもみんな大丈夫だから」
すると先程まで無表情だったキャロはニコリと笑うとフェイトの胸で眠りについた。
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