21話(最終話) もう1人の私へ、守りたいものは見つかった?

 ガジェット・ドローンの同時発生と機動六課への襲撃事件は大きな被害が出ずに治まりを見せた。
 中にはヴィータが楽しみに取っていたアイスを冷蔵庫ごと吹き飛ばされ暴れかけた等の小さい事件や事後処理はいくつか残っていたが、六課の中も徐々に落ち着きを取り戻していた。

 そんな中、キャロやフェイトやなのは・はやては隊舎の前である人物を待っていた
「まだかな・・・」
「そろそろだと思うんだけど・・あっあれじゃない?」
「うん、そうみたい」
 向こうから小さな影が現れる。やがてその影は2人の影になりそれは大人の影と子供の影になった。

 男性と少女の姿が見えるとキャロは大きく手振った
 少女も気づいたらしく小さく手を振り返す。

 キャロ達の前まで来たとき、男性は頭を下げた。併せるようになのはやフェイトも頭を下げる

「この度はご迷惑をおかけしました」
「いえ、トーリア博士。ようこそ」
「こんにちは、キャリアちゃん」
「こんにちは、皆さん」

 数日前、なのは達はキャロの軌跡を追って大急ぎで転送すると、目の前でキャロが男性に向かって砲撃魔法を撃とうとしている場面に出くわした。
 4人が瞬時にキャロと男性の間に入りシールド系魔法を駆使してなんとか押さえ、フェイトの無事にキャロが安心して眠った後、その場に居た男=トーリアになのはとフェイトはどうしてここに居たのか聞いた。

 その際になってなのは達は衝撃の事実を知った。

 トーリアはリンカーコアを永久封印、もしくは修復できる魔導師かロストロギアを一刻も早く探していた。彼の娘であるキャリアがリンカーコアが不安定な状態になる病にかかっており、それが原因で身体を崩したこと。
 そして彼女の母、トーリアの妻も同じ病にかかり命を失っていたことを。

 その事を聞いたユーノはキャロの容体が安定しているのを確認した後、「僕も少しの間なら封印することはできるから」とトーリアの監視を買って出た。
 そして、その場はユーノが監視者としてトーリアと一緒に彼の娘の所へ戻っていった。

 翌日キャロが目覚めた後、フェイトはトーリアの事をキャロに教えた。
 キャロ自身複雑そうな顔を見せたが、娘を思う親の気持ちにフェイトが同情していることを知り、ある方法をフェイトに話した。

 更に数日が経ち完全に六課の機能が戻った今、トーリアはキャリアを連れて機動六課にやって来た。
 キャリアは長い髪を後ろで束ねていて少しボーイッシュな感じがしたが、凄く優しそうな眼をしていた。
 もっと幼い子供と思っていたキャロはキャリアに会うなり

「もしかして同じくらい?私10歳」
「うん私も同じ、よろしくねルシエさん」
「ううん、キャロでいいよ。キャリア」
「うん、よろしくねキャロ」

と仲良く隊舎に入っていった。
 なのは・はやて・フェイトとトーリアも中に続いた。


「キャロ、それじゃいくよ」

というユーノのかけ声と共にキャロが頷く。
 意識を集中するキャロ
 ユーノのミッド式魔法陣とキャロの魔法陣が現れる。

 それはフェイトに話したある方法だった。

「私なら上手く制御できればその子の病気治せるかもしれない・・」

とフェイトの前でキャロが試しに魔法を使おうとしたところ、ミッド式とは異なった魔法陣が現れた。

 フェイトは初めて見る魔法陣やプログラム体系だった為、どんな魔法なのかも判らない。そこで、ユーノに一度連絡を取るとユーノは驚いて

「・・・まさかっ!彼女の応急手当が終わったらすぐに戻るから、誰か他の人を!」

と慌てて戻ってきた。

 ユーノはその魔法体系を知っており、それは大昔に消滅した魔法体系で治癒系に非常に優れている事をフェイト達に教えた。
 
 瀕死のフェイトやエリオを一瞬で回復させたのはこの魔法の影響だった。それからトーリアとキャリアがこちらに来るまでの間、キャロはユーノに教えて貰いながら、ある魔法の制御を覚えていった。

「そう・・キャロゆっくり・・・」

 集中するキャロをサポートするユーノ。やがてキャロの手の平から小さな魔法球が現れた。
 キャロはその球を維持しつつゆっくりとキャリアの胸に持って行く。不思議そうに光を見つめるキャリア

 魔法球はキャリアに触れた瞬間、吸い込まれいった。

 僅かに胸の辺りが僅かに光った後、何も無かったかの様に落ち着きを取り戻した。

「キャリア?なんともないか?」

 心配そうに聞くトーリアにキャリアは手を握ったり開いたり足を動かしたりしながら答えた

「うん、なんかすっごく体が軽くなった感じ」
「ふぅ~」

緊張が解けた様に息を吐くキャロ

「お疲れ様、これで大丈夫だと思うけど検査だけするわね」

奥からシャマルがキャリアに機械を当てている

「トーリアさん、これで彼女キャリアさんのリンカーコアは完全に修復されたと思います。あとは暫く経過をみて判断できるでしょう」

 ユーノの説明にトーリアは全員に向かって頭を下げた

「皆さん、本当にご迷惑をおかけしました。それにこんな事まで・・・本当にありがとうございます」

 頭を下げられて照れるなのはやフェイト・はやて

「いいですよ、私も昔助けられてここに居るんです。もし、迷惑をかけたと思っているんでしたら、その技術で少しでも多くの人達を助けてあげて下さい」

 トーリアがスカリエッティから大量のガジェット・ドローンを借り受けて複数の場所で被害を与えた事や、機動六課を襲撃し執務官を並びに数人の局員に傷害を与えた事についてはそれなりの処罰を受ける事になる
その事にフェイトは最低数10数年間の懲役刑が科せられると考えはやてに相談した。

「う~ん・・その子が本当の事を知ったら・・でも今引き裂かれるのも・・あっ!」

 思いついた後のはやての行動は素早かった。
 はやてはクロノやリンディと相談し、又、機動六課にとって重要参考人物であるスカリエッティの情報と交換できると本局にもちかけた。
 そして、一番被害の大きかった六課の襲撃は無かったものとし、ガジェットについても勝手に暴れ出したか何か他の目的があったのか調査中と言う形で締めくくった。
 何より、トーリア自身を見た者はキャロの他にはなのは達4人しか居ない事もあり、幸いにも瀕死の重傷を負ったフェイトやエリオ・フリードについてもキャロの回復魔法で一気に回復していたことで事件そのものを無くそうとしたのである。

 しかし、スカリエッティとの繋がりだけはきちんと取っておく必要があった為、本局で事情聴取の間キャリアを六課で預かる事にした

「なんか・・・どんどん学校みたいになってくね」

ポツリともらしたなのはに

「みんな笑って過ごせるのが一番いいんちゃう♪」

と気分良くはやては答えた。


 そして翌日、トーリアが研究の為暫く留守にすると言って本局に向かった後、キャロにヴィヴィオ・キャリアは宿舎近くの広場で遊んでいた。

「ねぇ、キャロ本当にこの小鳥の言葉ってわかるの?」
「うん」
「じゃあ、2回鳴いてみてって」
「いいよ・・・」
「わぁ~すごい!」
「ヴィヴィオも話したい~っ!」

 3人が楽しそうに話している。運良く枝に助けられた小鳥は雛と共に無事だった。

「え~そうなの、もうすぐ巣立ちなんだって、この子の子供達」
「そうなんだ、みてもいい?」
「いいって、いこ」

 飛び立つ小鳥を追ってキャロとキャリア・ヴィヴィオが走っていく
隣の木に移った巣から雛がひょこっと顔をだすと、キャリアとヴィヴィオがキャッキャッとはしゃいでいた。

 そんな中エリオがこっちを見ているのに気づくキャロ。エリオの方へ駆け寄る

「大丈夫なの?キャロ」

少し心配そうなエリオに向かって

「うん、エリオ君。もう平気!」

と元気よく答えていた。事件の後、キャロは昔の記憶を取り戻していた。そしてリンカーコアの波形も元に戻っていた。

 ユーノやシャーリーはこの状態を不思議そうに

「でも・・・確かにあの時の反応は・・・」

 しかしキャロは代償にロストロギアを封印した後からトーリアに対峙するまでの間の記憶は残っていなかった。
 その事で【ロストロギアが暴走して自滅したのだろう】とユーノは推測していた

「でも無茶しないでね。まだ治ったばっかりなんだから」

 心配性なエリオがキャロのことを気にかけている。そんなエリオの耳に近づいてキャロは呟いた

「ごめんね、心配してくれてありがとう。お兄ちゃん♪」
「えっ?」

唖然とするエリオに微笑みながらキャロはもう一度言った

「いっぱい心配かけてごめんね。」
「もしかして・・キャロ・・・記憶が・・」

 気になったエリオが聞くと、キャロは少し恥ずかしそうにコクリと頷く。フェイトの胸の中で眠りに落ちた時だった。

(ありがとう、キャロ。みんなを助ける事ができた)
「ううん、それはあなたのおかげ。それに前に言ってたよね【私の事なんか要らないんだ】って」
(うん)
「でも、みんなすごく大切に想ってるんだよキャロのこと」
(うん、私もわかった。)
「だから、信じようよ。みんなを」
(うん!)
「それじゃ、私はいくね。ここにはもう長くは居られないから」
(えっ?どうして?折角お話できたのに)
「私は本当は居ちゃいけないキャロ・・・だから消えるの。私が居るとみんな困る事になるから。それにキャロも出てこられない」
(それじゃ、こうしようよ・・・)
「・・・いいの」
(うん、だって同じ私なんだから♪)

 恥ずかしそうに答えるキャロ
 眠っている間にキャロ達は話す事が出来た。その中で2人とも残る事は出来ないから消える。だからみんなにありがとうって言って欲しいと言った言葉をキャロは断った。


 そして2人の選んだ方法は・・・・・


「同化」


 本来はユニゾンデバイスが使う方法だが、相性が悪いと暴走したり精神に支障をきたす可能性がある。
 ただし今回の場合、ほとんどキャロ自身を取り込んでいる状態でキャロの本体が覚醒したことにより「ほぼ同一の魔導師とデバイス」という形になる為、一方が他方に干渉する事は無い。

 実際他の者にも判らないほどキャロ達は完全に同化していた。
 しかし、そんなキャロも少しだけ違った部分があった。

 フォワード隊のフェイトとなのはの保護している女の子ヴィヴィオ、そして同じ隊のエリオの認識である。
 何も知らなかったように接しられると一方は悲しみ、知った状態で今までと一緒だともう一方が顔から湯気が出るほど恥ずかしい。
 そんな考えの中で2人が出した結論は【エリオに本当の事を話す】と言うことだった。
 これでこれからどうするかはエリオに託すことが出来るので、2人の感情が違う方向へ揺れ動くことは無い。
 そこで、今キャロは少し恥ずかしいながらもエリオに話した

「あ・・・う・・・・ん」

 エリオは何か言いかけたが、言い止まり手を差し出した。

「これからもよろしく!」

(良かったねキャロ)
「うん!これからもよろしくねっお兄ちゃん♪」

 恥ずかしがるエリオに抱きついた

 隊舎の窓から2人の光景を見ていたはやては、横でキャロとエリオを眺めているフェイトに聞いてみた

「なあフェイトちゃん」
「ん?どうしたのはやて?」
「もしかしてな・・・キャロの事・・記憶の事気づいてた?」

少し考えながら

「うん・・・何となく・・でもね」
「でも?」
「もう少し甘えて欲しかったな~って。ちょっと残念」

 フェイトの見つめている先ではキャリアがエリオに迫っているのをキャロが慌てて止めに入っていた。

「まだまだ色んな事起こるかもしれないね・・・」
「ほんまに」

 少女達と少年の日々を楽しそうに見つめる2人だった。

FIN

Comments

ima
>錯乱坊様
コメントありがとうございます。家族って何か欠けちゃうと何かが狂ってしまうような危うい中にも強い絆があったりと本当に不思議です。
 アフターストーリーと短編の話が何本かありますので、そちらを読んでいただけるとうれしいです。
2007/10/19 02:58 PM
錯乱坊
完結ですか、お疲れ様でした。
何も失わずに済んで良かったです、次回作期待してます頑張って下さい。
今度は目立たなかったリイン次回は頑張れ。
2007/10/12 01:37 PM

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