第25話「本当の気持ち」

アクシデントのあった無人世界の撮影が終わって
 翌週、撮影の舞台は変わってミッドチルダ、クラナガン郊外にヴィヴィオ達の姿はあった。

「私はなのはちゃんとフェイトちゃんの後輩やね…」

 八神邸のリビングで、この家で撮る最後のシーン。
 戦闘シーンを取る前にあったミッドの撮影スケジュールに入っていたシーン、でも全部の撮影した後の方が気持ちが伝わるだろうという思いからか、いくつかのシーンは後で撮影されることになった。
 
この撮影の前にリインフォースとの別れのシーンを撮影していた。
 異世界、八神家での団らん、はやてのベッドで眠った事を思い出す。

『戻れるよ、ヴィヴィオにも家族やいっぱい友達いるんやから。』
(ううん、やっぱり私は…なれないよ…戻れないよ…)

 居なくなった彼女への気持ちとはやての言葉が胸を刺す。


「そうだね…リインフォースさんの想いははやてちゃんの中にとけたんだから」
「………」
「はやて?」

 涙ぐむ。悲しむ演技をする時は悲しかった事を思い出せばいいと教えてもらっていたけれど…
悲しみから来る想いが次から次へ涙となって溢れ出してくる。
 なのはとフェイトが慌てて駆け寄る。

「泣いて良いと思うよ。」
「お別れは哀しいもの。そんなに無理して急いで強くなることない。」
「今いるのは私達だけ。はやてが守りたい騎士達は今は見てないから。」
「私達がついてる。リインフォースさんもきっと心配したりしないから」

 決まっている台詞だけどその中に2人の気持ちは込められている。だけどそうじゃない…
言えない辛さが更に涙となって溢れていく。
 その時念話が届く。

『1人で背負わなくていいよ…ヴィヴィオ。私も一緒に背負うから…はやてさんとリインフォースさんのこと、私もわかってるから』
『!!』

 顔を上げアリシアの方を見ると彼女は軽く頷いた。


 リインフォースさんに会いたい。はやてさんの、それはきっと小さな願い。でも心から願った想い。


 次元航行部隊が闇の書と化したはやてを消滅させる前に彼女を助ける。
 現地に居たなのはやフェイトだけでなくリンディやクロノ、プレシア、アリシアもそう思っていた。そしてヴィヴィオもそう考えていると疑っていなかった。
 でもヴィヴィオにとってそれは辛く悲しい選択だった。
 はやてを助けると言うことはリインフォースを消滅させなければならない。ジュエルシードには強い願いを叶える力がある。リインフォースが現れる程強く願った彼女の願いに彼女は気づいているのにはやてを助ける為に再び消えて貰わなければならない。

 アリシアがチェントを抱えたままリインフォースへと一直線に向かった時、彼女がアリシア達を排除するのは簡単だった。
でも…

『リインフォースっ選びなさい。望む未来を』

 ヴィヴィオの声を聞いた彼女はアリシア達に手を出さず動かなかった。
 ヴィヴィオはリインフォースに選択できない選択をつきつけていた。
 結果としてはやてを助けることは出来たけれど、それによって背負ってしまった。

『リインフォースを自らの手で消した』
『はやての願いを自らの手で消した』

 はやての親友であるが故、家族にも打ち明けられないもの。
それに気づいてくれた彼女に

「う…わぁぁぁあああああ」

 カメラに撮られている事を忘れ彼女の裾を握りしめ大泣きに泣いた。



「ねぇアリシア、私思い出したんだ。どうしてオリヴィエさんが私と模擬戦をしようとしたのかって…前の日、私オリヴィエさんの鎧を使って行こうとしてたじゃない。アリシアは倒してから行ってって私を止めてくれた。私が間違ってるのを教えてくれた。」

 撮影が終わってヴィヴィオはアリシアと一緒に帰路を歩く。はやて達が送ると言ってくれたが断り2人で最寄りのレールトレインの駅に向かっていた。

「ああ、うん…そんなこともあったね。」
「私にはアリシアが居るって知って私の力を見たくなったんじゃないかな。レリックを使って聖王になってもその力を間違って使っても止めてくれる、間違ってるって言ってくれる人がいる。私がレリックを持っても大丈夫だってオリヴィエさんは考えたんじゃないかな…」
「そんなことないよ。ヴィヴィオの優しさに気づいたからじゃない? 優しすぎるんだよ…」
「そんなこと…」
「ヴィヴィオ気づいてる? 私とママ、チェント、異世界のリインフォースさん、フェイトやなのはさん、はやてさん達、レヴィ、シュテル、ディアーチェにユーリ…ヴィヴィオが戦ってきた相手ってみんな友達になってるんだよ。」
「みんなを包む位優しい人が王様になったらきっと聖王様って呼んじゃうかもね」

 思わずドキッとする。

『…最初に時空転移を使った人って凄く優しい人だったんじゃないかなって思うんです。周りの人が悲しくならないように何度も時空転移を使って頑張ったからみんなが聖王として認めて王様になったんじゃないかって。』

それはヴィヴィオがオリヴィエに話した事と同じ。

「そう…かも知れないね。」
「逆に頼ってくれてもいいんだけどな~私もフェイトもなのはさんもママもはやてさん達も…そう思ってるのに1人で抱え込んじゃうんだから、私達の聖王様は…」

そう言って振り向いた彼女に笑ってごまかす。夕日が差していて良かったと思う。
多分今鏡を見たら真っ赤になっているに違いない。

「なのはさんとフェイトって言えば今夜あたりあるんじゃないかな。」
「あるって? 何が?」
「なのはさんとフェイトからのお話。今日までずっと撮影だったから…何も言わなかったんじゃないかって。」

 思い当たる事は幾つもある。急に足取りが重くなる。

「…今日アリシアのところにお泊まりしていい?」
「いいけど一緒だよ。フェイト、きっと家にくるから。」
「あ~…う~…」
「諦めて帰ろう、私達の家に」
 アリシアから差し出された手。その手をしっかり握って。
「うん♪」

頷いて答えた。

~コメント~
 もしヴィヴィオの世界でMovie2ndA'sが作られたら?
劇中劇のエンディングです。
 伸ばした手が届かないと知って決断を下したら、その辛さはずっと背負っていく事になります。 ヴィヴィオは2人とも助けたくて最後の最後まで何か方法は無いかと考え悩んでいました。 
 もしそんな気持ちがわかるとしたら? 間近で彼女を見つめてきたアリシアだけじゃないかなと思いました。
 次回AgainStory3最終話です。

Comments

Comment Form

Trackbacks