第10話「最初で最後の本気の勝負(前編)」
- リリカルなのはAS > 第3章 最初で最後の本気の勝負
- by ima
- 2013.10.05 Saturday 13:42
「受けてくれない? 私からの挑戦状」
「…じょ…冗談だよね? もーアリシアったら驚かさないでよ。朝から聞いてすっかり目が覚めちゃった。…アリシア…ママ…」
アリシアが私と模擬戦?
朝から驚かそうとしてると思って笑った。しかしアリシアの表情は変わらず、奥で様子を見ていたなのはとソファーでこっちの様子を見ていたフェイトを見ると2人とも静かに頷いた。
ママ達が何も言わないのは既にアリシアから聞いて知っているということ。それはつまり…冗談ではなく…
(本気…なの…?)
。
「…じょ…冗談だよね? もーアリシアったら驚かさないでよ。朝から聞いてすっかり目が覚めちゃった。…アリシア…ママ…」
アリシアが私と模擬戦?
朝から驚かそうとしてると思って笑った。しかしアリシアの表情は変わらず、奥で様子を見ていたなのはとソファーでこっちの様子を見ていたフェイトを見ると2人とも静かに頷いた。
ママ達が何も言わないのは既にアリシアから聞いて知っているということ。それはつまり…冗談ではなく…
(本気…なの…?)
。
「で、でもっどうして私なんかと? まだ魔法の練習始めたばっかりでしょ」
「ごめんね驚かせちゃって。やっぱりびっくりしちゃうよね。私、撮影で魔法色々教えて貰って凄く楽しかったんだ。だから誰かと競いたいな~って、ヴィヴィオとなら学院の練習だけじゃなくてもっといっぱい出来るじゃない♪」
やっと彼女の表情が緩み笑顔になる。
闇の書事件の撮影でアリシアはフェイトを演じた。その時ヴィータとシグナムから魔法指導を受けたのは知っている。
『ヴィヴィオ、お前に勝ちたいそうだ。』
その時、2人から聞いた言葉。私に勝ちたい。彼女の目標は私…
彼女は練習相手をして欲しいのだろう。
「いいよ。模擬戦しても」
そう思ってヴィヴィオは頷いた。
戦闘マニアとまではいかなくても彼女もフェイトの姉、異世界のなのはやフェイトと私が模擬戦をしているのを何度も見て心の何処かでずっと思い焦がれていたのかも知れない。それにアリシアと競えるのは楽しい気もする。
「じゃあご飯食べたら練習場に行こ♪」
「うん。でももう場所は借りてあるんだ。」
「?」
首を傾げた。
「…ここって…撮影の?…」
朝食を食べて部屋に戻り練習着とタオルをスポーツバックに詰めると庭でアリシアが待っていた。転移魔方陣の上でなのはとフェイトも待っている。2人も一緒に来るらしい。
「フェイト、お願い。」
何処に行くのか聞く暇もなく、ヴィヴィオは転移魔法の光に包まれた。
そして降り立ったのは、闇の書事件で撮影に使われた無人世界だった。
「ここならヴィヴィオが全力出しても誰にも迷惑かけないでしょ♪」
「え…全力って…そんな…無理だよ。」
アリシアはまだ魔法を使い始めて数ヶ月、それも戦技魔法の訓練だけなら1ヶ月も満たない。
バリアジャケットで相手するつもりだったからヴィヴィオは流石に慌てて応えようとすると
「遅いっ! どれだけ待たせるのだっ!!」
「待ちくたびれました。」
声の聞こえた方を向くとディアーチェとシュテルが居た。少し離れた所にプレシアやチェント、レヴィとユーリも居る。
「みんな…どうしてここに?」
「ママのお手伝いっていうか私を手伝ってくれてたんだ。もう少し待ってね、あと何人か来るから」
「えっ?」
そう言ってる間に少し離れた場所に魔方陣が現れ中からはやて達が姿を見せた。
「はやてさん、シグナムさん、ヴィータさん、シャマル先生…ザフィーラまで」
「私達もいるですよ」
「うん」
「アリシア、またせたな。ヴィヴィオ私達は見学や、邪魔はせんから見させてな」
「いいえ、私達も来たところです。じゃあはじめよっか♪」
身近な人たちとは言えこれだけ呼んで何を考えているのか? ヴィヴィオは彼女が何を考えているのかわからなくなっていた。
「当たり前だけど、これは模擬戦だから2人とも無茶しちゃだめだよ。魔法ダメージに絞るのは当然。どっちも怪我しないように気をつけて。何かあったら私かフェイトちゃんが直ぐ止める。熱くなりすぎないでね。」
「じゃあ私は鎧を外してっと…RHd」
「ヴィヴィオ、シールドは外さなくていいぞ」
「え、でも…」
「まぁ…戦闘中に必要と思うなら変えていい。」
聖王の鎧があればアリシアがどれだけ魔法を使っても全て防いでしまう。しかしヴィータがそれを止めた。
どうする気だろう? そう思いつつ離れて構える。
何か考えがあるみたいだけどそれがわからない。ヴィヴィオは様子を見てから考える事にした。
「シュテル、どう見るか?」
ヴィヴィオが離れバリアジャケットを纏い、アリシアもヴィヴィオと距離を取る為に歩いている。
「策を弄せず挑めば一瞬で終わるでしょう。ですが戦術がうまくはまれば…勝つ可能性はあります。信じてもよいかと」
昨夜聞いた戦術と彼女の弱点を突く策は理にかなっている。でもそれを実際に実行出来るかと言えばシュテルやディアーチェでも難しい。
「そうか…そうだな。」
「バルディッシュ、お願いね。私も頑張るから」
【Yes Sir】
待機状態から鎌状態に起動し、バリアジャケットを纏い構える。
(ヴィヴィオ…いくよ…)
「始めっ!!」
なのはのかけ声と共に横へ飛んだ。
「始めっ!」
(最初はこれでっ!)
彼女の力量が判らない。牽制を兼ねてシューターを3個作って放つ。バルディッシュを使っているからフェイトと同じ近接戦闘が主体になる筈。であれば速攻で距離を詰めようとするだろう。
だがアリシアは大きく横にジャンプしシューターを避けきってから迫ってきた。
「ハーケンセイバー!!」
水色の刃が放たれる。スピードに乗っていないから避けることも出来る。でもここで魔力の強さを見ようと4つのシューターを連続して撃ち出す。シューターは全て直撃しハーケンセイバーはかき消された。
コアの魔力を元にしているからオリジナル程の威力はない。
「ハァアアアッ!!」
だが、その一瞬を突いて鎌が振り下ろされる。
「!?」
慌てて横に避けようとするが振り下ろした鎌は弧を描き再びヴィヴィオに迫る。
無意識に危険を察し聖王の鎧が展開、しかし水色の魔力刃はそれをすり抜けてきた。紙一重で避け急いで距離を取った。
「凄い…いつの間に。それにあれ何? 鎧がすり抜けるなんて…」
「聖王同士の戦いじゃ聖王の鎧は使えないんだよね。私が何も準備してきてないと思った? ヴィヴィオ、手加減してたら落としちゃうよ♪」
(ヴィータさんが鎧を外す必要無いってこれだったんだ…)
何かの方法を使ってアリシアは鎧を越えて攻撃してきた。言った通り手加減しているとこっちが落とされる。
「RHd…いくよ」
【Yes.Armored module Startup】
虹色の光を作り出し自らの衣を纏い直した。
「聖王同士の戦いでは聖王の鎧は作られない。発生要因はわからないけれど、条件がわかっているなら対策はできる。聖王と認識されるのはヴィヴィオとチェントだけ。アリシアは1人で戦っているんじゃないわ。」
ヴィヴィオの驚く様を見つめながらも険しい表情を崩さないプレシア。
ベルカ聖王の資質を持ち、プレシアですら圧倒される魔法力を持つヴィヴィオと僅かにしか魔導資質を持っていないアリシア。普通に戦えば勝負にすらならない。
それを承知で頼んできた娘に幾つかの策を与えた。
その1つがアリシアのペンダントにあるレリック片を通してチェントの存在を写す事。
聖王の鎧がどんな条件で作り出されるのかは判らない。しかし無効化する方法は判っている。
「まだ始まったばかり…」
高速で動くヴィヴィオにアリシアは迎撃しかできない。聖王の鎧も意味をなさない。
そこで死角をつこうと6個のシューターを放ち彼女真上から
「クロスファイアァァアア」
クロスファイアシュートへ変化させて撃ち出そうとした。だが集束直前にバルディッシュから1発のフォトンランサーが撃ち出され集束が不安定になったヴィヴィオの魔力が爆発、爆風を直に受ける。そこをついて再びアリシアが接近し水色の刃を振り上げる。
ヴィヴィオは刃を掴んで叩き割るがアリシアはそれも予想していて再び作った刃を目の前に突きつけた。
「クロスファイアシュート、魔力弾を集束させて威力調整できる便利な魔法だよね。でも…集束直前に他の魔法を受けたらこんな風になるんだよ。スターライトブレイカーとストライクスターズも一緒。言ったよね、手加減したら落としちゃうよって」
不敵に笑う。
「ここまで上手く進むとは…あれがヴィヴィオの弱点だ。ヴィヴィオはシューターとバスターを主軸に置いた攻撃と近接戦に持ち込み四肢を用いた攻撃に絞られる。同等以上の者が相手であれば近接戦を仕掛けるが相手がアリシアだと負傷する可能性を考え避けている。」
「だからヴィヴィオは中長距離戦に限定されてしまう。ヴィヴィオは既にアリシアの策に陥っている。」
シグナムが2人の戦闘光景を見つめながら語る。
「ティアナのクロスファイアシュート、同時多弾頭タイプなら扱いも容易いがヴィヴィオの使うクロスファイアシュートは集束タイプだ。集束魔法は集束中に異物が入れば崩壊する。無論、スターライトブレイカーもストライクスターズもアリシアには無意味だろう。」
「そうだね…魔法のレパートリーの少なさが災いしたね」
シグナムに同意するなのは。
確かにヴィヴィオの使う魔法は少ないがそう何度も同じ状況を作れる筈がない。
「でも集束なんて1秒もない。そこにどうやって撃ち込むん? いくら先を読んでてもそこまで出来るもんなん?」
はやての問いかけに
「アリシアは何もしていないわ…クロスファイアシュートを無力化しているのはバルディッシュよ。アリシアはヴィヴィオの戦闘記録から集束タイミングを計って、バルディッシュにトリガーを任せたのよ。リンカーコアを通さず、デバイスにコアとプログラムとトリガー、魔法発動に必要な全てを預けているからアリシアが命令を送らなくても集束の前兆があれば撃っている。 コアにこんな使い方があったなんて…」
魔法は術者がプログラムを構成し、リソースとなるデバイスと体内のリンカーコアを通して得た魔力を用いて発動させる。
魔力コアが入ったインテリジェントデバイスであればリソースに予めプログラムを入れて発動条件を設定しておけば術者の状況に関わらず条件が揃った時に発動する。
「そんな応用の効かん戦い方ヴィヴィオにしか…」
そこまで言ってはやては悟った。
「アリシアはヴィヴィオに勝ちたいんやな…他の誰でもない…ヴィヴィオだけに」
彼女が向き合いたいのはヴィヴィオだとはやても聞いていた。
だからヴィヴィオに勝つ事だけに限定した能力
「私の動き…読まれてる…」
アリシアは魔導師ではない。デバイスも試作デバイスだから魔導師ランクすら持っていない。でも彼女は今まで戦ってきた中で1番難い相手だと感じていた。
親友だからじゃない。魔法も動きの先も読まれている。近接戦をすれば魔法ダメージは勿論、拳や蹴りといった物理ダメージを与える事になる。彼女は魔力が無いも等しいからジャケットの防御機能だけでは1撃でも食らえば怪我をさせてしまう。
こうなれば読まれない動きをするか反応出来ない速度で彼女を1撃で落とすしかない。
「レリック封印解除、ユニゾンインッ!!」
「もう…やっと本気になった。バルディッシュ、私達も」
【Blazeform Startup】
ヴィヴィオの魔力光が変わったのを見て自らもブレイズフォームへと切り替える。
防御特性は高いけれど魔法力が圧倒的に違うのだから1撃で落とされる。少々防御が低いジャケットに切り替えたところで影響は無い。
「バルディッシュ、モード2お願い。」
更にブレイズフォームの特徴である巨大な剣が2本の短刀に変化させ持ち直す。そして魔力が空になったコアを外し新たなコアをセットする。カートリッジシステムの応用だ。
「あれってお父さん達の…」
アリシアの構えを見て思わず呟く。アリシアがバルディッシュの形状を変えた姿は昔見た士郎や恭也、美由希達の剣術の構え。
「悪あがきよ、身体能力を魔法力で強化して動きを補助させている。」
「増幅と補助って…そんな無茶な魔法…プレシアさんっ!」
「そこまで強い魔法じゃないわ…明日は筋肉痛で動けないでしょうけどその程度よ…」
フェイトのバルディッシュが高速近接戦、中でも攻撃特化しているのであればアリシアのバルディッシュは同じ高速近接戦でも防御を重視している。
その1つの形がこれだった。
バルディッシュを基にアリシア専用のデバイスを作る際、コンセプトを組み直しザンバーフォームを見直した。大剣だと広範囲に大打撃を与えられるが大振りになり隙も増え魔力消費も激しくアリシアには使えない。
そこを思案していた時、海鳴市で暮らす高町士郎と彼の息子、娘が納めている剣術を参考にした。
「ここから本番だね。バルディッシュ」
【Yes.Sir】
彼女が動いたのと同時にアリシアも動いた。
「こんな…戦い方なんて…」
2人の軌跡を目で追いながらフェイトはつぶやいた。
決して高度な空中戦とは言えない。ヴィヴィオに対するアリシアの戦い方は褒められたものではかなった。それでも必死さだけは伝わってくる。
隣でなのはも真剣な眼差しで見つめている。
アリシアがヴィヴィオと模擬戦をして勝ちたいと聞いた時真っ先に止めようと考えたのはフェイトだった。
ヴィヴィオとの魔法力の差もそうだけれど、戦技魔法の訓練を受けていない彼女に全く勝機が見えなかったからだ。もし戦闘で後に残る怪我でもしたらヴィヴィオは自分を責め、2人の関係は戻らない。
何よりフェイト自身、家族が目の前でそんな危険な賭けに出るのを黙っていられない。
でもアリシアは諦めようとしなかった。ヴィヴィオがどうして戦技魔法や勉強を必死になってしているのか理由を聞いたからだ。
例えフェイトが説得して止めようとしても彼女はその場でははいと答えて止めるだろうがいつかどこかで挑むだろう。
ヴィヴィオがもう少し大きくなって聖王教会を目指すなら応援する。でも今彼女が望もうとしているのは明らかに力を欲しているだけでその求め方はアリシアの言う通り間違っている。
「ヴィヴィオにとって闇の書-リインフォースさんを消したのは自分の力不足だからだって…私がヴィヴィオみたいにあの魔法が使えたら…」
それを考えたらヴィヴィオがその考えに至った事を責められない。
フェイトが出来る事があるとするなら誰よりも1番バルディッシュと共に居たフェイト自身が彼女にデバイスの使い方を教え2人とも怪我をせずに模擬戦を終わらせる事。
「ダァァアアアアッ!!」
「ハァアアアッ!!」
白色と水色の軌跡が空に描かれる。
~コメント~
ヴィヴィオとアリシアの勝負。
アリシアの願いは強くなる事ではなく「ヴィヴィオに勝ちたい」だけです。
一方でヴィヴィオは彼女の真意を測りかねています。得意魔法が無効化された時点でアリシアを無傷で落とそうとしています。
高町親子の剣技流派云々については組み入れるべきかと悩みましたが、アリシアがコアに頼らないと魔法が使えない状態でフェイトのザンバーフォームは無理があるんじゃないか?という方向から燃費が良くて、プレシアと桃子・士郞が友人関係なのも踏まえて用いました。
「ごめんね驚かせちゃって。やっぱりびっくりしちゃうよね。私、撮影で魔法色々教えて貰って凄く楽しかったんだ。だから誰かと競いたいな~って、ヴィヴィオとなら学院の練習だけじゃなくてもっといっぱい出来るじゃない♪」
やっと彼女の表情が緩み笑顔になる。
闇の書事件の撮影でアリシアはフェイトを演じた。その時ヴィータとシグナムから魔法指導を受けたのは知っている。
『ヴィヴィオ、お前に勝ちたいそうだ。』
その時、2人から聞いた言葉。私に勝ちたい。彼女の目標は私…
彼女は練習相手をして欲しいのだろう。
「いいよ。模擬戦しても」
そう思ってヴィヴィオは頷いた。
戦闘マニアとまではいかなくても彼女もフェイトの姉、異世界のなのはやフェイトと私が模擬戦をしているのを何度も見て心の何処かでずっと思い焦がれていたのかも知れない。それにアリシアと競えるのは楽しい気もする。
「じゃあご飯食べたら練習場に行こ♪」
「うん。でももう場所は借りてあるんだ。」
「?」
首を傾げた。
「…ここって…撮影の?…」
朝食を食べて部屋に戻り練習着とタオルをスポーツバックに詰めると庭でアリシアが待っていた。転移魔方陣の上でなのはとフェイトも待っている。2人も一緒に来るらしい。
「フェイト、お願い。」
何処に行くのか聞く暇もなく、ヴィヴィオは転移魔法の光に包まれた。
そして降り立ったのは、闇の書事件で撮影に使われた無人世界だった。
「ここならヴィヴィオが全力出しても誰にも迷惑かけないでしょ♪」
「え…全力って…そんな…無理だよ。」
アリシアはまだ魔法を使い始めて数ヶ月、それも戦技魔法の訓練だけなら1ヶ月も満たない。
バリアジャケットで相手するつもりだったからヴィヴィオは流石に慌てて応えようとすると
「遅いっ! どれだけ待たせるのだっ!!」
「待ちくたびれました。」
声の聞こえた方を向くとディアーチェとシュテルが居た。少し離れた所にプレシアやチェント、レヴィとユーリも居る。
「みんな…どうしてここに?」
「ママのお手伝いっていうか私を手伝ってくれてたんだ。もう少し待ってね、あと何人か来るから」
「えっ?」
そう言ってる間に少し離れた場所に魔方陣が現れ中からはやて達が姿を見せた。
「はやてさん、シグナムさん、ヴィータさん、シャマル先生…ザフィーラまで」
「私達もいるですよ」
「うん」
「アリシア、またせたな。ヴィヴィオ私達は見学や、邪魔はせんから見させてな」
「いいえ、私達も来たところです。じゃあはじめよっか♪」
身近な人たちとは言えこれだけ呼んで何を考えているのか? ヴィヴィオは彼女が何を考えているのかわからなくなっていた。
「当たり前だけど、これは模擬戦だから2人とも無茶しちゃだめだよ。魔法ダメージに絞るのは当然。どっちも怪我しないように気をつけて。何かあったら私かフェイトちゃんが直ぐ止める。熱くなりすぎないでね。」
「じゃあ私は鎧を外してっと…RHd」
「ヴィヴィオ、シールドは外さなくていいぞ」
「え、でも…」
「まぁ…戦闘中に必要と思うなら変えていい。」
聖王の鎧があればアリシアがどれだけ魔法を使っても全て防いでしまう。しかしヴィータがそれを止めた。
どうする気だろう? そう思いつつ離れて構える。
何か考えがあるみたいだけどそれがわからない。ヴィヴィオは様子を見てから考える事にした。
「シュテル、どう見るか?」
ヴィヴィオが離れバリアジャケットを纏い、アリシアもヴィヴィオと距離を取る為に歩いている。
「策を弄せず挑めば一瞬で終わるでしょう。ですが戦術がうまくはまれば…勝つ可能性はあります。信じてもよいかと」
昨夜聞いた戦術と彼女の弱点を突く策は理にかなっている。でもそれを実際に実行出来るかと言えばシュテルやディアーチェでも難しい。
「そうか…そうだな。」
「バルディッシュ、お願いね。私も頑張るから」
【Yes Sir】
待機状態から鎌状態に起動し、バリアジャケットを纏い構える。
(ヴィヴィオ…いくよ…)
「始めっ!!」
なのはのかけ声と共に横へ飛んだ。
「始めっ!」
(最初はこれでっ!)
彼女の力量が判らない。牽制を兼ねてシューターを3個作って放つ。バルディッシュを使っているからフェイトと同じ近接戦闘が主体になる筈。であれば速攻で距離を詰めようとするだろう。
だがアリシアは大きく横にジャンプしシューターを避けきってから迫ってきた。
「ハーケンセイバー!!」
水色の刃が放たれる。スピードに乗っていないから避けることも出来る。でもここで魔力の強さを見ようと4つのシューターを連続して撃ち出す。シューターは全て直撃しハーケンセイバーはかき消された。
コアの魔力を元にしているからオリジナル程の威力はない。
「ハァアアアッ!!」
だが、その一瞬を突いて鎌が振り下ろされる。
「!?」
慌てて横に避けようとするが振り下ろした鎌は弧を描き再びヴィヴィオに迫る。
無意識に危険を察し聖王の鎧が展開、しかし水色の魔力刃はそれをすり抜けてきた。紙一重で避け急いで距離を取った。
「凄い…いつの間に。それにあれ何? 鎧がすり抜けるなんて…」
「聖王同士の戦いじゃ聖王の鎧は使えないんだよね。私が何も準備してきてないと思った? ヴィヴィオ、手加減してたら落としちゃうよ♪」
(ヴィータさんが鎧を外す必要無いってこれだったんだ…)
何かの方法を使ってアリシアは鎧を越えて攻撃してきた。言った通り手加減しているとこっちが落とされる。
「RHd…いくよ」
【Yes.Armored module Startup】
虹色の光を作り出し自らの衣を纏い直した。
「聖王同士の戦いでは聖王の鎧は作られない。発生要因はわからないけれど、条件がわかっているなら対策はできる。聖王と認識されるのはヴィヴィオとチェントだけ。アリシアは1人で戦っているんじゃないわ。」
ヴィヴィオの驚く様を見つめながらも険しい表情を崩さないプレシア。
ベルカ聖王の資質を持ち、プレシアですら圧倒される魔法力を持つヴィヴィオと僅かにしか魔導資質を持っていないアリシア。普通に戦えば勝負にすらならない。
それを承知で頼んできた娘に幾つかの策を与えた。
その1つがアリシアのペンダントにあるレリック片を通してチェントの存在を写す事。
聖王の鎧がどんな条件で作り出されるのかは判らない。しかし無効化する方法は判っている。
「まだ始まったばかり…」
高速で動くヴィヴィオにアリシアは迎撃しかできない。聖王の鎧も意味をなさない。
そこで死角をつこうと6個のシューターを放ち彼女真上から
「クロスファイアァァアア」
クロスファイアシュートへ変化させて撃ち出そうとした。だが集束直前にバルディッシュから1発のフォトンランサーが撃ち出され集束が不安定になったヴィヴィオの魔力が爆発、爆風を直に受ける。そこをついて再びアリシアが接近し水色の刃を振り上げる。
ヴィヴィオは刃を掴んで叩き割るがアリシアはそれも予想していて再び作った刃を目の前に突きつけた。
「クロスファイアシュート、魔力弾を集束させて威力調整できる便利な魔法だよね。でも…集束直前に他の魔法を受けたらこんな風になるんだよ。スターライトブレイカーとストライクスターズも一緒。言ったよね、手加減したら落としちゃうよって」
不敵に笑う。
「ここまで上手く進むとは…あれがヴィヴィオの弱点だ。ヴィヴィオはシューターとバスターを主軸に置いた攻撃と近接戦に持ち込み四肢を用いた攻撃に絞られる。同等以上の者が相手であれば近接戦を仕掛けるが相手がアリシアだと負傷する可能性を考え避けている。」
「だからヴィヴィオは中長距離戦に限定されてしまう。ヴィヴィオは既にアリシアの策に陥っている。」
シグナムが2人の戦闘光景を見つめながら語る。
「ティアナのクロスファイアシュート、同時多弾頭タイプなら扱いも容易いがヴィヴィオの使うクロスファイアシュートは集束タイプだ。集束魔法は集束中に異物が入れば崩壊する。無論、スターライトブレイカーもストライクスターズもアリシアには無意味だろう。」
「そうだね…魔法のレパートリーの少なさが災いしたね」
シグナムに同意するなのは。
確かにヴィヴィオの使う魔法は少ないがそう何度も同じ状況を作れる筈がない。
「でも集束なんて1秒もない。そこにどうやって撃ち込むん? いくら先を読んでてもそこまで出来るもんなん?」
はやての問いかけに
「アリシアは何もしていないわ…クロスファイアシュートを無力化しているのはバルディッシュよ。アリシアはヴィヴィオの戦闘記録から集束タイミングを計って、バルディッシュにトリガーを任せたのよ。リンカーコアを通さず、デバイスにコアとプログラムとトリガー、魔法発動に必要な全てを預けているからアリシアが命令を送らなくても集束の前兆があれば撃っている。 コアにこんな使い方があったなんて…」
魔法は術者がプログラムを構成し、リソースとなるデバイスと体内のリンカーコアを通して得た魔力を用いて発動させる。
魔力コアが入ったインテリジェントデバイスであればリソースに予めプログラムを入れて発動条件を設定しておけば術者の状況に関わらず条件が揃った時に発動する。
「そんな応用の効かん戦い方ヴィヴィオにしか…」
そこまで言ってはやては悟った。
「アリシアはヴィヴィオに勝ちたいんやな…他の誰でもない…ヴィヴィオだけに」
彼女が向き合いたいのはヴィヴィオだとはやても聞いていた。
だからヴィヴィオに勝つ事だけに限定した能力
「私の動き…読まれてる…」
アリシアは魔導師ではない。デバイスも試作デバイスだから魔導師ランクすら持っていない。でも彼女は今まで戦ってきた中で1番難い相手だと感じていた。
親友だからじゃない。魔法も動きの先も読まれている。近接戦をすれば魔法ダメージは勿論、拳や蹴りといった物理ダメージを与える事になる。彼女は魔力が無いも等しいからジャケットの防御機能だけでは1撃でも食らえば怪我をさせてしまう。
こうなれば読まれない動きをするか反応出来ない速度で彼女を1撃で落とすしかない。
「レリック封印解除、ユニゾンインッ!!」
「もう…やっと本気になった。バルディッシュ、私達も」
【Blazeform Startup】
ヴィヴィオの魔力光が変わったのを見て自らもブレイズフォームへと切り替える。
防御特性は高いけれど魔法力が圧倒的に違うのだから1撃で落とされる。少々防御が低いジャケットに切り替えたところで影響は無い。
「バルディッシュ、モード2お願い。」
更にブレイズフォームの特徴である巨大な剣が2本の短刀に変化させ持ち直す。そして魔力が空になったコアを外し新たなコアをセットする。カートリッジシステムの応用だ。
「あれってお父さん達の…」
アリシアの構えを見て思わず呟く。アリシアがバルディッシュの形状を変えた姿は昔見た士郎や恭也、美由希達の剣術の構え。
「悪あがきよ、身体能力を魔法力で強化して動きを補助させている。」
「増幅と補助って…そんな無茶な魔法…プレシアさんっ!」
「そこまで強い魔法じゃないわ…明日は筋肉痛で動けないでしょうけどその程度よ…」
フェイトのバルディッシュが高速近接戦、中でも攻撃特化しているのであればアリシアのバルディッシュは同じ高速近接戦でも防御を重視している。
その1つの形がこれだった。
バルディッシュを基にアリシア専用のデバイスを作る際、コンセプトを組み直しザンバーフォームを見直した。大剣だと広範囲に大打撃を与えられるが大振りになり隙も増え魔力消費も激しくアリシアには使えない。
そこを思案していた時、海鳴市で暮らす高町士郎と彼の息子、娘が納めている剣術を参考にした。
「ここから本番だね。バルディッシュ」
【Yes.Sir】
彼女が動いたのと同時にアリシアも動いた。
「こんな…戦い方なんて…」
2人の軌跡を目で追いながらフェイトはつぶやいた。
決して高度な空中戦とは言えない。ヴィヴィオに対するアリシアの戦い方は褒められたものではかなった。それでも必死さだけは伝わってくる。
隣でなのはも真剣な眼差しで見つめている。
アリシアがヴィヴィオと模擬戦をして勝ちたいと聞いた時真っ先に止めようと考えたのはフェイトだった。
ヴィヴィオとの魔法力の差もそうだけれど、戦技魔法の訓練を受けていない彼女に全く勝機が見えなかったからだ。もし戦闘で後に残る怪我でもしたらヴィヴィオは自分を責め、2人の関係は戻らない。
何よりフェイト自身、家族が目の前でそんな危険な賭けに出るのを黙っていられない。
でもアリシアは諦めようとしなかった。ヴィヴィオがどうして戦技魔法や勉強を必死になってしているのか理由を聞いたからだ。
例えフェイトが説得して止めようとしても彼女はその場でははいと答えて止めるだろうがいつかどこかで挑むだろう。
ヴィヴィオがもう少し大きくなって聖王教会を目指すなら応援する。でも今彼女が望もうとしているのは明らかに力を欲しているだけでその求め方はアリシアの言う通り間違っている。
「ヴィヴィオにとって闇の書-リインフォースさんを消したのは自分の力不足だからだって…私がヴィヴィオみたいにあの魔法が使えたら…」
それを考えたらヴィヴィオがその考えに至った事を責められない。
フェイトが出来る事があるとするなら誰よりも1番バルディッシュと共に居たフェイト自身が彼女にデバイスの使い方を教え2人とも怪我をせずに模擬戦を終わらせる事。
「ダァァアアアアッ!!」
「ハァアアアッ!!」
白色と水色の軌跡が空に描かれる。
~コメント~
ヴィヴィオとアリシアの勝負。
アリシアの願いは強くなる事ではなく「ヴィヴィオに勝ちたい」だけです。
一方でヴィヴィオは彼女の真意を測りかねています。得意魔法が無効化された時点でアリシアを無傷で落とそうとしています。
高町親子の剣技流派云々については組み入れるべきかと悩みましたが、アリシアがコアに頼らないと魔法が使えない状態でフェイトのザンバーフォームは無理があるんじゃないか?という方向から燃費が良くて、プレシアと桃子・士郞が友人関係なのも踏まえて用いました。
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