第12話「道標(彼女)への誓い」
- リリカルなのはAS > 第3章 最初で最後の本気の勝負
- by ima
- 2013.10.20 Sunday 09:10
「ん…? ここは?」
目覚めたら見慣れた天井が広がっていた。プレシアの研究所に運ばれたらしい。
「アリシア…良かった…失敗したんじゃないかって…もう起きないんじゃないかって凄く怖かったんだからっ!」
「ヴィヴィオ…」
体を起こす前にヴィヴィオに抱きつかれアリシアは自分に何が起きたのかを思い出した。
「…ごめんね…ヴィヴィオ…」
目覚めたら見慣れた天井が広がっていた。プレシアの研究所に運ばれたらしい。
「アリシア…良かった…失敗したんじゃないかって…もう起きないんじゃないかって凄く怖かったんだからっ!」
「ヴィヴィオ…」
体を起こす前にヴィヴィオに抱きつかれアリシアは自分に何が起きたのかを思い出した。
「…ごめんね…ヴィヴィオ…」
セイクリッドブレイザー、異世界のヴィヴィオが使った『ミッドチルダ式の魔法』…
ヴィヴィオは古代ベルカ式の騎士でデバイスも古代ベルカ式魔法用にカスタマイズされている。でも彼女は最後にミッドチルダ式の魔法を使った。
…古代ベルカとミッドのハイブリッド。
異なる魔法体系を扱う事がどれ程大変な事なのかはアリシアも知っている。プログラムや術式展開も全く違うのだから何もかも最初から構成し直さなければならない。
(なんだ…そうだったんだ…)
抱きついて泣いてくれる親友の背を優しくさすりながら、彼女が何をしようとしていたのか気づいた。
陽が落ちて夕暮れから夜の静けさが漂って来た頃
ヴィヴィオは目覚めたアリシアを車椅子に乗せて外に連れ出した。彼女の後になのはやプレシア達、ディアーチェ達もついてくる。
「なのはママ、みんなに連絡してくれた?」
「うん♪ もうみんな来てるんじゃないかな」
その頃、聖王教会近くの草原に数枚のレジャーシートが引かれその上で語らう者、用意された料理を食べる者。
その中で幾つかのカメラを浮かべるスバルの姿があった。
「それどうするの?」
「うん…ここに来たくても来られない人もいるから。なのはさんに中継してって頼まれたんだ。ティアも手伝って。」
「スバルさん、僕も手伝います。」
「私も」
「ありがと、じゃあエリオとキャロはこっちをお願い。」
「「はいっ」」
「それにしてもなのはさん、私達をここに呼んで何の用かしら? 夜にピクニックの用意して待っててって」
ティアナが首を傾げる。
「ヴィヴィオが何かするんじゃない? ちょっと前にヴィヴィオが私の所に遊びに来て聞かれたんだ。『私がどうして近代ベルカ式を選んだのか?』って」
「えっ?」
「スバルさん、スバルさんはどうして近代ベルカ式を選んだんですか?」
数日前、ヴィヴィオが港湾警備隊の隊舎を訪れた。
ヴォルツの指示でスバルが訓練施設を案内していると彼女が聞いてきた。
「私?」
「スバルさんはなのはママを目指して魔導師になったんですよね。どうしてママと同じミッドチルダ式を使おうって思わなかったんですか?」
唐突に聞かれたスバルは少し考えてから胸のペンダント-デバイスを見せる。
「私のリボルバーナックル、母さんの形見なんだ。私が右でギン姉が左。なのはさんみたいになりたいって思ってミッドチルダ式の魔法を覚えようかなって思った事もあったけど、色んな魔法に手を伸ばす前に母さんのデバイスをちゃんと使える様になりたいって思ったんだ。」
「ご、ごめんなさい…」
突然ヴィヴィオが謝った。どうも彼女は違う意味に取ったらしい。
「そうじゃないよ。母さん、地上本部でも凄かったんだ。時々ギン姉から借りて両手で訓練してるんだけど、ちゃんと使えない。私もまだまだなんだって思い知らされちゃった。ヴィヴィオ、どうしてそんな事聞くの?」
「…私もママ達みたいにミッド式の魔法を覚えた方がいいのかなって…」
「え~勿体ないよ。確かにヴィヴィオの魔法ってヴィヴィオしか使えない魔法もあるけど、逆に言っちゃえばヴィヴィオだから使える魔法なんだよ。」
「!! 私…だから…」
「でも…ちょっとわかるかな。同じ魔法だったらアドバイスも貰えるし、一緒に練習もできるし…私もティアやエリオの魔法いいな~って思った事あるもん。」
「ゆっくり考えてみたら? それでもミッド式の魔法を覚えたいって思うんだったらなのはさんに相談してみなよ。ヴィヴィオが教えて欲しいって頼んだらきっと大丈夫♪」
「…そうですね。でもママの練習厳しそう~」
少し気が楽になったのか、笑って答える。
「アハハハッ、そうだね。」
彼女が何を思って別の魔法体系を覚えたいと言ったのかはわからない。でも何か理由があってその理由を彼女の母に伝えたら、きっと彼女は力になってくれる。
スバルにはその確信があった。
「そっか、そんな事があったんだ。それで今日…だから何か見せてくれるんじゃないかって思った訳ね。」
「そういうこと♪」
「そろそろいいかな…見ててアリシア」
ヴィヴィオがバリアジャケットを纏ってそのまま飛び立つ。軌跡を描いて下りたのは少し遠くにある丘の上に降り立った。
いったい何をするつもりだろうか。首を傾げていたが次の瞬間わかった。
何個かの魔法弾が空へあがり上空で虹色の花を咲かせた。
続けて幾つも放たれる。
「…花火…」
「…綺麗…」
昔、ジュエルシード事件の後フェイトとアルフの契約記念日になのはがお祝いした方法。
「綺麗…なのはのも綺麗だったけど、ヴィヴィオのも…」
「私じゃ1色しか出せないけど、ヴィヴィオは虹色だから凄く綺麗に見えるんじゃないかって思ってたんだ。」
「たまや~♪…って言ってもわからんか…。アリシア、花火にはな幾つかの意味があるんよ。人の想いを託して打ち上げるとか…亡き人を偲ぶとか…な」
「想いを託して…亡き人を偲ぶ…」
ヴィヴィオにとって亡き人というのは誰なのか…
オリヴィエ・ゼーゲブレヒトと…リインフォース
「真正古代ベルカ式って固有スキルと近接特化が集まった魔法体系やから応用して何か別の魔法を作ろうとしても処理が重くなるだけなんよ。ヴィヴィオもなのはちゃんのストライクスターズを使った時に気づいたんやろな。」
「それとこれはヴィヴィオから聞いたんだけど、去年ヴィヴィオが異世界に行っちゃって異世界のヴィヴィオがこっちに来ちゃった事があったじゃない。あっちのヴィヴィオはベルカ式とミッドの両方を使うハイブリッドだったんだって。それで自分もミッドチルダ式の魔法が使えるんじゃないかって思ってたみたい。ミッド式の方が支援、補助、回復系の魔法も多いからね。個人資質みたいなものもあんまり無いし。」
「ヴィヴィオのデバイス、RHdには変換したレイジングハートのシステムコピーが入ってる。あとは自分が頑張ればって思ってたみたい。でも授業中に別の事に集中してたのは注意したけどね。」
「何処かの誰かもしていたよね。」
フェイトに言われてなのはが頬を染める。
「それを貴様は勘違いしたのだ…全く騒がせおってからに…」
「そうかも知れませんが、秘密にしていたヴィヴィオにも非が無い訳ではありません。素直になのはやフェイト、アリシアに話せばこれほどの騒動にもならなかったでしょう。」
ディアーチェの指摘に頷き、シュテルの突っ込みに苦笑する。
「そうだぞ~! 最初聞いてすっごく驚いたんだから」
「でもヴィヴィオも気づいたでしょう。一緒に歩いてくれる友達がいるよって」
レヴィの少し怒った顔を見て笑い、ユーリの言葉に頷く。
なのはとフェイト、はやては互いの顔を見る。本気でぶつかったからこそ今でも近くに居てくれる人がいる。彼女達はそれを知っている。だから誰も止めずにいてくれた
再び夜空を見る。
もうすぐ夏が来る。
何も強くなるだけが力じゃない。
『ヴィヴィオ…あなたはあなたの願う未来を進んでください。ゆりかごの聖王…ベルカ聖王の末裔という枷に捕らわれず、話してくれた転移の始祖の思いを持って…一人のヴィヴィオとして。それが私の願いです。』
…オリヴィエが消える前に言った言葉…
【思いつめずに気楽にね♪ A.T】
…異世界の私が私に残してくれたメッセージ…
『もっと…うまく使えなくちゃいけないんだ…オリヴィエさんみたいに…』
…ヴィヴィオが目指しているのは聖王じゃない。もっと…ずっと遠くを見てるんだ…
夜空に開く幾つもの花を見ていると自然に涙が零れていた。
「RHd、まだまだいっぱいいくよ~。」
「All Right」
レリックと融合し更に魔法球を作り出す。
夜空に咲いていた花の彩りが少しずつ変わっていく、赤、青、橙、紫、黄、緑、そして水色
夜空に咲く色とりどりの花。
それを見上げるスバルやティアナ、シートの上でその光を肴に酒をのむゲンヤと見とれるノーヴェ達。
そしてレリックとの融合を解除、騎士甲冑も外しバリアジャケット姿に戻って
「これが最後っ」
【いっけぇぇぇっっ♪】
【StarlightBreaker】
「スターライトッブレイカー」
さっきまで撃った魔力を一気に集め、空へ打ち上げ
「ブレイクっ!」
ひときわ大輪の花が開かせた。
荒い息を整える。夜空に静寂が戻っていく。
「…ねぇ、RHd…リインフォースさんとオリヴィエさん、見てくれたかな?」
【Yes, surely】
「オリヴィエさん、私…まだ何になりたいかわかりません。」
「アリシアやリオ、コロナ…友達ともっと一緒に遊びたいし、無限書庫の司書も続けたい。ママ達みたいに管理局のお仕事をするとか教会のお仕事にも興味あるけど、いつか本当にしたい事を見つけたいって思ってます。それが、私の本当の未来になるから」
「リインフォースさん、リインフォースさんが時空転移が強くで怖い魔法だって教えてくれなかったら私、時空転移をもっと簡単にいっぱい使ってたと思います。私がもっとしっかり魔法が使えていたらリインフォースさんの居る時間も出来たと思います。…そう思って魔法を使おうかって何度も考えました。でも…もう使いません。それがリインフォースさんの想いだって判ったから…はやてさんやみんなのこと…私の事も見てて下さいね。」
空の向こうに居るであろう彼女達に向かって言った。
そして―翌朝
「おはよ~なのはママ、フェイトママ」
「おはようヴィヴィオ」
「おはよう、昨日はお疲れ様」
ヴィヴィオが登校準備をしてリビングに下りてくる。
「見てみて、凄いことになってるよ。」
「アレ?」
なのはに言われてテレビを見た瞬間凍り付いた。
昨夜のミッドチルダ北部に突如として打ち出された砲撃魔法について報道されていたのだ。
教会本部を狙ったテロとか何かの神託、超常現象ではという発言も聞いて取れる。結界を張るのを忘れていた。そういえば魔法使用許可も…取っていない。
「ど…どうしよう…」
「大丈夫じゃないかな…きっと」
青くなって震えるヴィヴィオになのはが苦笑いして答えた。
「ご迷惑をおかけしてすみませんでした。」
その頃、地上本部のある部署から頭を下げはやてが出てくる。
「さて次は…首都航空隊、地区担当の部隊と教会本部…やね」
関係各所に趣き頭を下げにまわっていた。
ミッドチルダで魔法使用禁止の地域で申請を行わずに砲撃魔法と集束砲を何度も使ったら何が起こるか?
ヴィヴィオの魔法を見た時からこうなるのはわかっていた。でも止めなかった。
「はやてちゃんどうしてヴィヴィオに言わなかったんですか? 魔法使用禁止エリアで許可も取ってないって。教えて貰ったらヴィヴィオも使わなかったですよ?」
リインがはやての横で首を傾げる。
「止められへんよ、リインフォースの為にしてくれたんやから。これ位かわいいもんやろ♪」
そう答えた彼女の顔は晴れやかだった。
~コメント~
ちょっと時季外れな話になってしまいましたが、SS中での時間経過も含めて楽しんで頂ければと思います。
ASシリーズは各話毎に少しずつ時間が経っています。
最近の話ですと
AffectStory・AffectStory~刻の移り人は新暦78年の秋~冬にかけて。(Side-NやFの時期あたりにMovie1st制作秘話が重なっています)
AgainStory3は新暦79年4月~6月初旬となっていて
今話はそれから1週間後くらいな話です。
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