第19話「ライトニングvsライトニング」

「アリシア、フォローありがとう」

 デュエルが終わり、ヴィヴィオはプロトタイプシミュレーターから出てきたアリシアに声をかけた。

「ううん、私こそありがとね。」

 パンっと音を立ててハイタッチをする。
 アミタ&キリエとのデュエルは1:2で負けてしまった。それでもユーリ・レヴィ・キリエ・アミタとのデュエルでブレイブデュエルがどんな物なのか理解出来た。
 魔法と呼ばれるスキルカードはデッキに入っていて更に起動させた分しか使えない。しかしその条件の中であれば直ぐに使えるらしいが起動だけさせておけばというのはここでは誰もしていない。
 思い出せばここで会った全員がスキルを使う直前になって起動させている。
 起動させる感覚は複数のプログラムを構成した状態で保持する感覚に似ている。飛行魔法やクロスファイアシュート・検索魔方陣を使うヴィヴィオにとって出来て当然のもので、アリシアも2つまでは難なく使っていた。

「まさかここまで強いなんて、ビックリです。」
「本当よ、こんなに強いんだったら貸さなきゃ良かったわ~」

 アミタとキリエもシミュレーターから出てきて手を差し出した。

「ありがとうございました。凄く楽しかったです。」

 そう言って彼女と握手する。キリエとアリシアも握手はしていないけれど会釈をしている。

「次は誰とデュエルするんです?」

 レヴィ&キリエ、キリエ&アミタと3戦ずつしたから次はレヴィ&アミタかユーリとか?

「それなんですが、ブレイブデュエルのショップ合同イベント勝ち抜きデュエルが始まるんです。ヴィヴィオ、アリシア参加してみませんか? 2人ならトップデュエリストが競うACEでも十分戦えますよ。」

「今日は私達も参加します。一緒に出てみませんか?」

 嬉しそうに持ちかけるアミタと部屋に入ってきたシュテル。

「アミタさん、シュテル…」 
「私は参加してもいいけど?」

 少し考える。
 ブレイブデュエルの事はある程度判ったけれど、もう少し色々試してみたい。
 強いプレイヤーがいっぱい居て対戦出来るのは楽しそうだとも思う。でも…

「ごめんなさい、私、アリシアの応援してます。」

 頭を下げ謝った。

「ええっ!? どうしてですか?」
「折角遊びに来たのに~」

 断られるとは思ってなかったアミタとキリエは驚き酷く残念そうに言う。

「訳を教えて貰えますか?」

 シュテルは声から怒っているのが伝わってくる…少し怖い。

「強いプレイヤーさん、トップデュエリストの子達って凄くブレイブデュエルが好きだから強くなったんだと思うんです。そんな中で私達だけズルしたって思われちゃったら、ブレイブデュエルを嫌いになっちゃうんじゃないでしょうか。」
「ズルって?」

 アミタが聞き返す。

「私達は皆さんにカードを借りているからです。Rってレアカードでしょう? R+はそれよりレアなカードで簡単に手に入れられないカードですよね。今日借りたカードを全部集めようとしたら何日位かかるか判りませんけど1週間とかそんなんじゃ集められないと思うんです。」
「そうね~」
「確かに…私達は開発時からのテストプレイヤーでもありますからRやR+はそれ程貴重だとも思っていませんでした。」

 キリエとシュテルも頷く。

「私とアリシアがブレイブデュエルを始めて1週間くらいです。そんな私達が今日使ったカードを持っていたら、ここか八神堂、T&Hで内緒で貰ったんだと勘違いされちゃうんじゃないでしょうか?」
「でもそのカードは貸したって…」
「それは私達の中での話です。他のデュエリストから見れば…勘違いされても仕方ありません。ヴィヴィオの言う通り不正と思われたら…嫌いになるかも知れませんね。」

 アミタの言葉をシュテルが抑える。

「………」
「ズルだって思われちゃうのもだけど、ブレイブデュエルを嫌いになられちゃうのも嫌だね。ごめんなさい。私もみんなを応援してます。」

 アリシアがペコリと頭をさげる。

『僕もヴィヴィオ君が正しいと思うよ。じゃあ今日テストを手伝ってくれたお礼として1枚ずつ今使っているカードと同じカードを進呈するのはどうだろう。テストをしてくれた正当な報酬として。それを使って参加してみてはどうだい?』

 その時グランツの声がスピーカーを通して聞こえてきた。こちらの様子を見ていたらしい。

「…ごめんなさい。それもやっぱりズルイと思います。テストプレイで私達はブレイブデュエルの遊び方を皆さんに教えて貰いました。参加するみんなはこんなに長くブレイブデュエルで遊べません。今日お借りしたカードを全部使わないで…なら参加します。」

 テストプレイヤーのアミタやシュテル達、ショッププレイヤーのなのは達とは違ってヴィヴィオはここに来た旅行者、テストプレイヤー自らプレイ方法ー遊び方を教えて貰っただけでも十分だと考えた。
 強情だと思われたかも知れないけれど、ブレイブデュエルで遊ぶ子達の事を考えたら引けない。

『…そうだね。それはそうとヴィヴィオ君達はカードローダを使っていないんじゃないかい? アミタ達と一緒に1枚貰ってきてはどうだろう』
「…はい。」

 勝ち抜き戦のACEに参加申し込みをした後でカードローダを使ってみると予想通りアリシアはさっきまで使っていたレヴィの『ツインブレイバー』を、ヴィヴィオは

「私…とクリスだ…」

 向かう世界に居るはずのヴィヴィオとクリスの描かれたカードを手に入れた。
 きっとグランツがカードローダを操作してレアカードが出るようにしたのだろうとヴィヴィオとアリシアは気づいていたけれど、ヴィヴィオとアリシアはこれ以上好意を拒否するのもと考え素直に受け取ることにした。



「受け取ってくれたみたいです」

 オペレーションルームからシュテル達と話しているヴィヴィオとアリシアを眺めながらアミタはホッと安堵の息をついた。

「何も言わず受け取ってくれて良かったよ。『受け取れません』とか言って駆け込んで来るんじゃ無いかってドキドキしていたんだけどね」  

 グランツも笑みを溢している。

「カードを借りて参加するのはズルイか~、他のデュエリストから見ればそうよね。」
「ブレイブデュエルを大切に思ってくれてるんですね。」

 キリエの呟きに頷く。
 ヴィヴィオはレアなカードを借りたまま参加したり、好きなカードを1枚貰うというのは狡いと言っていた。アミタやキリエ、シュテル達は『余ったスキルカードを貸しただけ』だと思っていた。 でも彼女達がブレイブデュエルを始めてそれ程経っていないのにそんなに色んなカードを持っていたら贔屓されていると思うデュエリストも居る。
 幾ら強くてもヴィヴィオが言う『ズルをした強さ』でしかない。それがまかり通ってしまうブレイブデュエルだと思われては嫌いになるかも知れない。

「私達も気をつけなくてはいけませんね…」
「そうね…ねぇパパ、2人はどうしてあのカードだったの?」
「アリシアのツインブレイバーは彼女が使っていたカードですけど、ヴィヴィオのカードは2枚目です。」  

 ヴィヴィオがカードローダで得たカードは既に彼女が持っていたカードであってスキルカードでもない。彼女が持っているスキルカードはなのはのアクセルシューターとシグナムの紫電一閃だけになった。デッキのスキルカードを全部使うヴィヴィオにとっては大きな戦力ダウンとなる。

「彼女達が使う直前にしたのはR以上のカードが必ず出るようにしただけなんだ。何故あのカードになったのかはわからない。でも…」
「「でも?」」
「その答えは直ぐに見られるかも知れないね。」

 何かに期待している様に言うグランツにアミタとキリエは首を傾げるのだった。



「お~今日の勝ち抜きデュエルは派手やね~」

 八神堂のデュエルスペース、そのオペレーションルームではやては面白そうに言った。
 それもその筈、毎回参加するランカークラスのデュエリストだけでなく、解説役のアリシアを除きT&HエレメンツとDMSがフルメンバーで参加していたからだ。これだけのメンバーが入っていて八神堂のショッププレイヤー、ヴィータが出ない訳もなく…
 後ろでウーンと唸りながらデッキカードの組み合わせを考えている。
 更に…

「ヴィヴィオちゃんとアリシアちゃんも出るんやね。」
「我が主も参加されては?」

 リインフォースに言われて首を横に振る。

「1勝も出来んと終わるって。それより参加デュエリストも多いからシミュレーターを効率良く使う方が大切や。小狸丸、しぐにゃむも頼むな♪」

 ブレイブデュエルシステムの中でサポートプログラム、NPCである2体が手を振って答えた。


 
「勝ち抜きデュエルってチーム戦じゃないんだ…」
「チーム戦のデュエルもありますが今日は違います。勝ち抜きと言っても10勝すれば勝利者として記録に残ります。」 

 ヴィヴィオはシュテルに説明をうけて少し迷う。
 てっきりアリシアとペアを組んで参加したと思っていたけれどそういうものではないらしい。
 相談しようと彼女を探すと彼女はフェイトと間違えられて周りを取り囲まれていた。
 所持カードを見る。借りたカードを除けば、最初のカードとヴィヴィオのカードが2枚、シグナムとなのはのカードが1枚ずつ…。パーソナルカードを含めるとこれでデッキを作るしかない。

「これで勝てるのかな?」
「無理をしない限りいい所まで行くでしょう。私達も参加しますから会った時は全力で勝負です。」

 嬉しそうに言うシュテルに

「うん、その時は私も全力で受けて立つよ。」

 拳を突き出して言った。



「ふぅ、やっと判って貰えたよ。」

 フェイトと間違えられて沢山の子供達に囲まれてしまった。流石T&Hのエースと言われるだけある。
 何とか理解してもらって戻って来たらシュテルとヴィヴィオが話していた。

「ヴィヴィ…」
「私達も参加しますから会った時は全力で勝負です。」
「うん、その時は私も全力で受けて立つよ。」
(そっか…私ももしかしたらヴィヴィオとデュエルできるかも…なんだ。私も負けないよっ!)

 1人のデュエリストとして、親友として…



『ただいまよりブレイブデュエルショップ合同、イベントデュエルを開催するよ~。』

 デュエルスペースが薄暗くなって何処かで聞いた声が聞こえてきた。

『解説は私、T&Hのウグイス嬢アリシア・テスタロッサと』
『八神堂の八神はやてです。』
『グランツ研究所では私、アミティエ・フローリアンが担当します。』

 各ショップで解説役を立てているみたいだ。会場が盛り上がってくる。

『毎週恒例だけどルールを説明するね。デュエルは1対1のフリーバトル形式。5分、300秒間のデュエルをして10連勝出来たら勝ち抜け。勝ち抜けたデュエリストは人数によって変わるけどトーナメントか総当たりデュエルをして貰って勝った人が今日の優勝デュエリストになるよ。ランクは初心者と中級者、上級者と最上級者のACE。ランク毎で使えるカードの種類が決まってるからよくわかんない子は近くのスタッフさんに聞いてね。』
『そして今日は何とACEにT&HからはT&Hエレメンツとグランツ研究所からはDMS、八神堂からもヴィータちゃんが参加するよ。みんな張り切って参加してね♪』
『それじゃ始めるよ。』
『勝ち抜きデュエル』
『『『レディ、ゴー!!!』』』

 盛り上がった会場の雰囲気にヴィヴィオは思いっきり呑まれた。


 勝ち抜きデュエル戦では参加者の人数毎にシミュレーターが割り振られるらしい。今日はACEの参加者が多く6台のシミュレーターが割り当てられていた。負けたら交代になるからデュエルが何処の誰とするのか直前まで判らない。もしかすると隣のシミュレーターの子の可能性もある。それでも

「6台って事は知ってる人と当たる確率は6分の1か…」

 ヴィヴィオ的にあまりデュエルしたくないのはアリシア、したいのはアリサとすずか、なのはとフェイト、シュテル、ディアーチェと当たると激戦になりそうな気がする。

『おーっとここでT&Hのエース、フェイトが登場♪ フェイトぉ~がんばれ~おねーちゃんは応援するよっ!!』

 モニタに映るフェイトが少し困った顔をしている。しかし、デュエルが始まると鋭い目つきに変わる。そして…相手もトップデュエリストなのにも関わらず30秒程でライフポイントを半分まで削り、残り10秒でスキルカードをロード、ソニックフォームにチェンジしてバルディッシュで横薙ぎにした。

「さすが、全国2位ですね。」

 隣で嬉しそうに呟くシュテル。でも…目の前のシュテルは全国1位で彼女より強い。

(私、勝てるのかな…直ぐに負けちゃいそう…)
『さっすが、自慢の妹♪ このままフェイトの進撃を阻む者は居ないのかーっ!』

 アリシアの解説が凄く偏っていて思わず苦笑する。しかし

『えっ? ウソ!?』

 直後それは狼狽した声に変わった。

「ライトニング同士のデュエル。今日最初の見物ですね。」
『フェイト、次は私が相手だよっ♪』

 フェイトも驚く。目の前に現れたのは彼女とソックリの少女、アリシアだったからだ。

『あ、ビ、ビックリして解説が止まっちゃった。次の挑戦者は先日華々しいデビュー戦を飾ってくれたアリシアちゃん、なんだか私を紹介してるみたいで恥ずかしいな…じゃなくて、メキメキ実力を付けてきたニューフェイス。ライトニング対ライトニング。熱いバトル必至だね。フェイト、アリシア準備いい、いくよ。レディーゴー!!』

 かけ声の直後、フェイトが前に飛び出してバルディッシュを振り下ろす。そして鏡に映ったかの様にアリシアも同時に飛び出していてバルディッシュを振り上げる。
 ほぼ真ん中で2人はデバイスを交差させて動かなくなった。睨み合うフェイトとアリシア。

『速い…』
『速くない、フェイトが遅いんだよ。』

 梃子の要領でフェイトのバルディッシュを上に弾きバルディッシュで一閃、彼女のマントの1部が裂けた。

『フェイト、手加減してると私が倒しちゃうよ♪』

 アリシアはニヤリと笑って水色の刃を突きつける。

(アリシア…また挑発してる。自信満々に言っちゃうから乗せられちゃうんだよね)

 模擬戦で身の覚えもあるヴィヴィオは苦笑する。
 案の定フェイトは彼女に乗せられて更に鋭い眼で彼女を見てバルディッシュを振り上げ金色の刃を生みだしアリシア目がけて投げた。そしてフェイト自らも彼女に迫る。

(アークセイバー…ハーケンセイバー?)

 ヴィヴィオも受けた事がある魔法。変則的な動きで捉え辛い…でも フェイト役を通して同系統の魔法を使っているアリシアにとって破るのは容易い。
アリシアは襲い来る刃を簡単に避けてバルディッシュの束でフェイトの刃を側面から叩き割った。

『T&Hのエースって看板下ろした方がいいんじゃない♪』

 再びバルディッシュの水色の刃をフェイトに突きつけてアリシアが笑って言った。
 フェイトがすかさずスキルカードを使う。ソニックフォームへ切り替えバルディッシュも大剣状になった。彼女の持ち味、高速戦を挑むつもりらしい。

「フェイト…それだけじゃ…」

 応援しそうになって口を噤む。同じジャケットで近接戦と射撃系スキルを破られた今、フェイトの判断はある意味正しい…でもそれは相手-アリシアが同じ条件を持っていない場合に限る。
 アリシアは待っていたかの様にデバイスを短剣2本に切り替えた。そしてフェイトから振り下ろされた金色の刃を剣で受け止め、勢いを残したままフェイトの下に回り込んで背中を薙いだ。
 下に回られたのに気づいたフェイトも直ぐに反応するが躱しきれず、ライフポイントを1/3程減らした。躱しきれなかったのは薙いだアリシアの剣が受け止めた時と比べて大きくなっていて見誤ったからだ。
 アリシアも完全に受け止められなかったのか少しだけライフポイントを減らしていた。

「…フェイトとアリシア…凄い…」

 ヴィヴィオは思わず呟いた。



「…すごい…」

 T&Hのデュエルスペースでもヴィヴィオと同じ様になのはとアリサ、すずかは2人の攻防に驚いていた。

「アリシアちゃん…お姉ちゃんに似てる…」
「お姉さんって…あの剣!?」

 アリシアの驚きの声になのはは頷く。
 2本の剣を使った剣術、ブレイブデュエルの中であんなに動くなんて…。ソニックフォームの彼女にカウンターを仕掛けられると言うことは、フェイトのアドバンテージだった高速に相手を翻弄するデュエルが出来なくなったと言うこと。まだ使っていないスキルカードはあるけど彼女のデッキが高速系でまとめてるから不利。しかもアリシアは昨日使わなかった新しいカードを持っている。
 多分そこまではフェイトも既に気づいてる。
 でもその次、アリシアに勝つ方法が見いだせない。



「なんだ…結構出来るじゃない。」

 構えながらアリシアは誰ともなく呟いた。借りたカードを使わず持っている2枚のスキルカードでフェイトとデュエルするには分が悪いと思っていた。
 でもよく考えれば彼女は高速襲撃タイプ、対して自分は迎撃タイプだから相性は悪くないのだ。
 次もソニックフォームのまま来るか?と身構えていると、フェイトはジャケットを変えた。
それもブレイズフォームに。


 
「本気で行かなきゃ…私が負ける。」

 フェイトがロードしたのは少し前に手に入れたスキルカード。ショップチームとして参加はしたけれど、他のデュエリストに対してあまり強く見せない様にと心がけていた。でも、目の前のアリシアはアミタとキリエに勝つ程強い。さっきの攻防でそれに気づいた。
 幾ら相手が同じタイプでACEランクだからと言って1勝で終わる訳にはいかない。

「ごめんね、アリシア…」


 
「フェイト…表情が変わりましたね。何か仕掛ける様です。」
「うん…」

 シュテルの言葉にヴィヴィオも答える。デュエルスペースの大モニタには2人のデュエルが映されている。
 ブレイズフォーム、フェイトのフルドライブフォーム。特性は…彼女より大きな魔力刃を操る事と。あとは…ヴィヴィオの知る彼女の必殺魔法…ファランクスシフト!?
 フェイトの周りに金色の光が現れたのを見て思い出した。 
 フォトンランサー・ファランクスシフト。
 フェイトの幼少期における最大攻撃魔法、複数のフォトンスフィアから相手に対して集中高速連射を行う魔法。 
 近接戦で不利な立場で圧倒して倒す手を見いだすには? 
 大振りになるザンバーはアリシア相手では不利になる。
となれば相手を近づけずに倒すしかない。

「アリシアっ!」
『ゴメンねアリシア、私はまだ負ける訳にはいかないんだ。スキルカードロード、ファランクスレイドっ!』

 フェイトの周りに20個の光が現れ、アリシア目がけて連射する。
 アリシアの姿が光に呑まれる。

「まさかフェイトがSR+のカードを持っていたとは思いませんでした。ですが決まりましたね…」
「…うん…アリシアは砲撃系スキル持ってないもんね。」 

 アレを受けてはひとたまりもないだろう。

「? ヴィヴィオ、何か思い違いをしていませんか? あれだけ強い魔法を使えば殆ど魔力も残っていないでしょう。勝者は…」
『たぁああああああっ!!!』

 爆風収まらぬ中、その声は響いてきた。

「アリシアです。」
『!?』 

 フェイトの頭上からハリセン状のデバイスを思いっきり振り下ろす。それと同時にフェイトのライフポイントは0になった。



「ゴメン、もうちょっと頑張りたかったんだけど、フェイトのデュエルで疲れちゃって…」

 アリシアはフェイトに勝った後、次のデュエリストとのデュエルで惜敗した。
 幾らゲームとは言え、彼女はユーリ、レヴィ、キリエ、アミタと散々デュエルした後でフェイトと対戦したのだ。フェイトとのデュエルで集中力を使い切ったのだろう。

「いえ、見ていても心躍る良き戦いでした。ファランクスレイドが決まっていればフェイトが勝っていたでしょうが、彼女は躊躇って魔法を使ったのでしょう。その躊躇いがアリシアが剣を囮にして上空に回避していたのに気づかず硬直状態を作ってしまった。強いカードを持っているのが強いデュエリストではないと言うことですね。」
「私全然見えなかった。でもどうしてフェイトがあの魔法使うって判ったの? 私なんて魔法発動前に思い出したのに。」
「ん? そんなのフェイトの気持ちになれば簡単じゃない。近接戦はほとんど同じ、アークセイバーも壊されてソニックフォームで迎撃されてザンバーフォームが使えないんじゃクレッセントとかブローヴァでもカウンターを受けちゃう。となればジェットザンバー、プラズマザンバーみたいに離れた場所から切るしか無いけど、バインドを使わずに高速で動く私じゃ当たらない。だったら…あとはフォトンランサー系しかないって。」
「思ったより凄く速くて受け止めるのギリギリだったけど、カウンターが当たれば後は何とかなるかなって。撮影でフェイト役してたのすっごく役に立った♪」
「そ…そうなんだ…」

 勝負は最初の攻防で着いていた。あの時フェイトは既にアリシアの心理戦術に陥っていたのだ。

(そう言えば、私も苦戦したよね…)

 笑って答えるアリシアが少し怖くなった。  



「ヴィヴィオ、そろそろあなたの順番の様です。」

 シュテルに言われてプレイヤーリストにヴィヴィオの名前が出ていた。

「う、うん。それじゃ行ってきます。」
「頑張って、応援してる♪」

 親友の声援を背で受けヴィヴィオは小走りにシミュレーターの前に立った。

~コメント~
もしヴィヴィオがなのはイノセントの世界にやってきたら?
前々からフェイトとアリシアのガチバトルをやってみたかったんです。

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