AS15「輪廻~1~」
「本当にいいのね?」
険しい眼差しで目の前の彼女に問いかけた。
『あんなの見せられちゃったら…ね。』
「思いつくものは全て用意したわ、あとは…実行するだけ。」
『なるべくフォローするつもり、お願いね』
「ええ」
深く頷く。
普段から笑顔を絶やさない彼女だけれど、今は終始神妙な顔つきだった。
険しい眼差しで目の前の彼女に問いかけた。
『あんなの見せられちゃったら…ね。』
「思いつくものは全て用意したわ、あとは…実行するだけ。」
『なるべくフォローするつもり、お願いね』
「ええ」
深く頷く。
普段から笑顔を絶やさない彼女だけれど、今は終始神妙な顔つきだった。
ヴィヴィオが朝の魔法練習を終えた後、管理局に行くなのはと一緒に家から出ようとした時、RHdに1通のメッセージが届いた。
(え?)
「いくよ~ヴィヴィオ」
「は~い」
表題だけ見て気になったけれど、メッセージはそのまま見ずにウィンドウを閉じ玄関に向かった。
そして放課後…
「こんにちは~」
「いらっしゃい、ヴィヴィオ」
ヴィヴィオはプレシアの研究施設にやってきていた。
出迎えたプレシアに
「あの…朝のメッセージってどういう意味ですか? ママ達やアリシア、みんなに黙って授業が終わったら直ぐに来て欲しいって。」
「読んだ通りよ。メッセージは消した?」
頷く。メッセージの最後に『読み終えたら消しなさい』と書かれていた。
怪しさ満点のメッセージで送った相手がプレシアでなければ読むまでもなく削除するか、なのは達に話していただろう。
「ヴィヴィオ、あなたの時間移動魔法で…同じ世界への時間移動は出来る?」
「同じ世界…夏休みの途中から飛んだみたいにですか?」
「そうよ、狙ってその時間に行くことは出来るの?」
彼女が何を考えているのか判らなくて怖ず怖ずと頷く。
「はい…夏休みに使った時は何日に移動する…みたいなイメージだけで飛べたから。出来ると思います。でもそんなに使ってないし数10年とかは魔力が足りないから難しいけど…。」
「十分よ。じゃあすぐにこれに着替えて頂戴。着替える時はデバイスと悠久の書以外全てをここに入れなさい、レリックや下着も含めて。」
そう言って手に持っていた小さなバッグを出した。
「え?」
「急いで、時間がないのっ。」
「はいっ!」
いつもと違って凄くピリピリしているプレシアと言われている意味が判らなかったけれど何か理由があるのだと考えて言われる通りにした。
「あの…プレシアさん…これって」
着替えを終えてプレシアの前に立つ。あまり着ないロングのワンピース。
「クスッ、似合っているわよ。身につけていた物は全て入れたわね…まだあったわ」
少し笑った後、私の顔を見て髪をまとめていたリボンを外しバックに入れると端末で手元の機器を操作し中に入れてしまった。そして…
「え?… ええーっ!!」
取り出されたモノを見たヴィヴィオの声が部屋に響いた。
「これで別人に見えるわね。」
藍色のウィッグと同じ色のコンタクトを付けさせられたヴィヴィオは力なく項垂れる。
「…まさかここでこんな格好するなんて…」
「可愛いわよ。わざわざ私と同じ髪色の物を探したの。」
自信満々に言う彼女を仰ぎ見るヴィヴィオ。
「…プレシアさん、私に何をさせるつもりですか?」
「今から未来に行くのよ、私と一緒に。日時と場所は…」
「え?」
言われた時と場所を聞いて思わず聞き返した。今まで過去や異世界には何度も行っていて、つい最近数週間後の未来に飛んだけれど、彼女が指定したのはそれより遙かに遠い未来だったからだ。
「どうしてそこへ?」
「理由は必ず後で話すわ。これは私達やヴィヴィオ…いいえ、もっと沢山の人の為にしなくてはいけないの。今は聞かないで頂戴」
「プレシアさん…」
両肩を掴まれビクッとなる。でも彼女の顔を見て
(…プレシアさん…)
凄く真剣な眼差し。頷いて答えた。
「はい、じゃあ私に掴まっててください。」
言えないのには何か理由があるんだと考え、悠久の書を取り出しプレシアが指定した日の場所へと飛んだ。
「っと…」
ヴィヴィオ達が降り立ったのはあるビルの屋上だった。
「ここは…管理局の商業エリアだと思います。多分…」
辺りをキョロキョロと見回して言う。普段見慣れた光景だけれど10数年後の未来だから流石にそうとは言い切れなかった。
「時間は…言った通りね。ヴィヴィオ、ここからは別行動しましょう。」
「え?」
「私はこれからある場所に行くわ、ヴィヴィオはこれをリンディに渡して頂戴。あぁ…忘れていたわ。あとこれを…」
プレシアがそう言って手紙とパスカードを渡した。でもそれは…
「チェント・テスタロッサ!? これってチェントのですよね?」
「名前を借りただけよ。ここであなたが居たら変でしょう? 何かあった時の為よ。」
「でもリンディさんに会ったら私だってわかっちゃいます。」
「平気よ、リンディも知ってるから。後はお願いね。用事が済めば連絡するから」
「…え?……プレシアさん…」
プレシアはそのまま踵を返し転移魔法で消えてしまった。
(どうしよう…)
流石の急展開にヴィヴィオは悩んでいた。
読んだら消しなさいというメッセージ、服や下着まで全部着替えされされてRHdと悠久の書以外は全て外し、プレシアと一緒に10数年後の未来に来て、着くなり別行動…訳が判らない。
このまま1度元の時間に戻って再び来た方がいいのかとかここのなのはやフェイトに連絡して…とかも考えたけれどそれはそれで余計にややこしくなる気がする。管理局から出ようにもヴィヴィオのパスは置いてきたからチェントのパスを借りなくちゃいけない。
「…言うとおりにしよ…」
30分ほどビルの屋上で考えたけれど良い方法が思い浮かばず、結局プレシアの言うとおりリンディの執務室に向かうことにした。
~コメント~
2週間ぶりです。皆様はGW楽しく過ごされましたか?
私は職業的に休日の方が忙しいといいますか連休は滅多に休めないのでエアGWを満喫しておりました…ううっ(血涙)
さて、それは兎も角今話から久しぶりにヴィヴィオ&プレシアなお話です。この話は随分前から考えていたのですが本編にするには短すぎるのであえて短編として掲載することにしました。
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