AS22「新しい先生」
まだ夏の強い日差しが残っていたある日、Stヒルデで授業を受けていたヴィヴィオに1通のメールが届いた。
届いたのが授業中だった為に誰も気付かず、メールが来ているのにヴィヴィオが気付いたのはお昼のお弁当を食べようとした時だった。
「メール? 管理局から…『空戦魔導師研修の案内』?」
「研修?」
一緒に食べようとしていたアリシアやリオ、コロナも気になって聞き返す。
「うん、研修って書いてる。」
先にざっと見て特に見せられない内容は無いと思い机に広げて3人にも見えるようにした。
届いたのが授業中だった為に誰も気付かず、メールが来ているのにヴィヴィオが気付いたのはお昼のお弁当を食べようとした時だった。
「メール? 管理局から…『空戦魔導師研修の案内』?」
「研修?」
一緒に食べようとしていたアリシアやリオ、コロナも気になって聞き返す。
「うん、研修って書いてる。」
先にざっと見て特に見せられない内容は無いと思い机に広げて3人にも見えるようにした。
「新たに空戦魔導師ライセンスを取った局員が対象だって。技能と知識の向上? 何だか難しそうだね~」
「研修期間は3週間程度って書いてある。学校お休みするの?」
少し前にある事情で取った空戦S+魔導師ライセンス。でもそのせいで学院をお休みするのは嫌だ。でもヴィヴィオも司書とは言え管理局の局員…
「お休みしたくないよ~。帰ったらママに相談してみる。」
去年の事もあるから長期間休みたくない。ヴィヴィオだけで考えてもどうしようもなく、帰ってからなのはとフェイトに相談することにした。
そしてその夜、夕食中にヴィヴィオはなのはとフェイトに相談した。
「今日ね、こんなメールが届いたんだけど…研修受けなくちゃいけない?」
「空戦魔導師研修…わっ3週間もあるの?」
「ママから話そうと思ってたんだけど先にメールが届いちゃったんだね。メールに書いてあった通り空戦魔導師試験SとAAAに合格した魔導師が受ける研修だよ。受けるのは30人位だったかな…3週間の研修の後試験をして合格すればおしまい。不合格だと再試験があってそれも駄目なら次回の研修にも参加って感じかな。覚える内容も幅が広いし、実技もあるから結構ハードなんだよね~。」
「え…」
笑って言うなのはにヴィヴィオは言葉を詰まらせた。授業と実技とテスト…話を聞いておしまいとかいう類ではないらしい。
「高ランクの空戦魔導師は他の局員より危険と隣り合わせの時が多くなるから自分は自分で守らなきゃいけない。だから研修も本格的だし教導隊が何人か教官として参加するよ。」
なのはの重い言葉にゴクリと唾を飲み込んだ。
レリックを失いたくないから、なのはとフェイトに言われたから試験を受けて取ったライセンス。
その時の事を思い出す…他の受験者はみんな私を見て驚いていた。
私が小さかったからだと思っていたけれど、それ以外に危険と隣り合わせの場所に踏み込もうとしていることに驚いていた人もいたのかも知れない…。
「…というのがいつもの空戦研修なんだけど、ヴィヴィオの研修は特別メニューになっちゃいました♪」
「えっ? 特別メニュー?」
さっきとは打って変わっていつもの口調に戻った彼女に思わず声が出たのと同時に脳裏に機動6課でスバルやティアナ達が受けていた訓練光景が過ぎる。
…あんな練習耐えられるだけの体力ははっきり言ってない!!
「特別メニューって…なのは、普通の研修でもハードなのに特別メニューなんかヴィヴィオに無理だと思うんだけど…」
「違う違う、特別メニューっていうのはハードトレーニングの特別じゃないよ。」
「今度の研修生はヴィヴィオ以外はみんなどこかの候補生か部隊に所属してて研修期間中は任務から外れられるんだけど、ヴィヴィオは一般局員だしまだ学生だから研修中学院をお休み出来ないでしょ。それにヴィヴィオだけが古代ベルカ式の魔法を使うから他の研修生と合わせられないし、そういう訓練経験もない。あとあんまり言っちゃダメなんだけどライセンス取った時も学科が平均以下で技能点でカバーした感じになっててアンバランスというか…そう、色んな原因があって一緒に研修を受けられないの。だから特別メニュー。期間も3週間じゃなくて3ヶ月とか半年、1年とか長い期間をかけた方がいいって…これは教導隊の隊長、ママの上の人からの話なんだけどね。」
どうやら特別メニューとはハードな研修では無いらしい。しかもちゃんと私の授業や無限書庫の司書の事も考えてくれていた事にホッと胸をなで下ろす。
「でも…そんな長い間の研修って誰が担当するの? なのは?」
「私がしたかったんだけど…そこまで特別には出来ないって。ヴィータちゃんや他の教導隊員もそんな長期研修は担当出来ないから退役した教導官にお願いできないかって聞いてる。ヴィヴィオ、そんな訳だからそのメールはあんまり気にしないで。決まったらまたメール来るからその時また相談しよ。」
「うん、ありがとなのはママ♪」
思っていた以上に色々考えてくれていたなのはや教導隊の隊長さんに嬉しく思った。
ヴィヴィオが寝静まった夜、なのはもフェイトと寝室で寝ようとしていた時。
「なのは、さっきの研修の話…特別になったのって他にも理由があったんでしょ? さっきヴィヴィオに言いにくそうにしてたから」
フェイトに聞かれて一瞬ドキッとする。こういう所は流石だと思う。
「うん…ヴィヴィオに研修を受けさせるのは聖王教会がよく思わないんじゃないかって。空戦魔導師の研修って管理局が決めたランク付けとその研修だからね…。ヴィータちゃんは気にしないで良いって言ってくれてたけど気にして研修は出来ないし…」
なのはも気にしすぎだと思っている。
でも管理局でヴィヴィオの魔力を制限しようとした者が居た様に聖王教会でもヴィヴィオを利用しようとする者が居るなら今度の事は良い的になる。
カリムやシャッハ、はやてやプレシアが居るからそこまで大事にはならないだろうけれど、こんな事で気を遣わせたくない。
研修を任される教導官もヴィヴィオが古代ベルカ式の魔法を使い聖王教会系のStヒルデ学院の学生だと知るだろうからヴィヴィオがヴィータ達と同じ聖王教会と何らかの関係があると考えてしまうのは予想できる。それにさっきヴィヴィオに言った様に他の研修生と同じメニューでは訓練出来ないから彼女が居るだけで教導しにくくなる。
『他の研修生の手前、表だっては言えないが彼女と同じ研修を受けた為に重傷を負った、命を落としてしまった…等という結果にはしたくない』
なのはも上司である隊長から言われた事を思い出しため息をつく。
「そっか…難しいね。教官は決まってるの?」
「私も知らないんだ。隊長がいい人が居るって言ってたから。」
「いい先生だといいね。」
「そうだね」
2人に教えてくれた教官の顔を思い出してなのはも頷くのだった。
そんな話があってから3日後、お昼に再び管理局からメールが届いた。
既にアリシア、リオ、コロナには研修で学院をお休みしなくてもいい事は話してあったから同じ様にメールの内容を広げて見せた。
そこにはヴィヴィオの学業優先の為他の研修生とは別に研修を受ける旨と専任の教導官が決まったから地上本部に来るようにと書かれていた。
「どんな先生だろうね~」
「優しい先生だといいね。」
「イヤイヤ、ヴィヴィオにしか教えないんだからシグナムさんやヴィータさんみたいな先生じゃない? 個人特訓なんだからすっごく厳しいよ~」
「アリシア~、そんな怖いこと言わないで。」
リオとコロナの言葉を思いっきり砕くアリシアに頬を膨らませて言う。でも実際個人特訓になるのだから…彼女の言うことを否定出来なかった。
そして書かれていた通りの時間に管理局に行くとある小さな部屋に案内された。
…待つこと10数分
【ガチャ】
ドアが開く音を聞いてヴィヴィオは振り返るとそこには1人の初老の女性が立っていた。
「あら、聞いてはいたけれど本当にかわいい研修生ね。」
そう言いながらヴィヴィオの座っていた対面の椅子に腰を下ろす。
「た、無限書庫司書、高町ヴィヴィオです。よろしくおねがいします」
緊張した面持ちで椅子から立って頭を下げる。
「はい、高町ヴィヴィオ研修生の教導を努めます、ファーン・コラードです。よろしくね、ヴィヴィオ。」
ファーン・コラードは笑顔で答えるのだった。
~コメント~
輪廻シリーズが少し重い話だったので、今話はちょっと軽い感じの話です。
ファーン・コラードはメガミマガジンで掲載されていたコミックスでの登場で、一時期なのはとフェイトに教導していたり、スバル・ティアナの魔導師訓練校の校長だったりと直接ヴィヴィオと面識はありません。
どんな風に動いてくれるか私も楽しみです。
「研修期間は3週間程度って書いてある。学校お休みするの?」
少し前にある事情で取った空戦S+魔導師ライセンス。でもそのせいで学院をお休みするのは嫌だ。でもヴィヴィオも司書とは言え管理局の局員…
「お休みしたくないよ~。帰ったらママに相談してみる。」
去年の事もあるから長期間休みたくない。ヴィヴィオだけで考えてもどうしようもなく、帰ってからなのはとフェイトに相談することにした。
そしてその夜、夕食中にヴィヴィオはなのはとフェイトに相談した。
「今日ね、こんなメールが届いたんだけど…研修受けなくちゃいけない?」
「空戦魔導師研修…わっ3週間もあるの?」
「ママから話そうと思ってたんだけど先にメールが届いちゃったんだね。メールに書いてあった通り空戦魔導師試験SとAAAに合格した魔導師が受ける研修だよ。受けるのは30人位だったかな…3週間の研修の後試験をして合格すればおしまい。不合格だと再試験があってそれも駄目なら次回の研修にも参加って感じかな。覚える内容も幅が広いし、実技もあるから結構ハードなんだよね~。」
「え…」
笑って言うなのはにヴィヴィオは言葉を詰まらせた。授業と実技とテスト…話を聞いておしまいとかいう類ではないらしい。
「高ランクの空戦魔導師は他の局員より危険と隣り合わせの時が多くなるから自分は自分で守らなきゃいけない。だから研修も本格的だし教導隊が何人か教官として参加するよ。」
なのはの重い言葉にゴクリと唾を飲み込んだ。
レリックを失いたくないから、なのはとフェイトに言われたから試験を受けて取ったライセンス。
その時の事を思い出す…他の受験者はみんな私を見て驚いていた。
私が小さかったからだと思っていたけれど、それ以外に危険と隣り合わせの場所に踏み込もうとしていることに驚いていた人もいたのかも知れない…。
「…というのがいつもの空戦研修なんだけど、ヴィヴィオの研修は特別メニューになっちゃいました♪」
「えっ? 特別メニュー?」
さっきとは打って変わっていつもの口調に戻った彼女に思わず声が出たのと同時に脳裏に機動6課でスバルやティアナ達が受けていた訓練光景が過ぎる。
…あんな練習耐えられるだけの体力ははっきり言ってない!!
「特別メニューって…なのは、普通の研修でもハードなのに特別メニューなんかヴィヴィオに無理だと思うんだけど…」
「違う違う、特別メニューっていうのはハードトレーニングの特別じゃないよ。」
「今度の研修生はヴィヴィオ以外はみんなどこかの候補生か部隊に所属してて研修期間中は任務から外れられるんだけど、ヴィヴィオは一般局員だしまだ学生だから研修中学院をお休み出来ないでしょ。それにヴィヴィオだけが古代ベルカ式の魔法を使うから他の研修生と合わせられないし、そういう訓練経験もない。あとあんまり言っちゃダメなんだけどライセンス取った時も学科が平均以下で技能点でカバーした感じになっててアンバランスというか…そう、色んな原因があって一緒に研修を受けられないの。だから特別メニュー。期間も3週間じゃなくて3ヶ月とか半年、1年とか長い期間をかけた方がいいって…これは教導隊の隊長、ママの上の人からの話なんだけどね。」
どうやら特別メニューとはハードな研修では無いらしい。しかもちゃんと私の授業や無限書庫の司書の事も考えてくれていた事にホッと胸をなで下ろす。
「でも…そんな長い間の研修って誰が担当するの? なのは?」
「私がしたかったんだけど…そこまで特別には出来ないって。ヴィータちゃんや他の教導隊員もそんな長期研修は担当出来ないから退役した教導官にお願いできないかって聞いてる。ヴィヴィオ、そんな訳だからそのメールはあんまり気にしないで。決まったらまたメール来るからその時また相談しよ。」
「うん、ありがとなのはママ♪」
思っていた以上に色々考えてくれていたなのはや教導隊の隊長さんに嬉しく思った。
ヴィヴィオが寝静まった夜、なのはもフェイトと寝室で寝ようとしていた時。
「なのは、さっきの研修の話…特別になったのって他にも理由があったんでしょ? さっきヴィヴィオに言いにくそうにしてたから」
フェイトに聞かれて一瞬ドキッとする。こういう所は流石だと思う。
「うん…ヴィヴィオに研修を受けさせるのは聖王教会がよく思わないんじゃないかって。空戦魔導師の研修って管理局が決めたランク付けとその研修だからね…。ヴィータちゃんは気にしないで良いって言ってくれてたけど気にして研修は出来ないし…」
なのはも気にしすぎだと思っている。
でも管理局でヴィヴィオの魔力を制限しようとした者が居た様に聖王教会でもヴィヴィオを利用しようとする者が居るなら今度の事は良い的になる。
カリムやシャッハ、はやてやプレシアが居るからそこまで大事にはならないだろうけれど、こんな事で気を遣わせたくない。
研修を任される教導官もヴィヴィオが古代ベルカ式の魔法を使い聖王教会系のStヒルデ学院の学生だと知るだろうからヴィヴィオがヴィータ達と同じ聖王教会と何らかの関係があると考えてしまうのは予想できる。それにさっきヴィヴィオに言った様に他の研修生と同じメニューでは訓練出来ないから彼女が居るだけで教導しにくくなる。
『他の研修生の手前、表だっては言えないが彼女と同じ研修を受けた為に重傷を負った、命を落としてしまった…等という結果にはしたくない』
なのはも上司である隊長から言われた事を思い出しため息をつく。
「そっか…難しいね。教官は決まってるの?」
「私も知らないんだ。隊長がいい人が居るって言ってたから。」
「いい先生だといいね。」
「そうだね」
2人に教えてくれた教官の顔を思い出してなのはも頷くのだった。
そんな話があってから3日後、お昼に再び管理局からメールが届いた。
既にアリシア、リオ、コロナには研修で学院をお休みしなくてもいい事は話してあったから同じ様にメールの内容を広げて見せた。
そこにはヴィヴィオの学業優先の為他の研修生とは別に研修を受ける旨と専任の教導官が決まったから地上本部に来るようにと書かれていた。
「どんな先生だろうね~」
「優しい先生だといいね。」
「イヤイヤ、ヴィヴィオにしか教えないんだからシグナムさんやヴィータさんみたいな先生じゃない? 個人特訓なんだからすっごく厳しいよ~」
「アリシア~、そんな怖いこと言わないで。」
リオとコロナの言葉を思いっきり砕くアリシアに頬を膨らませて言う。でも実際個人特訓になるのだから…彼女の言うことを否定出来なかった。
そして書かれていた通りの時間に管理局に行くとある小さな部屋に案内された。
…待つこと10数分
【ガチャ】
ドアが開く音を聞いてヴィヴィオは振り返るとそこには1人の初老の女性が立っていた。
「あら、聞いてはいたけれど本当にかわいい研修生ね。」
そう言いながらヴィヴィオの座っていた対面の椅子に腰を下ろす。
「た、無限書庫司書、高町ヴィヴィオです。よろしくおねがいします」
緊張した面持ちで椅子から立って頭を下げる。
「はい、高町ヴィヴィオ研修生の教導を努めます、ファーン・コラードです。よろしくね、ヴィヴィオ。」
ファーン・コラードは笑顔で答えるのだった。
~コメント~
輪廻シリーズが少し重い話だったので、今話はちょっと軽い感じの話です。
ファーン・コラードはメガミマガジンで掲載されていたコミックスでの登場で、一時期なのはとフェイトに教導していたり、スバル・ティアナの魔導師訓練校の校長だったりと直接ヴィヴィオと面識はありません。
どんな風に動いてくれるか私も楽しみです。
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