第02話「ヴィヴィオのストレス?」
- リリカルなのは AdventStory > 第1章 再会と出逢い
- by ima
- 2015.10.04 Sunday 22:21
Stヒルデの学園祭まで残り2週間となったある日、
「はぁ…」
教室で高町ヴィヴィオは外を眺めながらため息をついていた。
夏の強い日差しも落ち着いて髪を梳く風も心地よい季節に変わってきている。普段なら目を閉じてその雰囲気をあじわうのだけれど、今の彼女は…
「ヴィヴィオ~休んでないで手伝ってよーっ!。」
「あっごめん。」
リオに怒られて彼女達の所に小走りで向かった。
「はぁ…」
教室で高町ヴィヴィオは外を眺めながらため息をついていた。
夏の強い日差しも落ち着いて髪を梳く風も心地よい季節に変わってきている。普段なら目を閉じてその雰囲気をあじわうのだけれど、今の彼女は…
「ヴィヴィオ~休んでないで手伝ってよーっ!。」
「あっごめん。」
リオに怒られて彼女達の所に小走りで向かった。
「私が会議に出てる間、学園祭の準備サボってたって本当?」
「えっ!?」
アリシアと一緒に帰っている時に彼女から突然言われた。リオかコロナが話したのか?
「冗談、何か悩んでるの? 最近元気ないみたいだし…よくため息ついてるし…」
どうやらカマをかけられたらしい。
この辺りはよく見てると言うか流石というか何というか…
「うん、アレがね…」
「あ~アレね…」
彼女も何が理由か判ったらしく苦笑する。
「冬まで続くと思うと…ね」
そう言いながらヴィヴィオは今日だけで2桁に入るため息をついた。
数ヶ月前、管理局が企画した闇の書事件の記録映像撮影にヴィヴィオは八神はやて役として参加した。記録映像というのは元々は管理局員の研修で使う為に事件を映像化していたけれど、最近は用途が変わって局員募集や活動報告等と同じく広報用の映像として使われる方が多いらしい。
闇の書事件の記録映像も更に前にあったジュエルシード事件の記録映像が大好評だった為に続けて企画されたものだ。
それは兎も角、その記録映像が公開された直後からヴィヴィオは注目の的になった。
ジュエルシード事件の撮影から参加していたフェイト役のアリシアも注目されたのだけれど、なのは役の少女は本人も周りもその扱いに慣れているのか特に気にもせず、アリシアは母親のプレシアが聖王教会関係者だから、彼女の研究所や家も教会関係者しかいないエリアにあるから一般人が行けば逆に目立つ。だから2人ともプライベートを守る、守られる環境にはあった。
でもヴィヴィオはごく普通の住宅地にある高町家に住んでいて、撮影と同じ頃に取った空戦Sランクの話も洩れているらしく毎日視線に晒されていた。勿論慣れるほどの経験もない。
今度の企画の黒幕…発案者でありスタッフでもあるリンディ・ハラオウン曰く、
『闇の書事件でのはやてやシグナム達の行いを多くの人に知って貰って局内の意識を変えたい。冬まで我慢してくれれば管理局で騒ぎは抑える』らしい。
母の親友というだけでなく、ヴィヴィオも彼女とは友達だと思っているし、無限書庫司書の手前彼女への風当たりについては知ってもいるから納得もしていたのだけれど…
早朝、魔法の練習をしようと外に出ていつもの公園に行くと…数人の大人がカメラを持って待っている。最初は風景写真でも撮りに来たのかと思って会釈して魔法の練習をしようとすると実は撮られているのは自分だったと気づいて慌てて逃げ帰った。
帰ってママ達に話したら直ぐに動いてくれて写真も消してくれたそうだけど、直後にその公園は急に遊具の入れ替えが決まって数日間立ち入り禁止になってしまった。
…何があったのかは聞かない方がいいと思う…
朝、登校中に色んな視線を感じる。まだ小さい子が握手してきてくれたり声をかけてくれる分には少し嬉しかったりもするのだけれど、何も言わない視線が1番気になる。
学院に入れば中には中等科、初等科しか居ないし、アリシアやリオ、コロナ達も居るからゆっくりも出来る。でも…
放課後、無限書庫に行く途中が1番大変だ。
クラナガンへ入ると誰かに気づかれてしまう。声をかけてくれる人の方がまだ良くて多くは周囲でヒソヒソとこっちを見て話されるから気が休まらない。
それ以降、通学中、帰宅時や管理局に行く時は何らかの視線を感じる事が増えていた。
まだ管理局の監視がついていた方がよっぽどいい…
「今も誰かに見られてる気がしてて…気にしすぎだとは思うんだけどね。」
レールトレインに乗ってアリシアに言うと彼女は少し驚いて
「流石だね。ヴィヴィオの斜め後ろの中等科の2人組とその奥の初等科の4年生が3人…隣のクラスだったかな。」
「えっ!?」
慌てて振り返ると2人の中等科制服の女の子が手を振っていて初等科の3人は慌てて視線をそらした。」
慌てて笑顔を作って手を振って答える。
再びアリシアの方を向くと彼女も笑顔で手を振っていた。ぐっと顔を寄せて小声で聞く。
「いつから気づいてたの?」
「駅に来た時位かな…危ない感じもしないし隠し撮りとかしそうな雰囲気もなかったしヴィヴィオも気づいてないから気にしないでおこうって…感覚が鋭くなるのも考え物だね。」
「気づかない方が良かったよ…」
苦笑するアリシアを前に肩を落として再びため息をつくのであった。
そんな日が1週間程続くととヴィヴィオにも疲れが見え始めた。
なのはやフェイトに学院を休むかと聞かれても、学院内が数少ない休息の場でもあり真面目に休む気もない。せめてもと通勤前のフェイトに車で学院まで送って貰っている。
(まだ何処の誰かが判ってた広報課の追っかけの方が良かったよ…)
前にも似た経験があったけれど何処の誰かが判っていたし、1人だけだから警戒のしようもある。
でも今は誰かもわからないから警戒しようがない。
それは色々と鬱憤になっていて…
「思いっきり暴れたいな…」
「こ~らっ♪ ビックリする様な事言わないで」
フェイトに怒られた。どうやら思っていた事が言葉に出ていたらしい。
「ごめんなさい」
「……でも、窮屈だよね。この前教えてくれたブレイブデュエルみたいな体感ゲームがあればいいのに。ゲームの中だったらいくら暴れても現実世界に影響ないし。でも、今日頑張れば明日お休みだし3人で何処か遊びに行こうか。」
クスっと笑いながら言うフェイト。その時
「そうだね~…ブレイブデュエルか…」
ヴィヴィオのいる異世界でも思いっきり魔法を使った練習をするのはルーテシアの所に行かなきゃいけなかった。でも、現実に魔法は存在しなくてゲームの中でのみ魔法が使える異世界なら…そしてあの世界での時間も…進まなかった。
「ブレイブデュエル…」
その方法があった。
「ごきげんよ~、ヴィヴィおっ!?」
「ちょっと来てっ!」
教室に入ってきたアリシアが先に来ていたヴィヴィオに声をかけようとするとその前に彼女が手を取って
「えっ! なにっ?」
そのまま外へと引っ張られた行った。
「ブレイブデュエルの世界に行くっ!?」
階段を引っ張られるまま駆け上がって屋上に出た所でヴィヴィオは私にとんでもない話を持ちかけてきた。夏休みに行った異世界に遊びに行こうと言うのだ。
「でもっちょっと待って。前に私が行きたいねって言ったら反対したじゃない。『魔力が無いから戻れないかも知れない』って。」
ここと向こうとでは大きな違いがある。それは現実では魔法は全く使えなくてブレイブデュエルという体感ゲームの中でのみ魔法が使えると言うこと。実際私達が行った後ヴィヴィオは戻る方法を必死に探していた。
「夏休みだったから良かったけど、今日の明日で帰って来られるかわかんないんだよ? 学園祭はもうすぐだし。」
「それはきっと大丈夫。ホラ、前に行った時もあっちに居た時間は進んでなかったから…」
確かにあっちに行っていた時間分だけ私達は多くの時間を過ごしていた。
でもどうしていきなりそんな事を言い出したのか?
「それにもし時間が過ぎて学園祭が終わった後に戻って来ても戻っちゃえば…ね?」
「…うん、でもお昼まで考えさせて。行くならちゃんと準備もして行きたいし」
「そうだね。前にお世話になったからね、お土産考えないと。」
彼女がそう考えた理由が何かある。
とりあえず引き留める時間はまだあるらしい、その間に私は彼女がそう思い至った原因を調べる事にした。
……そして原因は直ぐに判った。
『ごめん、姉さん…』
ヴィヴィオの家族であり妹でもあるフェイトにメッセージを送ったら直後通信で返ってきた。
最近彼女の周りにファンというか追っかけというか…常に誰かの視線に晒されていたらしい。私やなのは役の子の様に絶対に入られない場所、領域みたいなものがあれば良いけれど彼女の生活エリアを考えると難しい。
公園での1件や昨日のレールトレインの感じ方から相当悩まされてる。
(リンディさんに言わないのは…そっか…)
はやてやシグナム達やリインフォースの事を思えば騒ぎを抑える冬くらい迄我慢すればと考えたけれど我慢出来なくて、そこであっちの世界をフェイトに言われて思い出したのかと。
『全くもうっ。ヴィヴィオ本気で行くつもりだよ。どうするの?』
1人で行ってしまった後で大慌てしたくないし、かと言ってフェイトに頼んで悠久の書を封印したら…心労から熱を出して倒れかねない。
『次の休日に海鳴へ遊びに行くっていうのはどうかな? みんなで一緒に』
『う~ん…でも、管理外世界だと魔法制限されちゃうよね?』
横目で授業中の彼女を見る。先生の話を聞きながら小さく端末を出して何かをメモしている。きっとあっちの世界の彼女達へのお土産とかしたいことを考えてるのだろう…。
『多分止められないよ? お昼休みに絶対聞いてくると思う【お土産何がいいかな】って』
唯一の幸いは私に相談してくれたからこうして相談出来る時間が作れたんだけど…
その時ふと思いついた。
『あっ! じゃあさ♪』
我ながらナイスアイデアと思いニヤリと笑うのだった。
~コメント~
以前「海鳴市幽霊忌憚」で何処かで誰かが見ているという話を書かせて頂きましたが、久しぶりにそんな話を書いてみたいと思ったのが今話です。
~AdventStoryから読んで頂いた方に~
闇の書事件の撮影話はAgainStory3で書かせて頂いております。今話はそれから少し経ってヴィヴィオとアリシアが夏休みで不在中に撮影映像(Movie2ndA's)が公開されている前提で話が進んでいます。
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