第04話「好敵手の成長」

 舞い降りたヴィヴィオとアリシアの姿にフェイトは呆然となる。

「ウソ…」

 司会をしていたアリシアもその様子に言葉が止まってしまった。


 
 そしてグランツ研究所でも…
「…随分待たせおって、シュテル、レヴィ、ユーリ」

 モニタを眺めニヤリと笑うディアーチェに

「ええ、遂に来ました。待っていた時が」
「もう負けないよ~っ!!」
「はい♪」

 ダークマテリアルズ4人をまとめて瞬殺した少女が帰ってきた。
 それは彼女達にとって待ち焦がれた時だった。



「ヴィヴィオ、アリシア…どうして…帰った筈じゃ?」

 フェイトが聞く。

「うん、帰ってまた遊びに来た。」
「おまえ達もガーディアンか?」

 長身の女性が聞く。ヴィヴィオとアリシアは振り返って睨む。

「違うよ。私達は…」
「通りすがりの正義の味方…ってところかな。そんな格好つけるつもりも無いけど。」
「1人の女の子に3人がかりって卑怯じゃない? そっちも本気で遊べないでしょ。だから私達が乱入。倒せたらレアカード貰えるみたいだし。」
「そういうこと♪ フェイトは暫く戦える状態じゃないし2対3なら丁度良いハンデよね」

 話ながらアリシアに小声で呟く。

「小さい子はセッテだと思うから中距離戦メイン、後の2人は近接戦、私は大っきい方-トーレを相手する。ドゥーエの爪に気をつけて。セッテは牽制しながらで…引きつけてくれたら後で応援に行く。」

 彼女が頷く。
 モニタ向こうでフェイトのデュエルを見て驚いたのは彼女達もここに要るということ。でもゲームの中なら怖くもない。

「ほぅ、貴様らの名前は」
「高町ヴィヴィオ」
「アリシア・テスタロッサ」
「セクレタリーズの用心棒、トーレ・ザ・インパルスだ。行くぞっ!!」

 トーレの声でヴィヴィオ達は一気に浮島から飛び立った。



『ヴィヴィオちゃん、アリシアちゃんもよく聞いて。前に来たときからブレイブデュエルもバージョンアップしてる。大きく変わったところは…』

 空中でトーレと何度もぶつかりながらエイミィからの通信を聞く。
 注意しなきゃいけないのは魔法を同時に使える上限回数が決まり使い方も易しくなった。全員が使えるようになったって考えた方がいい。
 でもそれだけならっ!!
 ディバインシューターのカードを読み込ませ再びトーレめがけて突っ込む。。

 一方でアリシアも高速でドゥーエの爪を弾いていた。続けざまに飛んできたブーメランをはじき返す。

「なかなかやるじゃない。」
「そっちもね。あなたはっ?」
「ドゥーエ・ザ・ライアーよっ」
「セッテ・ザ・ムーンエッジ…」
「じゃあドゥーエとセッテ、私、フェイトがあんなにされて少し怒ってるんだ。だから…ちょっとだけ本気でいくよ。」

 大剣状態になっていたバルディッシュを解除してキリエのソードダンシングを起動させ2本の小太刀に切り替え構えた。



 ヴィヴィオとアリシアはそれぞれトーレとドゥーエと向き合いつつ、セッテの繰り出すブーメランを弾き避けている。
 その姿にグランツ研究所のシュテルやはやて達は勿論、T&Hの子供達も見とれていた。
 そして少し離れた所にあるゲームショップでもその様子は映されていた。なのはとフェイトはその様子を驚きながら眺める。

「大丈夫かな…あの3人相手に2人でなんて」

と呟くと
 近くで見ていた中学生くらいの2人の女の子に声をかけられる。

「知らないんですか? 2ヶ月位前に突然現れて全国ランキングの1位と2位に勝っちゃったんですよ。」
「しかも初めて見せたレアなスキルカードまで破って。何か事故があってその後居なくなっちゃったからここには遊びに来ていてて事故の間に帰ったんだと思ってたんですけどまた戻って来たんです。また見られるんだ…」
「そうなんだ」
「教えてくれてありがとう」

 半ば興奮気味に話す彼女達に礼を言い、そうなんだと感心しながら再び視線をモニタに戻す。
 道理でゲームショップのブレイブデュエルと書かれた看板を見つけたら入った訳だ。
 3対1でフェイトが負けていて見過ごせなかったり、相手が彼女達っぽいのを見て何か見つけた事よりも、余程遊びたくてウズウズしていたらしい。
 なのははポットの中に居る2人を見てクスッと笑うのだった。



「アリシア…強くなってる。」

 レヴィが呟く。2本の剣を使った彼女の戦闘スタイルは変わっていない。でも彼女の剣はドゥーエの爪もセッテのブーメランも一切寄せ付けない。まるで彼女のデバイスが周りに水色のシールドがあるように動いている。

「みんな大変ですっ」
「今T&Hのイベントに!!」

 そこへアミティエ・フローリアンとキリエ・フローリアンの2人が駆け込んできた。

「私達も見ています。アリシアは…前よりも相当強くなっていますね。そして…」

 シュテルはモニタをヴィヴィオに切り替えた。
 再び浮島に戻ってヴィヴィオとトーレが近接戦、肉弾戦―インファイトと言っていい距離で拳と蹴りの応酬を繰り広げている。

「三月スカリエッティ…トーレ・ザ・インパルスは空手の有段者です。この距離は彼女の最も得意な筈、幾らヴィヴィオでも…」

 アミタが言うがその言葉と彼女達の状態は全く違っていた。
 トーレのライフポイントは徐々に減っているのに対し、ヴィヴィオのは最初僅かに減っただけでそれ以降減っていない。トーレとヴィヴィオでは手足のリーチは違いすぎるのにどうして?
 シュテルは一瞬ヴィヴィオの拳が光ったのを見逃さなかった。

「ディバインシューターです。ヴィヴィオは拳にディバインシューターを乗せてるんです。彼女は1度魔法を起動させたら同じ魔法を何度でも使えます。パンチはあくまでディバインシューターのカモフラージュ…そして、トーレがそれに気づいても…」

 トーレがディバインシューターを防御する。だがそれで攻撃が緩み生まれた隙をヴィヴィオが逃す筈がない。虹色に輝く手を引き絞る様にしながら懐に入り込んで

『ヤァアアアアアッ!!』

 雷撃を乗せた手刀の1撃が見事に炸裂、トーレを吹っ飛ばす。

「更に奥の手を彼女は持っています。」
『クロスファイァアアアアシュートッ!』

 とどめとばかりに吹き飛ばしたトーレめがけて彼女の得意魔法が炸裂した。
 トーレのライフポイントが0になったのを見て、ヴィヴィオはペコリとお辞儀をし2人を相手に奮闘しているアリシアの方へと飛んでいった。

「あれからシステムも変わっているのに、こんな使い方をするなんて…流石です。」

 含み笑いを浮かべるのだった。



「だ…大丈夫ですか?」

 僅かな魔法力を少しでも戻そうとフェイトは浮島でヴィヴィオとトーレの様子をみていた。
 紫電一閃とクロスファイアシュートの直撃を受けライフポイントが無くなったトーレに駆け寄り声をかける。

「イタタ…ああ、彼奴は何なんだ。父さ…ドクターJのデータにも無かったぞ。」
「あの事件の前に遊びに来た子です。1週間くらいしか居なくて…でも、多分…ううん、間違いなくトップランカーです。」

 起き上がるのを横で支える。

「そうか…博士、悪い作戦失敗だ。滅茶苦茶強い2人が出てきて私はその1人に負けちまった。今、二…ドゥーエとセッテの所に行ったから…」

 ドクターJに通信しているらしい。
 彼女が話している最中に特大の虹色の砲撃が雲を突き抜け爆発した。多分アレでドゥーエとセッテも倒れただろう。
 その予想は当たっていて、虹が見えた上空からヴィヴィオとアリシアの2人が浮島に戻ってきた。



 トンっとヴィヴィオとアリシアは再び浮島に降り立った。

「やっほ、フェイト♪」
「久しぶり。」
「うん、アリシア、ヴィヴィオありがとう。もうちょっとで負けちゃってた。」

 思ったよりショックもなく元気で安心する。

「おぃ、そっちの…高町ヴィヴィオ。お前シグナム先輩のスキルカード」
「トーレさん、シグナムさんを知ってるんですね。前に来た時八神堂でお世話になってました。」

 睨むトーレに笑顔で答える。
 本当は少し怖かったけれどここに居る彼女達は別人なのだと言い聞かせる。ヴィヴィオが答えると彼女は納得したのか頬を崩し

「そうか…久しぶりに楽しかった。次も戦ってくれるか? 今度は1対1で堂々と」
「はい、私こそ。」

 そう言って彼女が差し出した手を取って握手する。フェイトを攻めている時もデュエル中も思っていたけれど悪い人ではないらしい。
 ヴィヴィオが答えた瞬間、トーレの姿は消えた。

「これでガーディアンのお仕事は終わりだよね。」

 ん~っと背伸びをする。久しぶりに思いっきり動けて楽しかった。

「私達も戻らなきゃ。」
「えっ?」

 途中でこっちに来たのを思い出した。

「あっ、でも…そうだ、八神堂に行くつもりだったんだけど先にT&Hに寄るから待っててね。」
「えっ?」

 フェイトが狼狽えている間にアリシアと一緒に仮想世界を後にした。


~同時刻~

「えっ? セクレタリーズを乱入して倒した?」
「2人で3人ともですか?」

 デュエル真っ最中のなのは達にエイミィからの連絡が入った。

「乱入って一体誰が?」
「「「ヴィヴィオちゃんとアリシアちゃん!?」」」

 もたらされた名前を聞いてなのはとすずかとアリサは素っ頓狂な声をあげるのだった。

~コメント~
 今話は1話と3話の続きです。
 再びイノセント世界にやってきたヴィヴィオ達。DMSの面々との再戦とか色々書いてみたいです。

 

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