第06話 「過去と未来の邂逅」

「もっと広いと思ってたんだけどな~」

 夕方、なのはは高町家の縁側に腰を下ろした。
 花壇や道場、廊下もそうだし家の中ももっと広いと思っていたのに…

「なのはさんが大きくなったからじゃないんですか。」

 アリシアがひょこっと庭から顔を出した。

 ヴィヴィオとフェイトと別れた後、なのははアリシアと一緒に翠屋へ赴いた。
 既にここのなのはとプレシアから連絡が入っていたようで、士郎から

「本当に若い頃の桃子にそっくりだな。」
「若い頃の誰だって?」

と言われ近くに居た桃子にジト目で見られたのに苦笑した。
 一緒に来たアリシアは恭也と美由希が練習に行ったのを聞いて「私も行ってきます」と挨拶もそこそこで持って来たトレーニングウェアに着替えて行ってしまった。
 店を手伝おうと考えたけれど士郎達以外にアルバイトやお客もいる状況で話せる筈もなく

「アリシアちゃん達も練習終われば帰ってくるから家で待っていてね♪」

 鍵を渡されて先に家に帰ってきた。
 士郎と桃子は人を疑うということを知らないのだろうか
 勝手知ったる家だけれど流石に色々触るのも躊躇われたからリビングの角に荷物を置いて家の周りや中を見て回っていた。その間に時間が経ってしまったのだろう。

「フェ…アリシアおかえり。もう練習終わり?」

 昔のフェイトとアリシアが重なってしまい慌てて言い直す。

「? 恭也さん達はお店寄ってから帰ってくるそうです。私は最後はここで軽く汗流そうかなって。」

 道場の中に入って2本の木刀を持ち出して構える。

「やあっ!!」

 木刀を振るう。小気味よい音と土を蹴る音、彼女の声がリズムを奏でる。その様子をなのはは座って眺める。

(ヴィヴィオやフェイトちゃんから聞いてたけれど本当に練習してるんだ…)

 ヴィヴィオとの模擬戦でプレシアが彼女のデバイスに入れたアシスト機能については聞いていた。でもここでは魔法は使えないから彼女自身が練習してきた成果だ。それも昨日今日じゃない。
 ブレイブデュエルは体感ゲームなのだから剣技も使えるのだろう。
 そんな事を考えながらなのはは彼女が練習を終えるまで眺めるのだった。



「博士、八神はやてから電話です。」

 夜も更けて来た頃、グランツ・フローリアンが自室で端末を触っているとドアをノックした後シュテルが電話を持って入ってきた。

「ありがとう」

 電話を受け取ると彼女はおやすみなさいと言って部屋を出て行った。
 珍しい時間に珍しい人からの電話に何かあったのだろうかと保留を解除し電話に出た。

「グランツです。こんな時間に珍しいね、どうしたんだい?」
『博士、夜遅くにすみません。先に連絡だけしといた方がいいと思いまして、今日のヴィヴィオちゃんとアリシアちゃんについてなんですけど』
「ああ、あれはビックリしたね。まさかまた来るなんて思ってなかったよ。アミタ達は来るのか待っていたみたいだったけどね。」

 雑談で電話をかけてくる彼女ではないから何か理由がある…しかし言葉を選んでいる気がする。 グランツは訝しげに思いながらも暫く彼女の話に乗ることにした。

『私も驚きました。フェイトちゃんのピンチっていうところで登場でしたから。後でヴィヴィオちゃんに聞いたら途中で八神堂に来る途中でブレイブデュエルの提携店に寄ったらフェイトが危ないって思わず飛び込んだそうです。それであの3人に勝つんですから。』
「そうだね、夕食は彼女達の話題で持ちきりだったよ。」
『…それでですねT&Hで2人が貰ったカードについて教えて貰えませんか?』

 どうやらこれを聞きたかったらしい。
 手元の端末を引き出して今日ヴィヴィオ達に贈られたカードの情報を表示する。

「カード? ああ、感謝カードかい? あれは撃退したプレイヤー…じゃなかったデュエリストのアバタージャケットタイプと今までのデータから得意なスタンスを特化するアイテムカードなんだ。ヴィヴィオ君は近接デュエルが得意そうに見えるけれど砲撃系を使っていたから強力な砲撃スキルが使える様に、アリシア君は近接迎撃戦…2刀流の発展系だと思うんだけれど。」
『そうなんですが、あのカードはゲームバランスを壊したりしませんか?』
「確かに強力なカードだけれどその分MPの消耗も激しい。バランスが壊れる様なカードじゃないよ…何かあったのかい?」

 グランツが聞くとはやては少し黙ってしまった。
 それから少し時間が過ぎて

『上手く説明できませんのでメンテ後に八神堂だけで動かした時のデータ送ります。入ってるのはヴィヴィオちゃんとアリシアちゃん。あとヴィヴィオちゃんのお母さんです。明日、朝から4人を連れて行きます。夜遅くすみませんでした。』 
「わかった見てみるよ。」

そう言うと電話を切る。

「さて…はやて君の話だと2人のカードは明らかにゲームバランスを崩しているみたいだが?」

 カードのランクはSR、確かに強いカードではあるが瞬間的な出力だけならヴィヴィオがシュテルとデュエルした時に使った全てのカードを組み合わせた方が上だろう。
 アリシアのカードもレヴィやキリエのカードの上位レベル。どちらのカードもSR+と比べるとそれ程とは思えない。
 考えているとはやてからのデータがブレイブデュエルを通して送られて来た。

「どれどれ…!!」

 次の瞬間、グランツは驚愕の光景を目にするのだった。



「はやてさん」

 電話が終わったはやてにヴィヴィオは声をかけた。

「ん? ごめんな、遊びに来たのに巻き込んでしもて…ヴィヴィオちゃん達に言わんと決めたけど明日朝から一緒にグランツ研究所に行ってくれる?」
「はい、あんなの見ちゃった後ですしゲームバランス滅茶苦茶になっちゃいますよね。」

 浮島を1撃で消滅させるカードは流石にデュエルで使えない。

「SRの威力は似たもんなんよ。私もSRやSR+のカード持ってるからな。気になったのは浮島壊したやろ? スカイデュエルで浮島は非破壊オブジェクト…壊れへん様に作られてる。」
「それが壊れちゃったから?」
「ヴィヴィオちゃんのお母さん達のジャケットタイプも気になったし、あとは博士が調べてくれる。」

 今日の騒動が起きなかったら八神堂ではやてに挨拶してグランツ研究所に行くつもりだったから行くのは問題ないけれど…。

「ママ達を見たら驚きますよね…」
「それも楽しみの1つやね♪」

 ニヤリを笑ったはやてに

(ああ、こっちのはやてさんも悪戯好きなんだ…)

と心の片隅に留め置いておいた方がいいと思った。



その頃、高町家のアリシアはと言うと… 

「へぇ~魔法文化がある世界か~」

 士郎が夕食後のコーヒーを飲みながら呟いた言葉にエヘヘヘと微妙に引きつった笑みを浮かべて答えていた。



 こっちのなのは達にはアリシア達の世界については前に来た時に話していた。でも恭也と美由希が帰って来た時

「…なのは?」

 2人はアリシアと一緒に居た女性が1目で彼女がなのはだと気づいた。2人が気付くのだから士郎や桃子も既に判っている。でも翠屋では騒動になるから黙っていただけかも知れないと考えてなのはと相談した結果、夕食前に全員が集まった時アリシアとなのはは揃って立って。

「前にもお世話になっていたのに自己紹介をしていませんでした。アリシア・テスタロッサです。ここと違う異世界、魔法世界から遊びにきました。そして…こちらは」
「高町なのはです。こっちでは初めまして、お父さん、お母さん、お兄ちゃん、お姉ちゃん…それに私」

 なのはを含む高町家全員が息を呑む。判っていたからアリシアは続ける。

「私達は魔法世界…とここから10年と少し先の未来から来ました。どうやって来たのかとか私達の世界でみんなはどうしてるとか聞かれても答えられません。知っちゃったらみんなの未来を変えちゃうから…ごめんなさい。」
「で、でもっそれ以外の話だったら全然OKです。お店のお手伝いも頑張ります。だからよろしくお願いしますっ!」
「…………」
「………」
「…………」
「………」

 士郎や桃子、恭也、美由希、なのはも互いの顔を見合わせる。
 流石に突拍子もない話だ。ここでは魔法が使えないから証拠も無い、強いて言えるとするならなのはがブレイブデュエルで私達が消えたのを見ている位だろう…。

「……いや、前にアリシアちゃんが来た時に何か事情はあるんだろうってみんなで話していたんだ。でも話せないんだったら待っていようって。」
「…俺は前に聞いてた…10数年経ったらなのはも母親になってるんだなって驚いたけれど。」

 恭也が呟く。

「恭ちゃんいつ聞いたの?」
「前にヴィヴィオが朝練に顔を出した時教えてくれた。『私は高町ヴィヴィオです、高町なのはの娘です。』って」
(そういえば恭也にちょっとやそっとで身につく動きじゃないって見られてバレたって言ってたっけ…)

 前に来た時ヴィヴィオが電話で言っていた様な気がする。

「恭也~どうして教えてくれなかったの。孫に会えたかも知れないのに~っ。」

 桃子が凄く残念そうに言うが恭也は特に表情も崩さず答える。

「直ぐに2人とも帰ったし、聞かれなかったから…」

 桃子と美由希はハァっとため息をつき肩を落とした。

「ま、まぁとにかくだ。何か聞かれたら親戚が遊びに来たと答えよう。」

と士郎の一言で落ち着いた。
 そして、恭也や美由希が年上のなのはを呼び捨てにするのは…とかなのはがこちらの士郎や桃子達をお父さん、お母さんと呼ぶのも違う疑念を持たれかねないという話になり。
 ここのなのはは『なのは』、大人なのはは『なのはさん』と呼ぶ事に決まった。



「本物の魔法少女か…」

 フェイトはベッドの中で今日1日の事を思い出していた。
 ブレイブデュエルでは本当にアリシアとヴィヴィオが来てくれなかったら負けていた。

「アリシア…」

 同じライトニングのアバタージャケットでカードもレアかレア+しか持ってなくてブレイブデュエルに入るのも久しぶりだった筈…それなのに彼女はドゥーエとセッテの連携攻撃を全て弾いていた。
 通常ブレイブデュエルでは剣を振り上げたり攻撃魔法を使っている間の様に攻撃中、相手の攻撃を受けると直撃を受けてライフポイントは防御状態より大きく減ってしまう。しかし、自分の攻撃を相手の攻撃にぶつけるといった迎撃をした場合、相手の攻撃値より僅かでも上回っていれば相殺されライフポイントは減らない。
 理屈は判っているし、フェイトも出来ない訳ではないけれど…初めて見る相手と攻撃で全部相殺出来るだろうか?
 そして…

「大人の私…」

 本当に驚いた。ヴィヴィオからお母さんが私だと言っていたけれどまさか一緒に来てるなんて…
 なのはから大人のなのはとアリシアは高町家に、ヴィヴィオと大人の私は八神堂に居るらしい。なのはとはやて達がお話できるのが少し羨ましい…

「明日…遊びに行こうかな…うん♪」

 そう思うと明日が少し楽しみになった。


~コメント~
 掲載が少し遅くなりました。
 先週から5日間遅い夏休暇で旅行に行ってました。
 普段山の中で生活している私にとって360度海は圧巻の一言でした。
(ダイビングの聖地とか島間に凄い長い橋が架かってるところです。)

 それはさておき、少し話が進んでようやく1日目終了です。
 魔法使いじゃない子供のなのはとフェイト、バリバリ魔導師な大人のなのはとフェイト、互いに交わらない同一人物ですが話がどんな風に進んでいくのか楽しみです。


 

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