第12話 「グランツ研究所にて~その5~」

「まだまだっ!!」

 トーレの横に薙いだキックをヴィヴィオはジャンプして避ける、直後そのまま振り下ろされる踵落としを両腕で受ける。

「クッ!」

 そこへセッテが横から急接近してきた。そのまま手に持った大きなブーメランを横薙ぎに
ヴィヴィオは慌てて地面に転がるがその真上にトーレの顔が見えた。

(マズイっ!)

 拳が連続で振り下ろされるところでインパクトキャノンを放って爆発させ全速力で彼女の背後へと飛ぶ。だがこの攻防でヴィヴィオのライフポイントは半分以上削られた。 


 
「やっぱり2人の連携はすごい。急がなきゃ。」

 煙が晴れる前に2人にアクセルシューターを放って一路公園を目指す。



 一方アリシアもフェイトとなのはの連携に大苦戦していた。
 デバイスを変えた時点でなのはへの攻撃が出来ず、フェイトに対してのみ動いている。だからかなのははフェイトの攻撃で隙が生まれたタイミングを狙って攻撃してくるからフェイトのライフポイントが削れず、更に彼女も前より動きが慣れていて

「急がないとまずいね…」

 既にライフポイントは半分を切っていた。



「彼女達でも1対2では流石に分が悪いですか…。」

 モニタを眺めながら呟くシュテル。

「………」

 いつも元気なレヴィは2人の会話も耳に入っていないのかモニタから視線を外さない。相当集中しているらしい。

(良い感じだね。)

 そんな2人の様子を見てなのはは満足げな笑みを浮かべた。きっと彼女達はデュエル中の6人に自分の姿を写しているのだろう。



 そしてヴィヴィオとアリシアのライフポイントが残り3割くらいになった時、遂に2人は合流する。
 都市エリアの片隅に作られた公園ステージは言わばビル等の隠れられる対象が少ない場所。
 ヴィヴィオがそこに飛び込んできた時、遠くにアリシアの姿が見えた。
 アクセルシューターを2つ作ってなのはとフェイトを牽制する。
 2人ともアリシアに集中していたらしく、突然飛び込んできた魔法に慌て彼女が離れる時間を作ってしまった。

「行くよアリシアっ!」
「いつでもっ!」 

 背合わせになる。元気よく言っているけれど彼女のマントもかなりズタボロな状態になっている。そんな状態でも戦意は失ってないのは頼りになる。

「「Goっ!」」

 かけ声と共にアリシアがヴィヴィオを追いかけてきたトーレに向かってダッシュする。トーレがインファイトを得意としている様に彼女も同じく近接戦を得意としている。何度かアリシアの連撃とトーレの拳がぶつかる。
 そこへヴィヴィオも突撃して2人を飛び越え大きく弧を描くように反対側に回るとすかさず2人めがけてインパクトキャノンとアクセルシューター10発を放つ。

「ハァッ!」

 アリシアは迫る攻撃魔法を一瞥もせず屈み足払いをかける。しかしトーレはアリシアとヴィヴィオの攻撃を読んでいたらしくジャンプした。2人の隙間を虹色の光が通り過ぎていく。
その先に居たのはこっちに向かっていたなのは。

「!?」

 慌ててディバインバスターを放つが相殺しきれず

【ドォオオオン!!】
「なのはっ!」

 爆発に飲み込まれた。



 一方でアリシアは屈んだ反動で上へジャンプする。トーレが構えるが彼女は更にスピードを上げ迫っていたセッテに向かう。デバイスを構えるセッテ。肉薄するかと思った瞬間2人の間にフォートレスの盾が上空から落ちてきた。ヴィヴィオは起動してからずっと後を追いかけさせていたのだ。
 アリシアは身体を捻って半回転し盾を足場にしてジャンプする。目標はフェイト。彼女もそれに気づいたのかソニックムーブを起動してアリシアへと向かう。
 だがそれは読みやすい軌道だった。
 アリシアに集中していたフェイトめがけて

「クロスファイアァアアシュートッ!」

 下方に飛んでいたアクセルシューターが加速し砲撃魔法となってフェイトに向かう。フェイトが虹色の砲撃に気づき軌道を変えた所へ

「ハァアアアアッ!」
「!?」
「タァアアアッ!」
「っ!!」

 先回りしていたアリシアが高速で突きを放ち、ヴィヴィオが着地前のトーレに対して虹色に輝く光の一閃をぶつけた。
 2人は公園の木々を折りながらビルにぶつかり

【【ドォォォオオオオン!!】】

 大きな衝撃音を奏で、2人のライフポイントが0になったというメッセージだけが無表情に表れた。



『ヴィヴィオ、もうちょっとで当たるとこだったじゃない!』
『え~っ、でも全部合ってたでしょ?』
『合ってたんじゃなくて私が合わせたのっ』
『ウソだぁ~! 絶対当てようとしたでしょ。』
『してないって』

 言い合うヴィヴィオとアリシアの声を聞きながら、外で見ている者達は全員唖然としていた。
 当人達の言い合いに無茶するんだからとなのはとフェイト苦笑する。
 元世界ではアリシアの魔力制限があるから同じ様には動けない。だからこっちに来ると決めた時から2人は何処かで打ち合わせしていたのであろう。練度に若干問題はあるけれどこの状況で相手の意表を突いて先にフロントアタッカーを倒すのは正しい。
 アリシアがセッテを目標にしたかの様にトーレとフェイトに誤認させ、シールドを使ってセッテの追撃を抑えた。同時にアリシアはなのはが攻撃されて若干戸惑うフェイトに攻撃対象を切り替えた。
 フェイトはアリシアを迎撃しようと動くが若干の心の揺らぎを大きくする為にクロスファイアシュートを放ちアリシアへの意識を一瞬逸らせた。その一瞬にアリシアは攻撃をしかけた。
 一方でヴィヴィオも三月の警戒がアリシアに向いていて無防備になる着地する前を背後から攻撃した。
 ブレイブデュエルの中では相手の攻撃値を上回る防御値を持っていても防御体勢になっていないと働かない。又、上回る値を以て迎撃するにしてもタイミングを合わさなければダメージとしてライフポイントが減ってしまう。
 2人はその効果を最大限に引き出した。

 モニタ向こうでライフポイントを少し失ったなのはとノンダメージのセッテが動き始めたけれど、ここから逆転するのは難しいだろう。
 先程まで追い詰めていた時と逆の立場になったのだから…。

「どうすればあんな事が出来るのです…」
「…わかんない。」 
「使ったスキルはヴィヴィオがインパクトキャノンとアクセルシューター、クロスファイアシュートと紫電一閃。アリシアがソードダンシングとライオット2のソニックムーブ。珍しいスキルもあるけど似たスキルを持ってるよね?。でも同じ様にやってみてって言っても出来ないよね。これが私達とヴィヴィオ・アリシアが持っててシュテルちゃん達が持ってないもの。」

 なのはの言葉にシュテルとレヴィが振り仰ぐ。

「相手の分析は出来るからいいとして…ブレイブデュエルの魅力を紹介する為の精密射撃や高速移動、見た目が凄いスキルを使う強さじゃなくて、瞬間の判断力と思考力、そして想像力。」
「瞬間の判断力と思考力」
「想像力…」
「うん、後でさっきのデュエルと見比べてみて。」

 そう言った直後なのはとセッテのライフポイントが0になってヴィヴィオとアリシアが勝利したというメッセージが表示された。



 思ったより長い時間デュエルしていたのか、ヴィヴィオ達が戻るとディアーチェが食事の用意が出来たと呼びに来た。
 食事中に感想会&反省会と思っていたのだけれど、スタッフからT&Hでは既にブレイブデュエル目当ての人達が沢山来ていて予定を早めたいと連絡があり、はやてが八神堂に連絡すると八神堂も古書店側が溢れかえり既に地下のブレイブデュエルスペースを開けているらしい。
 折角の美味しいご飯なのにゆっくり味わう時間もなく、食べたら直ぐヴィヴィオとアリシアははやてと一緒に八神堂へと向かうことになった。
 ヴィヴィオは昨日みたいにセクレタリー戦があると更に大変になるんじゃないかと思い三月に聞こうとしたが、

「さっき家から連絡があってそれどころじゃないらしい。私達も食べたら直ぐに帰る。忙しいのは判っているから私達も邪魔しない。」

何があったのかは判らないけれど、その言葉に昨日襲撃を受けたT&Hエレメンツのメンバーであるなのは、フェイト、アリシアはホッと息をついた。

 食事を終えて30分後、ヴィヴィオとアリシアは八神堂の臨時ショッププレイヤーとして走り回っていた。八神堂だけでなくT&H・グランツ研究所と久しぶりの全店稼働だったらしく過去最高の盛況ぶりだったと聞いたのは日が落ちて皆がクタクタになった時だった。


  
 少し時間は戻って食事後子供達が皆それぞれの所へ向かった頃。
 なのはとフェイトはグランツ研究所の所長室に居た。

「お客様に後片付けをお願いしてすみませんでした。」

 グランツが差し出したコーヒーカップを受け取る。

「いいえ、私達こそ食事まで頂いちゃって。」
「本当に美味しかったです。」
「ディアーチェが家事が得意でね。最初は交代で私達も作っていたんですが私達では食材を生ゴミに変えてしまう方が多くてね。」
 
 苦笑するグランツ。

「食事中にアミタに聞きました。DMSの3人がなのはさんとフェイトさんに1度も勝てず、しかも彼女達に弱点があると言われたと。【瞬間的な判断力と思考力、想像力】と言われたそうですがもう少し詳しく教えて頂けませんか?」

 なのはは少し考えフェイトの顔を見る。
 ここにはグランツとフェイトと自分しか居ない、言ってもいいのだろうか…。失礼だとは思うが彼の考えを先に聞いておきたいと考えた。

「博士はもしブレイブデュエルの中の出来事が現実になったらどう思われますか? もしパーソナルカードやスキルカードに書かれた内容が現実化したら?」
「そうですね。思考だけで動き、空を自由に飛んだり出来るのは魅力的ですが…実際には【兵器】ですね。」

 なのはの問いに彼は即答した。

「はい、兵器です。私達が来た魔法文化のある世界では魔法を使える場所が決められていて特に強力な魔法、SRやSR+の様な魔法は厳重な制限がかかっています。私はその強力な魔法を教える立場、彼女は悪用した者を取り締まる立場にあります。」

 フェイトが頷く。

「そんな世界ですから個々の魔力資質によって立場も変わります。より魔力資質の良い者は優遇される社会です。」

 なのはの言葉にグランツは頷く。

「ブレイブデュエルはゲームの中という制限はありますが私達の世界と同じ様になる危険性もあります。博士は今後ブレイブデュエルをどんな風に発展させるつもりですか?」

 武装教導隊、執務官だからこそ、周りに子供が居らず開発者であるグランツが居るから聞ける話。
 回答次第で答えられるかが決まる。そう考えていた。 

「なのはさん、フェイトさんはスポーツをご存じですか? 柔道、空手、剣道、相撲、フェンシング、レスリングや格闘技関連のスポーツです。」

 いきなり話を切り替えられて少し驚くが頷いて答える。

「私も専門ではありませんがそれらは昔戦乱の中で生まれたそうです、先程言われた兵器と同じですね。更にブレイブデュエルで各店を繋いでいる仮装空間、この技術の大元は戦争です。でもそれらは今国際的なスポーツとして、社会に不可欠な技術として定着しています。」
「ブレイブデュエルも同じ、使う人によってどんな形にでもなります。ですから私は遊びから良い可能性を求め広げていこうと考えています。」   

 子供の様な笑顔を見せて言った彼を見て

『ここに遊びに来ようって思った時から未来が変わるのは判ってた。でも変わるなら良い世界にでもできるよね?』

 なのははヴィヴィオが昨日話してくれた言葉を思い出す。

『グランツ博士はブレイブデュエルを作った人だよ。とっても良い人♪』

 フェイトも彼女がグランツについて話してくれた事を思い出す。
 ブレイブデュエルも時空転移と同じ様に悪い使い方もあれば良い使い方もあるのだ。それにヴィヴィオは気づいていたからここに来ようと考えたのかも知れない。
 互いの顔を見て笑顔で頷き。

「ありがとうございます。【瞬間的な判断力と思考力、想像力】についてでしたね。」

 そう言って彼の質問に答えるのだった。



~コメント~
 今話後半が難しい話になってしまいました。反省。
 グランツ研究所での話がやっと終わりました。
 『グランツ研究所にて~』はDMSやアミタ・キリエ・グランツ達との再会的な話と三月・七緒とその家族sの話も書きたい話だったのですが、ブレイブデュエルの世界に大人なのはと大人フェイトが来ると決めた時から最初にグランツと顔合わせして欲しいという思いから生まれた話です。
 幾ら大人びた(穿った)ヴィヴィオとアリシアでも流石にグランツは話せない事もあるでしょう。大人同士の間柄だから話せる内容もあるのではと考えた時、ブレイブデュエルがどういう存在で今後どんな風に発展するのかとイノセントの会話から私なりに考えてみました。

 

Comments

Comment Form

Trackbacks