第13話「ブレイブデュエルの可能性」

「本当に凄かったんだよ♪」

 グランツ研究所と八神堂でずっとブレイブデュエルをした夜、高町家でなのはは士郎や桃子達にグランツ研究所での事を話した。
 アリシアも照れながら話を聞いていた。
 フェイトを倒した後彼女を追い詰めたのは夏休みの宿題の合間にヴィヴィオとこんな連携出来たら楽しいよね~と言ってシュテル達と対戦した時を考えたフォーメーションが基になっていて、フォートレスとライトニング2を使おうと少し修正していた。

(あんなに上手くいくなんて…って言わない方がいいよね。 あっ、そうだ!)
「恭也さん、美由希さん一緒にブレイブデュエルしませんか?」
「「俺(私)が?」」

 食後のコーヒーを飲んでいた2人は少し驚いて聞き返した。

「はい、今日前に教えて貰った技を使ったんですがイメージトレーニングにぴったりじゃないかって。実際に練習して動くのも大切ですけど上手く出来た時のイメージも大事なんじゃないかって。」
「面白そうじゃないか♪ 俺も出来るかな」

 士郎が興味を示す。

「えーっみんなズルイ~!」
「お母さんも出来るよ。今日グランツ博士と話していた時に聞いたんだけどブレイブデュエルの中で料理を味わえないかって味覚プログラムを作っているんだって。翠屋の味をブレイブデュエルの中で作れたら良いと思うんですけど…どうかな?」
「それ本当!? 楽しそうね」

 頬を膨らませた桃子になのはが話した途端乗り気になった。

「グランツ研究所はお得意様で毎日沢山買ってくれるんだけれど、研究対象にされていたのかな?」
「ブレイブデュエルでママのシュークリームが食べられたら良いけど、それだとみんなに真似されちゃうんだよね?」
「そうなると翠屋が…」

 逆に恭也となのはと美由希の表情が曇る。しかし桃子はあっけらかんと

「そんな事心配しているの? 料理は同じ材料を同じ手順で作れば同じ物が出来るわ。でもお菓子作りはそれだけじゃないし絶対に手に入らない材料もある。」
「材料?」

 その会話にアリシアは首を傾げるがなのはは何かを察して頷く。

「「料理は愛情♪」」

 口を揃えて言った2人にアリシアを含む他の4人もなるほどと納得するのだった。
そして…

「さっきのブレイブデュエルの話…少し考えるよ。明日から俺と美由希はキャンプに行くから…」

 2人が剣の練習でキャンプに行くのを聞いて

「私も行きたいです、一緒に連れてって下さい!!」

 机を乗り出す勢いに一応保護者ななのはは苦笑するのだった。
        


 一方その頃、八神家では…

「おいでおいで~…」
「フゥゥゥゥウウウ!」

 リビングのソファーでヴィヴィオは思いっきり威嚇されていた。

「珍しいな、油揚げ使ってもダメやし…」
「めっちゃくちゃ嫌われてんな♪」

 近くで見ていたはやては少し困り顔で、対するヴィータは面白そうに見ている。

「なはと、落ち着け。研究所で何かあったのか?」

 暴れられても困るとリインフォースがなはとを抱き上げてソファーに座り膝上に乗せる。
 頭を撫でられて目を細めるが、ヴィヴィオが少し近づこうとすると閉じた目はパッチリ開いてこっちを見る。警戒は解いてないらしい。

「何にも…私が近づくだけでこんな感じなんです。」

そんな時…

「ヴィヴィオ、なはととナハトヴァール…何か繋がってるんじゃない?」

フェイトが耳元で囁いた。
 なはとという名前を聞いてヴィヴィオは直ぐに思い出せなかったが、八神家に戻ってリインフォースの腕を取って引っ張るなはとを見てナハトヴァールの事を思い出した。

 ナハトヴァール、闇の書事件の撮影で闇の書の防衛システムとして描かれた蛇の魔物。
 その形状は腕に巻き付いたベルカの古代武器。見るからにもふもふな感じのなはととは全く似てもいない槍の様な突起がなはとの額にある角で何か繋がっているのであれば…嫌われているのも頷ける。
 ナハトヴァールにとどめを刺したのはヴィヴィオなのだから…

「環境が変わって落ち着かないのだろう。今日はゆっくり休ませた方が良い。」

 シグナムに言われてヴィヴィオはそれ以上なはとを刺激しないように離れた。



 高町家・八神家でそんな事があって少し時間が過ぎた夜中、フェイトはベッドの中で今日のデュエルを思い出していた。

(悔しい…アリシアが攻撃してくるのは判っててヴィヴィオの魔法も知っていたから対応も出来た。それでもなのはが攻撃されたら私が迷うって…)

 フェイトからなら崩せるとアリシアとヴィヴィオは考えたのだ。そしてそれは的中した。
 デュエルを終えてからはバタバタとなってしまった為、アリシアやヴィヴィオと少ししか話が出来なかった。
 まだ彼女には1度も勝てていない。同じライトニングでプレイ時間も私の方が長いのに…
 もう1度…デュエルしたい。そしてその時は勝ちたい…でも…どうすれば?
そう考えて寝返りをうった時、突然「ヴヴヴヴ」と振動音が聞こえた。

「ヒッ!?」

 思わず飛び上がりそうになるが、音の原因が机の上に置いてあった携帯だと気づいて起き、画面を見る。

「シュテル?」

 こんな時間に電話をしてくるなんて初めてだ。

「もしもし? フェイトです。」
『夜遅くにすみません。起こしてしまいましたか?』
「ううん、まだ寝られなかったから…」
『そうですか…もしかしてデュエルの事気にしていましたか?』

 言い当てられて少し驚く。

「……うん」
『私もです。それで…ですが明日の夕方にグランツ研究所に来ませんか? フェイト1人で』
「私1人で? 大丈夫だと思うけど…どうして?」

 フェイトが聞き返すと電話向こうのシュテルは少し黙った後で

『恥ずかしいので言いふらさないで下さいね』と言って今日フェイト達が来る迄にあった事を教えてくれた。
 先にアリシアとヴィヴィオ、そして彼女の母のなのはとフェイトが研究所を訪れていて、レヴィはアリシアと、シュテルはヴィヴィオと1回ずつデュエルして負けた。そしてその後になのはとフェイトとデュエルをした時、DMS3人がかりだったのにも関わらず全敗したらしい。

「大人の私達って…昨日ブレイブデュエルを始めたばっかりだよね?」
『はい、キリエとはやてにRとR+のスキルカードを3枚ほど借りたそうです。私達はSR+やSRを入れて望みましたが…手玉に取られました。彼女達は異世界で魔法使用の教官で、実際に私達の弱点を直ぐに見抜きました。』
「………」

 フェイトはゴクリと唾を飲み込んだ。
 ブレイブデュエルの中で自由に動くのはある種のコツが要る。それを知っているから流石に驚いた。そんな2人に教えられているのであればヴィヴィオとアリシアも…多分最強なのだろう。

『それで、あちらの2人…混在するのでフェイトさんとなのはさんと呼称しますが、滞在期間中、夕方に私達を特訓して貰える様にお願いしています。そこにフェイトも参加しませんか?』
「私も?…私だけ?」
『はい、T&Hエレメンツではフェイトがロケテストランカーです。フロントランナーとして限られた時間の中で多くを学なばければなりません。』

 だったらなのはやアリシア、アリサ、すずかと八神堂のヴィータ達も呼んだ方がと考えたが、シュテルがなのはを呼ばずに私1人と言った。

(そうか…ヴィヴィオ達がどれ位居るかわかんないから…)

 遊びに来ていると言っていたから数週間も居ない。長くて1週間、短ければ明日か明後日には…その中で全員が教わるには時間が足りない。
 その中でアリシアに全敗している私だけを呼んだ…つまりはそこで得た物を今度は私がみんなに伝えなきゃいけない。
 携帯を持つ手がブルッと震え

「わかった。」
『余り大事にもしたくありませんから…』
「うん、わかってる。誘ってくれてありがとう。」

 そう言うとシュテルはまた明日。と言って電話を切った。

  

「おはようございます~」

 翌朝、グランツ研究所の自室で目覚めたユーリがリビングに来ると食卓にグランツが居た。

「おはよう」
「おはようございます、博士。徹夜だったのですか?」

 普段彼は夜遅くまで仕事をしている為、滅多に朝は見かけない。見かけるとすると徹夜でこれから寝るという時位。

「いいや、今日来るお客様の準備をね。ユーリも手伝ってくれるかい?」
「はい、お客様?」
「翠屋のパティシエ、高町桃子さんが味覚エンジンの監修を快諾してくれたんだ。以前有名なホテルで専属のパティシエをされていたそうだから世界レベルだね。これは凄い事になるよ。昨日なのはさんに話していたんだが、もっと早く頼めば良かったよ。」

 凄いハイテンションにユーリは若干引く。

「朝連絡があった後ずっとこんな調子です。今まではディアーチェが色々試していましたけれどプロが加わればまた違った結果も出るでしょう。」

 キッチンから焼けたパンを持って来るアミタが苦笑しながら言う。
 でもグランツが興奮気味なのもユーリには理解出来た。味覚エンジンが組み込めればブレイブデュエルの楽しさは倍増する。
 しかも監修してくれるのはなのはの母でユーリやグランツだけでなくスタッフにもファンが居る程の美味しいケーキを作る彼女なのだ。。

「今日はブレイブデュエルと味覚エンジンについて触れた後、秋の味覚ステージでブレイブデュエルを体験して貰おうと思っている。」

 秋の味覚ステージは秋の山で食材カードを集めて鍋料理を作るというブレイブデュエルでもバトルなしの収集ミッションだ。でも…

「秋の味覚ステージですか…博士、折角来て下さるんでしたら鍋よりお菓子系の方が、例えば収集ミッションでもアイスクリームの方とか」 

 ユーリが提案したの同じシステムで食材カードを集める収集ミッションだけれど、作るのは鍋ではなくアイスクリーム。材料カードやトッピングカードを集めて競う。

「そうだね。そっちの方がいいね。午後から来てくれるそうだからよろしく頼むよ。」
「はい♪」

 味覚エンジンが組み込めたら以前作ったステージがもっと楽しくなる。そう思うと自然に笑みが溢れた。


~コメント~
 章も変わって気分一新です。
 今話で少し考えたのはシュテルの考え方です。
 大人なのはと大人フェイトから教えて貰う時間には限りがある。(ブレイブデュエルのショッププレイヤーとしての仕事もあり、何時まで滞在するかわからない。)そんな中で少しでも効率よく教えて貰うにはどうすればいいかを考えた末での答えでした。
 
 少し話は変わりまして、冬コミの話です。
 今回は落選しているのですが、静奈君が新刊を委託するそうです。

以前相談を受けてあらすじ的なものは作ったのですがどんな本になっているのか楽しみです。
 新刊についてはこちらを参照ください。


 さて、2015年も色々ありましたが今話で2015年の更新はおしまいです。
 今年も色々拙い話を書きましたがおつきあい頂きましてありがとうございました。2016年はAdventStoryも佳境に入ってくるので引き続きおつきあい頂ければ幸いです。

 それでは皆様良いお年を。

 

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