第29話「彼女の来た訳」

「3人揃ったらやっぱり強いね~」

 ブレイブデュエルの中でシュテル・ディアーチェ・レヴィの動きを見てヴィヴィオは思わず呟く。前と比べて連携が凄く上手くなっている。ヴィヴィオとアインハルトがシュテルとレヴィと対峙していてディアーチェはこっちを牽制しつつ2人の援護をしている。

『感心してないでくださいっ』

 通信でアインハルトに怒られた。

『ヴィヴィオ、アインハルトさん。支援攻撃行きます!』

 アクセルシューターを一気に50個作って放つ。

 
 集団戦になった時、アクセルシューターは役に立つ。牽制にもなるしクリーンヒットも狙える、そしていざとなったらクロスファイアシュートにも切り替えられるからだ。
 ディアーチェがこっちの攻撃を見てか迎撃態勢に入る。その時

『ヴィヴィオ君』

 グランツの声が聞こえた。なのは達がやって来たらしい。
 もう少し遊んでいたいとも思ったけれど、アリシアが遊んでるのを見て怒られそうだと思い直し

「わかりました。ごめん時間になっちゃった。」

 そう言ってブレイブデュエルの世界から戻った。



 それから数分後、プロトタイプシミュレーターの前で待っているとなのは達がアミタに連れられてやって来た。最後にフェイトに手を繋がれ入ってきたチェントを見て

「!?」
「わっ!」
「私っ!?」

 ヴィヴィオを除く全員を驚かせてしまい…

「ヴィヴィオ、先に来て説明してくれてなかったの?…まさか…シュテル達に誘われてここで遊んでたなんて…ないわよね?」

 流石というか何というか、ジト目のアリシアに引きつった笑みで答えた。



「さっきも言ったけど、戻らなくちゃいけなくなった理由はまだ話せません。でも…話せる時になったら来て全部お話します。だから…我が儘言ってごめんなさい。」

 全員が揃ったのを見計らってヴィヴィオは頭を下げて言った。

「彼女が関係しているのですね…」

 シュテルの問いかけをあえて沈黙で答える。その様子を見てグランツだけでなくディアーチェやユーリ、ヴィヴィオ、アインハルトも何かが起きているのを察した。

「ヴィヴィオ、それでどうやって帰るの?」
「プロトタイプで入ってある部屋に行くんだけど。アミタさん」
「はいコアベースへ案内します。ポッドの中に入ってください。」  

 アリシア、なのは、フェイトがポッドの中に入る。チェントが不安そうにしていたから両手を強く握って

「大丈夫、絶対何とかするから。この中に私が入ったら『ブレイブデュエル、スタンバイ』って言って」
「うん、ありがとう。」 

 少しは安心してくれたのかポッドへと入る。ヴィヴィオは隣のポッドに入った。

「みんな、また遊びにくるから。ごめんね。ブレイブデュエル、スタンバイ」

 コアベースへと向かった。



「ここがコアベース?」
「広い部屋だけど…」

 ヴィヴィオが着いた時にはなのはとフェイトが辺りを見回していた。

「なのはママ、フェイトママ、リンカーコアが動いてるでしょ。アリシア、チェントもこっちにきて」
「「えっ?」」
「RHdセットアップ。」
【Standby Ready Setup】

 バリアジャケットを纏う。

「アミタさん、ありがとうございました。」
「はい、また遊びに来てくださいね。みんな一緒に」
「はいっ!」 

 聖王の鎧を広げ全員が入ったのを確認してから悠久の書を取り出し目をつむり

「元の世界へ」

 一気に飛んだ。



「…行ったか…」
「そうですね。」

 ポッドの中に居た5人は虹色の光を発した後消えてしまった。

「ヴィヴィオちゃん~!」

 そこにはやてとリインフォースが走って入ってきた

「彼女達は先ほど帰りました。」
「あ~…折角お土産用意したのに。」

 走ってきたのか息を相当荒げている。

「やむ得ぬ事情があったのだ。終われば話に来ると言っていた。」
「はい、その時迄に研鑽を積み彼女達を驚かせましょう。」
「はい」
「次は絶対勝ーつっ!」
「それに、彼女達から教わったものを今度は私達が伝えなければいけません。彼女はズルが嫌いな様ですから。」

 先程まで彼女が居たポッドを見つめながら呟くのだった。




「…っと!」

 ヴィヴィオが降りたのは高町家の中だった。辺りは真っ暗だったけれど端末の明かり等でリビングに着いたらしい。

「電気つけなきゃ。あっ靴」

 なのはが駆け出そうとした時靴を履いたままだと思い出して脱いで部屋の明かりを灯す。ヴィヴィオも靴を脱ぎながら時間を見る。ブレイブデュエルの世界に行って1日経過していた。

「えっと荷物は…あった。」

 部屋の隅にヴィヴィオとアリシアのバッグとなのはとフェイトの荷物が並んで置かれていた。
その中に見知らぬ小さなポシェットを見つける。

「これ誰のかな?」
「触らないでっ!」

 触れようとした時チェントが大声で叫んだ。驚いて手をすくめる。

「ご、ごめん…」
「大きな声出しちゃってごめんなさい。でも、触ったら駄目なんです。それよりヴィヴィオさん」

 言われて思い出す。

「そうだっ! ママ、今からチェントと一緒にプレシアさんのところ行ってきます。」
「プレシアさん?」
「母さん?」
「ママのところ? じゃあ私も帰らなきゃ…」
「そうだね。」

 テスタロッサ家に行くなら彼女も一緒の方がいい。そう思って頷いたがチェントは

「お姉ちゃんはここで待っててください。後でお母さんから連絡して貰います。」
「? うん…いいけど」

 腑に落ちない感じだったが頷く。

「行くよ、捕まってて。」

 こっちに戻ったら無闇にバリアジャケットは使えない。悠久の書を取り出してテスタロッサ家へと飛んだ。

「…本当に何があったんだろう…」

 フェイトの呟きになのはとアリシアも頷くしか出来なかった。



「っと、着いたよ。」 

 ヴィヴィオはチェントを伴ってテスタロッサ家の家の前に降りた。

「凄い…本当に使いこなしてる…」

 辺りを見回しながら呟くチェント。それを見ながらこの家の主、プレシアに通信を試みる。少し待つと

『お帰りなさい、ヴィヴィオ』

 プレシアが出た。

「プレシアさん、こんばんは。夜にごめんなさい。ちょっと急いでお話したい事があって、今家の前に来ています。」
『判ったわ。』

 そう言うとドアの鍵がカチャッと音を立てる。

「鍵を開けたから入りなさい。」

 チェントと頷きあって家の中に入った。

「あちらの世界は楽しかったかしら?」

 彼女は私服のままリビングにいた。

「はいとっても。あれチェントは?」
「今日はチンクの家にお泊まりしているのよ。寂しがってなければいいのだけれど」
「そうなんですか。」

 感嘆の声をあげながらチンク達大丈夫かなと少し心配する。でも彼女もアリシアも居ないなら話しやすい。そう思って

「大丈夫みたい、こっちに来て」

  部屋の前で待っていて貰った彼女に声をかける。

「はい。」

 彼女は入ってきて私の横に並んだ。

「驚かないで聞いてください。彼女は…」
「……チェントかしら?」
「「!?」」

 思わず驚く。何も言わずにプレシアは彼女がチェントだと言い当てた。

「どうして?」
「だって私はあなたの母親なのよ。当然でしょう。」

 何を今更といった感じで言うプレシア。でもそれで安心したのか今まで気丈に振る舞っていたのか彼女の瞳から涙が零れるのを見る。

「お母さんだ…。お願い、お姉ちゃんとヴィヴィオを助けてっ!」
「…何があったのか教えて頂戴。」

 フゥっと息をついた後プレシアの瞳が鋭くなった。

「うん、でも…先に地下研究室に行かなきゃ…」
「地下研究室…まさか…」

 今度は狼狽えるプレシアにチェントは静かに頷いて答えた。



 それからヴィヴィオはチェント、プレシアを伴って空間転移をする。今度はプレシアの研究所。
…なんだか移動手段の様に使われている気がするけれどこの際そんな事を言っている状況ではないらしい。
 ヴィヴィオはプレシアと一緒に彼女の研究室へ、そしてチェントは彼女が言っていた地下の研究室へと行った。モニタを通じて彼女が部屋に入るのを見る。

「プレシアさん、地下室って?」
「私も2~3度しか使っていないのだけれど…特殊な部屋よ、詳しくは後で話すわ。チェント聞こえる? 部屋の右奥にあるカプセルに入れなさい。入れたら封印解除は外からするわ。」
『はい』

 そう言うと彼女は持って来たポシェットをそのままカプセルに入れて閉めて離れる。すると更に一回り大きなカプセルが降りてきてロックした。
 そんな厳重にしなければいけないものなのかと思いながら、家に着いた時彼女が「触らないで!」と叫んだ理由もわかった。
 それから数分後、チェントが部屋に入ってきた。

「何が起きたのか最初から話して頂戴。」

 プレシアがそう言うとチェントは静かに頷いて答えた。


~コメント~
 ブレイブデュエル編から一気に元の世界に戻ってきました。
 ブレイブデュエルの様なゲーム世界の話を考える時、そちら方面の知識に乏しいのでそっち方面の仕事をしている静奈君に相談しています。
 グランツと大人なのは・フェイトとの会話やブレイブデュエルでの可能性的な話の部分は本当に色々教えて貰いました。
 今話以降は私の方が得意分野なのでサクサク進めたいと思います。

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