第31話「アリシア救出作戦」
- リリカルなのは AdventStory > 第3章 湾曲した世界
- by ima
- 2016.05.03 Tuesday 21:21
「っと…たっ!?」
「キャアッ!」
【バタンッ】
虹の光が消えてヴィヴィオが降りたのは何処かの部屋の中だった。
ベッドの上に2人して降りたものだからそのままバランスを崩して転げ落ちる。
「イタタタ…思いっきりお尻打っちゃった」
「ごめんなさい。前に使った時もこんな感じで…」
チェントもお尻を打ったのかさすりながら謝る。
「ううん、それで…ここどこ?」
「私が待っていた部屋だと…。あっ!」
テーブルの横にあった紙を拾って広げる。
「キャアッ!」
【バタンッ】
虹の光が消えてヴィヴィオが降りたのは何処かの部屋の中だった。
ベッドの上に2人して降りたものだからそのままバランスを崩して転げ落ちる。
「イタタタ…思いっきりお尻打っちゃった」
「ごめんなさい。前に使った時もこんな感じで…」
チェントもお尻を打ったのかさすりながら謝る。
「ううん、それで…ここどこ?」
「私が待っていた部屋だと…。あっ!」
テーブルの横にあった紙を拾って広げる。
「間違いありません。ここは私がお姉ちゃんとヴィヴィオが帰ってくるのを待っていた部屋です。時間は…私が行ってから1時間くらい経ってます。」
1時間後、彼女が転移する前でもずっと後でもないから丁度いい時間、それよりも
「何処から送られたのか判ればそこに…あっその前にチェント、私達殆ど同じ年でしょ? だからですます禁止。」
「でもヴィヴィオはルーツで私達は派生した…」
「ルーツなんてどうでもいいよ。大切なのはチェントもヴィヴィオもアリシアも私達と違う時間に居るってこと。ルーツが大事ならルーツとして命令、ですます禁止!」
人差し指をビッと立てて言う。色んな世界に行って同じ顔に会うのはもう慣れたけれど流石に丁寧に話されるとこっちが恐縮してしまう。
「………」
「……」
「…クスッ、わかった。送られて来たのはルヴェラの聖王教会支部から。」
第23管理世界ルヴェラ…管理世界でもそれ程遠くない。管理局のゲートを通ればひとっ飛び、次元航行船で行ってもそれ程かからない。だから空間転移で行ける筈。
「行こう、ルヴェラに。私に捕まって」
チェントの魔力は残り少ないだろうし、もし何か…アリシアとヴィヴィオを見つけた時聖王の鎧を作って貰わなくちゃいけない。
そう考えて悠久の書を取り出し広げた
「うん」
ギュッと腕を組んできたのを見て一気に飛んだ。
「っと…」
トンッと降りた場所は丘の上、朝日が差し込んできている。辺りを見回すが山らしき影と湖面に映った星くらいしか見えない。勿論人影もない…
「ここで合ってるのかな?」
管理世界にはその世界の環境や文化を保護する目的で特別区を設けられている。ルヴェラは文化保護区だから飛行魔法を含めて多くの魔法が制限されている。
「RHd、ルヴェラの市街地とか教会の場所ってわかる?」
【Sorry, the information can't be found】
RHdは情報を持ってないらしい。人の多い所へ行って端末を使おうかと考えていた時
「レイジングハート、お願い。」
【AllRight】
端末を出して周囲のマップと現在地を表示させる。マップまでは兎も角現在地を短時間で表示させたのには流石に驚いた。
「すごーい!!」
「私のデバイスは情報整理とか調べるのが得意で、ルヴェラには来るつもりだったから先にデータ入れてたの。教会支部は…ここ。」
端末を指すと建物が表示された。歩いて行けない距離ではないけれど時間と魔力が勿体ない。
「じゃあそこに、捕まって」
再び転移する。
「っと…わわっ!?」
再び飛んだ先は大きな木の上だった。
落ちそうになって慌ててバランスを取った瞬間
「キャアッ!!」
上からチェントが落ちてきた。
「わぶっ!」
支えようとすると彼女がヴィヴィオの頭を抱きしめて顔に柔らかいものがあたった。
「…ごめん、落ちそうだったからつい…」
「ううん、私も失敗しちゃったみたい…」
苦笑いしながら自分の胸と彼女のを見比べる。服の上からじゃよくわからないけれど…ちょっと悔しい。
フェイトやなのは、シグナムから言わせれば些細な違いだと笑われそうだけれど当人にとっては無視できない。
「失敗? ここは?」
「失敗って言っても着いてるよ。ほら」
枝の上で立ち上がって見える建物を指さす。そこはさっき見た建物があった。
「じゃあ、私が行ってくるからヴィヴィオは待ってて。私達が一緒に行ったら目立っちゃう」
見た目がそっくりな2人が並んで行けば周囲の目を惹く。そう思って言ったのだけれどヴィヴィオもそれは考えていて
「大丈夫、その辺は私も準備してきてるから。」
リボンを外した後、藍色のウイッグをポシェットから出してかぶった。
「昔はやてさんに貰ったの。これで準備OK♪」
「クスッ、やっぱりヴィヴィオだ。似合ってる。」
「それとこれはプレシアさんから…聖王教会に行くなら2人ともつけなさいって。」
「私も?」
「うん。」
キョトンとした眼でヴィヴィオを見つめた。
「ごきげんよう」
「おはようございます。」
初老のシスターが朝の礼拝準備をしていた時、彼女を呼ぶ声が聞こえ振り向いた。そこには2人の少女が立っていた。普段見かけない顔、観光か巡礼だろうか?
「ごきげんよう。朝の礼拝? 用意をしているから少し待っていて…」
「すみません、この荷物を送った女性を探してるんです。ご存じですか?」
金髪の少女が差し出した荷札を見る。4日前にここで預かった荷物だ。
「こんな髪型をしてたと思うんです。」
少女が髪を片側にまとめて持ち上げる。
「ごめんなさいね、ちょっと覚えてないわね…この荷物は私が受け取ったものだけれど」
そう言うと2人の表情が沈んだ様に見えた。
「ごめんなさいね、ちょっと覚えてないわね…この荷物は私が受け取ったものだけれど」
シスターにそう言われて流石のヴィヴィオも表情を曇らせた。
ここで彼女の情報が得られなければ見つけるのが困難になる。チェントもそれは理解しているらしく相当気落ちしている。
(どうしよう…人の集まりそうな場所で聞き回るしか…)
そう考えていた時、シスターの横から1人の女性が顔を出した。
「私知ってるよ!」
「えっ?」
「本当ですか?」
聞き返すヴィヴィオとチェント
「こんな時ウソ言ってどうするの。私の知り合いにすっごく似た子が居てビックリしちゃったんだ。そっちのあなたも昔のその子にそっくりなんだけどね。目を色が同じだったらまるで陛…じゃなかった、あの子にそっくり。」
(この人、今『陛下』って言いかけたよね? っていう事はここにも私が居るんだ…)
どうやらここにも私がいるらしい。と言うことは違う時間軸なのか? 脳裏にそんな事を過ぎらせているとチェントが彼女に近づいて顔をのぞき込む様に聞く。
「その人は何処に行ったか知ってますか?」
「う~ん、そこまで聞いてないや。でも友達が事故で怪我してて帰るのが遅くなるから連絡だけしに来たって言ってた様な…」
「あなたはそんな人をそのまま帰らせたのですか。せめて薬と食料を渡すか医師に連絡する形あったでしょう。」
眉を細める初老のシスター
「だ、だってその人、薬と食べ物はあるし秘密にしておいてって頼まれたんです。今喋っちゃったけど…」
陛下と呼ぶ彼女が見間違えた女性、彼女の友人が事故で怪我…どうやら彼女に間違い無い。
「それで事故って?」
「詳しく聞いてないから知らない。」
「でも…ここで怪我人が出るほどの事故ってあったかしら?」
「1週間位前にあったじゃないですか、鉱山遺跡で謎の爆発って。本局の武装隊まで来ちゃってたって話ですよ。」
「ああ、そういえばそんな話を信者の方が話してらしたわね…」
若い方のシスターに言われて思い出す初老のシスター。
「平和すぎる文化保護区だから呆けかけてるんじゃ…このばーさん」
「何か言ったかしら?」
「いいえ何にも」
「そう、シスターシャッハに手紙を出さなくてはいけませんね。再教育の必要を求むと」
「冗談ですっ! すみませんでしたっ!」
2人はシャッハとも知り合いらしい。色々話を聞いてみたいけれどそれよりも
「その遺跡は何処ですか?」
「ここからずっと西にある鉱山遺跡。でもロストロギアも無いしここじゃ特に珍しくもないから誰も行かない所だし、爆発から1週間経って管理局が調べた後で怪我人も近くの病院か本局の医療班に行っちゃった後だよ。」
チェントがマップを出すと彼女がこの辺と教えてくれた。
「行くなら馬車か船を使った方がいいよ。」
飛行出来ない場所だと移動手段も限られる。
「はい、ありがとうございます。それでその人はいつ頃来ました?
「4日前のお昼過ぎじゃなかったかしら…」
「ありがとうございます。行こう」
「うんっ♪」
2人のシスターにペコリと頭を下げた後、チェントの手を取って走り出した。
教会が見えなくなった所まで来て後ろから誰も追いかけて来ていないのを確認する。そして近くの木陰チェントを引き込む。
「えっ? 何?」
「一応確認、さっきの人ヴィヴィオを知ってるみたいだったから…。」
「あっ、じゃあ今度はそこへ飛ぶの?」
彼女の質問に頷く。
「でもさっきのシスターが話してた遺跡の事故に2人が巻き込まれてたらもう1週間経ってるし、ヴィヴィオがこの本を送った時から4日経ってる。多分今行ってもかなり危ない状態。」
「じゃあ事故の直後に行けば」
今度は横に振って答える。
「ううん、事故の前とか後に行けば今度はチェントがどうなるかわかんない。チェントが私を探して来たのは事故があって魔導書がヴィヴィオからチェントに送られた後でしょ。その前に私が行くと辻褄が合わなくなって…別の時間軸が生まれちゃう。」
「だから、ヴィヴィオがチェントに魔導書と手紙を送った後に行ってここで待ち伏せる。」
最初は鉱山遺跡の近くを探そうと考えた。でもそんな場所を何の手がかりもなく探すのは時間がかかるし、ヴィヴィオ達が誰かに見つかりかねない。
だったら確実に彼女がここにきた4日前の昼過ぎを狙って行く。
「今から飛ぶけど…チェント、絶対に聖王の鎧を解除しないで。今から行く時間にはミッドチルダにチェントが、教会支部に魔導書がある筈だから。」
ヴィヴィオは兎も角、チェントは時間軸の影響を受ける可能性が高い。でも前にアリシアとプレシアが消えかけた時、聖王の鎧の中に居れば影響しなかった。
彼女も聖王の血を継いだ1人だから大丈夫だとは思うけれど、念には念を入れた方がいい。
「急いで探すけど…1時間位はずっと使ったままになる。どう?」
無理ならもう1つの方法、彼女をここに置いてヴィヴィオだけが2人を迎えに行く。でも…最後の転移、1週間後のプレシアの研究所に4人で転移する為には魔力を少しでも残しておきたい。
「わかった。」
バリアジャケットを纏ったのを見てヴィヴィオは彼女の手を取り
「行くよっ!」
4日前の同じ場所、最初に降りた木の上へと飛んだ。
「これで…最悪でも何とか…これで未来は残せる」
重い足取りでヴィヴィオは教会を振り返った。
まさかこんな事態に陥るとは思わなかった。元々調査能力の高い子だから彼女の母達と一緒に練習してくれたら数年後には使える様になるだろう。
「ごめんね…勝手に連れて来ちゃって。」
彼女が元気になってくれたらまだ可能性はある。
瞼に浮かんだ涙を拭って転移魔方陣を広げる。
「待っててアリシア」
その時
「やっと見つけたっ!」
木の上から少女が飛び降りてきた。
「誰っ!」
慌てて構える。
「誰じゃないよ。そっかこれつけたままだった。」
少女は髪を引っ張った後頭を軽く振る。藍色の髪が外れて見えたのは黄色かかったブロンドの髪色。
「ヴィヴィオっ!」
続けて降りてきた少女が胸に飛び込んできた。
「チェント!? どうして…」
「どうしてじゃないよっ、勝手に送りつけて帰れって…何考えてるのよっ!!」
嗚咽に混じった声を聞いて
「時間が無いんでしょ。早く連れて行って、アリシアの所へ」
「今日で1週間、何とか間に合ったわね…」
椅子の背にもたれかかりながら大きく息を吐く。
あの紙片から読み取れる情報はそれ程多くなかった。しかし、紙片に残っていた僅かなウィルスが活動を始めた事により最低限の情報だけは得られたと思う。
「全くとんでもない事に巻き込まれたわね…」
調べている間、異世界の娘を助ける意味を考えていた。
異世界の娘が瀕死なのを助けるのは正しいのか? 間違っているのか? 彼女達は同じ存在であっても同一じゃない。
調べて望まれる結果が出るとは限らないしそれが正しいのかも判らない。何せ必要な情報が全く無いのだから…。娘の安全を第1に考えるなら頼みを断って彼女に帰って貰えばいいだけ。
それにアリシアとチェントが楽しみにしていた学園祭も近い、本当なら今頃2人から色んな話を聞いてプレシア自身も見に行くと言っていただろう。2人ともあれから端末を通してメッセージのやりとりしかしていない。アリシアは頑張ってと応援してくれているけれどきっと寂しい思いをしているだろう。
研究所も1週間とは言え、勝手に閉めた。周りでは色々と物議を醸しているだろうし、後ろ盾になってくれているカリム達に迷惑をかけている。
母親として研究者としての考えでは彼女を切り捨てた方が絶対良いに決まっている。
それでも時間を区切ってヴィヴィオを送ったのは何故?
「これだけ無茶苦茶してデメリットしかないのに…何やってるのかしら…」
ボサボサになった頭を手ぐしで整えながら呟いた時
「何って人助けに決まってます。」
突然聞こえた声に驚き慌て立ち上がる。そこに居たのは
「…あなたどうしてここに?」
「どうしてって、心配だからに決まってます。」
「マスターからのお願いだからな。」
アリシア達と同じ位の少女が2人立っていた。はやてのデバイス、リインフォースとシグナムと一緒に居る融合騎、アギトと言ったか…。
「お話はなのはさんから聞いています。はやてちゃん達が入るのは危険だって、でもリイン達なら融合デバイスですから平気です。」
「でもどんなウィルスかも…」
「古代ベルカの技術を嘗めんなよ。助手をって言いたいところだけど私達は専門家じゃないから身の回りの世話をしに来た。…おばさん…なんかすっごい臭うぞ。」
「お、おばさんって、失礼ね。」
眉間に皺を寄せながらもフェイトやアリシアが色々考えた結果、彼女達なら安全だと自分が考えるだろうと思い頼んだのだろう。
「そう、それじゃ少し汗を流してくるわ。もしヴィヴィオ達が帰って来たら地下に行くように言って頂戴。」
「了解です♪」
「任しとけ!」
彼女達に後を任せプレシアは食事等以外で数10時間ぶりに部屋を出た。
汗を流し着替えた後、戻ってくるとそこは
「お帰りなさいです。」
「ええ…」
自分の部屋が物の見事に片付いていた。
飲み散らかしたカップは片付けられ、部屋の湿った臭いも消えていた。机の上にバラバラに広げていた紙媒体の資料はそれぞれ日付順に束ねられていて情報を再度データ化したのか近くの端末でインデックスまで付けられている。
そして…彼女達の待っていた瞬間が遂にやってきた。
「地下室に魔力反応!?」
「戻って来たわね。」
地下室の映像にはヴィヴィオとチェントと成長したらこんな姿になるのだろうか、ヴィヴィオと彼女支えられたアリシアの姿が映っていた。
「お帰りなさい、準備は整っているわ。」
そう言いながら確信した。
間違っている、正しい、研究者、母親…そういう理由じゃない。
『助けたい』という気持ちが今の自分やヴィヴィオを動かしているのを。
~コメント~
ゴールデンウィークに入りましたが皆様は楽しい休日を過ごされているでしょうか。私は仕事柄祝日や土日が出勤日になるので通常+αな忙しさです。ですので、連日更新というか来週更新できませんのでその分を先に掲載しました。
チェントと向かった場所、管理世界ルヴェラの文化保護区、そして遺跡の爆発と言えば? そうです、あのシリーズに突入です。
と言うわけで『なのはForce』が今回の舞台です。
なのはForceはコミックが1~6巻まで出ておりますが現在長期休載中の話です。
ですが時系列的にはなのはの最新世界になりますのでヴィヴィオにとっても未来の事件になります。
今話はアリシアとヴィヴィオを求めてロールプレイング系の話にしようかとも思いましたが何故ヴィヴィオとアリシアが事件に巻き込まれたのかという部分を増やす為に1話で救出しちゃいました。
ちなみに教会支部で登場した元気そうな子は以前教会の広場でヴィヴィオと組み手をしてあるシスターにロープで巻かれてつり下げられた経験があります。
1時間後、彼女が転移する前でもずっと後でもないから丁度いい時間、それよりも
「何処から送られたのか判ればそこに…あっその前にチェント、私達殆ど同じ年でしょ? だからですます禁止。」
「でもヴィヴィオはルーツで私達は派生した…」
「ルーツなんてどうでもいいよ。大切なのはチェントもヴィヴィオもアリシアも私達と違う時間に居るってこと。ルーツが大事ならルーツとして命令、ですます禁止!」
人差し指をビッと立てて言う。色んな世界に行って同じ顔に会うのはもう慣れたけれど流石に丁寧に話されるとこっちが恐縮してしまう。
「………」
「……」
「…クスッ、わかった。送られて来たのはルヴェラの聖王教会支部から。」
第23管理世界ルヴェラ…管理世界でもそれ程遠くない。管理局のゲートを通ればひとっ飛び、次元航行船で行ってもそれ程かからない。だから空間転移で行ける筈。
「行こう、ルヴェラに。私に捕まって」
チェントの魔力は残り少ないだろうし、もし何か…アリシアとヴィヴィオを見つけた時聖王の鎧を作って貰わなくちゃいけない。
そう考えて悠久の書を取り出し広げた
「うん」
ギュッと腕を組んできたのを見て一気に飛んだ。
「っと…」
トンッと降りた場所は丘の上、朝日が差し込んできている。辺りを見回すが山らしき影と湖面に映った星くらいしか見えない。勿論人影もない…
「ここで合ってるのかな?」
管理世界にはその世界の環境や文化を保護する目的で特別区を設けられている。ルヴェラは文化保護区だから飛行魔法を含めて多くの魔法が制限されている。
「RHd、ルヴェラの市街地とか教会の場所ってわかる?」
【Sorry, the information can't be found】
RHdは情報を持ってないらしい。人の多い所へ行って端末を使おうかと考えていた時
「レイジングハート、お願い。」
【AllRight】
端末を出して周囲のマップと現在地を表示させる。マップまでは兎も角現在地を短時間で表示させたのには流石に驚いた。
「すごーい!!」
「私のデバイスは情報整理とか調べるのが得意で、ルヴェラには来るつもりだったから先にデータ入れてたの。教会支部は…ここ。」
端末を指すと建物が表示された。歩いて行けない距離ではないけれど時間と魔力が勿体ない。
「じゃあそこに、捕まって」
再び転移する。
「っと…わわっ!?」
再び飛んだ先は大きな木の上だった。
落ちそうになって慌ててバランスを取った瞬間
「キャアッ!!」
上からチェントが落ちてきた。
「わぶっ!」
支えようとすると彼女がヴィヴィオの頭を抱きしめて顔に柔らかいものがあたった。
「…ごめん、落ちそうだったからつい…」
「ううん、私も失敗しちゃったみたい…」
苦笑いしながら自分の胸と彼女のを見比べる。服の上からじゃよくわからないけれど…ちょっと悔しい。
フェイトやなのは、シグナムから言わせれば些細な違いだと笑われそうだけれど当人にとっては無視できない。
「失敗? ここは?」
「失敗って言っても着いてるよ。ほら」
枝の上で立ち上がって見える建物を指さす。そこはさっき見た建物があった。
「じゃあ、私が行ってくるからヴィヴィオは待ってて。私達が一緒に行ったら目立っちゃう」
見た目がそっくりな2人が並んで行けば周囲の目を惹く。そう思って言ったのだけれどヴィヴィオもそれは考えていて
「大丈夫、その辺は私も準備してきてるから。」
リボンを外した後、藍色のウイッグをポシェットから出してかぶった。
「昔はやてさんに貰ったの。これで準備OK♪」
「クスッ、やっぱりヴィヴィオだ。似合ってる。」
「それとこれはプレシアさんから…聖王教会に行くなら2人ともつけなさいって。」
「私も?」
「うん。」
キョトンとした眼でヴィヴィオを見つめた。
「ごきげんよう」
「おはようございます。」
初老のシスターが朝の礼拝準備をしていた時、彼女を呼ぶ声が聞こえ振り向いた。そこには2人の少女が立っていた。普段見かけない顔、観光か巡礼だろうか?
「ごきげんよう。朝の礼拝? 用意をしているから少し待っていて…」
「すみません、この荷物を送った女性を探してるんです。ご存じですか?」
金髪の少女が差し出した荷札を見る。4日前にここで預かった荷物だ。
「こんな髪型をしてたと思うんです。」
少女が髪を片側にまとめて持ち上げる。
「ごめんなさいね、ちょっと覚えてないわね…この荷物は私が受け取ったものだけれど」
そう言うと2人の表情が沈んだ様に見えた。
「ごめんなさいね、ちょっと覚えてないわね…この荷物は私が受け取ったものだけれど」
シスターにそう言われて流石のヴィヴィオも表情を曇らせた。
ここで彼女の情報が得られなければ見つけるのが困難になる。チェントもそれは理解しているらしく相当気落ちしている。
(どうしよう…人の集まりそうな場所で聞き回るしか…)
そう考えていた時、シスターの横から1人の女性が顔を出した。
「私知ってるよ!」
「えっ?」
「本当ですか?」
聞き返すヴィヴィオとチェント
「こんな時ウソ言ってどうするの。私の知り合いにすっごく似た子が居てビックリしちゃったんだ。そっちのあなたも昔のその子にそっくりなんだけどね。目を色が同じだったらまるで陛…じゃなかった、あの子にそっくり。」
(この人、今『陛下』って言いかけたよね? っていう事はここにも私が居るんだ…)
どうやらここにも私がいるらしい。と言うことは違う時間軸なのか? 脳裏にそんな事を過ぎらせているとチェントが彼女に近づいて顔をのぞき込む様に聞く。
「その人は何処に行ったか知ってますか?」
「う~ん、そこまで聞いてないや。でも友達が事故で怪我してて帰るのが遅くなるから連絡だけしに来たって言ってた様な…」
「あなたはそんな人をそのまま帰らせたのですか。せめて薬と食料を渡すか医師に連絡する形あったでしょう。」
眉を細める初老のシスター
「だ、だってその人、薬と食べ物はあるし秘密にしておいてって頼まれたんです。今喋っちゃったけど…」
陛下と呼ぶ彼女が見間違えた女性、彼女の友人が事故で怪我…どうやら彼女に間違い無い。
「それで事故って?」
「詳しく聞いてないから知らない。」
「でも…ここで怪我人が出るほどの事故ってあったかしら?」
「1週間位前にあったじゃないですか、鉱山遺跡で謎の爆発って。本局の武装隊まで来ちゃってたって話ですよ。」
「ああ、そういえばそんな話を信者の方が話してらしたわね…」
若い方のシスターに言われて思い出す初老のシスター。
「平和すぎる文化保護区だから呆けかけてるんじゃ…このばーさん」
「何か言ったかしら?」
「いいえ何にも」
「そう、シスターシャッハに手紙を出さなくてはいけませんね。再教育の必要を求むと」
「冗談ですっ! すみませんでしたっ!」
2人はシャッハとも知り合いらしい。色々話を聞いてみたいけれどそれよりも
「その遺跡は何処ですか?」
「ここからずっと西にある鉱山遺跡。でもロストロギアも無いしここじゃ特に珍しくもないから誰も行かない所だし、爆発から1週間経って管理局が調べた後で怪我人も近くの病院か本局の医療班に行っちゃった後だよ。」
チェントがマップを出すと彼女がこの辺と教えてくれた。
「行くなら馬車か船を使った方がいいよ。」
飛行出来ない場所だと移動手段も限られる。
「はい、ありがとうございます。それでその人はいつ頃来ました?
「4日前のお昼過ぎじゃなかったかしら…」
「ありがとうございます。行こう」
「うんっ♪」
2人のシスターにペコリと頭を下げた後、チェントの手を取って走り出した。
教会が見えなくなった所まで来て後ろから誰も追いかけて来ていないのを確認する。そして近くの木陰チェントを引き込む。
「えっ? 何?」
「一応確認、さっきの人ヴィヴィオを知ってるみたいだったから…。」
「あっ、じゃあ今度はそこへ飛ぶの?」
彼女の質問に頷く。
「でもさっきのシスターが話してた遺跡の事故に2人が巻き込まれてたらもう1週間経ってるし、ヴィヴィオがこの本を送った時から4日経ってる。多分今行ってもかなり危ない状態。」
「じゃあ事故の直後に行けば」
今度は横に振って答える。
「ううん、事故の前とか後に行けば今度はチェントがどうなるかわかんない。チェントが私を探して来たのは事故があって魔導書がヴィヴィオからチェントに送られた後でしょ。その前に私が行くと辻褄が合わなくなって…別の時間軸が生まれちゃう。」
「だから、ヴィヴィオがチェントに魔導書と手紙を送った後に行ってここで待ち伏せる。」
最初は鉱山遺跡の近くを探そうと考えた。でもそんな場所を何の手がかりもなく探すのは時間がかかるし、ヴィヴィオ達が誰かに見つかりかねない。
だったら確実に彼女がここにきた4日前の昼過ぎを狙って行く。
「今から飛ぶけど…チェント、絶対に聖王の鎧を解除しないで。今から行く時間にはミッドチルダにチェントが、教会支部に魔導書がある筈だから。」
ヴィヴィオは兎も角、チェントは時間軸の影響を受ける可能性が高い。でも前にアリシアとプレシアが消えかけた時、聖王の鎧の中に居れば影響しなかった。
彼女も聖王の血を継いだ1人だから大丈夫だとは思うけれど、念には念を入れた方がいい。
「急いで探すけど…1時間位はずっと使ったままになる。どう?」
無理ならもう1つの方法、彼女をここに置いてヴィヴィオだけが2人を迎えに行く。でも…最後の転移、1週間後のプレシアの研究所に4人で転移する為には魔力を少しでも残しておきたい。
「わかった。」
バリアジャケットを纏ったのを見てヴィヴィオは彼女の手を取り
「行くよっ!」
4日前の同じ場所、最初に降りた木の上へと飛んだ。
「これで…最悪でも何とか…これで未来は残せる」
重い足取りでヴィヴィオは教会を振り返った。
まさかこんな事態に陥るとは思わなかった。元々調査能力の高い子だから彼女の母達と一緒に練習してくれたら数年後には使える様になるだろう。
「ごめんね…勝手に連れて来ちゃって。」
彼女が元気になってくれたらまだ可能性はある。
瞼に浮かんだ涙を拭って転移魔方陣を広げる。
「待っててアリシア」
その時
「やっと見つけたっ!」
木の上から少女が飛び降りてきた。
「誰っ!」
慌てて構える。
「誰じゃないよ。そっかこれつけたままだった。」
少女は髪を引っ張った後頭を軽く振る。藍色の髪が外れて見えたのは黄色かかったブロンドの髪色。
「ヴィヴィオっ!」
続けて降りてきた少女が胸に飛び込んできた。
「チェント!? どうして…」
「どうしてじゃないよっ、勝手に送りつけて帰れって…何考えてるのよっ!!」
嗚咽に混じった声を聞いて
「時間が無いんでしょ。早く連れて行って、アリシアの所へ」
「今日で1週間、何とか間に合ったわね…」
椅子の背にもたれかかりながら大きく息を吐く。
あの紙片から読み取れる情報はそれ程多くなかった。しかし、紙片に残っていた僅かなウィルスが活動を始めた事により最低限の情報だけは得られたと思う。
「全くとんでもない事に巻き込まれたわね…」
調べている間、異世界の娘を助ける意味を考えていた。
異世界の娘が瀕死なのを助けるのは正しいのか? 間違っているのか? 彼女達は同じ存在であっても同一じゃない。
調べて望まれる結果が出るとは限らないしそれが正しいのかも判らない。何せ必要な情報が全く無いのだから…。娘の安全を第1に考えるなら頼みを断って彼女に帰って貰えばいいだけ。
それにアリシアとチェントが楽しみにしていた学園祭も近い、本当なら今頃2人から色んな話を聞いてプレシア自身も見に行くと言っていただろう。2人ともあれから端末を通してメッセージのやりとりしかしていない。アリシアは頑張ってと応援してくれているけれどきっと寂しい思いをしているだろう。
研究所も1週間とは言え、勝手に閉めた。周りでは色々と物議を醸しているだろうし、後ろ盾になってくれているカリム達に迷惑をかけている。
母親として研究者としての考えでは彼女を切り捨てた方が絶対良いに決まっている。
それでも時間を区切ってヴィヴィオを送ったのは何故?
「これだけ無茶苦茶してデメリットしかないのに…何やってるのかしら…」
ボサボサになった頭を手ぐしで整えながら呟いた時
「何って人助けに決まってます。」
突然聞こえた声に驚き慌て立ち上がる。そこに居たのは
「…あなたどうしてここに?」
「どうしてって、心配だからに決まってます。」
「マスターからのお願いだからな。」
アリシア達と同じ位の少女が2人立っていた。はやてのデバイス、リインフォースとシグナムと一緒に居る融合騎、アギトと言ったか…。
「お話はなのはさんから聞いています。はやてちゃん達が入るのは危険だって、でもリイン達なら融合デバイスですから平気です。」
「でもどんなウィルスかも…」
「古代ベルカの技術を嘗めんなよ。助手をって言いたいところだけど私達は専門家じゃないから身の回りの世話をしに来た。…おばさん…なんかすっごい臭うぞ。」
「お、おばさんって、失礼ね。」
眉間に皺を寄せながらもフェイトやアリシアが色々考えた結果、彼女達なら安全だと自分が考えるだろうと思い頼んだのだろう。
「そう、それじゃ少し汗を流してくるわ。もしヴィヴィオ達が帰って来たら地下に行くように言って頂戴。」
「了解です♪」
「任しとけ!」
彼女達に後を任せプレシアは食事等以外で数10時間ぶりに部屋を出た。
汗を流し着替えた後、戻ってくるとそこは
「お帰りなさいです。」
「ええ…」
自分の部屋が物の見事に片付いていた。
飲み散らかしたカップは片付けられ、部屋の湿った臭いも消えていた。机の上にバラバラに広げていた紙媒体の資料はそれぞれ日付順に束ねられていて情報を再度データ化したのか近くの端末でインデックスまで付けられている。
そして…彼女達の待っていた瞬間が遂にやってきた。
「地下室に魔力反応!?」
「戻って来たわね。」
地下室の映像にはヴィヴィオとチェントと成長したらこんな姿になるのだろうか、ヴィヴィオと彼女支えられたアリシアの姿が映っていた。
「お帰りなさい、準備は整っているわ。」
そう言いながら確信した。
間違っている、正しい、研究者、母親…そういう理由じゃない。
『助けたい』という気持ちが今の自分やヴィヴィオを動かしているのを。
~コメント~
ゴールデンウィークに入りましたが皆様は楽しい休日を過ごされているでしょうか。私は仕事柄祝日や土日が出勤日になるので通常+αな忙しさです。ですので、連日更新というか来週更新できませんのでその分を先に掲載しました。
チェントと向かった場所、管理世界ルヴェラの文化保護区、そして遺跡の爆発と言えば? そうです、あのシリーズに突入です。
と言うわけで『なのはForce』が今回の舞台です。
なのはForceはコミックが1~6巻まで出ておりますが現在長期休載中の話です。
ですが時系列的にはなのはの最新世界になりますのでヴィヴィオにとっても未来の事件になります。
今話はアリシアとヴィヴィオを求めてロールプレイング系の話にしようかとも思いましたが何故ヴィヴィオとアリシアが事件に巻き込まれたのかという部分を増やす為に1話で救出しちゃいました。
ちなみに教会支部で登場した元気そうな子は以前教会の広場でヴィヴィオと組み手をしてあるシスターにロープで巻かれてつり下げられた経験があります。
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