第34話「思わぬ遭遇」

「本当にお小遣い持ってこなかったら大変だったよ…」

 大人ヴィヴィオと別れた後、ヴィヴィオは部屋を出て身の回りの物を買いに出かけた。
 彼女達は郊外のマンションの1室を借りたらしい。
 着替えや生活に必要な物はそれぞれの部屋にあったけれど、殆ど無かったのが食材。1日程度なら何とかなるけれど数日留守番するには心許ない。
 最初は貰った課題を始めたけれど部屋に閉じこもっている訳にもいかず、気分転換の散歩…もとい周りの探索を兼ねて外に出かけた。
 それでも持って来たお小遣いで数日過ごすのはかなり無理があるのだけれど…


 

 
 
 
「…途中で戻った方がいいかな?」

 思えば今まで色んな時間や世界に行ったけれど、いつも誰かの家でお世話になっていた。
 1人で留守番というのは初めて。でも何かあれば大人の私が戻ってくるし時空転移が必要な時もあるかも知れない。
 アリシアが近くに居たら相談に乗ってくれるのに…そう思うと今の大人ヴィヴィオの気持ちが少し判った気がした。
 そんな時

「見つけたよっ! 私の偽物っ!」

 何処かで聞いた声が近くで聞こえて次の瞬間肩を思いっきり捕まれた。

「キャッ!?」

 思わず声が出る。

「何するのよっ! えっ!?」

 手を掴んでキッっと振り向いて怒ろうとした時目の前に居た者を見て言葉に詰まった。
 そう、私を掴んできたのは高町ヴィヴィオだったからだ。



「本当にビックリしたよ。」

もう1人のヴィヴィオの声に周囲の視線が集まってしまっていて、2人は脱兎のごとくその場から走り去って近くのカフェにやって来た。
 ジュースの入ったカップを受け取りながら彼女に言う。

「ごめんね、まさか本当にヴィヴィオだったなんて思わなかったから。」

 謝るヴィヴィオ、聞けば数日前からこの付近でヴィヴィオに似た少女が目撃されていて、彼女はそれを聞いて周囲に声をかけていたらしい。私は見事にそれに引っかかってヴィヴィオが捕まえに来たという訳だ。

(チェント…変装せずに出ちゃったんだ…)

 そう思いながらもヴィヴィオ自身何も考えず外出していたのだから彼女に何か言える訳もなく…
ハハハハと苦笑いで言葉を濁すしかなかった。

「それより、ヴィヴィオ…小さくない? 初等科の頃と変わらないんじゃない?」

 ジッと見つめられる。

「うん、ルールーの所に遊びに行ったの覚えてる? ミウラさんも後で来て模擬戦したり…」

 目の前の彼女は背も伸びてスラリとしている。私と大人の私、その間位か? 私を見ても驚かないと言うことは前に来たもう1人のヴィヴィオの世界、その未来?
 言葉を選びながら彼女に聞く。

「勿論、覚えてるよ。私が誘拐されちゃってアリシアさんに助けて貰ったり、一緒にお買い物行ったり練習したよね。」

 ヴィヴィオからアリシアの名前が出てホッと安堵する。彼女にアリシアの事を伝えていないから彼女は以前アリシアと会っていて、誘拐騒ぎに巻き込まれている。
 彼女は夏休みに遊びに行った異世界のヴィヴィオ、ここはそれから数年後。違う時間軸なのに悠久の書で迷いもせずに来られたから少し気になっていたけれど、どうやらそれが原因だったらしい。

「そうそう、私の時間だと先月なの。だから、ヴィヴィオから言えば私は昔の私…かな」
「へぇ~、本当に時間移動出来るんだ。本当に便利な魔法だね。」

 目の前の私は頬を崩して言った。


 それから2時間後…
 ヴィヴィオ達の姿は高町家の前にあった。
 ヴィヴィオとのお喋りでついうっかりある部屋で留守番している話を言ってしまった。それを聞き逃す彼女ではなく、

『子供1人で留守番するなんて大変だよっ!家においでよ。』

とその足で部屋に戻り紙にヴィヴィオと家のホームナンバーを書いてテーブルに置き、そのまま家に連れて来られた。

 この行動力、誰かに似ている気がする…
 彼女の言う通り1人で留守番も不安だったからヴィヴィオも素直に受け入れた。
 ここに来る途中で私を知っているリオとコロナとミウラに連絡していて3人は明日朝に来る。3人にはまだ私の事を教えておらず、驚かせるつもりらしい。

 何となく誰に似ているのか判った気がする…
ただ、そんな話の中でもどうしてここに来たのか? それは言えなかった。ヴィヴィオ自身まだ何が起きているのか判らない。

「ママ達暫く出張で帰ってこないんだ。だから暫く居ても大丈夫。」
「そうなんだ…」

 ヴィヴィオの話に相槌を打ちながら部屋の中を見て納得した。滅茶苦茶散らかっている訳ではないのだけれど、多分なのはやフェイトが居たら掃除するか彼女に片付けるように言っただろう。

「ママ達ってなのはママとフェイトママが一緒に?」

 なのはは教導官でフェイトは執務官、他世界に行くフェイトは家を空ける事が多いが逆になのははミッドチルダか管理局本局での仕事が多くて私が知る限り2人とも居ないというのは殆ど無かった気がする。

「うん、何か大きな事件があってはやてさんやヴィータさんにスバルさん、機動6課のみんながが集まるんだって。」

(みんなが…機動6課が再び集まる程の事件、何が起きているの?)

 笑って言うヴィヴィオとは逆に私は不安を過ぎらせていた。
  


 ヴィヴィオがそんな事になっていた頃、変身した大人ヴィヴィオは転移魔法を使って第23管理世界ルヴェラからミッドチルダを経由し第3管理世界ヴァイゼンへと来ていた。
 ルヴェラに行ったのはアリシアの治療で勝手に借りた山小屋を片付ける為、特にアリシアの血が付いた場所はここに来た者があのウィルスに感染しないよう念入りに拭うか焼却する必要があった。それと崩壊した遺跡について情報を集める為だったのだけれど…

(まさかこっちのママ達が動いてるなんてね…)

 遺跡崩壊後にやって来た本局局員について地元の人に聞き回るとどこかで聞いた様な2人組が動いているのを知り、1度ミッドチルダへ戻って彼女達を追うと八神はやてが元機動6課を集め特務6課として動いているのを知った。
 流石に地上本部や本局と違って特務6課の旗艦ヴォルフラムに乗り込むのはリスクが高いと考えセンサーを幾つか飛ばして様子を見ながらヴォルフラムのメインシステムに入って情報を集める。

(アリシア…私も頑張るから)

 ヴィヴィオは自分に言い聞かせた。


~コメント~
 なのはイノセントの世界から元世界に戻って今度はForce編へと突入です。
 ForceはVividから2年後の世界です。なので勿論少しだけ成長したヴィヴィオ達も居ます。Forceではヴィヴィオの生活云々はあまり描かれなかったのでその辺色々考えると楽しいと思い登場して貰いました。

 又事件の方は事件の方で大人ヴィヴィオが暗躍します(苦笑)

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