01話 相部屋(あいべや?) 前編

 記憶も戻って、みんなに秘密で「同化」したキャロ。
 彼女のおかげで全員無事に事件は終わったのだけど・・・・

 実はキャロとエリオを悩ませる問題が既に起きていたのだった。


「今日はこの辺で置いといて、また明日な~!」
「「「了解」」」

 部隊長である八神はやての声と共に集まっていた六課のメンバーが別れていった。それは事件の翌日の話。ガジェット・ドローンが隊舎や宿舎に侵入したことで、通路や外壁それに周辺は文字通りの「荒れ地」になっていた。
 はやては管制室やデバイスルーム・スタッフルームなどの六課の主要機能に被害が無かった事から

「それじゃ全員で大掃除しよか!」

と自分たちで修復することになったのである。
 もちろん、前日は医務室にお世話になったフェイトとエリオとフリード、そしてキャロの3人1匹も特に怪我をしている訳では無かったので【大掃除】に加わる事になった。

「エリオ・キャロお疲れ様」
「あっ、フェイトさんお疲れ様でした」
「お疲れさまでした」
「今日はもうくたくただよね。ゆっくり休んでまた明日続きしようね」
「「はいっ」」

 フェイトの言葉に答えるエリオとキャロ。しかし、フェイトはその後可笑しそうに笑った

「それにしても・・・クスッ」
「「??」」
「だって・キャロとエリオの顔・・っクスクスッ」

 二人は顔を見合わせる。そして合わせたように吹き出した。

「「(キャロ)(エリオ君)凄い顔っ」」

 キャロは自分の顔にも何か付いてるのにその時気づいた。途端に恥ずかしくなってエリオに背を向けた

(私どんな顔してるの???)
「キャロ・エリオもはやくお風呂に入って明日がんばろうね」

 そんな光景を見つめながらも、フェイトは仲の良い2人に声をかけ宿舎へと向かった。
 まだ顔の火照った感じが消えないキャロはエリオに顔を向けることが出来なかった。しかしそんなキャロを知ってか知らずか

「僕たちも戻ろ!」

と手を差し出してくれた。まだ恥ずかしかったがエリオの手を握り2人でフェイトの後に続いた。


「あっ!」
「エリオ君どうしたの?」

 宿舎の前まで来たとき、何かを思い出した様にエリオが声をあげた。どうしたのかとキャロが問い返す。

「僕たちの部屋」
『僕たち・・・私とエリオ君の部屋って・・・・何かあるの?』
(あのね、私とお兄ちゃんは・・・・)
『・・・・・ええ~っ!』

 キャロも気づいた。いや「もう1人のキャロ」に聞いて何が起きているのか理解した。

「私とエリオ君・・・部屋同じなんだよね・・・」
「う・・ん・・」

 折角引いていた熱が再び高まるのを感じる。いや、それ以上に顔が真っ赤になっているだろう。

『どうしよう、どうしょう・・・一緒に寝たことなんて今までないよ~っ!』
(大丈夫だよ、だって私何度も一緒に寝てたよ、お兄ちゃんの部屋に忍び込んだりした事もあるし・・・)
『そんな事したのっ!?私すごい変な子に思われてるじゃない!』
(大丈夫、大丈夫。お兄ちゃんそんな事気にしないよ)
『私が気にするの~っ!』

 キャロの中で葛藤、もとい2人の言葉にならない言い合いが続いている傍らでエリオはキャロの方を向いた。

「僕、今日から元の部屋に・・」

言いかけた所でグリフィスが宿舎の前にやって来た。

「エリオ、キャロお疲れ様。部隊長は中に?」
「いえ、多分隊舎の方かと・・・」
「ありがとう。あ、それとエリオの部屋、今物置になってるから暫く入れないぞ」
「えっ?」
「昨日の襲撃でこっちも色々被害があったらしくてな、機材を置く場所が無いんだ。それでこっちの宿舎は空き部屋も全部使うことになったんだ」
「そ・・そんな~」
「急ぎの用事があるので。それじゃまた明日」

 グリフィスは言いたいことだけ全て告げた後、元来た道を戻っていった。ポツンと取り残され肩を落とすエリオと真っ赤なままののキャロ。


『大丈夫だよね・・・』
「エッ・・エリオ・・く・・ん、わ・・私・・・・一緒・・・でもいい・・よ」
『多分、私いま真っ赤だ・・でも、言わないと・・』

 目の前で驚くエリオ

「え、でも・・・やっぱり」
「わっ私、いっ・・一緒がいい・・だめ?」

 もはやキャロの言葉は言葉になっていなかったが、エリオには十分だった

「キャロ・・がいいなら・・・」
「私は、・・・・いいよ」
「じゃあ・・・よろしく・・」

 キャロは真っ赤になりながらも、エリオの手を引いて宿舎の中に入っていった。


 
 暫く経ったその後、【カコ~ン】という音がどこかで響いてきそうな湯船にキャロはいた。浴室に入る前から熱を帯びた顔はなかなか元には戻らない。

「さっきまでこんな事なかったのに、意識しすぎてるのかな」

先程の事を思い出すと更に顔が火照った様に熱くなった。


 少し前にキャロがエリオを連れて部屋に戻ってくると、

「あれ?ここ・・私の部屋?」

 入った途端何か違和感を感じた。ベッドの場所は変わっていないがそれ以外は・・・少しずつ違っている。
『あっそうか!エリオ君の私物もあるんだ!』

 その時になって、エリオの私物もこの部屋に入っていることを思い出した。少し違和感を感じながらも部屋の前で立っているわけにもいかず、エリオの手を取り部屋に入った。

「失礼します・・」
「ここはエリオ君の部屋だから、ちょっと違う・・」
「じゃあただいま」
「うん」

 少し恥ずかしい気持ちもあったが、エリオと一緒の部屋に居ることが嬉しかった。しかし、その気持ちは次の瞬間跡形もなく吹き飛ばされる。

「キャロ、着替え持っていかないと・・」

 エリオが自分の服を出そうと引き出しを開けた瞬間、エリオの服の横にキャロの服があった。
 驚きのあまり口をパクパクと開くキャロ。しかしその思いはそれ以上に混乱しており

『え~っ!どうして私の服とエリオ君の服が一緒に入ってるの~っ!もしかして下着とかも・・・そんなのダメ~っ!』

 そんなキャロにもう1人のキャロが思い出したかの様に脳裏に呟いた
(あ、それ私が整理したの。一緒の方が何かと便利かなって。あっお兄ちゃん)
『!!』

 キャロがエリオの方を振り向くと、エリオは引き出しを開けていた。そこには一番見られたく無いモノがちらりと見えた

「ダメェーーッ!」

 慌ててエリオと引き出しの間に割り込んだ。いきなり飛び込んで来たキャロにエリオも驚きを隠せない

「わっ!どうしたの?キャロ?着替え・・・」
「ここは見ちゃダメェーーッ!!」

 エリオの視界を遮るように手をばたつかせる。既にキャロの顔はリンゴの様に真っ赤になっていた。キャロのいきなりの行動が腑に落ちないエリオだったが、キャロの顔を見てハッと気づく

「ゴ・・ゴメン。そんなつもりじゃ・・・」
「エリオ君ちょっと後ろ向いてて!」
「え?」
「はやくっ!」

 ウンとエリオが後ろを向いたのを見て、キャロは引き出しからそれらを取り出した。

(別にいいのに・・・見られても・・・下着くらい・・・)
『私が気にするの!!』
(前に一緒にお風呂入ったんでしょ?)
『ボッ・・どこでそれを!!』
(フェイトママに聞いたの・・・キャロが気にしすぎだよ)
『キャロの方こそ気にしなさ過ぎなの!!』

 一通り別の場所に入れ替えたところでキャロは後ろを振り向き再びエリオを確認する。まだ後ろを向いてくれている

「エリオ君ゴメンね。もう大丈夫」
「あ・・うん・・」

と応えてキャロの見つめる中、エリオは着替えを取り出した。



『エリオ君の事・・・意識しすぎなのかな・・・』

 湯船の中、キャロは先程までの事を想いだしていた。途中スバルやティアナも入ってきて「先に入ってたんだ」とか「どうしたの?」と聞いたが、当の本人はボーっとしたまま何も答えず、2人とも「あまり長湯しちゃだめだよ」と言い残し半分首をかしげたまま出て行った事もキャロにとっては何も見えていなかった。

 その頃、浴室の外ではエリオがキャロを待っていた。

「あ~良い湯!疲れが飛んだよ」
「本当に、あっエリオ。キャロならまだ入ってるわよ?」

風呂を堪能したティアナがエリオを見つけて声をかけた。

「ありがとうございます。もう少し待ってます」
「そう・・・風邪引かない様にね」

と2人で部屋に戻っていた。


 そして、更に時間が過ぎてもキャロが出てくる気配が無く

「フリード、悪いけど見てきてくれる?」
「キャウ♪」

 流石に心配になったエリオは一緒に待っていたフリードにキャロの様子を見てきて貰える様に頼んだ。フリードがパタパタと入っていくと・・「キャウッキャウッ!!」と大きな声で鳴き出した。

『えっ!キャロッ!!』

 慌ててフリードの後を追い脱衣場を抜け浴室に駆け込むと・・・
 そこにはエリオが見てはいけないモノが浮かんでいた



~~コメント~~
1週間丸々空いてしまいました。ごめんなさい
今回はキャロSS~守りたいものはありますか?~のアフターストーリーです。こっちはまだ始まったばっかりなので色々続くと思います。
巷ではインフルエンザが大流行の兆しを見せているので、皆様もお気を付け下さいませ。私はかかっていないのに凄く大きな余波がっ!

Comments

ima
>錯乱坊様
ありがとうございます。
かなりベタな展開なので予想通りと思います。
2008/01/10 11:35 AM
錯乱坊
キャロどうしの掛け合いが面白かったです。
さてエリオ君は何を目撃したのでしょう大体予想は付きますが、予想外って所でキャロの分離あたり、期待してますので頑張って下さい。
2007/11/28 11:26 PM

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