ヴィヴィオの日記帳(リリマジ出張版)

 ある日の夜、なのは達の部屋から小さな音が聞こえていた。

 『これが私の全力全開!』

仕事を終えたなのはが戻ってくると、ヴィヴィオが何かを夢中になって見ている

「ヴィヴィオ~何見てるの?」
「なのはママ、これ♪なのはママ!」
『スターライトッブレイカァー!!』

 ヴィヴィオが見ていたモニタには昔なのはがジュエルシードをかけて戦ったフェイトとの戦闘シーンが流れていた。

「うん、なのはママだよ。もう1人はフェイトママ」

 ヴィヴィオはすぐモニタに視線を移す。その瞳には桜色の光が映っていた

「なのはママ・・あのね、ヴィヴィオもすたーらいと・・えっと・・」
「スターライトブレイカー?」
「うん♪ヴィヴィオもしたい!」
「「え?」」

 フェイトが戻ってきて3人でベッドに横になった後、ヴィヴィオの口からとんでもない言葉が飛び出した。なのはとフェイトは文字通り飛び起きた。

「ヴィヴィオ、あれはとても難しい魔法なんだよ?もっと大きくなって一杯勉強しないと出来ないんだよ」
「それに・・・危ないし。ヴィヴィオが怪我するとママ達悲しい」
「・・・・」

 ヴィヴィオも起きてなのはとフェイトの顔をジ~っと見つめる。
「そんなに使いたいの?」

 なのはの言葉にコクコクと頷くヴィヴィオ。

『どうするの?なのは?』
『う~ん・・一緒に遊んで欲しいだけじゃないかな??明日私が一緒にいるよ』
『うん・・ごめんね。任せっきりで』

 やがて2人はあきらめた様にため息をつきながら

「う~ん、じゃあ明日ママと一緒に練習しようか!」
「うん!」


■がつ○◇にち

きょうはなのはままといっしょにまほうのれんしゅう
すたーらいとぶれいかーっていうのおしえてもらうの
う゛ぃう゛ぃおがんばる
おそろいのばりあじゃけっととでばいす。このふくだいすき
う゛ぃう゛ぃおのでばいすもおはなしできるようになのはままがしてくれたの
なのはままありがと。もっとがんばる!
いっぱいがんばったけどなのはままみたいにはうまくできない
う゛ぃう゛ぃおがつかうのはとてもむずかしいんだって
まほうでぼーるみたいなのがいっぱいつくることができた。
やった~
もっとがんばったらちょっとおおきなぼーるができた。にじいろですごくきれい
う゛ぃう゛ぃおがもつとすっごくかるいの。でもなのはままとかはやてさんはすっごくおもいんだって。どうしてかな?


「はい、これヴィヴィオのだよ」
「うん。セットアップ」

 なのはから赤い宝玉を受け取ったヴィヴィオは前に教えて貰った通りに起動させた。
 白いバリアジャケットがヴィヴィオを包む。

「それと、ヴィヴィオ。今日のデバイスはヴィヴィオとお話できるんだよ。」

【Guten Tag. . (こんにちは)】
「??」
「こんにちはだって、ヴィヴィオもこんにちは」
「・・うん・・・こんにちは」
「Meine besten Grüße in der Zukunft.(これからよろしくね)」
「よろしくだって」

 手に持った杖からいきなり声をかけられたヴィヴィオは驚いたが、ヴィヴィオの言葉に答えてくれるデバイスがうれしかった。
 まだデバイスが何を言っているのか判らなかったが、親しみが込められていることだけは判った。

「それじゃ練習がんばろう~っ!」
「はい!」
【ja】

「・・・・」
「おっやってるやってる♪なのはちゃん」
「し~っ!」
「あっごめん」

 なのはとヴィヴィオが居るのを見てはやてとシャーリーがやってきた。

『ヴィヴィオどんな感じ?ブレイカー撃ちたいって聞いたけど』
『うん、流石にあの公式は作れないからシャーリーに頼んでアームドデバイスにレイジングハートのコピー入れて貰ったんだけど・・・』
『まぁ古代ベルカ式で砲撃系使うのってうちくらいやしな~』
『シュベルトクロイツを参考にしてみたのですが、調整必要ですし・・』
『それでもあの歳でアクセル作れるのは自慢できるんちゃう?』
『まぁね♪』

 なのは達はヴィヴィオが何度もアクセルを作っては放射させようとしている様を見つめていた。

「ヴィヴィオ、一度休憩しない?はやてちゃんがお菓子持ってきてくれたよ」

 ヴィヴィオの額に汗がにじみ出したのを見てなのはがヴィヴィオに声をかけた

「うん♪」

パッと集中するのを止めてなのはの方へ駆けてくる。

「なぁ、ヴィヴィオ。なかなか出来んやろ?」
「うん・・・・」

 簡単に出来ると思っていたらしく、少し落ち込んでいる

「でもな、あの魔法フェイトちゃんもうちも・・管理局の誰も出来ないんよ」
「え?」
「なのはちゃんしか出来ない必殺技」
「・・・・」
『はやてちゃん、更に落ち込ませてどうするのっ!』
『あ・・・・』
 余程ショックだったらしい。ヴィヴィオは持っているキャラメルミルクの入ったカッブを見るように項垂れていた。少し肩が震えている。あわててシャーリーがフォローする

「あっでもね、ヴィヴィオが持ってるデバイスはレイジングハート・・なのはさんのデバイスのコピーなの。だからみんな出来なくても、頑張ればヴィヴィオもきっと出来るわよ」
「・・グスッ・・グスッ・・そう?」
「うん、なのはママと一緒。だから泣かないで頑張ろ♪ね!」

 なのははヴィヴィオの涙を拭いながら言うと、「うん」と頷いた。
 最初は一緒に魔法を学ばせながら遊べたらいいなと思っていたなのはだったが、余りにもヴィヴィオが真剣に取り組むのを見て少しだけ、出来ればいいなと思い始めていた。

 
「ヴィヴィオ、なのはママが今からブレイカー使うからよく見ててね」
「ちょちょっ!」

 休憩が終わり、ヴィヴィオが先ほどと同じ様にデバイスに向けて集中しようとしたとき、なのはの口からとんでもない言葉が出た。横にいたはやてとシャーリーが慌てて

「なのはちゃん!こんな所で撃ったら・・」

止めるはやてとそれに頷くシャーリーに

「まさか、フルモードじゃなくて小さいのだよ、ほら♪」

と手のひらに小さな魔法球を生み出していた。

「吃驚させんといて、もうっ」

 二人が安堵したのを見て、ヴィヴィオの方を振り向く。興味深そうになのはの手を見つめている。

「スターライトブレイカーっていうのはね、周りにいっぱいある魔法のかけらをちょっとずつ集めて大きなボールに入れられるだけ入れちゃうの。」

 手の平に出来た魔法球に周りから小さなかけらが集まってくる。

「それでいっぱいになったら反対側を一気に叩く」

 魔力が凝縮された魔法球の下方を指先でトンと叩くと、桜色の光が近くの木の頂上あたりまで伸びていった。

「わぁ~~♪」

そして霞の様に散っていった。

「周りにある魔法のかけらを集めるのは凄く大変なの。でも一番大切なのは、いっぱい魔法を入れちゃっても壊れないボールを作る事なの。簡単に壊れちゃうと入れるときに、ほら♪」

 再びなのはが小さな魔法球に入れていくとパンッという音を立ててはじけた。
 はやてとシャーリーはそうだったんだ・・という風に見つめていた。

「ヴィヴィオ、じゃぁ最初に壊れないボール作ってみようね」
「うん♪」


「才能ってあるもんやね・・・」
「・・・私もそう思う・・」

 教えてから数時間の後、なのはとはやては呆然としていた。
 彼女らの前には地面に魔力球が埋もれていた。それを作った少女は疲れた様で木陰でスースーと気持ちよさそうな寝息を立てている。球の周りでは魔力球の強度を調べるのにシャーリーは色々と測っている。

「普通は発動が終われば消えるはずなんだけど」
「しっかり残ってるな~」

 外郭を叩くと堅い金属の様にコンコンと響いている。しかも地面にめり込んでおりかなり重そうだ。

「でも・・ヴィヴィオは凄く軽そうに持ってたな~」
「うん、多分所有者の影響じゃないかな?」
「・・すたぁ~らいと・・・ムニャ・・」
「なのはさん、八神隊長。強度でました~」

 一通りチェックが済み、シャーリーが戻ってくる。

「結果から言うと、暫くはヴィヴィオが叩いた程度では壊れる事は無いです。」
「シャーリーどれ位堅いの?」
「多分、壊すのはリミット解除状態のヴィータ副隊長のギガントクラスでないと・・・内部に衝撃を与えるだけならフェイトさんのザンバーかシグナム副隊長の紫電一閃でなんとかだと・・」

 壊すのも動かすのも六課のエース級レベルという訳である。
 かなり堅いと思っていたなのはとはやてだったが、まさかそこまでとは予想だにしていなかった。


■がつ○×にち

きょうはなのはままとはやてさんとおでかけ。
なのはままのおべんとうとってもおいしいんだよ
もっとまほうのれんしゅうができるよってはやてさんからきいた
きのうはとちゅうでつかれちゃったけど、きょうはすぐにぼーるがつくれた
なのはままにほめてもらった。
とってもうれしい
いっぱいれんしゅう。う゛ぃう゛ぃおがんばったよ
でもさいごにとってもあぶないまほうだからなのはままといっしょじゃないと
つかっちゃだめなんだって。
もっともっとれんしゅうしてすたーらいとぶれいかーつかいたいな

ゆうがたしゅくしゃにかえるときはやてさんによくがんばったねってほめてもらった
ちょっとうれしい
みんなでおいしいものをたべにいこうってなのはままとふぇいとままとかみんなでだって
すごくたのしみ


「はい、八神です。あ~ご無沙汰してます。はい・・・はい・・すみません~ヴィータ暫くでかけてるんです。はい・・・あ、それなら少しお願いできます?あのね・・・」

 機動六課の部隊長室の中で部屋の主、八神はやては誰かと話していた。一通り手続きが出来た時点で端末を切り、続けて別の場所に繋いだ。

「あとは・・あっごめんスバル?そっちに高町隊長いる?あっええよ、ごめんな・・・・」

 スバルが出て、なのはを呼びに行ってくれたらしい、暫く待つとなのはが端末に現れた

『はい、高町です。はやてちゃん?どうしたの?』
『なのはちゃん、明日、予定ある?』
『うん・・・訓練と報告書とかの整理くらいだけど、どうして?』
『あのな明日、ヴィヴィオと一緒にお出かけせえへん?』
『私とヴィヴィオと?何かあったの?』


「♪~~~♪~~」
 翌日、ヴィヴィオはとてもご機嫌だった。
 昨夜なのはから一緒にお出かけしようねって言われ、しかもなのは手製のお弁当も持ってきていた。
 どこへという訳ではなく、なのはと一緒という事が凄く嬉しいらしい

「♪~~♪~~~~、ねえ!なのはママ。どこに行くの?」
「う~ん、ママも判らないの。はやてちゃん今日の目的地ってどこ?」

 後部座席から助手席に乗っているはやてに聞いた

「あ、もうちょっとで着くよ。シグナムそこ右な」
「はい」

 近くにヴィヴィオと遊べる場所ってあったかな?と首をかしげながらもなのははヴィヴィオが凄く楽しそうなのが嬉しかった。


「ここ?」
「そう!ここ♪」
「・・・・・」

 なのは達が着いた所は廃棄都市群の中の一区画だった。

「八神さん、すみませ~ん・・ハァハァ」

 遠くから一人の男性が走ってくる。なのはもどこかで見た顔だったが誰か思い出すことは出来ない。

「お久しぶりです、こちらクラナガンで区画整理を任せられてるクリスさん。六課の隊舎とか宿舎の手配もしてくれたんよ」

「どうも・・」

なのはは軽くお辞儀をする。

「この度はお願いします。」
「??」

 何の話か見えないなのはははやてに念話で聞いた

『ねぇはやてちゃん、私とヴィヴィオで何かするの??』
『あのな、この辺のビルにはな昔にAMF系の魔法が仕掛けられてるらしくて、区画整理で使う重機が暴走してしまうらしいねん。民間だとAMF系に対応出来る人がなかなかな・・』
『前にもよく似たことがあってその時はヴィータに頼んで壊してもらったんやけど・・』

 そこまで言われてなのはにも推測できた

『つまり、ヴィヴィオのあの球体を使ってこの辺を壊せと・・・』
『ビンゴ!!』
『帰る!』

 はやてを睨むなのは。少したじろぎながらも説得を始める

『ちょっと待って!あのな、うちやシグナムがやると付加属性が影響して無理なんよ。それにクリスさんには六課の隊舎や宿舎を用意して貰う時に色々骨おって貰ってるし・・・それに、ここだと壊しても喜ばれても怒られる事は無いし・・・な!ヴィヴィオだけだと危ないけどなのはちゃんも一緒なら大丈夫やし!』
『でも・・・』

 迷っているとシグナムも割り込んできた

『借りを受けたら返す。これはどこの世界でも同じではないのか?高町隊長?』

 既にシグナムもはやてに説得されている様だ。実際に六課設立を手伝って貰っていて、その人が困っているのであればなのはにも選択の余地は無かった。

『・・・判った・・・』
「あのね、ヴィヴィオ。今日はここで魔法の練習しよっか」
「うん!」

 なのはは嬉しそうに頷くヴィヴィオにちょっぴり罪悪感が生まれていた。


「すたーらいとっぶれいかーっ!」
【ドッゴォォォォォォォン!】
【ズゥゥゥゥゥゥゥン】
「すたーらいとっぶれいかーっ!!」
【ゴォォォォォォォン】

 少し離れた場所ではやては音の鳴る方を眺めていた。

「あれ・・ヴィヴィオですか・・・」

 隣で一緒に眺めているシグナムは初めて見たヴィヴィオの魔法に少なからず衝撃をうけているらしい

「そうや、ヴィヴィオやとちょっと軽いボールを投げてる感じと思うけど、他の物には数十トンの衝撃が直撃するみたいなんよ。訓練場凹んでいるみたやろ?」
「はぁ・・・」
「しかも、本気にならんとあの魔法球の外郭は壊せへんし、AMFとかそういうのも関係無いらしいんよ。使いようによっては六課最強ちゃう?」
「・・・なるほど」

「すたーらいとっ・・・」
 更にヴィヴィオの言葉の後から大きな反響音と瓦解音が聞こえる

「それで、どうしてブレイカーなのですか?」
「う~ん・・多分、アレのバランスが崩せたらブレイカーになると思うけど、【光ったモーニングスターで壊していく】からちゃう?」
「はぁ・・」
【ズゥゥゥゥゥゥン】

と音と煙をまき散らしながら廃棄ビル群が崩されていく。いくつかAMF発生部分も壊した様で2人の身体も少しだけ軽くなった気がした。

「いや~八神さん本当に助かりました。依頼された時どうしようかと悩みまして」
「いえ、いいんです。うちもお世話になってましたし」
「これ・・少ないですが、皆さんで何かに使ってください」

 クリスから差し出された封筒を受け取りながら

「お気持ちだけでも十分ですのに、ありがとうございます~」

 二人の会話を聞きながらシグナムは本局で「タヌキ娘」と言われる主の本質を垣間見た気がした。

「はやてさん~!いっぱいできたよ♪」

 殆どのビル群が瓦礫の山と化した頃、ヴィヴィオとなのはははやてのもとに戻ってきた。
 なのはといっぱい練習できてとても楽しかったらしい。

「そっか、良かったな~ヴィヴィオ♪」
「うん♪」
「それじゃ、頑張ったご褒美にみんなで美味しい物食べに行こうな」
「うん!」

 嬉しそうにはしゃぐヴィヴィオに残されたなのはとシグナムはもはや何も言うことは出来なかった。

~~コメント~~
 こちらでは久しぶりの静奈です。今回はトップ絵の元になったヴィヴィオの日記帳外伝です。
 最初はヴィヴィオが魔法練習をするという話から洒落でヴィヴィオにスターライトブレイカーを使わせるとどうなるかな・・と思って描いたのですが、そこからimaさんがSSを考えてくれました。
 こういう風に考えてくれるのは嬉しいですねw
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Comments

ima
>錯乱坊様
 明けましておめでとうございます。今年も楽しんで頂ける様頑張ります。
 このSLB話は鈴音さんのトップ絵が出来た後、私の方で書き下ろした変わった流れで出来た話です。少し無理がある箇所もありますがその辺は雰囲気で読み流して頂ければ・・・(苦笑)
2008/01/10 11:41 AM
錯乱坊
明けましておめでとう御座います、本年も面白いお話読ませてください。
SLBですか途中でトップ絵のモーニングスターかな?と思ってたらそのまんまでしたのね、ヴィヴィオにはこれからも頑張ってほしい所です、それと面白かったですよ、此れからも頑張って下さい。
2008/01/04 02:10 PM

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