第71話「約束の時間」
- リリカルなのは AdventStory > 第6章 AdventStory
- by ima
- 2017.05.01 Monday 14:46
「ヴィヴィオ?」
聖王医療院を出て住んでいたマンションへとむかう途中で大人ヴィヴィオ達と会った。
「部屋の片付けも終わってこれで帰ろうかなって…」
「そう…じゃあここでお別れだね」
「うん……」
これ以上お互いが相手の世界に干渉するのは止めた方がいい。
「ヴィヴィオ、アリシア…何度も言ったけど、本当に…助けてくれてありがとう。こんな言葉じゃ足りないくらい…それと…巻き込んじゃってごめん。私達だけじゃ事件を止められなかった。」
聖王医療院を出て住んでいたマンションへとむかう途中で大人ヴィヴィオ達と会った。
「部屋の片付けも終わってこれで帰ろうかなって…」
「そう…じゃあここでお別れだね」
「うん……」
これ以上お互いが相手の世界に干渉するのは止めた方がいい。
「ヴィヴィオ、アリシア…何度も言ったけど、本当に…助けてくれてありがとう。こんな言葉じゃ足りないくらい…それと…巻き込んじゃってごめん。私達だけじゃ事件を止められなかった。」
「ううん」
大人ヴィヴィオから差し出された手を握る。
「アリシア、母さんにもありがとうって伝えて。それと…またいつか行きますって。」
「うん、今度は無茶しないでね。」
アリシアも大人アリシアと握手する。
「あなたもね。それと…前に困らせる様な事を言ってごめんなさい。母さんから剣術の練習を止めさせられないか相談されていたの。その時私はあなたも魔法資質が弱いから前に出るよりもヴィヴィオとチェントに指示出来た方が良いって。」
「ママが?」
アリシアが私の顔を見る。
「ブレイブデュエルの決勝の後フェイトママに話しちゃったから、フェイトママがプレシアさんに話しちゃったんじゃない?」
「ああ、ママも知っちゃったんだ。私もそっちが良いのかなって…」
「でも…訂正するわ。アリシアはアリシアが信じた道を進みなさい。」
「えっ! どうして?」
アリシアが聞くと大人アリシアは私を見て
「私は私、アリシアはアリシアでしょう。それに…こんなに無茶苦茶をやっちゃうヴィヴィオのの側に居るんだから、離れて見てるなんて怖くて出来ないわよね♪」
「えっ!? 私が理由っ?」
まさか私に返ってくるとは思っていなくて驚くが、大人ヴィヴィオとチェントはウンウンと頷いている。
「あの魔法やアレを動かすだけでも凄いのに、あこまでするなんて…こっちのヴィヴィオなら途中で諦めているわよ。絶対!」
「絶対まで言う?」
「諦めて別の方法探すよ、ヴィヴィオとお姉ちゃんなら」
「クスッ♪ そう言う事、ヴィヴィオがこれだけ違うんだからアリシアが一緒じゃ変でしょ。でも1つだけ…無理して母さんやヴィヴィオや周りの人に心配かけないで。私達の世界で『アリシア・テスタロッサ』は私達だけなんだよ。」
「うん、わかった。」
そして…
「ヴィヴィオ、お姉ちゃん…色々ありがと、ホントに…いっぱい…」
微笑みを浮かべていたチェントの瞼が潤んで…
「泣かないで、会いたいって思ったら何時でも会えるんだし。チェントが来てくれなかったら私…何も知らないままだった。私こそありがと。」
「チェントが頑張ってくれたから私も大人の私達に会えた。ありがとね」
涙を指で拭う
「うん、もっと…もっともっと練習して魔法使えるようになったら遊びに行く、絶対! ヴィヴィオ、お姉ちゃん」
「待ってる。」
「うん♪」
「…じゃあ、行こうか。またね、ヴィヴィオ、アリシア」
大人ヴィヴィオはそう言うと1冊の本をデバイスから取り出して
「元の時間へ」
呟くと3人が虹の光に包まれた。
「じゃあ私達も帰ろうか」
「うん♪」
親友の手を握って悠久の書を取り出し
(バイバイ)
心の中で呟いてその世界から飛び立った。
「っと、着いたっ♪」
トンッと地面に着地する。
「ここは? 時間は?」
日が傾いているのを見て夕方っぽいけれど、どれ位時間が経ったのか? そこに
「ねぇさま~♪」
「チェント?」
走ってきてそのまま抱きつく彼女をアリシアは抱き止めた。
「チェントが居るってことは…」
「お帰りなさい、アリシア、ヴィヴィオ。突然駆けだしたから驚いたわ。」
プレシアがやってきた。
「ただいま、ママ」
「もう終わったのかしら?」
私達の顔を見て微笑みながら聞く。
「うん」
「はい…あっ! 私、まだ残ってた。」
2人を見て思い出す。私にはまだ行かなくちゃいけない場所があった。
「えっ? 私も一緒に行くよ」
「大丈夫♪ 魔法は…ちょっと使うかもだけど安全だから。約束したでしょ、アリシアと」
「……あっ!」
彼女も思い出したらしい。
「じゃあ行ってきます。アリシア、明日学院でね♪」
そう言うと再び時間を越えた。
「……ほんと落ち着かない子なんだから…」
親友が虹の中に消えるのを見送る。
「そうね…あなたもね。」
「えっ? 私も!? …そうだ、ママ。私、あっちのアリシアにママがお願いしたの聞いたんだ。剣の練習を止めるようにって。ブレイブデュエルの世界の話をフェイトから聞いたんだよね。」
少し驚くプレシア、知られてしまった後ろめたさからか困り顔でフォローする
「…ええ、ママはね」
「うん、いつも無茶して心配かけちゃってごめんなさい。でも聞いて、私…向こうに行って判ったんだ。やっぱりヴィヴィオと一緒に行きたいって。きっといつか魔力資質が弱くてヴィヴィオと一緒じゃいられなくなる時が来るまでは隣に居たい。その為には剣も魔法ももっと練習したい。無茶してママ達に心配かけたくないから。だからお願いします。練習するの許して下さい。」
でもその言葉を止めてバッと頭を下げる。
無茶して一緒に居ても意味がない。
一緒にいるからこそ何か出来る事を見つける。それはみんなに心配させないというのも含まれる。
「…アリシア…1つだけ約束して、心配するのはママの勝手、でも無理をして悲しませないで頂戴。」
あっちのアリシアが言っていた。アリシア・テスタロッサなのは私達だけなんだと…プレシアの娘でフェイトとチェントの姉であるのは私達だけ。
「はい」
その意味を理解して強く頷いて答えた。
「っと…」
再び着いたのは学院の屋上。
『これよりStヒルデ学院祭を開催いたします。』
学院内にアナウンスが聞こえた。丁度いいタイミングに飛んだらしい。
「まだ…もう少し位使えるよね?」
連続の時空転移、あと1回使える様にしておかなくちゃいけない。
「あっ…制服着てない…まいっか」
私服姿で来てしまった、クラスの出し物が喫茶店なのを思い出してそのまま教室へと向かった。
(あれ? …何してるんだろ?)
教室へと向かう途中でキョロキョロと辺りを見回す少女、チェントを見つける。初等科の校舎に来ているのだから私達の教室に行こうとして迷ったのか?
「チェント、アリシアの教室に行きたいの。」
声をかけると一瞬驚くがコクンと小さく頷いて手を握る。以前ならあり得ない行動にヴィヴィオ自身感動を覚えながら
「一緒に行こう」
そう言うと彼女と手を繋ぎながら歩き出した。
「ヴィヴィオ!?」
教室が見えた所で驚きの声が聞こえる。それはそうだろう…何日学院を休んでいたのか…笑顔で答える中でクラスメイトを見つける。
「おかえり~ヴィヴィオ」
「わぁ♪、ヴィヴィオおかえり~」
クラスメイトを追いかけて教室に入ろうとした瞬間、何人かが私を見て驚きの声をあげた。
「ごめ~ん、遅くなっちゃった。」
手を合わせて謝っていると奥で座っているなのはとフェイト、プレシアを見つけた。3人とも私を見て驚いている。
(なのはママ…フェイトママ…)
心がチクりと痛む。
「チェント、プレシアさんそこにいるよ。」
そう言うと彼女は
「かあさま~」
と走って行ってしまった。
「ヴィヴィオっ!! いつ戻って来たの? 連絡が無かったからすっごく心配してたんだよ。」
チェントとは入れ替わりで今度はアリシアが人をかき分けてやって来た。普段の制服とは違ってかわいいウェイトレス姿だ。
「ごめん、少し前に着いたから念話で話すより来た方が早いかなって。また戻らなくちゃいけないんだけど…」
そう言って誤魔化す。
「そう…でも今日はこっちに居られるんでしょ?」
「うん♪ 準備手伝えなかった分頑張るよ。」
両手で握り拳を作って笑顔で答えると彼女も笑って頷いてくれた。
クラスメイトからホール用の衣装を受け取って教室の片隅に作ったキッチンスペースで着替えようとしていると
「ヴィヴィオ…着替える前にお願いがあるんだけど…」
アリシアが申し訳なさそうな顔でやって来た。
彼女の奥には以前撮影で一緒だったなのは役の少女が小さく手を振っていてその横には見かけない生徒…学院祭の実行委員だったかなと思い出す。
「実はね…これからグラウンドで模擬戦して欲しいんだ。私達3人で…実践っていうかデモンストレーションみたいな」
「……へっ?」
いきなり言われて何がどうなっているのか全く判らず思わず聞き返す。
「確かにお手伝い頑張るよって言ったけど…これがお手伝い?」
「仕方ないじゃない。まさか戻ってくるって思ってなかったんだから。」
グラウンドに向かう途中溜息交じりに呟く。
学院祭でクラスの出し物で魔力コアを教会本部から借りて使い、他のクラスからの不満を解消する為に模擬戦を見せるなんて約束をしてるなんて…
まぁでも…
「思いっきり楽しみましょうね」
久しぶりに会ったなのは役の少女がとても嬉しそうだったのが救いだったかも知れない。
「そんな約束、勝手にしちゃうんだから…もうっ」
「仕方ないでしょ、相談したくてもヴィヴィオが戻ってこなかったんだから」
闇の書事件の撮影時のリインフォースとの全力バトル映像が出てしまっている以上、今更見られても気にしていない。それよりも…これでまた暫く追いかけられるのかと思うとそっちの方が気が重くなる。それに…
「私がリインフォースさん役しようか? 模擬戦って言っても魔法を見せるだけだし2人ともコアの魔法強くないでしょ。」
この状態でどこまで魔法が使えるのか? アリシア達に気づかれないようにしないと…
「撮影の時に使ったはやてさんのジャケット、アンダーを帰るだけだから直ぐに出来るよ。」
RHdもまだ自動修復中、バリアジャケットを使って自己増幅は使えない。勿論私自身の騎士甲冑も…撮影で使っていたジャケットデータなら姿だけでも何とかなる。
「じゃあそれで、見せるだけだから2人とも全力全開はナシだからね。」
そう言うとグラウンドの上空に飛び上がった。
撮影ではやてさんが2人を相手にしていたのを思い出す。
デアボリック・エミッションを放った後のシーン
「RHd、増幅なしで魔法とシールドは私が使うから回復とジャケットの維持に集中して。」
【allright】
ブラッディダガーの代わりにセイクリッドクラスターを2人に放つ。勿論当たっても魔力ダメージが殆どない形だけレベル。
「いけっ! あっ! マズッ!?」
1個単位の消費魔力が少なかったからか思った以上に多く出てしまい。一瞬慌てるが2人は難なく全て避けた。
特にアリシアは避けながら急接近してきている。
(アリシア、本当に強くなってる、凄いよ…)
異世界のヴィヴィオと一緒に練習した時、近接戦で勝つのは難しいと思った。でもアリシアはそんな彼女がバリアジャケットを着た状態で倒したのだ。本格的に魔法を使い始めて半年足らずでここまでなるなんて…感心しながらも今度は彼女と近接戦が出来る様に動いた。
本当にこんな風にいつまでも競っていけるなら…一緒に…
『以上をもちましてStヒルデ学院、学院祭を終了いたします。生徒の皆さんは後片付けを始めて下さい。保護者・来賓の皆様は…』
日が傾きそれぞれのクラスが片付け始めている。
魔法戦の後、アリシアと一緒に喫茶を手伝ったり、学院を見て回る中でアインハルトがイクスと楽しそうに話をしているのを見れたりとヴィヴィオは学院祭を楽しんだ。
楽しい時間は本当に短くてもう終わりって思ってしまう。
(来年の学院祭は私も何かしたい…)
夕焼けで赤く染まる教室を眺めながらヴィヴィオは思った。
魔力コアを集めているアリシアに近寄って聞く。
「アリシア、どうだった? Stヒルデの学院祭」
「うん、色々大変だったけどすっごく楽しかった。」
彼女の表情はとても輝いていた。それを見られただけでもここに来て良かったと思う。
「そろそろ時間なんでしょ、私ヴィヴィオを送ってくるね。すぐに戻るから」
「えっ?」
突然言われて胸がドキッと鳴る。手を引かれて向かったのは屋上
重い扉がバタンと音を立てて閉まった後
「未来のヴィヴィオ…なんだよね。私の為に来てくれたの?」
模擬戦の途中から彼女の動きが少し遅くなったのに気づいていた。私は見せる為だから手加減してるんだと思っていたけれど…その時からバレていたらしい。
「…やっぱりバレちゃった…気をつけてたつもりだったんだけど…」
「わかるよ。ヴィヴィオだもん。」
「私は…ちょっと先の未来、今私が巻き込まれちゃった事件が終わって帰って来た時から来たんだ。アリシアが頑張ってくれた学院祭、私も参加したかったから。」
苦笑して答える。
「じゃあ…もうちょっとで帰ってくるんだよね? いつ帰ってくるの?」
「…ごめんね。答えられない…答えちゃったら未来が決まっちゃうから。ここの私はまだ事件で頑張ってる最中だから未来を決めさせたくない。」
この時間の私は大人の私と異世界に行っている。
これから彼女は色んな事を知って決めなくちゃいけない。それを私がここで決める訳にはいかない。
「そっか…うん、わかった。ありがとう約束守ってくれて。」
彼女もそれを納得してくれたらしい。
「…またね」
「うん、またね。」
RHdから悠久の書を取り出す。
(戻ろう、私達の時間へ。)
心の中で呟いた時、虹の光に包まれて私はその時を去った。
~コメント~
出会いがあれば別れがあります。大人に成長したヴィヴィオとアリシアと会った事でヴィヴィオとアリシアは何かを得られたのかなと思っています。
本話はのヴィヴィオ視点になります。
次話ではついに…
大人ヴィヴィオから差し出された手を握る。
「アリシア、母さんにもありがとうって伝えて。それと…またいつか行きますって。」
「うん、今度は無茶しないでね。」
アリシアも大人アリシアと握手する。
「あなたもね。それと…前に困らせる様な事を言ってごめんなさい。母さんから剣術の練習を止めさせられないか相談されていたの。その時私はあなたも魔法資質が弱いから前に出るよりもヴィヴィオとチェントに指示出来た方が良いって。」
「ママが?」
アリシアが私の顔を見る。
「ブレイブデュエルの決勝の後フェイトママに話しちゃったから、フェイトママがプレシアさんに話しちゃったんじゃない?」
「ああ、ママも知っちゃったんだ。私もそっちが良いのかなって…」
「でも…訂正するわ。アリシアはアリシアが信じた道を進みなさい。」
「えっ! どうして?」
アリシアが聞くと大人アリシアは私を見て
「私は私、アリシアはアリシアでしょう。それに…こんなに無茶苦茶をやっちゃうヴィヴィオのの側に居るんだから、離れて見てるなんて怖くて出来ないわよね♪」
「えっ!? 私が理由っ?」
まさか私に返ってくるとは思っていなくて驚くが、大人ヴィヴィオとチェントはウンウンと頷いている。
「あの魔法やアレを動かすだけでも凄いのに、あこまでするなんて…こっちのヴィヴィオなら途中で諦めているわよ。絶対!」
「絶対まで言う?」
「諦めて別の方法探すよ、ヴィヴィオとお姉ちゃんなら」
「クスッ♪ そう言う事、ヴィヴィオがこれだけ違うんだからアリシアが一緒じゃ変でしょ。でも1つだけ…無理して母さんやヴィヴィオや周りの人に心配かけないで。私達の世界で『アリシア・テスタロッサ』は私達だけなんだよ。」
「うん、わかった。」
そして…
「ヴィヴィオ、お姉ちゃん…色々ありがと、ホントに…いっぱい…」
微笑みを浮かべていたチェントの瞼が潤んで…
「泣かないで、会いたいって思ったら何時でも会えるんだし。チェントが来てくれなかったら私…何も知らないままだった。私こそありがと。」
「チェントが頑張ってくれたから私も大人の私達に会えた。ありがとね」
涙を指で拭う
「うん、もっと…もっともっと練習して魔法使えるようになったら遊びに行く、絶対! ヴィヴィオ、お姉ちゃん」
「待ってる。」
「うん♪」
「…じゃあ、行こうか。またね、ヴィヴィオ、アリシア」
大人ヴィヴィオはそう言うと1冊の本をデバイスから取り出して
「元の時間へ」
呟くと3人が虹の光に包まれた。
「じゃあ私達も帰ろうか」
「うん♪」
親友の手を握って悠久の書を取り出し
(バイバイ)
心の中で呟いてその世界から飛び立った。
「っと、着いたっ♪」
トンッと地面に着地する。
「ここは? 時間は?」
日が傾いているのを見て夕方っぽいけれど、どれ位時間が経ったのか? そこに
「ねぇさま~♪」
「チェント?」
走ってきてそのまま抱きつく彼女をアリシアは抱き止めた。
「チェントが居るってことは…」
「お帰りなさい、アリシア、ヴィヴィオ。突然駆けだしたから驚いたわ。」
プレシアがやってきた。
「ただいま、ママ」
「もう終わったのかしら?」
私達の顔を見て微笑みながら聞く。
「うん」
「はい…あっ! 私、まだ残ってた。」
2人を見て思い出す。私にはまだ行かなくちゃいけない場所があった。
「えっ? 私も一緒に行くよ」
「大丈夫♪ 魔法は…ちょっと使うかもだけど安全だから。約束したでしょ、アリシアと」
「……あっ!」
彼女も思い出したらしい。
「じゃあ行ってきます。アリシア、明日学院でね♪」
そう言うと再び時間を越えた。
「……ほんと落ち着かない子なんだから…」
親友が虹の中に消えるのを見送る。
「そうね…あなたもね。」
「えっ? 私も!? …そうだ、ママ。私、あっちのアリシアにママがお願いしたの聞いたんだ。剣の練習を止めるようにって。ブレイブデュエルの世界の話をフェイトから聞いたんだよね。」
少し驚くプレシア、知られてしまった後ろめたさからか困り顔でフォローする
「…ええ、ママはね」
「うん、いつも無茶して心配かけちゃってごめんなさい。でも聞いて、私…向こうに行って判ったんだ。やっぱりヴィヴィオと一緒に行きたいって。きっといつか魔力資質が弱くてヴィヴィオと一緒じゃいられなくなる時が来るまでは隣に居たい。その為には剣も魔法ももっと練習したい。無茶してママ達に心配かけたくないから。だからお願いします。練習するの許して下さい。」
でもその言葉を止めてバッと頭を下げる。
無茶して一緒に居ても意味がない。
一緒にいるからこそ何か出来る事を見つける。それはみんなに心配させないというのも含まれる。
「…アリシア…1つだけ約束して、心配するのはママの勝手、でも無理をして悲しませないで頂戴。」
あっちのアリシアが言っていた。アリシア・テスタロッサなのは私達だけなんだと…プレシアの娘でフェイトとチェントの姉であるのは私達だけ。
「はい」
その意味を理解して強く頷いて答えた。
「っと…」
再び着いたのは学院の屋上。
『これよりStヒルデ学院祭を開催いたします。』
学院内にアナウンスが聞こえた。丁度いいタイミングに飛んだらしい。
「まだ…もう少し位使えるよね?」
連続の時空転移、あと1回使える様にしておかなくちゃいけない。
「あっ…制服着てない…まいっか」
私服姿で来てしまった、クラスの出し物が喫茶店なのを思い出してそのまま教室へと向かった。
(あれ? …何してるんだろ?)
教室へと向かう途中でキョロキョロと辺りを見回す少女、チェントを見つける。初等科の校舎に来ているのだから私達の教室に行こうとして迷ったのか?
「チェント、アリシアの教室に行きたいの。」
声をかけると一瞬驚くがコクンと小さく頷いて手を握る。以前ならあり得ない行動にヴィヴィオ自身感動を覚えながら
「一緒に行こう」
そう言うと彼女と手を繋ぎながら歩き出した。
「ヴィヴィオ!?」
教室が見えた所で驚きの声が聞こえる。それはそうだろう…何日学院を休んでいたのか…笑顔で答える中でクラスメイトを見つける。
「おかえり~ヴィヴィオ」
「わぁ♪、ヴィヴィオおかえり~」
クラスメイトを追いかけて教室に入ろうとした瞬間、何人かが私を見て驚きの声をあげた。
「ごめ~ん、遅くなっちゃった。」
手を合わせて謝っていると奥で座っているなのはとフェイト、プレシアを見つけた。3人とも私を見て驚いている。
(なのはママ…フェイトママ…)
心がチクりと痛む。
「チェント、プレシアさんそこにいるよ。」
そう言うと彼女は
「かあさま~」
と走って行ってしまった。
「ヴィヴィオっ!! いつ戻って来たの? 連絡が無かったからすっごく心配してたんだよ。」
チェントとは入れ替わりで今度はアリシアが人をかき分けてやって来た。普段の制服とは違ってかわいいウェイトレス姿だ。
「ごめん、少し前に着いたから念話で話すより来た方が早いかなって。また戻らなくちゃいけないんだけど…」
そう言って誤魔化す。
「そう…でも今日はこっちに居られるんでしょ?」
「うん♪ 準備手伝えなかった分頑張るよ。」
両手で握り拳を作って笑顔で答えると彼女も笑って頷いてくれた。
クラスメイトからホール用の衣装を受け取って教室の片隅に作ったキッチンスペースで着替えようとしていると
「ヴィヴィオ…着替える前にお願いがあるんだけど…」
アリシアが申し訳なさそうな顔でやって来た。
彼女の奥には以前撮影で一緒だったなのは役の少女が小さく手を振っていてその横には見かけない生徒…学院祭の実行委員だったかなと思い出す。
「実はね…これからグラウンドで模擬戦して欲しいんだ。私達3人で…実践っていうかデモンストレーションみたいな」
「……へっ?」
いきなり言われて何がどうなっているのか全く判らず思わず聞き返す。
「確かにお手伝い頑張るよって言ったけど…これがお手伝い?」
「仕方ないじゃない。まさか戻ってくるって思ってなかったんだから。」
グラウンドに向かう途中溜息交じりに呟く。
学院祭でクラスの出し物で魔力コアを教会本部から借りて使い、他のクラスからの不満を解消する為に模擬戦を見せるなんて約束をしてるなんて…
まぁでも…
「思いっきり楽しみましょうね」
久しぶりに会ったなのは役の少女がとても嬉しそうだったのが救いだったかも知れない。
「そんな約束、勝手にしちゃうんだから…もうっ」
「仕方ないでしょ、相談したくてもヴィヴィオが戻ってこなかったんだから」
闇の書事件の撮影時のリインフォースとの全力バトル映像が出てしまっている以上、今更見られても気にしていない。それよりも…これでまた暫く追いかけられるのかと思うとそっちの方が気が重くなる。それに…
「私がリインフォースさん役しようか? 模擬戦って言っても魔法を見せるだけだし2人ともコアの魔法強くないでしょ。」
この状態でどこまで魔法が使えるのか? アリシア達に気づかれないようにしないと…
「撮影の時に使ったはやてさんのジャケット、アンダーを帰るだけだから直ぐに出来るよ。」
RHdもまだ自動修復中、バリアジャケットを使って自己増幅は使えない。勿論私自身の騎士甲冑も…撮影で使っていたジャケットデータなら姿だけでも何とかなる。
「じゃあそれで、見せるだけだから2人とも全力全開はナシだからね。」
そう言うとグラウンドの上空に飛び上がった。
撮影ではやてさんが2人を相手にしていたのを思い出す。
デアボリック・エミッションを放った後のシーン
「RHd、増幅なしで魔法とシールドは私が使うから回復とジャケットの維持に集中して。」
【allright】
ブラッディダガーの代わりにセイクリッドクラスターを2人に放つ。勿論当たっても魔力ダメージが殆どない形だけレベル。
「いけっ! あっ! マズッ!?」
1個単位の消費魔力が少なかったからか思った以上に多く出てしまい。一瞬慌てるが2人は難なく全て避けた。
特にアリシアは避けながら急接近してきている。
(アリシア、本当に強くなってる、凄いよ…)
異世界のヴィヴィオと一緒に練習した時、近接戦で勝つのは難しいと思った。でもアリシアはそんな彼女がバリアジャケットを着た状態で倒したのだ。本格的に魔法を使い始めて半年足らずでここまでなるなんて…感心しながらも今度は彼女と近接戦が出来る様に動いた。
本当にこんな風にいつまでも競っていけるなら…一緒に…
『以上をもちましてStヒルデ学院、学院祭を終了いたします。生徒の皆さんは後片付けを始めて下さい。保護者・来賓の皆様は…』
日が傾きそれぞれのクラスが片付け始めている。
魔法戦の後、アリシアと一緒に喫茶を手伝ったり、学院を見て回る中でアインハルトがイクスと楽しそうに話をしているのを見れたりとヴィヴィオは学院祭を楽しんだ。
楽しい時間は本当に短くてもう終わりって思ってしまう。
(来年の学院祭は私も何かしたい…)
夕焼けで赤く染まる教室を眺めながらヴィヴィオは思った。
魔力コアを集めているアリシアに近寄って聞く。
「アリシア、どうだった? Stヒルデの学院祭」
「うん、色々大変だったけどすっごく楽しかった。」
彼女の表情はとても輝いていた。それを見られただけでもここに来て良かったと思う。
「そろそろ時間なんでしょ、私ヴィヴィオを送ってくるね。すぐに戻るから」
「えっ?」
突然言われて胸がドキッと鳴る。手を引かれて向かったのは屋上
重い扉がバタンと音を立てて閉まった後
「未来のヴィヴィオ…なんだよね。私の為に来てくれたの?」
模擬戦の途中から彼女の動きが少し遅くなったのに気づいていた。私は見せる為だから手加減してるんだと思っていたけれど…その時からバレていたらしい。
「…やっぱりバレちゃった…気をつけてたつもりだったんだけど…」
「わかるよ。ヴィヴィオだもん。」
「私は…ちょっと先の未来、今私が巻き込まれちゃった事件が終わって帰って来た時から来たんだ。アリシアが頑張ってくれた学院祭、私も参加したかったから。」
苦笑して答える。
「じゃあ…もうちょっとで帰ってくるんだよね? いつ帰ってくるの?」
「…ごめんね。答えられない…答えちゃったら未来が決まっちゃうから。ここの私はまだ事件で頑張ってる最中だから未来を決めさせたくない。」
この時間の私は大人の私と異世界に行っている。
これから彼女は色んな事を知って決めなくちゃいけない。それを私がここで決める訳にはいかない。
「そっか…うん、わかった。ありがとう約束守ってくれて。」
彼女もそれを納得してくれたらしい。
「…またね」
「うん、またね。」
RHdから悠久の書を取り出す。
(戻ろう、私達の時間へ。)
心の中で呟いた時、虹の光に包まれて私はその時を去った。
~コメント~
出会いがあれば別れがあります。大人に成長したヴィヴィオとアリシアと会った事でヴィヴィオとアリシアは何かを得られたのかなと思っています。
本話はのヴィヴィオ視点になります。
次話ではついに…
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