ヴィヴィオの日記帳「ピーマン嫌い 後編」15話

「さぁ~みんな一緒に食べようか♪頂きます~」
「「「「「いただきます」」」」」
「「「・・・・」」」

 その夜、宿舎にある八神家では総勢10名にもなる小さなパーティが開かれていた。しかし、その表情は大きく2つに分かれていた。

はやてが自ら選び抜いた材料をはやてが得意の腕を振るい、見た目からもかなり美味しそうな料理の数々を目前にして思わず笑みを浮かべる者。
 そしてそれとは逆に料理に加えて自ら禁とした物や苦手な物を個々に並べられ引きつった笑みを浮かべる者。

「あの・・・私はこれを・・」
「好き嫌いはあかんよ、シグナム。ちゃんと食べてな!」
「はやてちゃん??凄くカロリー高そうなんですけど・・」
「うん♪結構高いかもな。でも、みんな食べてな!シャマル」
「主・・・これは・・」
「丁度キャットフードいっぱい貰えたんよ。ザフィーラ捨てるのも勿体ないから全部食べてな」

 即座に返すはやてとにこやかに微笑むなのはを見てそれ以上言い返せなかった2人と1匹には者達はすべからく制裁の鞭が飛んでいた。
 それを横目で見つつ、【偶然助かっただけ】ヴィータとリインは助かった事に心底胸を撫で下ろした

 そんな中ヴィヴィオはフェイトの隣に見知らぬ少女が座って食べているのを見つめている。
 年はヴィヴィオよりもう少し小さいだろう

「フェイトママ・・・その子・・」

 その少女に料理を取り分けているフェイトの袖を引っ張ってヴィヴィオが聞く

「ああ、この子はア・・リエラっていうの。親戚の子で今夜だけ一緒なんだ」
「ヴィヴィオだっけ?よろしくな~」

 少女=リエラの話し方をどこかで聞いた気がしたが、リエラがニコリと笑い返したので手を振って答えた。


「ジャーン!これが今日のメインディッシュや」

 料理を楽しく食べているヴィヴィオに少し変わった料理がテーブルに並べられる
 並べられた途端ヒシッと思わず堅くなるヴィヴィオ、それを見てなのはも確信する。

「はやてちゃん・・これは・・流石に・・」
「ピーマンの豆腐ハンバーグ詰めとハンバーグ風ピーマンの肉詰めや、あっシャマルのはこっちな!脂身たっぷりのハンバーグ、サービスしてビックサイズに特製ソース付やっ♪」

 もはや皮肉を通り越して恨み節が聞こえてきそうだ。容赦が無い

「シクシクシク・・・」

 シャマルがさめざめ泣くのを完全に無視しつつ、

「ウチが頑張って作ったんよ。ヴィヴィオ騙されたと思ってちょっとでも食べて、なっ?」

 無言で料理を見つめるヴィヴィオ。手に持ったフォークはなかなか進まない。
 そんなヴィヴィオを余所に近くで

「これ上手いな~さすがはやてっ!」

 リエラがとても美味しそうに料理を頬張っている。

「な、ヴィヴィオよりちっちゃい子もちゃんと食べてるんよ?お姉ちゃんな分ちゃんと食べなあかんな~」
「・・・・うん・・」

 心配そうに見るなのはが何か言おうとするのをはやては手で合図をして遮る。
 オズオズとフォークが伸びて、ヴィヴィオの口に近づく。
 そして、目をギュッと瞑って口に入れた。

 なのはが、はやてが、フェイトが、ヴィータとリインが見つめている。サメザメと泣くシグナム・ザフィーラとシャマル。

「・・・・美味しい」

 目を開けたヴィヴィオが発した言葉になのはやはやてが思わず微笑んだ。

「美味しいよ、すっごく!」

 すかさずフォークを伸ばし食べるヴィヴィオを見てなのはは驚きもあったが、何よりピーマンを食べてくれた事が嬉しかった。



▲がつ○にち
きょうはなのはままとふぇいとままといっしょにはやてさんにごちそうしてもらった。
はやてさんすっごくりょうりがじょうずなんだよ。
なのはままのごはんもおいしいけどはやてさんのもだいすき
ごはんにぴーまんもあったけど、う゛ぃう゛ぃおがんばってたべたよ
ちょっとにがかったけどおいしかった
こんどりえらちゃんとあそびたいな


 パタンとヴィヴィオの日記を読み終えたなのははぐっすり眠っているヴィヴィオを起こさない様そっとベッドから降りて、ある場所へ向かった。

「ヴィヴィオ、もう寝た?」
「うん、もうグッスリと。はやてちゃんありがとう。でも、どうして私が作ったピーマンの料理は食べなかったのにはやてちゃんのは美味しそうに食べたのかな?」

 なのはに聞かれたはやてはVサインをしてなのはに答える。

「えっとな、なのはちゃんヴィヴィオにピーマンを分からん様に入れようとしてたやろ?味にも『隠そう隠そう』っていうのが出ててヴィヴィオもどんどん警戒心が強なって逆効果やったんよ。だからそれならピーマン使うてますよ~って一目で分かる料理にしたんよ。これが1つ」
「1つ?もう1つは?」
「それは・・・ああ、やっと来た。ありがとな~フェイトちゃんとアルフ」
「もういいか、はやて?」
「もうええよ」

 なのはがはやての声振り向くとそこにはフェイトとリエラがいた。リエラがパッと明るく光ったと思うと少しだけ大きくなった赤毛の少女=アルフの姿になった。

「ありがとな~アルフ」
「うん、はやての料理久しぶりに食ったけど、上達したな~」
「おおきにな♪」

微笑む2人

「それでもう1つは?リエラなの?」

 訳が判らないと首を傾げるなのは

「ちゃうちゃう、アルフには【ヴィヴィオよりちっちゃい女の子に変身して】って頼んでたんよ。自分より幼い女の子が苦手なピーマンを苦もなく食べてるのを目の前で見せたら、ヴィヴィオのプライドをくすぐれるやろ♪これがもう1つの答え」

 思わず納得して頷くなのはとフェイト。心理戦ははやての方が一枚も二枚も上だと感心した。

「まぁ、うちの子が変な事したから起きた事やし、久しぶりに料理いっぱい作れて楽しかったしな」
「はやてちゃん・・・ありがとう。それで・・・あの料理のレシピ、教えてくれるかな?」
「ええよ、あのな・・・」
「・・・なるほど・・・」
「それでな・・・」

 宿舎の屋上で3人と1匹は深夜まで色々楽しく語り合った。


 翌日

「・・・・主・・」
「はやてちゃん・・・」
「・・・ここまでするのか・・」

 朝起きた時、発端の2人と1匹にはしっかりとそれぞれの料理が並べられ【全部食べてから出勤や!】とはやてのメモが貼られていた。
 こういうところは本当に容赦がなかった

~~コメント~~
ピーマン編の後半です。生まれる前に母親がよく食べた物や赤ちゃんの時によく食べた物は成長しても好物になり、逆に避けた物は嫌いになるという話を聞いたことがあります。又、子どもは苦い・辛い物が嫌いという要因に苦い辛い物には毒性が多く含まれる為、動物でも同じ傾向みられ、それが進化の過程でも受け継がれているそうな。
 ヴィヴィオに対しての態度と今回の発端になった3人との比較は書いていて楽しかったです。
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Comments

ima
>錯乱坊様
毎回ありがとうございます。
リインがシャマルの手料理を食べられる設定は静奈さんが2007年に描かれたイラストからです。
ヴィヴィオは一体何を食べたのでしょうか?食べて気絶しなかっただけ凄いかもしれません。
imaはビールに日本酒何でも来いですが、静奈さんが全く飲めないので打ち上げ時は私だけ酔っぱらいになっています。

>suzutaka様
はじめまして、ありがとうございます。
毎回読んで頂いているのがうれしいやら恥ずかしいやらです。これからも時々遊びに来ていただけると嬉しいです。
2008/01/29 06:22 PM
suzutaka
はじめまして
毎回楽しく読ませていただいてます。
これからも更新楽しみにしてますw
2008/01/12 06:11 PM
錯乱坊
はやて流石すごいですね。しかし一体何をヴィヴィオはシャマルに食べさせられたのでしょう、気になる所です。
それにリインⅡもシャマル料理食べられるとは驚愕の事実。トップ絵から来てるのかな。
私も苦いものは嫌いです特にビールこれが駄目ですねーー社会人としては困った所なのですが、今回も面白かったですよ頑張って下さい。
2008/01/11 02:05 PM

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