AS34「カルナージへのお誘い」

 海鳴から戻った数日後、夕食を終えた高町家にある者が訪れた。

「こんばんば、ヴィヴィオ」
「マリエルさんっ!?」

 出迎えたヴィヴィオは思いっきり驚いた。

  

 
「夜遅くにごめんね。」
「いえ、大丈夫ですよ。それよりもマリィさんがこっちに来るなんてどうしたんですか?」

マリエルを招き入れリビングに通す。なのはとフェイトも彼女の来訪に驚いた。彼女にお茶を出す。

「時々こっちにも来てるのよ。今日はみんなに相談があって…、私がミッドチルダに来たのは魔力コア専用のデバイス開発を進める為なの。」

 そう言ってマリエルは話始めた。

 魔力コアを使ったデバイスについて管理局と聖王教会でそれぞれ開発が進めていたがある問題が持ち上がっていた。それは魔力コアの試験機・評価機についてだった。
 魔導師の魔法体系を考えると固有資質や癖のある古代・近代ベルカ式より、資質があれば誰でも使えるミッドチルダ式の方が多くなるのは自明の理なのだけれど、ベルカ式の魔力コア搭載デバイスを作る際に問題が発覚した。
 それはベルカ式デバイスが持つ【カートリッジシステムとの競合】
 使い方によって瞬間的に魔力を取り込むカートリッジシステムとコアからの魔力を受け入れる魔力コアシステム。設計思想に差はあるけれど使い方や取り込み方法も似ている為消極的らしい。
 ミッドチルダ地上本部と聖王教会での開発が頓挫しかけたところに本局のマリエルが呼ばれた。 彼女は両方のミッドチルダ・ベルカ双方の術式カートリッジを開発・整備してきた実績もあり聖王教会やミッドチルダ地上本部と研究を薦めていて双方から技術力も知られている。
 ミッドチルダに来た理由はわかったけれど、何故家に来たのかがわからない。彼女の話に耳を傾ける。

「それで…相談というのはRHdのテストについてなの、RHdに組み込んだ魔力コアシステムのテストデータが早く欲しいんだけど…なのはちゃん、フェイトちゃん、良いテスト場所知らない?」
「「「え?」」」

 思わずヴィヴィオを含む3人が聞き返した。

「装備部のテストルームじゃ駄目なんですか?」

ヴィヴィオが聞くとなのはとフェイトは手をポンと叩いた。

「あっ!そうか…」
「教導隊のテストルームも…試験場も使えませんね。」
「そうなの」
「?」

納得して頷く3人にヴィヴィオは首を傾げた。

「デバイスのテストってただ使うだけじゃなくて色んな環境・状況で使って問題が出た所を直したりしなくちゃいけないの。」
「勿論その中には負荷テスト、ヴィヴィオが全力でRHdを使ったテストもある。レリックを取り込んだモードはオーバーSランクを超えているから、管理局の目が光った場所ではテスト出来ないんだ。」
「でも…魔力コアのシステムがRHdのコアとヴィヴィオを繋いでいるからそこのデータが大切なんだよね」

 なのはとフェイト、マリエルが言う
 レリックを取り込んだのテストをしてその上でデータを取らなくちゃいけない。だけどそれは管理局に見つからないようにしたい。
 その相反する問題が持ち上がってマリエルは来た。


    
「海鳴市…97管理外世界にもセンサーはあるけど、エイミィにお願いして泊めて貰う?」
「う~ん、出来ないことも無いけど、センサーは別部署の扱いだしクロノ君が知ったら怒られそう。それに…気づかれない様な場所も難しいね。」

 フェイトの案になのはは難しい顔をする。海鳴市には機材があるから使えばRHdのデータも取れるだろう。でも内密にするには管理局関係者が多すぎる。

「この前はやてちゃん達と行った世界はどうかな? 紫電一閃の特訓をした。センサー系はないし、近くを通る船も少ないし、少しくらい壊しても大丈夫でしょ?」

 なのはが思い出して言う。しかしヴィヴィオは首を横に振った。

「あそこは止めて。ゆっくり寝かせてあげたい。」

 あの世界にはヴィヴィオが異世界から持ち帰った聖王のゆりかごが眠っている。フォーチュンエルトリアの技術で封印されているから今の魔導技術では見つからないけれど、ヴィヴィオの魔力で目覚めてしまうかも知れない。      

「カルナージはどうかな? ルールーに話せば…」

 ルーテシアやメガーヌ達が暮らす開発途上世界。センサーはあるけれど管理を任されているのは彼女達だ。ストライクアーツがある異世界だと魔法練習や特訓で行っていたし、あっちでヴィヴィオ自身レリックを使ったストライクスターズを使っても何も言われなかった。
 こっちもその辺は似たものだから少し位大きな魔法を使っても大丈夫だろう。

「そうだね…練習場もあるからデータも取れるし。マリィさんどうですか?」
「うん、じゃあ次の休日にカルナージで、機器の手配は私がしておくからなのはちゃんからメガーヌさんに伝えて貰えるかな。」
「はいっ♪」



『へぇ~こっちのカルナージか…そう言えば行くの初めてかも』

 夜も更けてきてヴィヴィオはアリシアに連絡した。

『カルナージか~私達も最近ご無沙汰だね。』

 近くから別の声が聞こえる。誰か他に居るのかと覗き込もうとしたらアリシアがデバイスを遠ざけて部屋内を映した。どうやら家のリビングに居るらしい。
 異世界の3人とプレシアが居た。

『昔は練習するのによく行ったわよね。』

 大人アリシアがそう言いながら頷くが近くに居るチェントが小首を傾げているから2人で行っていたらしい。

『こっちにも温泉あるのかな? あるなら私も行きた~い!』
「RHdのテストに行くだけだよ。遊びじゃないんだから。」

ジト目で彼女に行った時、

【コンコンッ】
『ヴィヴィオ、まだ起きてる?』

 ドアを開けてなのはが入ってきた。

「うん、今アリシアにカルナージの話をしていたところ。」

 向こうの4人が会釈する。    

「丁度良かった。アリシア、あとそっちのヴィヴィオ達もカルナージに一緒に来て欲しいんだけどいい?」
『「?」』
「私とフェイトちゃんはマリィさんのお手伝いをするから模擬戦とか色々手伝って欲しいの。オーバーSまで使えるでしょ?」

 そう言うと向こうではやったと喜んでいる。

「あそこならメガーヌさんとルーテシアに話しておけば行っても大丈夫でしょ。良ければプレシアさんも一緒にどうですか? テストじゃなくってチェントちゃんとハイキングとか、自然がいっぱいで川遊びとか色々できますよ。」
「そうね…言葉に甘えさせて貰おうかしら。」

 笑顔で頷くプレシアにアリシアはやったと満面の笑みを浮かべる。 
 色んな意味で秘密も万全と和やかな笑みを浮かべるなのはに

(だいじょうぶかな…)

 ヴィヴィオは一抹の不安を感じるのだった。



 翌日、Stヒルデに登校したヴィヴィオのデバイスにメッセージが入っていた。

「えっ!? うそっ!?」

 驚くヴィヴィオに隣からアリシアがメッセージを覗き込む。  

「地球のことわざに『人の口に戸は立てられない』ってのがあるんだけど…凄い拡散力というか行動力というか…」

 苦笑いする。
 メッセージの送り主は八神はやてだった。

『ルーテシアに話聞いたよ、私らも参加させて貰うな♪ あとコラード先生にも声かけてるよ。週末が楽しみやね♪』

「…はやてさんが来るだけだよね?」
「八神家全員来るつもりじゃないかな。コラード教官も来るみたいだし…現実から目を逸らさない方がいいよ?」
「うん…はぁ…」

 重いため息とともに頷く。  
 一抹の不安が滅茶苦茶大きくなった。

~コメント~
 ヴィヴィオのデバイスのテストな話です。
 魔力コアについて触れた時からベルカ式系のデバイスと相性悪いんじゃないかなと思っていたので今話で取り上げてみました。

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