AS38「カルナージにて~4~」
「動きはいいけど、レパートリーの少なさが致命的か…」
大人アリシアは2人の模擬戦を見て子供ヴィヴィオの欠点が思った以上に深いことに気づいた。
条件次第で使える魔法に制約がありすぎる。
そうは言っても今のセイクリッドクラスターは1発でもAAランクの砲撃や防御魔法程度簡単に潰してしまえる程強化されているのだけれど…
『ハァアアアッ! 紫電一閃』
手刀を横薙ぎにするがヴィヴィオは見て避けている。カウンターで反撃できるタイミング、でも彼女はあえてそれをしていない。
まるで見定めているようだ。
テスト対象がヴィヴィオなのだから攻撃して何かあった方が危険だと考えているのかも知れない。少し遅れてセイクリッドクラスターで牽制しながら距離を取る。
『アリシア、ブーストはどう? もう少し上げられる?』
「特に問題なし、チェントへの負担もまだ無いわ。ペースアップするね。」
大人アリシアは2人の模擬戦を見て子供ヴィヴィオの欠点が思った以上に深いことに気づいた。
条件次第で使える魔法に制約がありすぎる。
そうは言っても今のセイクリッドクラスターは1発でもAAランクの砲撃や防御魔法程度簡単に潰してしまえる程強化されているのだけれど…
『ハァアアアッ! 紫電一閃』
手刀を横薙ぎにするがヴィヴィオは見て避けている。カウンターで反撃できるタイミング、でも彼女はあえてそれをしていない。
まるで見定めているようだ。
テスト対象がヴィヴィオなのだから攻撃して何かあった方が危険だと考えているのかも知れない。少し遅れてセイクリッドクラスターで牽制しながら距離を取る。
『アリシア、ブーストはどう? もう少し上げられる?』
「特に問題なし、チェントへの負担もまだ無いわ。ペースアップするね。」
『了解』
そろそろ反撃開始かと思い、魔力の相互増幅量を上げていく。
しかしその時
「お姉ちゃん気をつけて、あっちのヴィヴィオ何かするよ。」
横に居たチェントが言った瞬間、子供ヴィヴィオの姿が消えた。
それを見て思い出す。彼女にはまだ戦い方があった。
「!? ヴィヴィオ回避、死角警戒」
半ば悲鳴に近い声で叫ぶ。
その声に反応して大人ヴィヴィオがスピードを上げてその場を離れた。直後さっきまで居た場所を上空からクロスファイアシュートの砲撃がかすめていた。
「なに…? !?」
ヴィヴィオの姿は見えず上下前後左右から次々と大人ヴィヴィオへと砲撃魔法が襲い来る。
「なにあれ…」
「ヴィヴィオが消えた?」
「動きが全然違うね…」
「高速移動…じゃない。本当に瞬間移動…」
データ計測中のなのは達もヴィヴィオの動きに驚いていた。
「ある人から聞きました。刻の主となった聖王に戦場は有って無いようなものだと…。」
大人アリシアの話を聞いて
「…あっ! 空間転移 こんな距離で出来るんだ。」
アリシアも気づいた。
ヴィヴィオの魔法【時空転移】と同じく思い浮かべた場所へと飛ぶ魔法【空間転移】。
魔法そのものは知っているし以前模擬戦で使ったのを見たこともあった。
でも転移前と転移後の距離はそれなりに離れていたり予備動作となる仕草はあった。しかし今はそれが全く無い。
目の前で飛ばれたら…果たして対応できるだろうか…
「空間だけとちゃうよ。…多分…やけど時間も飛んでる。…移動中に攻撃しかけてる?」
はやてはゴクリと唾を飲み込んでその様子を見ていた。
(これが本気のヴィヴィオかっ!)
高速で飛来する白い光を避けながら舌打ちする。時々ヴィヴィオの姿が見えるが直ぐに姿を消し次に現れるのは全く違う場所だ。
異世界で自分も使ったからこそわかる怖さ。
オリヴィエは彼女がこの力に目覚めたのに気づいていた。
時間移動魔法と空間移動魔法を自由に使いこなす大魔力の持ち主。
聖王のゆりかごを駆って、なのはやフェイトを含む特務6課、教導隊、首都航空隊の精鋭を倒した力…
「レイジングハート、バルディッシュと一緒にヴィヴィオの反応探して教えて。」
【AllRight】
広大な戦場では手の出しようがなかったが幸いここはシャマルの結界の中、エリア全域に目を向ければ消えてもわかる。
「鎧とブレイカーが使えないのが痛いね…それはあっちも同じか」
自嘲気味に笑う。死角から拡散放射系の集束砲を使われたら一瞬で終わっている。それに比べれば遙かにマシだと。それでも威力が上がったシューター1個1個の挙動を見なくちゃいけない。
RHdでも制御出来る様になっているからかまさに全方位からの集中砲火だ。それでもその中に道筋を見つけ出す。
(…やっぱり私…だねっ! ベルカの本領は近接戦っ!)
「ハァアアアアアッ!!」
手に魔力を集めて刃を作りその道へと高速で飛び込んだ。
その時
「紫電、一閃!」
「アアアアアッ!」
ヴィヴィオが現れ上段から白色の光の剣を振り下ろした。大人ヴィヴィオも負けじと虹色の光の刃をぶつける。
「斬られるっ!」
【Master】
『動いてっ!』
「RHd!」
【Fire】
アリシアの声も届いたけれど、その時既にヴィヴィオの罠にはまり入って逃げられない状態なっていて上下左右から大人ヴィヴィオは集中砲火を受ける。
大爆発が結界の中で起きた。
「勝った、ブイっ♪」
爆煙が収まらぬ中Vサインを出して降りてくるヴィヴィオ。
「ちょ、ちょっと! あっちのヴィヴィオは?」
アリシアが駆け寄って聞く。彼女は上空を指さす。続けて降りてくるが地面に着いた途端バランスを崩した大人ヴィヴィオをヴィヴィオは支えた。
「私も大丈夫。それほどダメージはないよ。大きな音で少し耳が痛いけど」
「デバイスにも異常なし。あんなの全部受けたら只じゃ済まない。ヴィヴィオ、あなた何をしたの?」
「お姉ちゃん!!」
大人アリシアがつかみかかろうとしたのをチェントが止める。
「シューターが当たる前に軌道を変えてそれぞれぶつけたの。爆発させちゃうと爆風でダメージ受けるから外へ流しながら。」
「だってこれテストの模擬戦で本当の戦闘じゃないでしょ?」
あっけらかんと言ったのを聞いて大人ヴィヴィオと2人のアリシア、駆け寄ったなのは達も唖然とする。
「あのまま来なくてシューターに当たったらどうしようって思ったけど、ヴィヴィオが思った通りに来てくれて良かった。」
「アハハハハハハッ、ほんと最高っ♪」
思いっきり笑う大人ヴィヴィオに全員の視線が集まる。
「誘いだってのは判ってたからね。まさか自分を囮にするとは思って無かったけど…凄かったよ、ヴィヴィオ。」
そう言って彼女はヴィヴィオの頭を撫でた。
「ママ、テスト続けるの?」
模擬戦を始めてそれ程経っていないし魔力も体力にも余裕がある。
でも大人の私は少し休憩するみたいでそのまま地面に腰を下ろしてウィンドウを開いた。
物理や魔力ダメージは無いけれど、シューター同士をぶつけたときの爆風と爆音を少しは受けているし、彼女達のデバイスも調整中らしいから今のデータをみるつもりらしい。
それを見て近くでシグナムとヴィータがどっちが先か…言い合いというか相談している。
予想通りこの調子じゃ2人とも対戦しないといけないらしい…
「あっ、えっと…マリィさん、どうですか?」
「待って、今データを整理してる。少しかかりそうだから休憩でいい?」
マリエルの返事を聞いてレリックのユニゾンを外して騎士甲冑を解除し私服姿に戻った。
久しぶりでも思いっきり動けたけれど、少し物足りない…。そんな気持ちに気づいたのかアリシアが言ってきた。
「じゃあさ、待ってる間私としない? 本気じゃなくて体冷やさない位で、あんなの見てたら私も動きたくなっちゃった。」
魔法を使った状態だと彼女とは出来ないし彼女もそれは知っている。ということは…
ふとあることを思いついてマリエルに声をかけた。
「魔法…ちょっと位ならいいよね。マリエルさん、さっきのとは別に見て欲しいのあるんですが一緒に調べて貰っていいですか?」
「えっ? うん、いいよ」
マリエルが頷くのを見て振り返ってアリシアに言う。
「じゃあ、私は砲撃とか魔法なしで、アリシアはバルディッシュだけで」
「OK♪」
彼女が頷くとトトトっと走ってみんなから離れる。
「バルディッシュ、セットアップ」
【Yes Sir】
彼女がバリアジャケット姿になったのを見てデバイスを取り出して話しかける。
「RHd、見てくれるだけでいいよ。少し試してみたいんだ。」
デバイスを服の中にしまい込んで彼女と同じ様にみんなから離れる。深く呼吸をした後、瞼を閉じて心を落ち着ける。その後静かに開いて彼女を見て…
心のスイッチを切り替えた。
その瞬間、ヴィヴィオを鎧が包んだ。
あの声も聞こえないし、衝動もないから大丈夫だろう。
「いつでもいいよ。」
「それじゃいくよ…ハッ!」
小太刀状のバルディッシュを駆ったアリシアとヴィヴィオの拳がぶつかった。
「フェイトちゃん、最近…アリシア…フェイトちゃんに似てきたな~って思うの。会った時じゃなくて、海鳴で聖祥に通ってた頃の感じに…」
全くもうとフェイトが半ば呆れているとなのはに言われる。
「そう…かな? 姉さんの方がしっかり…っていうか強かだと思うんだけど」
「それは私も…そうじゃなくてこんな風に楽しそうにしてるところとか…懐かしくなっちゃった」
「…そうだね…」
体育でドッジボールした時にあんな顔してたかなと思い出して懐かしくなる。
なのはやはやて、ヴィータやシグナム、シャマルも思い出して微笑ましくなって眺めていた。
でも…それは昔を知っている者だけのこと。
「…なのはちゃん、フェイトちゃん…アレ…何?」
皆とは対照的にマリエルは目を丸くして驚いていた。
「デバイスは待機状態で、ヴィヴィオから魔力の反応はないよね? 魔法…じゃない?」
いきなり見せられたのだから流石の彼女も何が起きているのか理解出来なかったらしい。
「あ~あの…魔法じゃなくて何か別のもので昔のベルカ聖王の力だそうです。相手を倒すって決めた時に出てくるそうなんですが、ヴィヴィオは使いこなしちゃってるみたいでして…」
「私達もつい最近知ったばかりなんです。」
何処まで話せばいいのか判らず当たり障りのないように答える。
「…そ…そうなんだ…」
驚きながらも彼女の手はデバイスを通して送られてくるデータを取っているのは流石だと思った。
「ヴィヴィオもアレ使えるの?」
騎士甲冑を解除して腰を下ろした大人ヴィヴィオの横に大人アリシアが座りながら聞く。
「全然、全く、どうしてるのかもわかんない。」
両手を挙げてお手上げといった風に苦笑いしながら答える。
先の事件が終わった後、ヴィヴィオの魔力が戻る迄の間に聞いたことがある。
闇の書事件の撮影時に偶然使えた力で、負けられないって強く思った時に出てきたそうだ。
ヴィヴィオも時間を見つけて何度か挑戦したけれどきっかけすらつかめなかった。
彼女が持っている完全体レリックの影響なのか、それとも私よりも想いが強く形になっているのか…
「聖王の力だけなら同じの持ってる筈なんだけど、私もチェントも…チェントは?」
チェントもアリシアの隣に座る。
「私も…シュテルさんとの練習で試したけど何にも出なかった。私達じゃ出来ないのかも。お姉ちゃんもあんな風に動ける?」
子供のアリシアが2本の短剣を自由に動かし高速で動いている。
「無理無理。…そうね、ここはここの私達は私達ってことか…」
「そういうこと。こっちの私達が同じシステム使い出したら凄いことになりそうだけど…」
「……私達とは違う未来か…どんなのだろうね。」
「まぁ…色々大変なのは変わらないかな。」
ヴィヴィオやアリシアもそうだけれど、チェントも違っている。
目の前の子供の私達は楽しそうに拳と剣をぶつけている。2人とも楽しそうでまだまだ余裕があるのが見て取れる。
子猫同士がじゃれ合っているようなものだ。
ヴィヴィオはその光景を懐かしそうに眺めていた。
「本当に…昔のあなた達そっくりね。無茶苦茶なところとか先に体が動いているところとか…」
コラードが2人を見て言った。
「え、私達そんな風でした?」
なのはが苦笑いして彼女を見る。
「ええ…だから鍛え甲斐もある。礼を言わなくてはいけないわね、私をあの子達と繋いでくれたことに」
「……」
久しぶりに見る眩しい位の笑み。なのはは自然と頬が緩んだ。
~コメント~
最初に西日本の集中豪雨で被害に遭われた方の1日も早い復旧を応援します。
昨年の同時期に私も職場で河川の氾濫や土砂崩れを目の辺りにして自然の驚異を感じました。ですが、1週間と経たずにライフラインや物流が元に戻っていくのを見て人の力の凄さも感じました。
初めてのヴィヴィオ同士の模擬戦でした。
もし2人が本気も本気…になったらどっちが勝つのか? 2人とも優しいので競うことはあってもぶつかる事はないのかなと思います。
話は少し変わりますがTittwerを始めました。
元々、スマホでゲームするのに作っていただけだったのですが静奈君の使い方を見ていると色々出来そうなので切り替えました。
https://twitter.com/ami_suzukazedou
SSについてとか活動についてとかを呟けたらいいなと思います。
そろそろ反撃開始かと思い、魔力の相互増幅量を上げていく。
しかしその時
「お姉ちゃん気をつけて、あっちのヴィヴィオ何かするよ。」
横に居たチェントが言った瞬間、子供ヴィヴィオの姿が消えた。
それを見て思い出す。彼女にはまだ戦い方があった。
「!? ヴィヴィオ回避、死角警戒」
半ば悲鳴に近い声で叫ぶ。
その声に反応して大人ヴィヴィオがスピードを上げてその場を離れた。直後さっきまで居た場所を上空からクロスファイアシュートの砲撃がかすめていた。
「なに…? !?」
ヴィヴィオの姿は見えず上下前後左右から次々と大人ヴィヴィオへと砲撃魔法が襲い来る。
「なにあれ…」
「ヴィヴィオが消えた?」
「動きが全然違うね…」
「高速移動…じゃない。本当に瞬間移動…」
データ計測中のなのは達もヴィヴィオの動きに驚いていた。
「ある人から聞きました。刻の主となった聖王に戦場は有って無いようなものだと…。」
大人アリシアの話を聞いて
「…あっ! 空間転移 こんな距離で出来るんだ。」
アリシアも気づいた。
ヴィヴィオの魔法【時空転移】と同じく思い浮かべた場所へと飛ぶ魔法【空間転移】。
魔法そのものは知っているし以前模擬戦で使ったのを見たこともあった。
でも転移前と転移後の距離はそれなりに離れていたり予備動作となる仕草はあった。しかし今はそれが全く無い。
目の前で飛ばれたら…果たして対応できるだろうか…
「空間だけとちゃうよ。…多分…やけど時間も飛んでる。…移動中に攻撃しかけてる?」
はやてはゴクリと唾を飲み込んでその様子を見ていた。
(これが本気のヴィヴィオかっ!)
高速で飛来する白い光を避けながら舌打ちする。時々ヴィヴィオの姿が見えるが直ぐに姿を消し次に現れるのは全く違う場所だ。
異世界で自分も使ったからこそわかる怖さ。
オリヴィエは彼女がこの力に目覚めたのに気づいていた。
時間移動魔法と空間移動魔法を自由に使いこなす大魔力の持ち主。
聖王のゆりかごを駆って、なのはやフェイトを含む特務6課、教導隊、首都航空隊の精鋭を倒した力…
「レイジングハート、バルディッシュと一緒にヴィヴィオの反応探して教えて。」
【AllRight】
広大な戦場では手の出しようがなかったが幸いここはシャマルの結界の中、エリア全域に目を向ければ消えてもわかる。
「鎧とブレイカーが使えないのが痛いね…それはあっちも同じか」
自嘲気味に笑う。死角から拡散放射系の集束砲を使われたら一瞬で終わっている。それに比べれば遙かにマシだと。それでも威力が上がったシューター1個1個の挙動を見なくちゃいけない。
RHdでも制御出来る様になっているからかまさに全方位からの集中砲火だ。それでもその中に道筋を見つけ出す。
(…やっぱり私…だねっ! ベルカの本領は近接戦っ!)
「ハァアアアアアッ!!」
手に魔力を集めて刃を作りその道へと高速で飛び込んだ。
その時
「紫電、一閃!」
「アアアアアッ!」
ヴィヴィオが現れ上段から白色の光の剣を振り下ろした。大人ヴィヴィオも負けじと虹色の光の刃をぶつける。
「斬られるっ!」
【Master】
『動いてっ!』
「RHd!」
【Fire】
アリシアの声も届いたけれど、その時既にヴィヴィオの罠にはまり入って逃げられない状態なっていて上下左右から大人ヴィヴィオは集中砲火を受ける。
大爆発が結界の中で起きた。
「勝った、ブイっ♪」
爆煙が収まらぬ中Vサインを出して降りてくるヴィヴィオ。
「ちょ、ちょっと! あっちのヴィヴィオは?」
アリシアが駆け寄って聞く。彼女は上空を指さす。続けて降りてくるが地面に着いた途端バランスを崩した大人ヴィヴィオをヴィヴィオは支えた。
「私も大丈夫。それほどダメージはないよ。大きな音で少し耳が痛いけど」
「デバイスにも異常なし。あんなの全部受けたら只じゃ済まない。ヴィヴィオ、あなた何をしたの?」
「お姉ちゃん!!」
大人アリシアがつかみかかろうとしたのをチェントが止める。
「シューターが当たる前に軌道を変えてそれぞれぶつけたの。爆発させちゃうと爆風でダメージ受けるから外へ流しながら。」
「だってこれテストの模擬戦で本当の戦闘じゃないでしょ?」
あっけらかんと言ったのを聞いて大人ヴィヴィオと2人のアリシア、駆け寄ったなのは達も唖然とする。
「あのまま来なくてシューターに当たったらどうしようって思ったけど、ヴィヴィオが思った通りに来てくれて良かった。」
「アハハハハハハッ、ほんと最高っ♪」
思いっきり笑う大人ヴィヴィオに全員の視線が集まる。
「誘いだってのは判ってたからね。まさか自分を囮にするとは思って無かったけど…凄かったよ、ヴィヴィオ。」
そう言って彼女はヴィヴィオの頭を撫でた。
「ママ、テスト続けるの?」
模擬戦を始めてそれ程経っていないし魔力も体力にも余裕がある。
でも大人の私は少し休憩するみたいでそのまま地面に腰を下ろしてウィンドウを開いた。
物理や魔力ダメージは無いけれど、シューター同士をぶつけたときの爆風と爆音を少しは受けているし、彼女達のデバイスも調整中らしいから今のデータをみるつもりらしい。
それを見て近くでシグナムとヴィータがどっちが先か…言い合いというか相談している。
予想通りこの調子じゃ2人とも対戦しないといけないらしい…
「あっ、えっと…マリィさん、どうですか?」
「待って、今データを整理してる。少しかかりそうだから休憩でいい?」
マリエルの返事を聞いてレリックのユニゾンを外して騎士甲冑を解除し私服姿に戻った。
久しぶりでも思いっきり動けたけれど、少し物足りない…。そんな気持ちに気づいたのかアリシアが言ってきた。
「じゃあさ、待ってる間私としない? 本気じゃなくて体冷やさない位で、あんなの見てたら私も動きたくなっちゃった。」
魔法を使った状態だと彼女とは出来ないし彼女もそれは知っている。ということは…
ふとあることを思いついてマリエルに声をかけた。
「魔法…ちょっと位ならいいよね。マリエルさん、さっきのとは別に見て欲しいのあるんですが一緒に調べて貰っていいですか?」
「えっ? うん、いいよ」
マリエルが頷くのを見て振り返ってアリシアに言う。
「じゃあ、私は砲撃とか魔法なしで、アリシアはバルディッシュだけで」
「OK♪」
彼女が頷くとトトトっと走ってみんなから離れる。
「バルディッシュ、セットアップ」
【Yes Sir】
彼女がバリアジャケット姿になったのを見てデバイスを取り出して話しかける。
「RHd、見てくれるだけでいいよ。少し試してみたいんだ。」
デバイスを服の中にしまい込んで彼女と同じ様にみんなから離れる。深く呼吸をした後、瞼を閉じて心を落ち着ける。その後静かに開いて彼女を見て…
心のスイッチを切り替えた。
その瞬間、ヴィヴィオを鎧が包んだ。
あの声も聞こえないし、衝動もないから大丈夫だろう。
「いつでもいいよ。」
「それじゃいくよ…ハッ!」
小太刀状のバルディッシュを駆ったアリシアとヴィヴィオの拳がぶつかった。
「フェイトちゃん、最近…アリシア…フェイトちゃんに似てきたな~って思うの。会った時じゃなくて、海鳴で聖祥に通ってた頃の感じに…」
全くもうとフェイトが半ば呆れているとなのはに言われる。
「そう…かな? 姉さんの方がしっかり…っていうか強かだと思うんだけど」
「それは私も…そうじゃなくてこんな風に楽しそうにしてるところとか…懐かしくなっちゃった」
「…そうだね…」
体育でドッジボールした時にあんな顔してたかなと思い出して懐かしくなる。
なのはやはやて、ヴィータやシグナム、シャマルも思い出して微笑ましくなって眺めていた。
でも…それは昔を知っている者だけのこと。
「…なのはちゃん、フェイトちゃん…アレ…何?」
皆とは対照的にマリエルは目を丸くして驚いていた。
「デバイスは待機状態で、ヴィヴィオから魔力の反応はないよね? 魔法…じゃない?」
いきなり見せられたのだから流石の彼女も何が起きているのか理解出来なかったらしい。
「あ~あの…魔法じゃなくて何か別のもので昔のベルカ聖王の力だそうです。相手を倒すって決めた時に出てくるそうなんですが、ヴィヴィオは使いこなしちゃってるみたいでして…」
「私達もつい最近知ったばかりなんです。」
何処まで話せばいいのか判らず当たり障りのないように答える。
「…そ…そうなんだ…」
驚きながらも彼女の手はデバイスを通して送られてくるデータを取っているのは流石だと思った。
「ヴィヴィオもアレ使えるの?」
騎士甲冑を解除して腰を下ろした大人ヴィヴィオの横に大人アリシアが座りながら聞く。
「全然、全く、どうしてるのかもわかんない。」
両手を挙げてお手上げといった風に苦笑いしながら答える。
先の事件が終わった後、ヴィヴィオの魔力が戻る迄の間に聞いたことがある。
闇の書事件の撮影時に偶然使えた力で、負けられないって強く思った時に出てきたそうだ。
ヴィヴィオも時間を見つけて何度か挑戦したけれどきっかけすらつかめなかった。
彼女が持っている完全体レリックの影響なのか、それとも私よりも想いが強く形になっているのか…
「聖王の力だけなら同じの持ってる筈なんだけど、私もチェントも…チェントは?」
チェントもアリシアの隣に座る。
「私も…シュテルさんとの練習で試したけど何にも出なかった。私達じゃ出来ないのかも。お姉ちゃんもあんな風に動ける?」
子供のアリシアが2本の短剣を自由に動かし高速で動いている。
「無理無理。…そうね、ここはここの私達は私達ってことか…」
「そういうこと。こっちの私達が同じシステム使い出したら凄いことになりそうだけど…」
「……私達とは違う未来か…どんなのだろうね。」
「まぁ…色々大変なのは変わらないかな。」
ヴィヴィオやアリシアもそうだけれど、チェントも違っている。
目の前の子供の私達は楽しそうに拳と剣をぶつけている。2人とも楽しそうでまだまだ余裕があるのが見て取れる。
子猫同士がじゃれ合っているようなものだ。
ヴィヴィオはその光景を懐かしそうに眺めていた。
「本当に…昔のあなた達そっくりね。無茶苦茶なところとか先に体が動いているところとか…」
コラードが2人を見て言った。
「え、私達そんな風でした?」
なのはが苦笑いして彼女を見る。
「ええ…だから鍛え甲斐もある。礼を言わなくてはいけないわね、私をあの子達と繋いでくれたことに」
「……」
久しぶりに見る眩しい位の笑み。なのはは自然と頬が緩んだ。
~コメント~
最初に西日本の集中豪雨で被害に遭われた方の1日も早い復旧を応援します。
昨年の同時期に私も職場で河川の氾濫や土砂崩れを目の辺りにして自然の驚異を感じました。ですが、1週間と経たずにライフラインや物流が元に戻っていくのを見て人の力の凄さも感じました。
初めてのヴィヴィオ同士の模擬戦でした。
もし2人が本気も本気…になったらどっちが勝つのか? 2人とも優しいので競うことはあってもぶつかる事はないのかなと思います。
話は少し変わりますがTittwerを始めました。
元々、スマホでゲームするのに作っていただけだったのですが静奈君の使い方を見ていると色々出来そうなので切り替えました。
https://twitter.com/ami_suzukazedou
SSについてとか活動についてとかを呟けたらいいなと思います。
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