AS39「カルナージにて~5~」

 ヴィヴィオはアリシアと少し打ちあった後、データを取る準備が出来たて次はヴィータと模擬戦をした。
 ただそれはさっきの模擬戦とは違って全力全開という風ではなく、マリエルから色々魔力の量を調整したデータが欲しいと頼まれた。
 転移戦法はデバイスの増幅機能で増幅された魔力を使う。
 でも戦技魔法の様にはっきりデータは取れない。細かなデータが必要だから次の模擬戦では転移を控えてクロスファイアシュートメインの戦法に切り替えた。
クロスファイアシュートは元になるシューターの数が多ければ多いほど制御力が必要になる魔法。逆に言えば制御力があれば魔力量と威力を調整するには丁度いい。
 なのはがヴィータを対戦相手に指名したのも近接線主体のシグナムより、中距離向きな戦闘スタイルでかつ同じ教導隊所属で必要なデータを伝えやすかったからだと考えた。
 

 そして、午前中のテストが終わりお昼休憩の時

「みんなのおかげでRHdのテストも進んでるし、いいデータも取れてる♪」
「それで…調子はどうですか?」
「大きなエラーは無いし今までの魔法なら問題ないよ。」

 マリエルが嬉しそうに言うのを聞いてヴィヴィオもホッと息をつく。

「マリエルさん、テストって後何が残ってるんですか?」

 聞くとマリエルはウィンドウを出して見ていく。

「残ってるのは…そうね、高出力で魔法を使った時のデータがもう少し欲しいかな…集束系より砲撃系の方とか、流石に誰かに的になって貰うわけにはいかないし…メガーヌさん、何処かに良い場所知りませんか?」
「そうね~…何処か知らない?」

 メガーヌが考えるが思いつかなかったらしく隣のルーテシアに聞く。

「的とは少し違いますけどあの山の向こうにある岩山はどうですか?」
「岩山?」
「ブッ!! ケホケホ…」 

 その言葉を聞いたアリシアはブッと飲み物を吹き出しそうになって咳き込んだ。
 ルーテシアがどうしたのかと怪訝な顔をするが話を続ける為にウィンドウを出して全員に見せる。

「どうしたの? あっ、はい他と違って凄く硬い地質出来てて水も通さないから水路を作るのに邪魔になってるんです。穴でも開けて貰えたら凄く助かります。」
「今のヴィヴィオが使うんですか!? 危なくないです?」

 テーブルに乗りかかって聞く。
 当の本人が『懐かしい』と呟いていたから間違い無い。【あの岩山だ】
 
「そうだけど、テストなしだと何が起きるか判らないし…その方が危険だよね。」

 デジャヴどころじゃない。
 慌てて止めようとするがマリエルに言い返されてしまう。
 確かに負荷テストをしていても最大出力で魔法を使った時のデータが無ければデバイスが何処まで耐えられるのか判らないし、何か起きていても気づけない。
 実際それに気づけなかったからRHdは壊れてしまったのだから。

「それは…そうですけど。」
「さっきも言ったけど、それはもう凄く硬いの。私の砲撃魔法でも穴が開かない位だからそうそう壊れたりしないわよ。後で案内しますね。」

 ルーテシアがマリエルに言って彼女も頷いたのを見てこれ以上言っても無駄だと諦めた。
 しかし、しなくちゃいけないことはある。
 即ち被害を抑えなければ…。

(…マズイ…みんな知らないから…本当にマズイ…)

 ヴィヴィオは…この際だから手加減しないと考えておいて…
 庭に居たガリューを見つけてそのまま彼(?)の所に行く。

「ガリューさん、お願いがあるんですがいいですか?」

 少し頭を縦に振ったのを見て続ける。

「山の向こうにある硬い岩山って知ってます? そこで…」

 2~3言話すと理解したのか頷いた後走って行った。 

         

「アリシア、午後からのテストは見ないの?」

まだ疲れが残っているチェントは部屋の中でお絵かきしていた。プレシアはそれに付き合いつつ窓から時計を見るアリシアに聞く。
 ヴィヴィオ達は30分程前に岩山へと行ってしまった。ここに残っているのはアリシアとプレシア、チェントとリビングでくつろいでいるメガーヌだけである。

「うん…多分そろそろかな。ママ、チェントと一緒に外に出て。」

そう言うと部屋を出てリビングに居たメガーヌに

「メガーヌさん、少しだけ外に出て貰って良いですか?」
「アリシアちゃん? どうしたの?」
「ええ、ちょっと…」
「アリシア、急にどうしたの?」

 プレシアがチェントを連れて後を追いかけてきたのを見て、プレシアとメガーヌの手をとってそのまま庭へと出る。

「何かあるの?」
「はい…多分そろそろ…」

 皆が行った方向を見ながらチェントを後ろから抱きかかえる。

「ねえさま?」

 チェントが不思議そうに見たその時、一瞬視線の先の空が虹色に光った。

直後

【ドォォオオオンン!!!】

 重い音と共に鳥が驚いて一斉に飛び立つ。

「!!」
「なに?」

 そして続けて地面が大きく揺れた。

「キャッ! 地震!」
「やっぱり!!」

 膝をつくプレシアとメガーヌの横でこけそうになるチェントを支えながら治まるのを待つ。
 数秒揺れた後、地震は治まった。       

「何だったの今のは…カルナージで地震なんて起こらない筈なのに…」
「今のが…ヴィヴィオのストライクスターズです。。」
「ストライクスターズ? なのはちゃんの?」

 メガーヌは知らなかったらしい。

「ヴィヴィオも使えるんです。私とヴィヴィオが異世界のカルナージに行った時、ヴィヴィオは水路を邪魔してる岩山を目標にストライクスターズを使ったんです。」
「それでさっき止めようとしていたのね…」

 プレシアが納得する。 

「うん、その時も凄く揺れたから家の中より外の方が安全だから、手加減してたら揺れないかなとも思ったけど念のため外に出た方がいいかなって。」
「でも…この衝撃は…どれ位の威力なのかしら? ここまで振動が来るなんて…」

 プレシアがジッとその方向を見る。

「異世界じゃ岩山は全部消し飛んで湖になってたよ。今はあの時よりパワーアップしてる筈だから…もっと本気になって止めなきゃだめだったかも…」

 プレシアとメガーヌはアリシアの言葉を聞いてもう何も言えなかった。

 岩山の方を見ると大きな土煙が上がっている。前はあんなの見えなかったから威力はパワーアップしているのは間違い無いだろう。   

「ガリューさんに周りに誰か居たら避難させるようにお願いしたんだけど…みんな無事かな…」

 これは祈るばかりである。


 その頃、アリシアに心配されていたガリューは岩山からかなり離れた岡に居た。
 観光者は居らず岩山に住む鳥や付近の動物を逃がす為にインゼクトと地雷王に状況を伝えた。
 こういう時の感覚は人間よりも鋭敏である。全員が岩山から更に離れた場所まで避難範囲を広げたことで事なきを得た。

 唯一被害を被ったのは…
 小一時間後、ヴィヴィオを除く全員が土埃まみれになって無言で帰ってきたのをアリシアはそのまま温泉へ案内したのは言うまでもない。

 岩山だった場所は…誰も教えてくれたかったから多分そういうことなのだろうとアリシアは勝手に想像した。

 
 こうして色々波乱もあったカルナージでのテストは終わった。
 この後ヴィヴィオとRHdから得られたデータは魔力コアが組み込まれたベルカ式デバイス開発に大きく寄与することになる。


 それとは別に…

「ヴィヴィオには何よりも先に力加減の仕方を教える必要がある。」

 その場に行った者の共通認識となった。

~コメント~
 オチもついてカルナージ編終了です。(まだ短編は続きます)
 今話でも少しありましたが、岩山についてはAdditionalStory第44話でVivid世界に行った際、なのはに見せる為に全力のストライクスターズで湖に変わってます。時間軸は違っても同じ事が起きる…(この場合はヴィヴィオのせいなのですが)という話でした。

 話は少し変わりますがTittwerを始めました。
 元々、スマホでゲームするのに作っていただけだったのですが静奈君の使い方を見ていると色々出来そうなので切り替えました。
 https://twitter.com/ami_suzukazedou
 SSについてとか活動についてとかを呟けたらいいなと思います。

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