AS47「夜天の願い」

「ハァアアアッ!」
「ダァリャァアアアッ!」
 
 地上と空中で激突する虹色と赤色の光。その軌跡と激突音と衝撃、そして2人の声が会場中に響き渡る。
 ヴィータのラケーテンハンマーをヴィヴィオが虹色の刃で弾く、しかしその勢いを乗せて更に打ち込むヴィータ。そこにヴィヴィオの腕から放たれた槍がぶつかる。
 爆風で2人の姿は消える。そのまま上空に飛びそこで至近距離から互いの拳と槌が何度もぶつかる。
 それぞれ数発の直撃を受けるが1歩も引かない。
 セコンドに居たシグナムやリインは勿論、救護テントにいたフェイトとシャマル、放送席に居たなのはやはやてもかけられる言葉が無くなっていた。

 それ程2人の試合は苛烈さを増していた。
 戦技披露会を更に盛り上げる為にと特別イベントとして企画した者が居たのであれば、その者もこんな事になるとは微塵も思っていなかったであろう。
 和気藹々としたものでも派手な魔法戦でもない…ヴィヴィオとヴィータの一挙手一投足には気合いが込められているのを会場の全員が感じていた。

 なのはとシグナムが毎年行っている模擬戦が高レベルの【魔法戦技披露】であればヴィヴィオとヴィータは模擬戦を超えた鬼気迫る【ベルカの騎士同士の決闘】だった。

もしヴィヴィオがいつもの様に莫大な魔力を使った戦法を取っていれば、ヴィータはある程度のところで押さえて隙をついて終わらせていただろう。
 もしヴィヴィオが空間転移戦法を使っていればヴィータは手出しが出来ずあっさり勝っていただろう。
 確実に勝つだけならわざわざ虎の尾を踏みに行く者は居ない。
 だがヴィヴィオはこの方法を選んだ。勝ち負けよりも大切で伝えなくてはいけないものがあるから…。
 

 そんな2人の激突をイクスヴェリアは嬉しそうに見つめる。

「ヴィヴィオは新しい可能性を見つけた様ですね。彼女でもあちらのヴィヴィオとも違う…彼女だからこそ得られる力を…」

 異世界の大人ヴィヴィオ達もその光景を見つめていた。

「無茶苦茶な方法だって思ったけど…ヴィヴィオ、本当になんとかしちゃうんだね。」
「うん…私達じゃ思いつきもしない方法。」
「でも…ううん、ヴィヴィオだから出来たんだと思う」

 3人はこの3週間ヴィヴィオと一緒にブレイブデュエルの世界に行っていた。
 ブレイブデュエルの世界と元世界の魔法と繋がっている。
 それはT&Hのミッドチルダ式魔方陣が描かれたブレイブホルダーでは魔法が使えず、八神堂のベルカ式魔方陣が描かれたブレイブホルダーで魔法が使えたことで気づかされた。その後、見よう見まねから始めた紫電一閃が使えるレベルまで昇華できたことでヴィヴィオは自身にとってブレイブデュエルの可能性を見つけていた。
 それはレパートリーの少ないヴィヴィオが多くのスキルカードの中から効果的な魔法を選んで学べるということ。

 彼女達が行ったのは『ブレイブデュエルの世界で特定のスキルカードをどうすれば実際に使える様になるか調べて欲しい』というとんでもない依頼をされたからだ。しかもその依頼の意味には3人の居る世界も含まれている。

「私達も伝えなきゃだね。」
「うん…」
「ヴィヴィオ、ヴィータさん、がんばって!」

 空で戦う2人を応援する。   


  
「石化の槍、ミストルティン!」

 数本の虹色の光の槍を放つがヴィータはシュワルベフリーゲンで迎撃する。双方がぶつかった瞬間、鉄球が石化して落下する。
 放った直後から2人は軌跡を見ていない。上空に飛んで拳と槌が何度もぶつかり合う。
 近接攻撃こそベルカの本領。理解しているから離れて砲撃魔法を使わない。
 使った瞬間に間を詰められて痛恨の一撃を食らいかねないから。

「ダァァリャャャアアアアッッ!」

 グラーフアイゼンを振り上げるのをキックで威力を相殺しようとするが威力が強く押されてしまう。そのままパンチをするが受け止められ直後に発した虹色の槍も紙一重で弾かれる。
 徐々に重くなってくるのを感じてヴィヴィオはセコンドに合図を求める。

『アリシアっ!』
『うん』

 その声を聞いてヴィヴィオはヴィータの一撃をわざと受けた。
 振り下ろされたグラーフアイゼンに打たれた勢いに乗って地面へと急降下し着地する。
 そして…乱れた息を深呼吸して整え、両手を挙げてベルカの魔方陣を広げ
     
「いけぇええええっ!!、ミストルティン タウゼントッ!」

叫んだ直後、地面が揺れ始めヴィヴィオを中心に大きく隆起する。。
ヴィヴィオを追いかけて急降下して地面スレスレから急襲しようとしていたヴィータの前に尖った岩が次々と生まれて彼女を追いかけ始めた。

「!?」
「こいつまでっ!! ダァアアアアアッ!」

 即座にカートリッジをロード、巨大化&ドリル回転させたヘッド部を噴射させて岩を横薙ぎにしていく。ドリル状の先端に岩塊は粉々にされるが次々とヴィータの前に現れる。現れる岩塊と砕くハンマー、その衝撃が観戦エリアだけでなく披露会会場を震えさせた。
 ヴィータの進むスピードが鈍くなるが、更にカートリッジを交換しロードするとグラーフアイゼンの後部の槌に噴射口が生まれて噴射が始まり勢いづく。
 一気に押され始めた瞬間

『ヴィヴィオ、今だよっ!』

 念話で届いた声でヴィヴィオ達は動いた。

「RHd、行くよっ! ほしよぉおおおおおおっ!」

 バリアジャケットが騎士甲冑に変わるのと同時に生まれた周囲に生まれた10個の光と正面の大きな光球を放った。
 直後ヴィータの前に現れたヴィヴィオは両手の光をドリルの先端にぶつけた。
 攻撃力を失うがその勢いは止まらずヴィヴィオは吹き飛ばされてしまう。しかしヴィータもその後に来た虹色の光に呑み込まれた。
 そしてその光は2人の戦場を包み込んでしまった。


 
「イタタタタ…思いっきり背中打っちゃった…」

 自ら作り出した岩にめり込んだ体を起こし、岩肌に体重を預けながら立ち上がる。

『アリシア、どう?』

 光は消えたけれど、ミストルティンを壊した際の土煙が辺りを覆っている。警戒しながらセコンドに念話を送る。

『土煙で見えない…油断しないで。』
『うん…』

 直撃の感触はあった。でも…アレで勝ったという感じもない。その時

「まったく可愛げのねー奴らだ。」

 声が聞こえ振り返るとヴィータが立っていた。手にはデバイスが握られている。

「…ウソ…アレでも…?」

 ストライクスターズは間違い無く直撃させた。しかも以前に模擬戦した時より威力は上回っていて、飛んで彼女の攻撃を無効化までさせたのにかかわらず…。
 それでも彼女は立っていた。デバイスを持って…
 強ばった顔で慌てて構える。
 しかしその直後

『ヴィヴィオ、大丈夫…終わったよ。』

 念話で声が聞こえた。それはアリシアではなくなのは役の少女からだった。

『終わった? …それってどういう』

 聞き返そうとした時ヴィータの口が動いて言葉を飲み込む。 

「可愛げはねぇが…久しぶりに…楽しかった。」

 笑顔でそう言うとパタンと後ろに倒れた。

「……こ、怖かった…」

それを見てヴィヴィオもその場にぺたんと腰を落とした。

~コメント~
 ヴィヴィオの戦技披露会、ようやく終わりました。
 ヴィヴィオ達が何を想って臨んだのかは次話で

Tittwerを始めました。
 https://twitter.com/ami_suzukazedou
 SSについてとか活動についてとかを呟けたらいいなと思います。


 

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