19話 バレンタインパニック(後編)
- 短編集 > ヴィヴィオの日記帳
- by ima
- 2008.02.14 Thursday 14:44
■がつ●▲にち
きょうスバルさんとヴィータさんにおかしをもらった。
ちょこれーとっていうおかしでてぃあなさんのおみやげなんだって
とってもあまくておいしかった
でもティアナさんのちょこれーとはおみやげじゃなくて
だれかにあげるものだったってきいた
ティアナさんにごめんなさいしたらわらってくれたけど
すこしげんきなかった。
ヴィヴィオ、ママのかわりにがんばる
きょうスバルさんとヴィータさんにおかしをもらった。
ちょこれーとっていうおかしでてぃあなさんのおみやげなんだって
とってもあまくておいしかった
でもティアナさんのちょこれーとはおみやげじゃなくて
だれかにあげるものだったってきいた
ティアナさんにごめんなさいしたらわらってくれたけど
すこしげんきなかった。
ヴィヴィオ、ママのかわりにがんばる
「はやてちゃんっ!はやてちゃんってば!」
翌朝、なのはは熟睡中のはやての部屋に駆け込んてきた。かなり慌てている様でいつも落ち着いているなのはからは想像できない姿だ。
そんな事も露知らずのはやては反面かなり眠そうである
「おはよ~なのはちゃん。昨日遅かっってん。もうちょっと寝かせてや~・・・あ~もう行ってきたん?はやいな~。後任せたよ~Zzzz」
再びベッドに潜り込んで眠ろうとする。
「寝ぼけてないで!違うよ、朝起きたらヴィヴィオが居ないのっ!」
「ふ~んトイレでもいってるんちゃう?」
再び起こされたはやてだったがまだかなり眠いのか頭が働いていない。
「しっかりして!そんなのもう見たよ。宿舎の中全部探し回っても居ないの。起きないならっ」
<
嫌な声が聞こえたかと思いはやてが重い瞼開いた瞬間、飛び込んできたのはエクシードモードのレイジングハートと目が据わったなのはの姿だった。
本気だ!慌てて飛び起きてベッドの上に正座する。完全に目が覚めた。
「はいっ、起きましたっ。今起きました!」
なのははレイジングハートを待機状態に戻して
「ねぇどうしよう??」
はやてはう~んと考えているとふとあることを思いだした。ヴィヴィオって確かパス貰ってなかったかな?と
「なのはちゃん、書き置きとか何も無かった?」
「うん特には・・」
六課のセキュリティは厳重である。外部からの侵入は難しい。そうであればヴィヴィオが出て行ったと考える方が自然である。その時、昨日の会話が頭によぎった。
「えっと・・なのはちゃんヴィヴィオのパスコード判る?」
「え・・ちょっと待って・・・はい」
はやては端末を呼び出し、パスの利用状況を確認した。これは課員の動きを把握するためにあるシステムな為、隊長以上の権限を持つ者しか見ることが出来ない。
案の定パスコードの検索に引っかかった
「あ~やっぱり!丁度今列車の中やね・・・もうちょっとでクラナガンってとこ?」
「えっ!もしかして・・・」
その時になってやっとなのはも冷静に判断できる程度まで落ち着きを取り戻した。
「そう、昨日のうちらの会話聞かれてたみたいやね。こっから直接行っても追いつけへんし・・・あっ中央ポートの許可申請だけしとかんと・・・途中で止められへん様にっと」
「大丈夫かなぁ~」
心配そうななのはを余所にはやては
「大丈夫ちゃう?うちも同じ位の頃1人で全部やってたし。ポートの使用許可でたから後はヴィヴィオ次第?」
いつもは自信たっぷりななのはがここまでオロオロした姿を見るのはある意味実に新鮮だった。
そんな2人の心配も知らず、ヴィヴィオは列車の中で流れる景色を見つめていた。
何度かはなのはと一緒にクラナガンまで来ることはあったが、高町家まで行ったことは一度しかない。
しかし、何故かヴィヴィオの中で心細さは無かった。
「あの、ここ行きたいのっ」
「ここってお嬢ちゃんここは特別な人しか入れないんだよ」
クラナガンに着いて早速制服を着た人を見つけ聞きに行く。
その時予め用意していた【本局の外観イメージ】をカメラに入れて置いた為、大概の大人はその建物を知っていた。しかし何かの冗談と思われた様だ
「本当にこの場所に行きたいの?」
コクンと力一杯頷く。
「じゃああの建物に行ってもう一度これを見せてごらん。」
「うん、ありがとうございます」
教えて貰った通り、遠くに見える建物=管理局ミッドチルダ地上本部に向かって走りはじめた。
なんとか地上本部の前に着いて、荒れていた息を整えて中に入ろうとした所、警備員に呼び止められた。
「お嬢ちゃん、この中は入っちゃダメなんだよ」
再びカメラの映像を見せる
「あの、ここに行きたいの」
「確かにここから行けるけれど、関係者の人?お嬢ちゃんの名前とお母さんの名前教えてくれるかな?」
「高町ヴィヴィオ!ママは高町なのは」
「えっ!?」
ゆりかごの事件で機動六課のメンバーの知名度は鰻登りの様に上がっていた。一般市民も知っている位なのだから関係者は言うに及ばず。確認のためか警備員が小さなカードを見せる
「お嬢ちゃん、こんなカード持ってるかな?」
見せられたのは以前ママから預かったカードパス。リュックを開けて入れていたパスケースから出して渡す。
「・・・本局ポート使用許可と第97管理外世界への転送申請受理・・・」
関係者でも管理外世界への転送は許可されない筈が、何故か許可が下りている。しかも統括官の直々に降りている事に警備員は驚く事しか出来なかった。
「すみません、1名転送ポートまでの案内をお願いします。はい、許可を確認しました。」
周りをキョロキョロと見ていると
「お待たせ、カードありがとうね。あのお姉さんが途中まで一緒に行ってくれるから」
「うん、ありがとうおじさん」
ピョコっと頭を下げて礼を言うと、玄関の女性のところに走っていった。
-同じ頃-
【PIPIPI】
「あ、ちょっとすみません。」
はやての端末が鳴りだし、はやては相手に軽く会釈し席を外して端末を確認する。そしてそのまま端末を閉じて
「すみません、お待たせしまして・・それでですね」
確認すると再び会談に戻った。
『なのはちゃん、ヴィヴィオ本局に着いたみたいや』
『うん、ありがとう。私もちょっとお願いしておいたから。』
はやては念話が終わると『なのはちゃんも甘いな~』と会談の最中にもかかわらず思わず笑いそうになった。
本局のポートまで来るとさっき案内してくれた女性局員から教えられた様に
「向こうにいったらこのパスを見せて教えて貰ってね」
近くを通りがかった制服の男性を捕まえた。
「あの・・ポートに行きたいの」
「え?えっと・・パス見せて貰えるかな?」
急に声をかけられて少し驚かせてしまったみたいだが、言われたとおりパスを差し出すと男性は端末を開いて確認する。
「管理外世界への転送許可・・・統括官と人事部からも!?」
男性がこっちを驚いた顔で見ている。
ニコって笑い返すとぎこちなく笑ってくれた。ちょっと嬉しい
「えっと、あの通路を真っ直ぐ進んでそこを右に曲がって・・右ってわかる?」
ブンブンと首を振る。
少し考えて、男性はメモを取り出し1枚破いて簡単な地図を作ってくれた。
「今いるのはここだから、ここをこっちにいってここを曲がったあたりで一緒の制服を着た人に『メインポートへ行きたい』って言ってね」
「うん、ありがとうございます」
礼を言って再び言われた通りの通路へ駆けだした。
しかし、走っている途中でどこにいるのか判らなくなってしまった。慌てて元の場所に戻ろうとするが、全然違う場所に来てしまう。どことなく風景も違っている。
いつもなら泣いてしまいそうなところだが、ふとティアナの少し悲しそうな顔を思いだして走り出した。
「あのっ『メインポート』に行きたいの」
目の前の通路を誰かが通り過ぎた。慌てて後ろから追いついて女性に声をかけた。制服っぽい服だが先程の人とはかなり違う。でも、周りに他に誰も居ないから仕方がない。
「メインポート?ねえパス見せて貰えるかな?」
「はい」
パスを受け取ると先程の男性とはちょっと違った反応があった
「統括官の許可?管理外世界へ??もしかして・・・ねぇお嬢ちゃんお名前教えてくれるかな?」
「高町ヴィヴィオ!」
答えると興味深そうに顔を覗き込んでくる。なんとなくシャーリーさんみたいな感じ
「ねぇねぇっ!もしかして、ママは高町なのは一等空尉?」
頷くとキャーキャーと2人で手を取りあって嬉しそうに喜んだ。
なにがそんなに嬉しいのだろう?
「ねぇヴィヴィオちゃん。お姉ちゃん達がメインポートまで送ってあげるから先に一緒に来て貰えないかな?」
急いでいるが、迷うより連れて行って貰えた方が早いかもしれない
「急いでるから・・ちょっとだけならいいよ」
-同じ頃-
『遅いな・・・そろそろ海鳴に着いても言い頃なのに・・』
はやては時計を見ながらヴィヴィオの移動履歴を見つめていた。本局ポートへ入った後数回アクセスがあったみたいだが、その後暫く応答が無い
先程から何度もなのはから『今どの辺り?』と心配する念話が届いている。
流石に少し気になったはやてはヴィヴィオのパスコードを入れて何かあったか確認しようとした。
「えっ!!これはやり過ぎちゃう?」
そこには自分たち以外にも心配している女性が居た様で、直接許可だけでなくメインポートまでの護衛任務まで入っていた。
『親バカ・・・というより楽しんでるんとちゃう??でも、ここまでやってくれたらウチに出来ることをしようか・・・』
ここまで娘や孫には甘くなるのかと半ば呆れつつも、はやても便乗して出来ることをしようと考えた。
暫く経って
「ここがメインポートよ、向こうにいるお兄さんにパスを見せれば大丈夫だから」
「うん、ありがとう。おねーちゃん」
「またね、バイバイ♪」
「バイバイ♪」
連れてきてくれたお姉さん達に手を振って別れると部屋の方へ歩き出した。少し空いていたお腹も一杯食べられて、心細かった気持ちもどこかに飛んでいってしまっていた。
地上本部で見た物とよく似た機械がある。
「ここに何か?」
こっちに気付いた男性が歩いてくる。リュックの中のカードを見せて
「お願いします」
「確認します。・・・・第97管理外世界、ポイントはどの辺りが希望ですか?」
ポイント?初めて聞く言葉に慌てる。
「現在ポイントは305箇所あります。希望ポイントを教えてください。」
しかし、男性の声は無表情に何かを答えるのを待っている。何か言わないと行けないのは判ってても、何を言えばいいのか判らない。どうすればいいのか迷っていると突然男性の声が変わった。
「申請更新、第97管理外世界、ポイント日本ー海鳴市ーTK208確認ました。こちらにどうぞ」
パスを返して貰い男性の後をついていくと幾つかあった機械の中で目の前の物だけ色が変わった。
「帰還時は同じ場所で『帰還申請』と言って下さい。それではお気をつけて」
「うん、ありがとう」
迷うことなく色の変わった扉の中に飛び込んでいった。
「全く・・・みんな揃って何をやっているんだか・・ヴィヴィオに行かせるなら細部まで指示を出さなくてどうする。しかし試験運用中とは言え、応用力がなさ過ぎる。開発部にクレームを入れておくか」
同じ頃、とある戦艦の中で1人の提督が端末を見つめながらため息をついていた。
飛び込んだ後一瞬浮いたような感じがしたかと思えば今度は落ちる様な感じがして慌てた。
【バタン】
「ニャァッ」
「いたい・・・」
慌てた時にバランスを崩してしまったらしい。お尻をさすっていると周りには見慣れない動物かいた。しかもいっぱい。興味深そうにみんなこっちを見ている。
その中の1匹が近づいてきて指をなめた。
「ニャーっ」
頭を触るとフワフワしていてぬいぐるみみたいだ、触ると気持ちいいらしく目を細めてすり寄ってくる。思わず抱きあげてみると更に目を細めて気持ちよさそうにしている。
「あっ、アリサちゃーん、こっちにいたよ~っ」
いきなり近くのドアがカチャっと開き、女性がヴィヴィオの姿を見てから声をあげた。
「ヴィヴィオちゃんだよね?ネコちゃん好き?」
見ず知らずの人に名前を言われて少し驚きつつもコクンと頷いた。この動物はネコと言うらしい
「私、月村鈴香。なのはちゃんのお友達」
「なのはママの?」
「そう、ヴィヴィオちゃんがこっちに来るのを待ってたんだよ。あっこっちこっち」
部屋の外から足音が近づいてくる。
「もしもしなのは?うん、今こっちに来たみたい。桃子さんからの荷物渡せば良いのね?うん、ちゃんと持ってきてるって。・・・わかったから、親友と娘を少しは信用しなさいって・・ああちょっと待ってね」
もう1人金髪の女性が入ってきて耳もとに当てていた箱をヴィヴィオの耳元につけた。
「?これ?」
何かを聞こうとした時、箱の向こう側から声が聞こえた
『もしもし?ヴィヴィオ?』
「なのはママ~」
『良かった、ちゃんと着いたんだね。あのね、あと少しでスバルとティアナの練習が始まるの。だから急いで戻ってきて。メインポートに着いたら、待ってる人が居るから。』
「うん!」
『じゃぁアリサちゃんに代わってって』
「かわってだって」
まだ名前を聞いていなかったがなんとなく箱を持っている人だと思い言うと、女性はヴィヴィオに当てていた箱を再び耳元にあてる
「うん、じゃあ次の休暇に帰ってくるのね。わかった、待ってるからフェイトやはやてにもよろしく」
ピッっという音がしたかと思うとポケットにしまい、顔を近づけてじ~っと見つめる。
「本当になのはの娘?全然似てないんだけど」
鈴香が苦笑しながら
「アリサちゃん当たり前だよ。だって・・・」
「あ、そうか。」
「それよりアリサちゃん、急がないと」
「あ、そうだった。ヴィヴィオ、これ桃子さん・・え~っとなのはママのママから預かってきてる物。ティアナさんのって言えば判るって・・判る?」
昨夜なのはとはやての会話を聞いているし、そもそもこれを持って帰る為にここまで来たのだから力強く頷く。アリサから渡された荷物をリュックに詰め込む。
「じゃあ急いで戻らないと。なのはちゃんと一緒にまた遊びにきてね」
「うん!ありがとう。鈴香さんアリサさん・・」
ピョコっと頭を下げた後、メインポートで出会った人に教えられた様に『帰還申請』と呟くと魔法陣が現れ消えてしまった。
「でも、紹介してないのに名前覚えたみたいね。結構頭が良いのかも」
「あれ・・・もしかして・・・」
「どうしたの鈴香?」
「うん、もしかするとね・・・」
メインポートに戻ってくると、待ちかまえた様に1人の少女が待っていた。
「アルフ!?」
「やっと戻ってきた。ヴィヴィオ速く速くっ!」
アルフは体に似合わずひょいと抱きかかえると問答無用に走り出す。一瞬でスピードが上がる。スバルのウィングロードとは違って壁スレスレだったりちょっと怖かった。
「ヴィヴィオっ、喋ると舌噛むからしっかり聞け、地上本部に戻ったら出たところにスバルが待ってるっ!あとは六課までスバルと一緒に行けっ」
うんと言いかけたが、本当に舌を噛みそうになったので頷いて答えた。あれほど迷った地上本部へのポートにあっさりと着くと、アルフはヴィヴィオを降ろして一言
「頑張れ!」
「うん!」
ポート中に入っていった。
「あっ、本局ポートに転送したみたい。あともう少しっ」
『はやてちゃん、レスキューの方が来られました』
『了解、今行くから応接室に通して』
『わかりましたです』
はやては端末を閉じてリインに答えると
「さて・・あと1時間・・・どこまで伸ばせるか勝負っ!!」
「あれ?スバルは?朝練終わってから見つからないんだけど。今日って特別救助隊の人が視察に来るんじゃなかったっけ?」
「そういえば・・・」
「どこに行ったんでしょうか?」
「ったく、こんな時でも心配させるんだからっ!」
「僕たち探してきます。もしすれ違いになっちゃうと困るのでティアナさんはここに残って貰えますか?」
「お願い」
探されている事を本人もまだ知らなかった。
「あっ、来た来たっヴィヴィオ~っ、こっちこっち」
地上本部から出たところに立っていたのはスバルだった。警備員の人と何かを話していたみたいだが、こっちに気付くと手を振ってくれてた。急いでスバルの所に駆け寄る。
「ヴィヴィオ、それで荷物はちゃんと預かってきた?」
「うん、リュックにっ。スバルさん今日こっちに来て良かったの?」
スバルは頬を掻きながら
「あんまり良くないけど、ティアナの方が大切だしね。んじゃ急いで戻ろうか。マッハキャリバー」
<
ナックルを待機状態にしてバリアジャケット姿に変わった。ちょっと格好いい。見とれていると背を向けしゃがんで
「ヴィヴィオ、捕まって」
言われたとおりに背に飛び乗ると
「じゃあ、行くよっ。ウィングロードっ!」
「え?わっ!!」
なのはから人がいっぱい居るところでは魔法使っちゃダメだよ。と教えられていたがスバルは思いっきり街中で使っていた。
「魔法使って良いの?」
「なに~聞こえない~っ?」
凄まじい速さで景色が流れていく中、聞くが風に邪魔されて聞こえないみたいだ。もっと大きな声で
「魔法つかっていいのっ?」
「多分大丈夫っ!八神部隊長が迎えに行けって言ってくれたからっ、一気に行くよ~っセカンドっ」
<
更に加速して見る見る間に都市部から郊外へと飛び出していた。
その頃機動六課管制室では
「あれ?この魔力値なんだろ?こっちにドンドン近づいてるんだけど・・」
「えっと、これね・・・あ・・・」
画面いっぱいにウィングロードとその上を駆けるスバルの姿が映っていた。
オフィスで報告を聞いたティアナとなのはは一瞬呆然となったが即座に突っ込みを入れていた。
「ええっ!スバルがクラナガンからウィングロード使ってこっちに戻ってきてるっ!?どうしてあっちにっていうよりあの馬鹿っ、今日が大事な日だって言うの忘れてるんじゃないのっ!」
「もしかしてヴィヴィオを迎えに・・グリフィス君、市街地での魔法使用許可は?」
『確認できていません。』
「はやてちゃんに連絡・・・って今レスキューの人と話し中か・・・」
『このままでは無許可魔法使用につき処罰対象になりますので、先程緊急措置で魔法使用許可は申請しました。だた、名目は・・・』
「うん、ありがとう。はやてちゃんと後で相談する」
『了解しました』
なのははグリフィス機転に感謝しつつも頭を抱え込んだ。
「キャロ、エリオっ」
「ティアナさんっ、さっき・・」
「私も聞いた。でも今スバルの次の仕事先の人が来てるから、もし話している人が居たら口外しない様に言っておいて、私はスバルのとこ言ってくるからっ!」
「はいっ!」
まさか機動六課でそんな騒ぎになっているとも知らずにスバルは一直線に機動六課へ向かっていた。
「ヴィヴィオ、もうすぐ着くからね」
「うんっ♪」
やがて、隊舎が遠くに見えて来たところでウィングロードを消して地上に降り立った。隊舎の方から誰かが走ってくる。
「ティアナだっ、お~い!」
まだ影だけで誰か判らなかったが、スバルには見えているらしくスバルを真似て手を振った。
「スーバールーっ!」
「只今~ティア、ちゃんと間に合ったで・・」
【ドゴッ】
走ってきたティアナがスピードを緩めずにスバルめがけて思いっきり蹴りを入れた。吹き飛ばされるスバル
かなり痛そうな音が聞こえて思わず目を瞑る。
「っ・・ててっ、何するんだよ、ティアっ!」
蹴られた所をさすりながら怒って起き上がるが、そこにはそれ以上に怒ったティアナの姿があった。
「あんた、今日がどれだけ大事な日か判ってるんでしょ。なのに許可無しで魔法使ったりしてどうするつもりだったのよっ!」
再びスバルに向けて手を挙げようとするティアナ、それを見て思わずその腕に飛びつく
「ちょっとヴィヴィオ邪魔しないで」
「スバルさん悪くない、ヴィヴィオを迎えにきたの。遅くなったのはヴィヴィオのせいなの」
それを聞いて少し落ち着きを取り戻したのか、振り上げた手を下ろした。
「ヴィヴィオを迎えに?なんでヴィヴィオがクラナガンにいるのよ?」
全然話が見えていないらしい。リュックからある荷物を取り出してスバルに渡した。
「私から?いいのヴィヴィオ?」
「1番のお友達からの方がいいから」
「うん、ありがとうヴィヴィオ」
そう言うとスバルは立ち上がり手渡された荷物をティアナに渡した。
「なによこれ・・・ウソっ・・これは昨日・・」
ティアナは紙袋の中にあった物を見つめ硬直した。
「ティアナ、ゴメンねお母さんが一緒に作っていたのを間違えて渡しちゃったんだって、それでヴィヴィオがティアナが作った方を取りに行っていたの。お母さん言ってたよ、「一生懸命作ったんだから食べる資格のあるのは1人だけだって」」
「・・・・・」
無言のティアナを見つめ、後ろから聞こえた声に振り向いてそのまま走っていく。手を広げて抱き寄せるなのは
「ママ・・ごめんなさい。勝手にお外にでて」
「ヴィヴィオ、ママとっても心配したんだからね。でも、ありがとう」
帰れば絶対怒られると思っていた。でもそれ以上に心配してくれていた。
「じゃあ戻ろうか、お昼食べてないよね?一緒に食べよ。スバル・ティアナ模擬戦の準備先に初めておいてくれるかな?」
「了解」
スバルが答えたのを見てなのはの笑みがこっちに向いた。
「うん」
暖かい手を繋いで戻る時、なんだか凄く嬉しかった。
-Fin-
【作戦無事完了、ありがとうございます。 byはやて】
その文字を見たある者は少し微笑んで、目の前にいる同僚とお茶で乾杯していた。
その文字を見たある者はふぅ~とため息をつきながらも子供達が泣きだしたのを見て早く帰って来ないかなと思い馳せていた。
その文字を見たある者は慌ただしい任務の中で、一瞬だけ頬が揺るんだ。
その文字を見たある者は端末を取りだし親友の友人と母親に伝えた。
そして、その文字を見たある者は全員に伝えられた事とはやく親友と子供達が待つ場所に戻りたいなと思っていた。
「ヴァイス陸曹、何か甘い物食べました?」
「ん?どうして?」
「いえ、口元から甘い香りがしていたのでつい・・」
「まぁな♪」
「ずるーい、私も欲しいです。」
「いや、これはちょっとな」
ヴァイスは目の前でせがむ部下をどうやって言いくるめるか考えつつ、今始まっている模擬戦は上手く出来るだろうと確信していた。
「これでみんなわかるやろ」
はやての備考欄にある一文を入れた後、はやてはどうするか考えていた。目の前には1匹のネコがソファーに気持ちよさそうに丸くなっている。
「あとは・・スバルの魔法使用と・・にゃんこの世話かな・・ネコ缶なんて売ってるんか??」
ヴィヴィオが急いで戻ってきたとき、抱いていたネコがリュックの中に入っていた。
昼食を食べに行くと荷物を出したはずのリュックが少し重いのに気付いて、なのはとヴィヴィオが中を覗いてみると幸せそうに眠っていたらしい。
近くなのは達が海鳴に行く際に一緒に連れて行って貰う予定だ。それまで八神家で世話をする事にしたのだが・・こっちの世界にネコ缶は売っている筈もなくどうしようか考えあぐねていた。
「ヴィータに世話させればいいか」
「は~いなのはちゃん、元気?」
「お久しぶりです、エイミイさん。どうかしましたか?」
「あのね、なのはちゃんって●●●なの??」
「ええっ、誰がそんなことを!?」
「本局で今噂になってるよ」
「ええ~っ!!」
知らぬは本人ばかりなりと言うことで張本人は既に夢の中に旅立っていた
~~~コメント~~~~
なのはの娘を肩書きに持つ少女ヴィヴィオ、ある意味印籠より凶悪。「初めてのおつかいをする黄門様」みたいな感じになりましたが、結局周りは放っておいてくれる筈ありません。
「パニック」というより「ぱにっく」ぽくなっていれば嬉しいです。
皆様のはじめてのおつかいはどうでしたか?私は買いに行った物とそれ以上にお菓子を買って持って帰ったそうです。そんな話をすると静奈さんは「千円渡されて【豆腐】を千円分買ってきた」そうです。
Comments
私の始めてのお使いは記憶に在りません、多分近くにあった駄菓子屋ではないかと思います。
此れからも頑張って下さい応援してます。