04話 ちぇんじ

「う~ん」

 ある朝、訓練準備の当番に当たっていたエリオとティアナが時間を気にしながら隊舎の方を見つめていた。そんな時、スバルが隊舎から走ってくるのが見えた。

「おはよ~ティア、エリオ・・・どうしたの?」
「スバルさん、キャロ見かけませんでした」
「ん~ん、見てないけど・・一緒じゃないの?」
 エリオとキャロが同じ部屋で寝ているのはスバルもティアナも知っている。

「今日、私達が当番だったから」
「念話も届いてないみたいなんです。朝、キャロに声をかけて来たんですがもしかすると・・・すみません、ちょっと見てきます」

 スバルも見ていないとすると、まだベッドで眠っているのかも・・そう思ったエリオは慌てて迎えに向かった。
 普段は優しいなのはやフェイト達でも規律には厳しい。もし寝過ごして遅刻などと聞いたら・・・考えただけで恐ろしい。

「キャロ~っ!中にいる?入るよ」

 ドンドンとドアと叩いてみたが全く反応が無い。いや、少しだけ中から「キュゥン」と声が聞こえた。中に入ったエリオが見た物は

「・・・静かにして~」

 シーツの中からフリードに手が伸びて、有無を言わせずに引きずり込んだ。

「やっぱり・・・キャロ~っ!」

 完璧に夢の中にいるらしく大声で呼んでも起きるそぶりはなかった。昨夜ゴソゴソと何かしていた様な気がする。
 だが、そう言ってられる時間も無いので慌てて熟睡しているキャロの体を揺すった。

「キャロ~、起きて。朝練遅刻するよ。もうみんな来てるよ~」
「・・・う~・・フリード・・静かにして~」

 再びシーツの中から手が伸びて、エリオの手を掴み・・驚く程の強さで引っ張り込んだ。

「わっ!キャロ~・・・頼むから起きて~」

 起きているんじゃないのか?と疑りたくなる程の勢いで抱きつかれる。

『エリオ~キャロ見つかった?もうなのはさん待ってるよ~』
『すみません。すぐに行きます』

 スバルからの念話が届く。もう本当に時間が無い

「キャロ、キャロってば!!」

 かなり大声でキャロを呼ぶとむにゃと言う具合に半分虚ろに瞳が開き

「お兄ちゃん~」

 と抱きついてきた。キャロの顔が目の間に近づいたのに驚いてエリオは飛び起きる。シーツがめくり上がりあまりの勢いにベッドがらドンッと落ちてしまった。

「イタタタ・・」

 頭をさすっているとモゾモゾとシーツが動きキャロが起きた。

「おはようお兄ちゃん。どうしたの?」
「キャロ、おはよう~じゃなくて!急いで準備して・・・って・・エエ~ッ」

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「それで・・遅刻しちゃったと・・」
「す・・すみません」

 とにかく朝練に連れて行こうと思い着替えて行こうと言えば、その場で服を脱ぎだし慌てて止めたり、着替え終わったらそのまま手を取って向かおうとすると

「お腹すいた・・朝ご飯・・・」

 猛スピードで朝食を少し分けて貰ってそのままキャロに食べさせ、これで行けると思ったら

「ちょっと待ってて・・」

と10分ほど待たされたあげく、ようやく訓練場に連れてこれた訳である。
 最初、なのははキャロとエリオに注意しようとしたのだが、余りにも疲れ切ったエリオの姿とそのエリオの腕に嬉しそうに抱きついているキャロを見て言う気が失せた。
何があったか分からないが、訓練を始めれば元に戻るだろう。そう思って

「じゃあみんな、ちょっと遅くなったけど始めようか。今日は先に個別練習からだね」
「「「了解」」」

 返事が足りない?返事の無かったキャロに

「キャロ、訓練始めるからエリオから離れて」
「ヤダっ、お兄ちゃんと一緒がいいっ」

と言うとさらにくっつく。


その瞬間辺りの空気が凍りついた。
 その場にいたティアナとスバル・エリオが一瞬で青ざめるほどなのはの笑みは怖かった。

「そうなんだ・・・キャロ・・もう一度いうよ。エリオから離れて・・くれないかな」

 エリオ達は何故か震えが止まらない。そんなエリオを見てキャロがトドメをさす一言を呟いた。

「お兄ちゃん。このオバサン怖いの?」

 キャロの口走った言葉を遮る余裕もなく

【プチッ】

 何かが近くで切れる音がした。何を音かはわかった。しかし3人の本能が鳴った方を向く事を拒否していた。それでもなんとか油が切れた機械の様にギギギッっと振り向くと

 見たくなかった。見たことも忘れたいくらいの光景が広がっていた。

「ねぇキャロ、少し私とおはなししよっか?エリオも一緒に・・いいよね」

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「あ~死ぬかと思った。」
「あんなの命いくつあっても足りないわよ。」
「すみません・・・・もう少し早く言っていれば・・・」

【ある事情】で朝練が早く終わった後、スバルとティアナ・エリオは朝食を取っていた。
 3人の表情には1週間分位の訓練を続けてしたかと思うほど疲れがくっきりと現れている。

「キャロを連れて行けばなのはさんも気付いてくれると思っていたんですが・・」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

「ねぇキャロ、少し私とおはなししよっか?エリオも一緒に・・いいよね」

 笑顔でエリオとキャロを『追い詰めていた』ところへ、少し遅れてフェイトが走ってきた

「ゴメン、なのはっ少し遅れた」
「あっ!フェイトママおはようございます」
「えっ、あっおはようキャロ・・・・・!?」
「フェイトちゃん、今エリオとキャロとお話ししてる最中だからちょっと待って貰えるかな?」

 他の者達が震え上がりそうななのはの声だったが、フェイトはそんな事を気にも留めずにキャロに駆け寄る。

「キャロ・・・あなたまさか・・・エリオっ」
「・・・・」
「エリオっ!」
「・・!はいっ。フェイトさん・・そうなんです・・・」
「どうしたの?フェイトママ」

 その時になってやっとキャロの様子がおかしいとなのは達も気付いた。

「キャロ・・もしかして・・あの時のキャロなの?」
「「「!!!」」」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

「それで、今シャマル先生に看て貰ってるんですけど」
「キャロもしかして元に戻ったんじゃな」
【ザクッ】

 スバルが言い終わる前にティアナはさりげなく腕に刺し、片方の手で口を塞いだ。

「!!$&%?!」

 思わず飛び上がりそうになるが、ティアナはしっかり足まで踏んでそれも許さなかった。

『スバル!何度も言わせないで、エリオを余計心配させてどーすんの!』
『あ・・』
『色々あるんだからそれくらい気づきなさいよ』
『うん・・・ゴメン』

 スバルとティアナがガジェット・ドローンが出てきた時、エリオとフェイトが魔法が使えなかったキャロを必死に守ろうとしたことは後から聞かされた。
 エリオとフリードはフェイトが戻ってくる前に倒れていて、更にフェイトも落とされたかも知れないと聞いた時、何となくエリオ達が庇ってキャロを助けたのだと想像がつく。

「どうしたんです?スバルさん、ティアナさん?」
「ううん、何でもない。こっちの話」
「そうそう。それで、エリオ・・昨日は【いつものキャロ】だったのよね?」
「特に何か変わった事は・・・あっ!」

 言いかけた時、エリオが横になった後キャロが何かをしていたのを思い出した。
 もしかして・・と思いつつそのまま医務室へと走り出す。

「ちょ、ちょっと!エリオっ!」

 何か言いかけた途端に立ち上がり駆けだしていったエリオに残された2人は呆気にとられていた。



「失礼しますっ、キャロ・・昨日夜にっ」
「「・・・・・」」

 エリオが慌てて医務室に駆け込む、が目の前の光景を見て硬直した。

「あ・・あの・・・」

 下着姿のキャロとキャロを看ているシャマル、そしてその様子を見ているなのはとフェイトの視線が全てエリオに注がれる。

「「「「・・・・・」」」」
「あの・・・」
「「「「・・・・」」」」

 重苦しい空気が辺りを包み込む。キャロがさりげなく手元の服を引き寄せる。

「えっと・・エリオ、ちょっとだけ外で待っててくれるかな?」
「すみませんっ!」

 シャマルの言葉に即座に反応にして駆け込んだときよりも素早く外に飛び出していた。

「もう入ってきて良いわよ」
「失礼します」

 その後暫く経ってからシャマルの声が聞こえ再び医務室に入った。キャロも既に服を着ている。

「すみません。」
「私達もロックするの忘れてたから気にしないで良いよエリオ、キャロもいいよね?」
「・・はい、エリオ君・・私こそ驚かせてごめん」
「ううん・・」

 少しキャロの頬が赤い・・そんな風に思っていると何か違和感を感じた。

『あれ??・・・キャロ・・今・・僕の事「エリオ君」って?』

 医務室に入った時の反応も変だった。あっちのキャロなら多分「お兄ちゃん♪」声をかけただろう。しかしさっきのキャロは・・・もしかして、と思わず考えていた言葉がエリオの口からもれていた。

「もしかして・・キャロが入れ替わった・・魔法?」

キャロがビクッっと肩を震わせる。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

『ねぇ、キャロ起きてる?』
『ん~どうしたの?』

 ある夜、キャロは隣で眠っているエリオが熟睡したのを見てからもう一人のキャロへ念話を送った。
 ユニゾンデバイスの様に同化した2人が話すのは心の中で呟けば相手に聞こえるのだが、キャロはそれより直接話すイメージがある念話を好んで使っていた。

『私だけ外に出ちゃってていいのかな?』
『本当だったらあの時消えちゃってたのに、今もフェイトママはお兄ちゃんと一緒だから私は嬉しいけど、どうして?』
『キャロ、もしね・・もし、私と時々交代してみない?』
『出られるのは嬉しいよ。でも、キャロいいの?』
『うん、私もキャロにもっと楽しんでほしいから』
『うん、ありがと。キャロ』

 翌日、朝練が終わってからキャロは部隊長室へ向かっていた。
 同化を隠しているのが少し気になったが、ユニゾンについてはよく知る2人に聞いた方が良いだろうという結論だった。

「失礼します」
「どうぞ~ん?キャロ、珍しいな1人でどうかした?」
「キャロ?」

 はやての声にリインフォースも奥からひょいと顔を出す。

「あの・・・お二人に少し教えて貰いたいことが・・」
「「?」」

 珍客からの変わったお願いにはやてとリインは同時に首を傾げた。


「・・・という訳なんですが・・」
「説明はやっ!」
「ふぇ~そんな事あるんですね~」

 リインは即座に突っ込みを入れる主を置いておいて、驚きを通り越して感嘆の声をあげた。
 キャロの中にいる感染型ロストロギアが人格を持ったキャロで、2人のキャロはユニゾンに近い同化をしていて、キャロが起きている時ももう1人のキャロは中でその光景を見ているらしい。
 ロストロギアでもかなり珍しい感染タイプだったが・・・こういう事も起きるのだと感心していた。

「それで、キャロはもう1人のキャロ・・・ややこしいな~これ、中のキャロと何で入れ替わりたいの?入れ替わる方法やないけど、リインみたいなユニゾンデバイスは相性が悪かったり意思疎通出来てなかったら【暴走】して主の人格をデバイスが追いやる事もあるけど・・みたところ2人とも相性バッチリみたいやし、暴走は無いやろ?」

 はやても過去にデバイスに取り込まれた事があるし、何より同じ様な事故を起こしてフェイト達を悲しませたく無かった。だが

「私だけエリオ君やフェイトさん・みんなと一緒にいて、キャロはそれを見ているだけしか出来ないのって悲しいです。キャロも一緒に遊んだり一緒にご飯食べたりして一緒でも楽しんで欲しいんです。」

 隣のリインも気持ちがわかったらしく

「2人が幸せが一番です。はやてちゃん・・・」

 キャロとリインのつぶらな瞳が何かを投げかけてくる。しかしはやてにはキャロが記憶を失った時見たフェイトの悲しむ顔を思い出してならなかった。
却下と切り捨てても良かったがキャロの優しさを守ってあげたい気持ちもあり・・・

「あ~もう!!リイン手の空いた時間に手伝ったって。」

 キャロとリインの顔に笑みが浮かぶ

「それって!!」
「うん、でもなキャロ無理だけは絶対しないこと。エリオやフェイトちゃんを悲しませたらあかんよ。これが条件な。」
「はいっ!」

 その後キャロとリインはみんなに内緒にしながら新たなプログラムを作り始めた。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

「もしかして・・キャロが入れ替わった・・魔法?」

その言葉にビクっと反応した。

「エリオ君・・・あのね・・・」

 キャロは説明するより実際に見て貰おうとその場に魔法陣を作り出す。何事も無く魔法陣が消えた後

「お兄ちゃん~♪」

 キャロが突然エリオに抱きついてきた。

「えっ・・ええっ!!キャロなんですか?」

 戸惑いながら苦笑いしているなのはとフェイトに問いかけると

「そうみたい・・私達もさっき教えて貰って驚いたところなんだ。」
「もう、こんな大切なこと隠してるなんてはやてちゃんも酷いよね」
「あっ!そうね、キャロちゃんの方はまだ色々判らないこと多いから、時々ここに来て貰って・・・後は訓練と任務の時にキャロに代わってくれれば問題無いと思うんだけど。どうかな?なのはちゃんフェイトちゃん」

 さりげなくはやてに怒りの矛先が行かぬ様フォローするシャマル

「それなら・・・」
「私もそれで」
「エリオは?」

 キャロに抱きつかれた格好でエリオは心のどこかで嬉しい気持ちもあったのかも知れない。


~~~~コメント~~~~
少し間隔が開いてしまいました。ごめんなさい。
前回の続きと言うことで「アフター04話」です。
今回はその中でNGバージョンがいくつか生まれていました。
キャロとキャロをどうやって入れ替えたら判りやすいかと試行錯誤した中で話的に進んだストーリーをNGバージョンとして紹介します。

*******NGバージョン********
~キャロを起こしに行って戻ってきたエリオのシーンより~

 なんとかキャロを連れてなのは達の所に戻ってきたエリオだった。
 その疲れ切った姿を見て注意しようとしたなのはも言う気が失せた。

「じゃあちょっと遅くなったけど始めようか。今日は個別練習から」
「「「了解」」」

 返事が足りない。声が聞こえなかったキャロの方を見ると嬉しそうにエリオに抱きついている

「キャロ、訓練始めるからエリオから離れて」
「ヤダっ、お兄ちゃんと一緒がいいっ」

と言うとさらにくっつく。

その瞬間辺りの空気が凍りついた。

 その場にいたティアナとスバル・エリオが一瞬で青ざめるほどなのはの笑みは怖かった。

「そうなんだ・・・キャロ・・もう一度いうよ。エリオから離れて練習するよ」

「ヤ・ダ!」
【ブチッ】


 翌朝、一緒に目覚めたキャロはエリオに聞いた

「ねえエリオ君、昨日朝練で何かあったの?キャロが凄く怖がってるんだけど」
「・・・・世の中には知らないことが幸せってあると思うんだ・・・」
 ただ一言呟いたエリオの言葉が全てを物語っていたのかも知れない。

NGの理由:
 オチとしては良いかなと思ったのですが、このパターンはヴィヴィオの日記帳のパターンなのと、少しだけ前回までの話と違う所が出来てしまったので取りやめました。

Comments

錯乱坊
キャロⅡのおばさん発言背筋が寒くなりました。
エリオ、キャロⅡの一般情操教育頑張ってして下さい。
久々の更新お待ちしておりました。暫く更新が無かったのでパソコンでもクラッシュしたかと思いました。
此れからも頑張って下さい。
2008/05/16 01:44 PM

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