05話 「=(いーぶん)」
- キャロSS 守りたいものはありますか? > サブストーリー
- by ima
- 2008.05.21 Wednesday 16:28
ある日、八神はやてはリインと一緒に昼食を取りに来た時、先に食べているシャーリーとバッタリと出会った。
「お疲れ様です。八神部隊長」
「おつかれさん~シャーリー隣いい?」
「はい」
3人が仕事の話や雑談をしながら話している時、シャーリーからある事を聞く。
「部隊長、キャロとえ~っと六課で預かってる女の子・・何て言ったかな?」
「キャリアの事?」
「お疲れ様です。八神部隊長」
「おつかれさん~シャーリー隣いい?」
「はい」
3人が仕事の話や雑談をしながら話している時、シャーリーからある事を聞く。
「部隊長、キャロとえ~っと六課で預かってる女の子・・何て言ったかな?」
「キャリアの事?」
「そう、そのキャリアちゃんとキャロがエリオと三角関係らしいんですよ」
一瞬何の事?と思ったが三角関係とは・・思わず呟く
「へぇ~キャロってどっちでもOKなんやね♪」
はやてが呟いた瞬間、シャーリーとリインが思わず突っ伏していた。
「部隊長!!」
「はやてちゃん!!」
少しボケてみただけだったのだがどうも冗談は通じないらしい。
「ゴメンゴメン、普通に考えればエリオを巡って・・・ってとこやろ?」
「それでですね、この前夜遅く戻ってきたらエリオがキャロの部屋の前で寝ていたんですよ。」
今度はピンときた!
「ズバリ、キャロに部屋から閉め出された!!」
「通りかかったら起きたので、どうしたのかと聞いてもはぐらかされましたが・・・多分」
「エリオよく風邪ひきませんでしたね~」
心配するリインに更にシャーリーがウフフフと笑みを浮かべながら答える。
「実はその後キャリアが前を通ったらしくて、廊下で寝ているエリオを自室に招いて一緒に寝たみたいなんです。流石に同じベッドではなかったみたいですが・・」
ん??何かがはやての中でひっかかった。
「更に、翌朝廊下で寝ている筈のエリオが消えていて探したキャロにキャリアの部屋から出てくるエリオが鉢合わせしちゃって・・・」
ん?あれ?シャーリーの言葉に更に疑問が増えていく。
「その後キャロの機嫌が悪くなってエリオが凄く悩んだらしいんです。」
はやては一通りシャーリーの話を聞き終えた後、確信を持った。
「なぁシャーリー、なんかずーっと見てた様な話やね」
「ええ、それはもう。キャロの部屋とキャリアの部屋の前にスフィア置いて常時監視してますから・・・」
予想通り。隣のリインもあきれ顔だ。こっちの世界でも盗聴は犯罪である。
「シャーリー・・・そろそろええ加減にやめといた方がええよ。次見つけたら流石にうちでも減俸処分は出さんとあかん。今回は騒動が大きくなる前に判ったからええけど、気をつけてな」
一言釘を刺すとシュンと落ち込むシャーリーだったが、多分また同じ事をするだろうと思い、直接の上司であるフェイトにも話しておこうと心の中で決めた。
部屋に戻って仕事の続きをしている時、ふとさっき聞いた話を思い浮かべる
「キャロとキャリアとエリオか~。リインはどう思う?」
海鳴にいた頃、中の良かった異性の友達は何人かいた。しかし管理局の任務を優先していたはやて達は遅刻・早退・欠席は頻繁でそれ以上の関係に進む事は無かった。
もしかしたら海鳴にいるアリサや鈴香はそういう相手がいたのかも知れない。
はやて自身やなのは・フェイトも周りの大人と一緒に任務をこなす事で男っ気が少なかった。
なのははかなりニブいからそういう事も感じていなかったかも知れないと本人が聞くと怒られそうな事を考えていた。
「そうですね~3人とも同じ年頃の子供と滅多に会えなかったから戸惑ってるだけじゃないです?」
ほぼ同年齢のリインの意見に思わず納得する。
そういう風にも考えられる
「でも、エリオ・・結構精神的に撃たれ弱いところあるしな~」
「そうですね~時々キャロに振り回されてますね。」
リインも見るところはしっかり見ている。
エリオにはもっと度胸をつけて貰いたいと思いつつ、キャリアも含めて3人とも距離がつかめていないのかも知れない。
『せめてキャロとエリオの間が少し離れれば・・・』
その時はやての中でピンと閃いて、思い立ったが直ぐに端末に手を伸ばした。
「もしもし、シャーリー。あのなちょっと作って欲しい物あるんやけど・・」
そして翌日、はやては仕事の合間を使いなのは達の部屋でヴィヴィオと遊んでいるキャリアに会いに行った。
「キャリア~ちょっといい?」
「おはようございます。八神部隊長」
「そんなに堅苦しく呼ばんとはやてさんでええよ」
「・・・はやてさん、私に何か?」
少し驚いていたが、直ぐに返してきた。順応性はかなり高いのかも知れない。
「あのな、これ遅くなったけど元気になったお祝いや、受け取ってな」
持ってきた小さな小箱差し出す。
「!!、私そんなの受け取れません。今もお世話になっているのに」
そういう風に答えるのも予想はしていた。
「んじゃ、うちの頼みを代わりにやってもらえる?それならええやろ。あのな・・これは・・・」
最初は首を傾げていたキャリアもはやての話を聞くにつれて興味を惹かれていった。
「エリオ~どこ~?」
「あ、おはようキャリア。どうしたの?」
エリオは突然オフィスにやってきたキャリアに少し驚いた。そんな事も気にせずにキャリアはこっちに向かって走ってきて抱きついた。
「いたいた♪おはよ、エリオ」
「!!」
周りでは何が起きたのかとキョトンと見つめているキャロやメンバー。その視線を気にして
「ちょ・・ちょっと、キャリア。ここオフィスだから・・」
「オフィスじゃ無ければいいの?」
「・・・そういう訳でもないけど・・・」
頬を染めて上目使いで見つめられると流石に言いづらい。周りの視線が痛い。
アタフタとどうしようかと考えているとパッとキャリアが離れた。
「と冗談はこれくらいにして・・・」
からかわれていたらしい。
「エリオの隊長さんってフェイトさんだよね?」
「うん、そうだけど?」
頷くと奥で見ているフェイトに駆け寄ってポケットから何かの紙を取り出して見せた。
紙にははやてからエリオをキャリアの護衛につける指示が書かれている。
「お仕事頼まれたのでエリオ・・エリオ君をお借りしていいですか?」
「・・・う・・うん、いいけど・・」
全く話しについて行けていないフェイトは紙を受け取って頷いた。
それを見てからエリオの手を取り
「じゃあエリオお借りします~行こっ!」
「えっ!?あのっ!・・・行ってきます~」
訳が分からずただただキャリアに引っ張られていくしかなかった。
「・・・・いってらっしゃい・・・」
残された方も何が起きたのか理解出来ぬまま見送った。
「無茶苦茶だよ、キャリア・・・」
ここはクラナガンの店がいくつも集まっている地区。ここに来るまでにエリオはキャリアから仕事の内容を聞いた。
いつも六課の備品を頼んでいる店と連絡が取れないので直接注文書を持って行って欲しいという任務。
彼女が折角元気になったのにほとんど六課の中で過ごしているのを気にしてはやてが気分転換を勧めたのだろう。
キャリアもとても嬉しそうだ。しかし
「あの・・・腕・・・」
こっちに着いてからずっとエリオの腕を抱いている。クスッとこっちを見て笑う人も何人か・・流石に少し恥ずかしい。
「いや?」
「・・・嫌じゃないけど・・」
「じゃあいいよね。このままでも」
キャリアは人の目が気にならないらしい。嬉しそうにギュッっと抱きしめられる。
エリオもまんざら嫌な気分では無かった。しかし、その後ろから気配を消して追いかけている影にはエリオもキャリアも気付く事は無かった。
「キャリアそれで、どこに届けるの?」
「えっと・・ここに、この書類渡せばわかるって」
キャリアが取り出したメモには店名と場所が書かれていた。エリオも聞いたことのある店だが、かなり遠かった筈。
「ここからだと少し遠いよ」
「でもはやてさん近道あるからそこを通ればすぐだって・・あっ、ここのビルを通り抜けて」
どこでどんな風に情報を仕入れたのか?エリオは驚きを通り越してあきれ果てた。
ビルの中を通り抜けるのは当たり前、スタッフ専用の通路を横断してシャトルバスのメンテエリアを通り抜け・ビルの間を飛んで行く。 そしてどこかの企業オフィスを通り抜けた時は
「おや、めずらしいね。はやてちゃん元気にしてるかい?」
とにこやかに声をかけられた時は恥ずかしくて顔が真っ赤になりそうだった。
はやてさんはどうやってこんなルートを見つけたのだろう?心底疑問に思った。
そして、追いかけている方はそれ以上に大変で・・・・
屋上の上で
「えっ!?・・嘘っ、こんな所通るの?」
橋ゲタの下、手すりが全く無い場所で
「こんなの渡れないよ~っ!エリオ君」
エリオ達以上に悪戦苦闘していた。
そして数十分後・・
「到着~!」
「・・・・本当に着いた・・・」
驚きを隠せないエリオ。2人を遠目に見つめつつボロボロになりながら肩で息をしている少女。
「入ろ、エリオ」
そんな事も気にせずにキャリアはエリオの手を取り店の中に入っていった。
「いらっしゃいませー」
「機動六課ですけど、注文表を持ってきました」
「・・・」
「・・・」
エリオは店に入った後のキャリアの受け答えに感嘆した。
同い年の筈なのに聞くべき所や伝える事を店員に対してしっかりしている。エリオ自身であればどうだろう?
そう思えるほどキャリアの受け答えはしっかりしていた。
一通り話し終えると店員の女性は在庫確認をすると言い奥に入っていった。
「ん?エリオどうかした?」
「いや・・・キャリアって・・凄いんだね」
その言葉にポッっと赤くなるキャリア。
「そ・そそっそ・・そんなことないから」
胸を張るかと思っていたら逆に照れたことも新鮮だった。その後先程の店員が在庫表と納品日を書いた紙をキャリアに手渡し、キャリアの仕事は終わった。
「仕事も終わったし六課に戻ろうか」
「ん~、それよりちょっと遊んでいかない?はやてさんにも少し遊んできて良いよってお小遣い貰ってるから。エリオ・・私と一緒じゃイヤ?」
エリオの顔ギリギリまで近づいて上目使いで囁かれる殺し文句である。
「う・・・」
「イヤ?」
「ううん・・」
頷くしか出来なかった。
キャリアはそれを見てコロッと表情変えエリオの腕に抱きついて
「じゃあお買い物~♪」
「ええっ、前にいっぱい買ってたんじゃ」
「見るだけでも楽しいのっ!LetsGo!」
と店が並ぶ方へと向かった。
(エリオ君~っ!仕事終わったら直ぐに帰るんじゃ無いの!?)
2人が店から出てきた後、その後ろを追ってきた少女=キャロは嬉しそうなキャリアとエリオを見て即座に念話を送る。
『エリオ君!』
『・・・・・』
『エリオ君ってば!!』
『・・・・・』
しかしエリオから応答は無い、無視している訳ではなく本当に届いていないらしく何も気付いていない。
(こんなに近くで念話が届かないなんて・・・)
何が起きているのかわからず、考え込んでいるとエリオ達から離されそうになったので慌てて後を追いかけた。
キャリアとエリオはキャロが後ろから追いかけてることにも気付かず色々と見て回っていた。
その間もキャロは時折念話を送るがエリオには届いていない。
(どうして・・・どうして届かないの?)
楽しそうな2人に対してキャロは少し切なくなっていた。
「キャリアそろそろ帰ろう。みんな心配するから・・・」
陽が傾いてきたのを見てエリオが立ち止まった。振り返るキャリア
「みんなが心配か・・・いいな~エリオは心配してくれる人いっぱい居て」
「キャリアもお父さんがいるよ。」
「でも・・私にはお父さんしか居ないよ。エリオみたいに家族みたいな人いっぱい居ないもん」
夕焼けのせいかキャリアがいつになく悲しそうに見える。
「キャリア、僕は・・」
「ゴメンね、エリオ。帰ろうか」
くるっと後ろを向いたキャリア。でもその背中は震えていた。
「僕は作られたから・・キャリアみたいにお父さんもお母さんもいない・・」
言うべきでは無かったかも知れない。でも、キャリアには本当の家族がどれくらい大切なものなのか気付いて欲しかった。驚いて振り向くキャリア
「プロジェクトFate・・それが僕を生み出した技術・・本当はいちゃいけない人間。それが僕・・でも、そんな僕を助けてくれた人が居る。僕はその人を手伝いたいと思ってここに・・六課に居るんだ。」
「Fate・・!もしかして・・」
「・・・・・」
キャリアの問いかけに無言で答える。それを知る必要はないから。
無言の時が続く
「ゴメンね、エリオまで心配させちゃった・・・」
「ううん、僕はいいよ」
キャリアが気付いてくれるかはわからなかった。でも、エリオは彼女が気付く事を信じていた。
「ねぇ、心配ついでに1つだけ聞いていい?」
「何?」
知っていることなら答えようと思っていたが、聞かれたことはエリオの予想していた事を遙かに超えていた。
「私の事、どう思ってる?只の友達なら今の話はしてくれないよね?」
「えっ、あの・・それって」
「じゃあキャロの事どう思ってる?キャロもこの話知ってるよね?」
「ううん・・まだ・・」
まだキャロにもこの話は言っていない。知っているのはフェイト達数人だけ
「それじゃ、もし六課のお仕事終わったら私の家に来ない?」
「!!!」
何をどうすればそう言う話になるんだ?
さっきまで冷静だったエリオの頭が今は完全にパニックに陥っていた。
何て答えたら良いのか全然判らない。その間にもキャリアの顔が近づいている。
キャリアも少し頬が赤い様に見える。
その時
「ダメェーッッ!!」
横から突然飛び出してきた物に突き飛ばされた。いきなりの事で反応出来ず飛ばされるエリオ
「絶対ダメっ!!」
「「キャロ!?」」
倒れたエリオとエリオに駆け寄ったキャリアは突き飛ばした方を見て驚いた。そこにはキャロが立っていた。少し涙ぐんでいる。
「どうして・・六課に居るはずじゃ?」
「もしかして・・・後を追ってきたの?」
「うっ!でもっエリオ君と何度も念話しようとしても全然答えてくれないしっ」
「えっ!?念話?」
キャロからこっちに来てから念話を受け取っていない、というより念話を何も受け取っていなかった。
「それは、これが理由なの。はい。キャロ念話でエリオに話しかけてみて」
キャロの言葉を聞いてキャリアが胸からペンダントを取り出しボタンを押した。
『エリオ君?』
『どうしたの?キャロ』
『ホントだ』
「使えたでしょ?」
頷くキャロとエリオを見て再びボタンを押した。もう一度エリオに念話を送るが今度は届かなかった。
余裕のあるキャリアに対し、何か色々とあったらしくキャロが怒っているのはエリオも見て取れた。
「・・・キャリアそれ・・どうしたの?」
「?はやてさんに貰ったの。このペンダントの近くだと念話が使えないようにできるんだって」
「はやてさんが!?どうしてそんな事を・・」
「だって私念話はわからないし、一緒にいても別の人と話してるのって何か嫌だし。それにキャロが知らないエリオの事・・私知ってるもん♪」
「あ・・・」
「何よそれっ!」
「秘密♪」
キャリアは意図して火に油を注ぐつもりらしい。案の定キャロはそのペンダントを奪いにかかるが少し速くキャリアが身を翻す。
2人のケンカと追いかけっこを眺めつつ、エリオはもうどうとでもしてくれとばかり
「はぁ・・・」
深い深いため息しかつく事が出来なかった。
「はやてちゃん、少し聞いていいですか?」
「どうしたん、リイン?」
「どうしてキャリアちゃんにあの簡易結界用のデバイスを渡したんですか?」
「なのはちゃん・フェイトちゃんは親友やけど、その前はみんな戦った事あるんよ。本当に命がけで。」
「ジュエルシードと闇の書の事件ですか?」
「そうや、あれが無かったらうちら3人ともきっと繋がらへんままやったやろうしな」
「それがあのデバイスと?」
「リイン、まだわからん?」
頷くリインにはやては得意そうに
「雨が降らないなら無理矢理降らせてしまおうって話や。後でじっくり考えてみてな。」
そう言うと遠くでなのはとフェイトがキャロとキャリアの姿をみて
「どうしたの?」と驚いている声が聞こえ、2人の姿を見に部隊長室から出て行った。
「?」
残されたリインは意味がわからず首を傾げるしか無かった。
~~コメント~~
「=(いーぶん)」という言葉の通りエリオを巡った三角関係の第2戦です。キャロとエリオはお互いに「念話」という方法で離れていても話ができますが、キャリアにはそれは出来ません。そしてキャロ・エリオ・キャリアの互いの距離がつかめない。そんなやきもきした感じが出ていれば嬉しいです。
5話を書いている中で、この後アフター話のプロットが全て完成しました。終わりまでおつきあい頂けますよう。
少し違った話になりますが、この話の元になったSS「守りたいものはありますか?」の感想や誤字・脱字・読みやすさ等の意見を頂いております。今後の励みや参考にさせて頂きます。この場を借りて大感謝。ありがとうございます。
尚、再販とか委託販売は今のところ考えておりません。かわりに静奈さんが頑張って売り歩くかも知れませんのでその時はよろしくお願いします。
一瞬何の事?と思ったが三角関係とは・・思わず呟く
「へぇ~キャロってどっちでもOKなんやね♪」
はやてが呟いた瞬間、シャーリーとリインが思わず突っ伏していた。
「部隊長!!」
「はやてちゃん!!」
少しボケてみただけだったのだがどうも冗談は通じないらしい。
「ゴメンゴメン、普通に考えればエリオを巡って・・・ってとこやろ?」
「それでですね、この前夜遅く戻ってきたらエリオがキャロの部屋の前で寝ていたんですよ。」
今度はピンときた!
「ズバリ、キャロに部屋から閉め出された!!」
「通りかかったら起きたので、どうしたのかと聞いてもはぐらかされましたが・・・多分」
「エリオよく風邪ひきませんでしたね~」
心配するリインに更にシャーリーがウフフフと笑みを浮かべながら答える。
「実はその後キャリアが前を通ったらしくて、廊下で寝ているエリオを自室に招いて一緒に寝たみたいなんです。流石に同じベッドではなかったみたいですが・・」
ん??何かがはやての中でひっかかった。
「更に、翌朝廊下で寝ている筈のエリオが消えていて探したキャロにキャリアの部屋から出てくるエリオが鉢合わせしちゃって・・・」
ん?あれ?シャーリーの言葉に更に疑問が増えていく。
「その後キャロの機嫌が悪くなってエリオが凄く悩んだらしいんです。」
はやては一通りシャーリーの話を聞き終えた後、確信を持った。
「なぁシャーリー、なんかずーっと見てた様な話やね」
「ええ、それはもう。キャロの部屋とキャリアの部屋の前にスフィア置いて常時監視してますから・・・」
予想通り。隣のリインもあきれ顔だ。こっちの世界でも盗聴は犯罪である。
「シャーリー・・・そろそろええ加減にやめといた方がええよ。次見つけたら流石にうちでも減俸処分は出さんとあかん。今回は騒動が大きくなる前に判ったからええけど、気をつけてな」
一言釘を刺すとシュンと落ち込むシャーリーだったが、多分また同じ事をするだろうと思い、直接の上司であるフェイトにも話しておこうと心の中で決めた。
部屋に戻って仕事の続きをしている時、ふとさっき聞いた話を思い浮かべる
「キャロとキャリアとエリオか~。リインはどう思う?」
海鳴にいた頃、中の良かった異性の友達は何人かいた。しかし管理局の任務を優先していたはやて達は遅刻・早退・欠席は頻繁でそれ以上の関係に進む事は無かった。
もしかしたら海鳴にいるアリサや鈴香はそういう相手がいたのかも知れない。
はやて自身やなのは・フェイトも周りの大人と一緒に任務をこなす事で男っ気が少なかった。
なのははかなりニブいからそういう事も感じていなかったかも知れないと本人が聞くと怒られそうな事を考えていた。
「そうですね~3人とも同じ年頃の子供と滅多に会えなかったから戸惑ってるだけじゃないです?」
ほぼ同年齢のリインの意見に思わず納得する。
そういう風にも考えられる
「でも、エリオ・・結構精神的に撃たれ弱いところあるしな~」
「そうですね~時々キャロに振り回されてますね。」
リインも見るところはしっかり見ている。
エリオにはもっと度胸をつけて貰いたいと思いつつ、キャリアも含めて3人とも距離がつかめていないのかも知れない。
『せめてキャロとエリオの間が少し離れれば・・・』
その時はやての中でピンと閃いて、思い立ったが直ぐに端末に手を伸ばした。
「もしもし、シャーリー。あのなちょっと作って欲しい物あるんやけど・・」
そして翌日、はやては仕事の合間を使いなのは達の部屋でヴィヴィオと遊んでいるキャリアに会いに行った。
「キャリア~ちょっといい?」
「おはようございます。八神部隊長」
「そんなに堅苦しく呼ばんとはやてさんでええよ」
「・・・はやてさん、私に何か?」
少し驚いていたが、直ぐに返してきた。順応性はかなり高いのかも知れない。
「あのな、これ遅くなったけど元気になったお祝いや、受け取ってな」
持ってきた小さな小箱差し出す。
「!!、私そんなの受け取れません。今もお世話になっているのに」
そういう風に答えるのも予想はしていた。
「んじゃ、うちの頼みを代わりにやってもらえる?それならええやろ。あのな・・これは・・・」
最初は首を傾げていたキャリアもはやての話を聞くにつれて興味を惹かれていった。
「エリオ~どこ~?」
「あ、おはようキャリア。どうしたの?」
エリオは突然オフィスにやってきたキャリアに少し驚いた。そんな事も気にせずにキャリアはこっちに向かって走ってきて抱きついた。
「いたいた♪おはよ、エリオ」
「!!」
周りでは何が起きたのかとキョトンと見つめているキャロやメンバー。その視線を気にして
「ちょ・・ちょっと、キャリア。ここオフィスだから・・」
「オフィスじゃ無ければいいの?」
「・・・そういう訳でもないけど・・・」
頬を染めて上目使いで見つめられると流石に言いづらい。周りの視線が痛い。
アタフタとどうしようかと考えているとパッとキャリアが離れた。
「と冗談はこれくらいにして・・・」
からかわれていたらしい。
「エリオの隊長さんってフェイトさんだよね?」
「うん、そうだけど?」
頷くと奥で見ているフェイトに駆け寄ってポケットから何かの紙を取り出して見せた。
紙にははやてからエリオをキャリアの護衛につける指示が書かれている。
「お仕事頼まれたのでエリオ・・エリオ君をお借りしていいですか?」
「・・・う・・うん、いいけど・・」
全く話しについて行けていないフェイトは紙を受け取って頷いた。
それを見てからエリオの手を取り
「じゃあエリオお借りします~行こっ!」
「えっ!?あのっ!・・・行ってきます~」
訳が分からずただただキャリアに引っ張られていくしかなかった。
「・・・・いってらっしゃい・・・」
残された方も何が起きたのか理解出来ぬまま見送った。
「無茶苦茶だよ、キャリア・・・」
ここはクラナガンの店がいくつも集まっている地区。ここに来るまでにエリオはキャリアから仕事の内容を聞いた。
いつも六課の備品を頼んでいる店と連絡が取れないので直接注文書を持って行って欲しいという任務。
彼女が折角元気になったのにほとんど六課の中で過ごしているのを気にしてはやてが気分転換を勧めたのだろう。
キャリアもとても嬉しそうだ。しかし
「あの・・・腕・・・」
こっちに着いてからずっとエリオの腕を抱いている。クスッとこっちを見て笑う人も何人か・・流石に少し恥ずかしい。
「いや?」
「・・・嫌じゃないけど・・」
「じゃあいいよね。このままでも」
キャリアは人の目が気にならないらしい。嬉しそうにギュッっと抱きしめられる。
エリオもまんざら嫌な気分では無かった。しかし、その後ろから気配を消して追いかけている影にはエリオもキャリアも気付く事は無かった。
「キャリアそれで、どこに届けるの?」
「えっと・・ここに、この書類渡せばわかるって」
キャリアが取り出したメモには店名と場所が書かれていた。エリオも聞いたことのある店だが、かなり遠かった筈。
「ここからだと少し遠いよ」
「でもはやてさん近道あるからそこを通ればすぐだって・・あっ、ここのビルを通り抜けて」
どこでどんな風に情報を仕入れたのか?エリオは驚きを通り越してあきれ果てた。
ビルの中を通り抜けるのは当たり前、スタッフ専用の通路を横断してシャトルバスのメンテエリアを通り抜け・ビルの間を飛んで行く。 そしてどこかの企業オフィスを通り抜けた時は
「おや、めずらしいね。はやてちゃん元気にしてるかい?」
とにこやかに声をかけられた時は恥ずかしくて顔が真っ赤になりそうだった。
はやてさんはどうやってこんなルートを見つけたのだろう?心底疑問に思った。
そして、追いかけている方はそれ以上に大変で・・・・
屋上の上で
「えっ!?・・嘘っ、こんな所通るの?」
橋ゲタの下、手すりが全く無い場所で
「こんなの渡れないよ~っ!エリオ君」
エリオ達以上に悪戦苦闘していた。
そして数十分後・・
「到着~!」
「・・・・本当に着いた・・・」
驚きを隠せないエリオ。2人を遠目に見つめつつボロボロになりながら肩で息をしている少女。
「入ろ、エリオ」
そんな事も気にせずにキャリアはエリオの手を取り店の中に入っていった。
「いらっしゃいませー」
「機動六課ですけど、注文表を持ってきました」
「・・・」
「・・・」
エリオは店に入った後のキャリアの受け答えに感嘆した。
同い年の筈なのに聞くべき所や伝える事を店員に対してしっかりしている。エリオ自身であればどうだろう?
そう思えるほどキャリアの受け答えはしっかりしていた。
一通り話し終えると店員の女性は在庫確認をすると言い奥に入っていった。
「ん?エリオどうかした?」
「いや・・・キャリアって・・凄いんだね」
その言葉にポッっと赤くなるキャリア。
「そ・そそっそ・・そんなことないから」
胸を張るかと思っていたら逆に照れたことも新鮮だった。その後先程の店員が在庫表と納品日を書いた紙をキャリアに手渡し、キャリアの仕事は終わった。
「仕事も終わったし六課に戻ろうか」
「ん~、それよりちょっと遊んでいかない?はやてさんにも少し遊んできて良いよってお小遣い貰ってるから。エリオ・・私と一緒じゃイヤ?」
エリオの顔ギリギリまで近づいて上目使いで囁かれる殺し文句である。
「う・・・」
「イヤ?」
「ううん・・」
頷くしか出来なかった。
キャリアはそれを見てコロッと表情変えエリオの腕に抱きついて
「じゃあお買い物~♪」
「ええっ、前にいっぱい買ってたんじゃ」
「見るだけでも楽しいのっ!LetsGo!」
と店が並ぶ方へと向かった。
(エリオ君~っ!仕事終わったら直ぐに帰るんじゃ無いの!?)
2人が店から出てきた後、その後ろを追ってきた少女=キャロは嬉しそうなキャリアとエリオを見て即座に念話を送る。
『エリオ君!』
『・・・・・』
『エリオ君ってば!!』
『・・・・・』
しかしエリオから応答は無い、無視している訳ではなく本当に届いていないらしく何も気付いていない。
(こんなに近くで念話が届かないなんて・・・)
何が起きているのかわからず、考え込んでいるとエリオ達から離されそうになったので慌てて後を追いかけた。
キャリアとエリオはキャロが後ろから追いかけてることにも気付かず色々と見て回っていた。
その間もキャロは時折念話を送るがエリオには届いていない。
(どうして・・・どうして届かないの?)
楽しそうな2人に対してキャロは少し切なくなっていた。
「キャリアそろそろ帰ろう。みんな心配するから・・・」
陽が傾いてきたのを見てエリオが立ち止まった。振り返るキャリア
「みんなが心配か・・・いいな~エリオは心配してくれる人いっぱい居て」
「キャリアもお父さんがいるよ。」
「でも・・私にはお父さんしか居ないよ。エリオみたいに家族みたいな人いっぱい居ないもん」
夕焼けのせいかキャリアがいつになく悲しそうに見える。
「キャリア、僕は・・」
「ゴメンね、エリオ。帰ろうか」
くるっと後ろを向いたキャリア。でもその背中は震えていた。
「僕は作られたから・・キャリアみたいにお父さんもお母さんもいない・・」
言うべきでは無かったかも知れない。でも、キャリアには本当の家族がどれくらい大切なものなのか気付いて欲しかった。驚いて振り向くキャリア
「プロジェクトFate・・それが僕を生み出した技術・・本当はいちゃいけない人間。それが僕・・でも、そんな僕を助けてくれた人が居る。僕はその人を手伝いたいと思ってここに・・六課に居るんだ。」
「Fate・・!もしかして・・」
「・・・・・」
キャリアの問いかけに無言で答える。それを知る必要はないから。
無言の時が続く
「ゴメンね、エリオまで心配させちゃった・・・」
「ううん、僕はいいよ」
キャリアが気付いてくれるかはわからなかった。でも、エリオは彼女が気付く事を信じていた。
「ねぇ、心配ついでに1つだけ聞いていい?」
「何?」
知っていることなら答えようと思っていたが、聞かれたことはエリオの予想していた事を遙かに超えていた。
「私の事、どう思ってる?只の友達なら今の話はしてくれないよね?」
「えっ、あの・・それって」
「じゃあキャロの事どう思ってる?キャロもこの話知ってるよね?」
「ううん・・まだ・・」
まだキャロにもこの話は言っていない。知っているのはフェイト達数人だけ
「それじゃ、もし六課のお仕事終わったら私の家に来ない?」
「!!!」
何をどうすればそう言う話になるんだ?
さっきまで冷静だったエリオの頭が今は完全にパニックに陥っていた。
何て答えたら良いのか全然判らない。その間にもキャリアの顔が近づいている。
キャリアも少し頬が赤い様に見える。
その時
「ダメェーッッ!!」
横から突然飛び出してきた物に突き飛ばされた。いきなりの事で反応出来ず飛ばされるエリオ
「絶対ダメっ!!」
「「キャロ!?」」
倒れたエリオとエリオに駆け寄ったキャリアは突き飛ばした方を見て驚いた。そこにはキャロが立っていた。少し涙ぐんでいる。
「どうして・・六課に居るはずじゃ?」
「もしかして・・・後を追ってきたの?」
「うっ!でもっエリオ君と何度も念話しようとしても全然答えてくれないしっ」
「えっ!?念話?」
キャロからこっちに来てから念話を受け取っていない、というより念話を何も受け取っていなかった。
「それは、これが理由なの。はい。キャロ念話でエリオに話しかけてみて」
キャロの言葉を聞いてキャリアが胸からペンダントを取り出しボタンを押した。
『エリオ君?』
『どうしたの?キャロ』
『ホントだ』
「使えたでしょ?」
頷くキャロとエリオを見て再びボタンを押した。もう一度エリオに念話を送るが今度は届かなかった。
余裕のあるキャリアに対し、何か色々とあったらしくキャロが怒っているのはエリオも見て取れた。
「・・・キャリアそれ・・どうしたの?」
「?はやてさんに貰ったの。このペンダントの近くだと念話が使えないようにできるんだって」
「はやてさんが!?どうしてそんな事を・・」
「だって私念話はわからないし、一緒にいても別の人と話してるのって何か嫌だし。それにキャロが知らないエリオの事・・私知ってるもん♪」
「あ・・・」
「何よそれっ!」
「秘密♪」
キャリアは意図して火に油を注ぐつもりらしい。案の定キャロはそのペンダントを奪いにかかるが少し速くキャリアが身を翻す。
2人のケンカと追いかけっこを眺めつつ、エリオはもうどうとでもしてくれとばかり
「はぁ・・・」
深い深いため息しかつく事が出来なかった。
「はやてちゃん、少し聞いていいですか?」
「どうしたん、リイン?」
「どうしてキャリアちゃんにあの簡易結界用のデバイスを渡したんですか?」
「なのはちゃん・フェイトちゃんは親友やけど、その前はみんな戦った事あるんよ。本当に命がけで。」
「ジュエルシードと闇の書の事件ですか?」
「そうや、あれが無かったらうちら3人ともきっと繋がらへんままやったやろうしな」
「それがあのデバイスと?」
「リイン、まだわからん?」
頷くリインにはやては得意そうに
「雨が降らないなら無理矢理降らせてしまおうって話や。後でじっくり考えてみてな。」
そう言うと遠くでなのはとフェイトがキャロとキャリアの姿をみて
「どうしたの?」と驚いている声が聞こえ、2人の姿を見に部隊長室から出て行った。
「?」
残されたリインは意味がわからず首を傾げるしか無かった。
~~コメント~~
「=(いーぶん)」という言葉の通りエリオを巡った三角関係の第2戦です。キャロとエリオはお互いに「念話」という方法で離れていても話ができますが、キャリアにはそれは出来ません。そしてキャロ・エリオ・キャリアの互いの距離がつかめない。そんなやきもきした感じが出ていれば嬉しいです。
5話を書いている中で、この後アフター話のプロットが全て完成しました。終わりまでおつきあい頂けますよう。
少し違った話になりますが、この話の元になったSS「守りたいものはありますか?」の感想や誤字・脱字・読みやすさ等の意見を頂いております。今後の励みや参考にさせて頂きます。この場を借りて大感謝。ありがとうございます。
尚、再販とか委託販売は今のところ考えておりません。かわりに静奈さんが頑張って売り歩くかも知れませんのでその時はよろしくお願いします。
Comments
大丈夫、読みやすかったですよ此れからも期待してますので頑張って下さい、余り体に負担掛けないよう御身体ご自愛下さい。