06話 「決戦はエリオ?」

「さぁ~お昼お昼♪、何食べようかな~♪」
「午後からも訓練あるんだから食べ過ぎないでよ、スバル」
「大丈夫だって、ちょっとくらい。」

 慣れない事務仕事を終え、昼食を取りに来たスバルとティアナは部屋に入るなり同時に立ち止まった。
 目の前には異様な光景が広がっていたからである。

「だめだよ~ヴィヴィオ、ちゃんとピーマン食べないと」
「好き嫌いはダメなんだよ。がんばれヴィヴィオ」
「う・・ん・・パクッ」
「頑張ったね~偉いよ」

 和気藹々の仲睦まじいなのはとフェイト・ヴィヴィオのテーブルと
「はい、エリオ。あ~ん!!」
「ダメ!それは私がするのっ!」
「いや・・1人でも食べられるから・・・聞いてる?」

 一触即発のキャロとキャリア・エリオの何かが直ぐに起きてもおかしくない状態のテーブルとが横に並んでいた。

 ここで食べても無事に済むのかと考えていると、スバルが声をかけてきた。

「・・・ねぇティア・・・」
「・・・何スバル・・・」
「私達・・今日は外で食べよっか」

 スバルも同じ答えに辿り着いた様である。

「賛成、巻き込まれたら後が大変よね」
「うん、そうだね」

 2人ともそのまま来た道を当事者に気付かれないように戻っていった。


 2人と入れ替わる様にはやて&守護騎士達が入ってきた。

「あ~お腹空いた~」
「ペコペコです~」
「ヴィータもリインも食べ過ぎたらあかんよ」

 はやて達も部屋に入るなり立ち止まる。
(なんやっ!この異常な雰囲気はっ!)
 しかし、はやて達一同の中でヴィータとリインだけは気にするでも無く

「はやてちゃん~ここ空いてますよ~」

 となのはやエリオのいるテーブルの近くに座ってしまった。
(この状況で・・・よりにもよってそんな所に座らんでも・・え~い!何でも来いっ!)
 一瞬ヴィータとリインを恨みたくなったが、声をかけられてしまっては引き返す事も出来ない。仕方がなく肩を落とした後、気合いを入れ直し

「シグナム・シャマル・ザフィーラ行くよっ!」

と向かっていった。
 残された3人は苦笑いをしつつはやての後に続いた。


「ねぇはやて何食べる」
「ちょっとキャリア、それ私がエリオ君に食べさせてあげるのっ!」
「そやね~これなんかどうや?」
「1人でも食べられるから・・・」
「美味しそうですね~」
「はいヴィヴィオあ~ん!」
「キャロこそそれ私のじゃない!!」
「あ~ん♪」
「そうですね、私もこれで」
「キャリアが食べてないからでしょっ!」
「あ・・あのね・・なのは・・」
「あの~えっと・・・」
「キャロもキャリアも自分の分食べないの?」
「主・・我はどうすれば・・・」
「あ~私の方が後なんだ後なんだ!!エリオやぱりキャロの方がいいんだっ!」

 もはや全員の会話が紛れてどうなっているのか判らない。
 そんな中で一際うるさい2人にヴィータが切れた。

「キャロ、キャリアっやかましい!食べるならもっと静かにしろっ!」

 普段ならその言葉で大人しくなり治まるのだが、今日は違った

「ヴィータさんの方が大きな声ですっ!」
「そうです。静かにして下さい。」

 即座にキャリアが言い返し、それに普段大人しいキャロまで併せて更に付け加える。
 次の瞬間、ヴィータが激怒すると誰もが思った。
だがヴィータの怒り以上にキャリアとキャロの迫力は凄まじく、2人がジッっとヴィータを睨んだだけでヴィータは気圧され再び椅子に座ってしまった。

『うわっ、ヴィータが気圧された・・・』
『私も初めて見ました』
『はい・・』
『・・・・』

 ヴィータ自身怖かったらしく、少し震えている。
 かなり珍しい事ではあったが、キャロ達には些細な事で再びエリオの方を振り向く2人にエリオももうため息しか出なかった。

「なのはママ、キャロおねーちゃんとキャリアおねーちゃんケンカしてるの?」

 キャロ達の方を不思議そうに見てヴィヴィオがなのはに聞くと、なのはは少し答えにくそうに

「う~ん・・ケンカじゃなくて・・・エリオに食べて貰う競争・・かな?」

 その後、ヴィヴィオの口からとんでも無い言葉が飛び出た。

「おねーちゃん達、エリオおにーちゃんにご飯食べてほしいんだったらおいしいご飯作ればいいのにね」
「「それだっ!!」」


 キャリアは父と2人で暮らしている中で家事全般を担っており、中でも料理は得意分野である。
 キャロもアルザスにいた頃や自然保護隊で料理を作ることは多く、どちらかと言えば得意な方である。
 エリオは一度だけキャロの料理を食べた事があった。しかしその事をエリオ自身思い出したくなかった。
 
 数十分後、エリオの前には幾つかの料理が並べられていた。
 何故か厨房からも何人かこっちを見ている事が気になったが皿に盛られた料理は「見た目」凄く美味しそうだ。

「「どうぞ♪」」

 キャロとキャリアの2人が合わせて言う。妙なところで息が合うと思いながらキャリアの前の料理を皿に取り口に入れた。思いの外美味しい。そして今度はキャロの前の料理を取り口に入れる。一瞬以前の料理が脳裏を掠め躊躇するが、今回は美味しかった

「・・・・・美味しい・・凄く・・・」

 その言葉にキャロもキャリアも凄く嬉しそうに笑った。
 その横から様子を見ていたはやてが

「キャロ、キャリア、うちらもおよばれしてええ?」
「いいですよ~」
「はい、どうぞ」

 瞬く間にはやてやヴィータ・なのはにフェイト、シグナムにシャマル、リインと何故か姿を消していたスバルとティアナまでやって来て食べていた。
 皆がそれぞれ「美味しい」「美味い」と口々に呟いている。
 その中でキャリアの料理に興味を引かれたなのはが聞いた。

「キャリア、これ美味しいわね~プニプニしたのが特に。これ何?」
「それ、●●●(97管理外世界で言う蛙の様な生き物)です~。さっきそこで取ってきたの♪」
「「「ヴッ!?」」」

思わず息を詰まらせるなのはとはやて、しかし

「キャリアの所でも食べてたんだ、●●●美味しいんだよね~」

 キャロだけは全く違った反応をしている。
 その言葉に嫌な予感を覚えつつフェイトが恐る恐る聞くと

「キャロ?もしかして・・これは・・・」
「私も●●●欲しかったんですけど、無かったから・・よく似たのを取ってきました♪」

 近所に食材を扱う店も無く、キャロの「取ってきた」という言葉
・・フェイトにはそれで十分だった。
 ほとんどの者が口を押さえて飛び出していく。
 残ったのは不思議そうに見つめたキャリアとキャロと何も知らずに頬張るヴィヴィオ、そして美味しそうに食べている守護騎士の面々のみ。

「はやてもなのはもどうしたんだ?旨いのに」
「そうだな・・文化の違いなのだろう」
「美味しいです~♪」
「これってどっちの料理が美味しいかの勝負だったわよね?」

 思い出したかの様にシャマルが言うと横で見守るザフィーラ誰と無く答えた。

「だが、判断する者はここで伸びているのだが」

 この時、既にエリオの意識はどこかに飛んでいった後だったのは言うまでも無い。


~~コメント~~
 文化が違えば食べ物も違う。守護騎士達は長い間色々な場所の食べ物を食べているでしょうし、キャロもそうでしょう。(これは静奈さんが以前話していた事を思い出しました)
 今回は他の話と比べても台詞が凄く多いです。いったいエリオは何を食べさせられたのでしょう。
 あまり想像したくないですね。

Comments

錯乱坊
ヴィータが気圧される怒気凄そうですね。恋する女の子は強しと言った所でしょうか。
最終的にエリオは誰を選ぶのでしょう、今から気になります。
2008/05/31 06:32 PM

Comment Form

Trackbacks