第03話「私の可能性VerA」
- なんでもないただの1日
- by ima
- 2020.02.02 Sunday 06:22
教室で授業の準備が出来た頃
「ごきげんよう~」
「あい変わらず早いね~」
クラスメイトのリオとコロナが入ってきて私に声をかけた。
「ごきげんよ~、あれ? ヴィヴィオは?」
一緒に登校してきていると思っていた彼女が見当たらない。私が聞くと彼女達は苦笑いしつつ答える。
「あ~…」
「前で捕まってる。」
どうやら私が着いた時よりも待っている生徒が増えていて、彼女は相手をしているらしい。
「おはよ…やっとついた…」
「ごきげんよう~」
「あい変わらず早いね~」
クラスメイトのリオとコロナが入ってきて私に声をかけた。
「ごきげんよ~、あれ? ヴィヴィオは?」
一緒に登校してきていると思っていた彼女が見当たらない。私が聞くと彼女達は苦笑いしつつ答える。
「あ~…」
「前で捕まってる。」
どうやら私が着いた時よりも待っている生徒が増えていて、彼女は相手をしているらしい。
「おはよ…やっとついた…」
2人と話していると遅れて彼女が入ってきた。時間もそうだし顔にまで疲れが出ている。
「ごきげんようヴィヴィオ♪ 朝からお疲れ様」
彼女は高町ヴィヴィオ、私の親友でさっき話した私達の命の恩人。
彼女も先の撮影の後、私と同じ目に遭っている。
彼女の場合はそれ以外にSランク空戦魔導師のライセンスを取ったり、空戦戦技披露会に出てヴィータさんに勝ってしまっているので、私とは違ったファンも居たりする。
私がチェントを送り終えてから初等科まで走ったのは先に通り過ぎた時に下級生がまだ集まっていないのを見て『まだヴィヴィオが来ていない』と知ったからでもある。
走った方が疲れない。
ヴィヴィオには海鳴で何度も盾代わりにされているのだからこういう時くらいいいよね♪
心に少しだけ罪悪感を抱きながらもささっと捨てて頭を切り替えた。
「人気者は大変だね~♪」
笑って言うリオに他人事だと思ってと言い返したいところだけれど彼女に言っても収まる訳ではなく…ヴィヴィオも判っているのかあえて突っ込まず席に着くなりグタ~っと突っ伏した。
「ねぇ…最近また増えてない?」
「そう? 私はあんまり変わってないけど…」
「そろそろだからじゃない、新しい生徒会長を決めるの」
「「えっ!?」」
新しい生徒会長と言ったコロナの方を同時に向く。
生徒会長、読んでの通り生徒の代表…。
「私…すっごく嫌な予感しかしないんだけど…」
「私も…」
転校する前、海鳴市の聖祥小学校でも生徒会長は居た。
確か上級生の中でなりたい人が手を挙げて誰が良いかを紙に書いて箱に入れた記憶がある。でもStヒルデではどういう風に決めているのか知らない。去年の今頃…そんな話をした覚えがないから違う方法で決めているのかも知れない。
「後で先生に聞いてみよう…」
「そうだね…」
親友と2人深く頷いた。
理由は勿論、間違い無く巻き込まれてしまうからで立候補とは真逆の意味でだ。
ヴィヴィオやリオ、コロナ、クラスメイトと話しているとチャイムが鳴り先生が教室に来て授業が始まる。
ミッドチルダの言語は日本語とは違う言語体系だから最初は戸惑った。けれど昔本当にこっちで暮らしていたからなのか何となく読めてしまい、その後それ程苦労もせず無く書けるようになった。
(そう言えばなのはさんもフェイトとメールを送りあっている間に日本語を覚えたって言ってたしヴィヴィオも日本語を話せるからそんなに違ってないのかも…)
授業を聞きながらふと昔聞いた事を思い出す。
午前の授業が終われば楽しみなお昼休憩、ご飯の時間。私達は大抵4人集まって教室か屋上でお弁当を食べる。今の季節は外が寒いから教室で机をくっつけて食べている。
まぁ問題は…何処で食べていても
「し、失礼しますっ! テスタロッサさんは…」
「アリシア~」
(ほら来た…)
秋の学院祭でヴィヴィオと遊びに来た友達と一緒に闇の書事件のシーンに似せた模擬戦を見せたんだけど、その後こんな風に会いに来る下級生が増えた。
断ってもいいのだけれど、上級生のクラスに来るのは何人集まっていても緊張する。ここで声をかけるのはそれなりの勇気を振り絞って来ているのだから褒めてあげてもいいと思っている。
…無視したら後で面倒な事になるかも…なんて思ってないよ。
出入り口近くで食べているクラスメイトも慣れたもので、今日は私だったと話していた。
私かヴィヴィオのどっちだろうって予想しあっていたみたいだ。
「今日は私か…行ってくるね、は~い♪ 君は…2年生だよね?」
廊下に出てやって来た少女にニコッと微笑んで聞く。
彼女には見覚えが無いけれど彼女と一緒に来た少女が以前会いに来ていたから学年は判った。
「はっ、はい! あのっ、学院祭の魔法、凄かったです。それに映画もっ!」
「見てくれたんだ。ありがとう」
「それで…どうすればいっぱい魔法が使える様になりますか?」
目をキラキラと輝かせギュッと両手を握りしめて聞いてくる。こういう仕草に思わず『かわいいっ!』と思わず抱きつくような事をすれば…彼女を驚かせて泣かせてしまう。ここはガマンガマン…。
「そうだね~、先生のお話をよく聞いていっぱい勉強して練習すれば出来る様になるよ♪」
「………」
当たり障りの無い返事に少し元気がなくなる。もっと考えつかない方法を教えてくれるかもと期待して来たのか彼女の家族も同じ様な話をして同じ様に言われているのだろう。
でも私にはそれを言える説得力がある。
「あ~っ、信じてないでしょ。私、すっごくリンカーコアが弱いんだから。多分君達よりも弱いよ。でもいっぱい勉強して練習したから魔法が使えるようになった。そうだよね?」
振り返って入り口近くでお弁当を食べていたクラスメイトに声をかけると私の意を察してくれて笑顔で頷いた。
「ねっ♪ だから君も頑張れば私より上手に使えるようになるよ。」
「はいっ!」
優しく頭を撫でると少女は嬉しそうに笑みを浮かべて大きく頭を下げ廊下を走っていった。小さく手を振りながら見送るとさっき声をかけたクラスメイトに合わせてくれた礼を言う。
「ありがとね」
「アリシア、下級生の人気者だよね~。このまま生徒会長に立候補しちゃえば?」
「怖いこと言わないでよ。そんな気は全然無いんだから。来たらまた教えて。」
そう言って席へと戻った。こういうケースが何件か続く…。
お弁当を食べた後はヴィヴィオ達とお喋りを楽しんで午後の授業の準備をするのだけれど今日は用があって私とヴィヴィオは職員室へと来ていた。
その理由は勿論、生徒会長についてだ。
担任の先生から担当の先生を教えて貰い聞きに行く。
「ありがとうございます。確認していいですか、立候補は受け付けるけれど居ない場合は全員で誰が良いかを選ぶんじゃなくて今の生徒会が候補者から推薦して選ぶんですね。」
先生が頷くと私達は少し安心した。ヴィヴィオを見て笑顔で頷く。
人気のある生徒を推薦してファン投票みたいな形で決まるのであれば間違い無く私達は渦中に巻き込まれてしまう。
初等科、子供でもある程度まとめ上げる力や頼られる人望がある人がいいし私達も少しくらいはあると思ってる。
でもそんなものよりも『何かの事件に巻き込まれる力』が人並み以上にあると思っている…認めたくはないけれど。
だから学院生活はなるべく平穏に過ごしたいというのが私達の望み。
そんな思いに気づいてか先生は笑顔で言う。
「高町さんが生徒会に入りたいのでしたら立候補してくださいね。」
「は、はい。考えさせて下さい。」
遠慮しますとも言えずにヴィヴィオは言ったけれど…あれ?私は言われなかった?
「? 先生、私は?」
「テスタロッサさんはもう候補者の1人ですよ。」
「えっ!? うそっ!」
「嘘ではありませんよ。学院祭の実行委員は生徒会の候補者です。2年前の生徒会長は前年の学院祭実行委員です。催しを通して学院運営を経験した生徒として含まれます。それと…言葉使い気をつけて下さい。」
ニコリと笑いながら言われて我にかえり
「すみません。気をつけます。辞退は…出来ませんか?」
「今まで辞退した生徒はいません。転校や病気や怪我、管理局・聖王教会の依頼で長期登校出来なくなった時は生徒会内で交替します。人数が多ければ候補になった生徒が途中から参加します」
聖王教会直径の学院、その生徒会長というのはそれなりの立場なのだろう。
「アリシア、その時はその時じゃない?」
まだ決まった訳でもないのに辞退しますとも言えないしこれ以上ここで話しても解決できないと諦める。
「ありがとうございました。」
頭を下げて職員室を出た。
「アリシア…どうするの?」
ヴィヴィオが心配そうに聞いてくる。
「う~ん、まだ時間あるし考えてみる。選ばれるって決まった訳じゃないし。」
私の頭の中では幾つかの思惑が浮かんでいた。
(簡単なのは今の生徒会や委員が私を選ばないようにすれば良いのよね~。最初に選ばれなかったら良いだけなんだから…、先に弱味を握って…とか? ああっダメダメ!!)
生徒会と言っても1学年上の先輩なだけだから大人よりも脇が甘い…と考えてしまった直後もう1人の私やはやてさんの考え方に似てきたのを自覚してブンブンと頭を振ってそれらをゴミ箱に投げ込んだ。
「どうしたの? 大丈夫?」
「平気、お昼休みもまだあるし教室に…」
【PiPiPi…】
教室に戻ろうと言おうとした時、バルディッシュからコール音がした。
「バルディッシュ?」
ペンダントを出すと誰かからの通信だ。
知らないナンバーに首を傾げながら繋げる。
「はい、どちらさまですか?」
【アリシア、ちょっとぶりや♪】
「「はやてさんっ!?」」
時空管理局ミッドチルダ地上本部司令、八神はやてさんからの通信だった。
職員室の近くで通信しているのも何か言われそうなので、はやてさんには少し待って貰ってそのまま校舎の屋上に出た。まだ寒いからか誰も居ない。
「お待たせしました。ヴィヴィオも居ますよ、代わります?」
はやてさんが私に用事があるとは思えず何か理由があって私のデバイスに通信を送ったのだと思い言うと
『ちゃうちゃう、今日はアリシアに用があるんよ。チンクからナンバーを教えて貰った。』
「別にいいですけど…私に?」
ヴィヴィオも知らないらしく首をかしげる。
はやてさんからの話は私というより管理局の方針についての話だった。
ママ―プレシア・テスタロッサが去年発表した魔力コアはリンカーコアが無い、凄く弱い者でも魔法が使えるようになるという魔法文化を大きく変える物だった。
そのまま公表すれば色々と問題も起きるので対策を講じる為に聖王教会は管理局と協力して先に専用のデバイスを幾つか試作しテストを始めている。
私の愛機【バルディッシュ・ガーディアン】は聖王教会側でのインテリジェントシステム内蔵型の試作機だったりする。
双方の試験が実働段階に進んで今は主要部隊からデバイスに追加されているらしい。
その一方で今までの魔力資質を基準にしていた入局基準や評価基準も見直されることになって魔力資質が無くても優れた能力を持つ者を集めていくのと同時に魔力コアに慣れさせていきたいと考えから、全国的な大会を主催していくことになった。
『今まで魔法が使えなかった子が使える様になると新しい発想も生まれてくる。とりあえずは魔導理論―新しい魔法を研究を発表する大会と魔導行使―実際に魔法を使って競う大会を予定してる。』
「はぁ…それが私に関係が?」
『ん~? まだわからん? その大会にアリシアも参加したら面白いやろ♪』
「「ハァッ!?」」
私は思わずヴィヴィオと一緒に聞き返した。
「どうして私なんですかっ! ヴィータさんとシグナムさんに教わって少しは魔法を使えますけど…その程度ですよ? 私よりヴィヴィオの方がずっと凄いです。」
勢いのまま言うとはやてさんは困り顔で頬をポリポリと掻きながら
『ヴィヴィオの方が凄いのは私も知ってるよ。もう私よりも強いし模擬戦をしたらシグナムやヴィータ、なのはちゃん、フェイトちゃんとも良い勝負すると思う。そうやね…ヴィヴィオもなのはちゃんと模擬戦…模範戦みたいなのをしてくれたら面白いな。ヴィヴィオのデバイスも魔力コアとはちゃうけど似た機能持ってるし…』
はやてさんが【自分よりも強い】と言っているのに驚いてヴィヴィオを見ると彼女も照れたように笑っていた。ヴィヴィオもそう思っているらしい…。
『そんなエースオブエースと互角に戦える子が大会に出たらどうなると思う? そもそもこの大会は魔力資質が弱い子でも優秀やって知って欲しいって目的があるから、ロストロギアクラスのデバイスを持った王様なんか入られたら企画が終わってしまう。そうやろ?』
彼女の言うとおりヴィヴィオが出たら大会優勝者はほぼ決まりだ、彼女に無茶苦茶な制約を付けるか、手加減しない限り…。
『でもアリシアは違う、寧ろアリシアみたいに魔法資質が弱くてもプログラムが得意な子、運動が得意な子を集めていきたいんよ。』
そう言われたら納得するしかない。
ヴィヴィオは時間移動や瞬間移動だけじゃなくて、本気を出せば管理局のセンサーを超える魔力を持っている。そんな彼女が入れば大会は成り立たないし、集めたいのは魔力資質が弱い子。その時点で彼女は含まれない。
「でも…」
『アリシアに宣伝役になって欲しいんよ。ジュエルシード事件と闇の書事件の映像は今でも凄い人気ある。なのは役の子にも声をかけたけど、あっちは大会の宣伝なら受けるけど実戦はダメって言われてな…。』
なのはさんの子供の頃を演じた子は同じ年で演じる方が好きで学生ながらにそっち関係の仕事をしているいわゆる【芸能人】。撮影は兎も角、幾ら安全と言われても模擬戦を含めてリアルな戦闘で怪我をさせた日には…と思うと納得する。
かと言って私が出るというのは別問題。
「………」
『アインハルトとミウラ…この前会わせた子も出る予定やし、主要世界の武術系の道場にも声をかける予定や。本局と各地上本部の広報も動くし聖王教会も協力してくれる。』
「アインハルトさんとミウラさんも?」
話題作りだけのイベントじゃなくてそれなりの本気度も感じる。
私は少し出てみたいと思った。でも…
「…私だけじゃ決められないから、今夜ママに相談します。返事はそれからでいいですか?」
『うん、ありがとうな。詳しく知りたいって言ったら説明に行くから遠慮無く言って。』
そう言うとはやてからの通信は切れた。
直後、私は深いため息をつく。
「もう、あっちもこっちも…」
以前ヴィヴィオに『トラブルから近づいて来る』と言ったけれど私も言える立場じゃなかったらしい。
「アリシア、私…はやてさんの話が気になるんだけど…あれって」
ヴィヴィオが何か言いかけた時鐘の音がした。午後の授業開始の予鈴だ。
「わっ! もうこんな時間。着替えなくちゃ!」
私達は急いで教室へ向かった。
~コメント~
更新が遅れてすみません。(理由は後で)
【なんでもないただの1日】はアリシア主点で既に文庫化したものを再編集しています。
VerAがアリシア視点で、VerVがヴィヴィオ視点で同じシーンをそれぞれの視点、考えを巡らせながら進んでいくスタイルで書いてみようと思っています。
ですのでアリシアの話だけを読みたい場合は奇数話を、ヴィヴィオの場合は偶数話を追いかけて貰えるとより楽しくなるかも知れません。
更新が遅れた理由ですが、仕事が多忙になったことが主な原因です。
医療関係に近い仕事をしておりまして、この季節はインフルエンザの内部対策に走り回っているのですが、年始から新型コロナの話が来て対策準備に追われています。
中国では相当な被害が出ているとニュースで伝えられており日々深刻さを増しており、日本でも感染者が出ています。
今のところ特効薬的なものは無いので対策として下記をオススメします。
「こまめな手洗い・うがい」
色んな所を触るので、なるべく清潔に保ちましょう。
「帰宅後は手だけなく、顔も洗う(手洗い後直ぐにお風呂に入る)」
鼻を掻いたり頬に触れたりと無意識にしているものです。さっぱりと風呂で洗いましょう。
「十分な睡眠時間とバランスの良い食事」
体調が悪くなると免疫も落ちます。ですので体調管理を心がけましょう。
成人だと6時間程度の睡眠を目標に
と…特に難しい事は書いていませんし、新型コロナやインフルエンザだけでなく基本的な対策です。
寒暖の差が激しい季節は体調を崩しがちになります。皆様も風邪を引かないようにお気を付け下さい。
因みに「マスク」についてですが、有れば外出時にした方がいいです。
冷たい外気を吸い込むと体温が奪われるので保温・保湿効果もありますし、手で直接触れないので細菌も入りにくくなります。
ただ、インフルエンザのような飛沫感染には一定の効果があります。(飛沫感染でも混んだ電車内とかだと同じ車両に感染者が居たらあまり意味ないですが)
今は品薄で手に入り辛くなっていますので、手洗い・うがいをこまめにして対処するしかないのかなと思います。
「ごきげんようヴィヴィオ♪ 朝からお疲れ様」
彼女は高町ヴィヴィオ、私の親友でさっき話した私達の命の恩人。
彼女も先の撮影の後、私と同じ目に遭っている。
彼女の場合はそれ以外にSランク空戦魔導師のライセンスを取ったり、空戦戦技披露会に出てヴィータさんに勝ってしまっているので、私とは違ったファンも居たりする。
私がチェントを送り終えてから初等科まで走ったのは先に通り過ぎた時に下級生がまだ集まっていないのを見て『まだヴィヴィオが来ていない』と知ったからでもある。
走った方が疲れない。
ヴィヴィオには海鳴で何度も盾代わりにされているのだからこういう時くらいいいよね♪
心に少しだけ罪悪感を抱きながらもささっと捨てて頭を切り替えた。
「人気者は大変だね~♪」
笑って言うリオに他人事だと思ってと言い返したいところだけれど彼女に言っても収まる訳ではなく…ヴィヴィオも判っているのかあえて突っ込まず席に着くなりグタ~っと突っ伏した。
「ねぇ…最近また増えてない?」
「そう? 私はあんまり変わってないけど…」
「そろそろだからじゃない、新しい生徒会長を決めるの」
「「えっ!?」」
新しい生徒会長と言ったコロナの方を同時に向く。
生徒会長、読んでの通り生徒の代表…。
「私…すっごく嫌な予感しかしないんだけど…」
「私も…」
転校する前、海鳴市の聖祥小学校でも生徒会長は居た。
確か上級生の中でなりたい人が手を挙げて誰が良いかを紙に書いて箱に入れた記憶がある。でもStヒルデではどういう風に決めているのか知らない。去年の今頃…そんな話をした覚えがないから違う方法で決めているのかも知れない。
「後で先生に聞いてみよう…」
「そうだね…」
親友と2人深く頷いた。
理由は勿論、間違い無く巻き込まれてしまうからで立候補とは真逆の意味でだ。
ヴィヴィオやリオ、コロナ、クラスメイトと話しているとチャイムが鳴り先生が教室に来て授業が始まる。
ミッドチルダの言語は日本語とは違う言語体系だから最初は戸惑った。けれど昔本当にこっちで暮らしていたからなのか何となく読めてしまい、その後それ程苦労もせず無く書けるようになった。
(そう言えばなのはさんもフェイトとメールを送りあっている間に日本語を覚えたって言ってたしヴィヴィオも日本語を話せるからそんなに違ってないのかも…)
授業を聞きながらふと昔聞いた事を思い出す。
午前の授業が終われば楽しみなお昼休憩、ご飯の時間。私達は大抵4人集まって教室か屋上でお弁当を食べる。今の季節は外が寒いから教室で机をくっつけて食べている。
まぁ問題は…何処で食べていても
「し、失礼しますっ! テスタロッサさんは…」
「アリシア~」
(ほら来た…)
秋の学院祭でヴィヴィオと遊びに来た友達と一緒に闇の書事件のシーンに似せた模擬戦を見せたんだけど、その後こんな風に会いに来る下級生が増えた。
断ってもいいのだけれど、上級生のクラスに来るのは何人集まっていても緊張する。ここで声をかけるのはそれなりの勇気を振り絞って来ているのだから褒めてあげてもいいと思っている。
…無視したら後で面倒な事になるかも…なんて思ってないよ。
出入り口近くで食べているクラスメイトも慣れたもので、今日は私だったと話していた。
私かヴィヴィオのどっちだろうって予想しあっていたみたいだ。
「今日は私か…行ってくるね、は~い♪ 君は…2年生だよね?」
廊下に出てやって来た少女にニコッと微笑んで聞く。
彼女には見覚えが無いけれど彼女と一緒に来た少女が以前会いに来ていたから学年は判った。
「はっ、はい! あのっ、学院祭の魔法、凄かったです。それに映画もっ!」
「見てくれたんだ。ありがとう」
「それで…どうすればいっぱい魔法が使える様になりますか?」
目をキラキラと輝かせギュッと両手を握りしめて聞いてくる。こういう仕草に思わず『かわいいっ!』と思わず抱きつくような事をすれば…彼女を驚かせて泣かせてしまう。ここはガマンガマン…。
「そうだね~、先生のお話をよく聞いていっぱい勉強して練習すれば出来る様になるよ♪」
「………」
当たり障りの無い返事に少し元気がなくなる。もっと考えつかない方法を教えてくれるかもと期待して来たのか彼女の家族も同じ様な話をして同じ様に言われているのだろう。
でも私にはそれを言える説得力がある。
「あ~っ、信じてないでしょ。私、すっごくリンカーコアが弱いんだから。多分君達よりも弱いよ。でもいっぱい勉強して練習したから魔法が使えるようになった。そうだよね?」
振り返って入り口近くでお弁当を食べていたクラスメイトに声をかけると私の意を察してくれて笑顔で頷いた。
「ねっ♪ だから君も頑張れば私より上手に使えるようになるよ。」
「はいっ!」
優しく頭を撫でると少女は嬉しそうに笑みを浮かべて大きく頭を下げ廊下を走っていった。小さく手を振りながら見送るとさっき声をかけたクラスメイトに合わせてくれた礼を言う。
「ありがとね」
「アリシア、下級生の人気者だよね~。このまま生徒会長に立候補しちゃえば?」
「怖いこと言わないでよ。そんな気は全然無いんだから。来たらまた教えて。」
そう言って席へと戻った。こういうケースが何件か続く…。
お弁当を食べた後はヴィヴィオ達とお喋りを楽しんで午後の授業の準備をするのだけれど今日は用があって私とヴィヴィオは職員室へと来ていた。
その理由は勿論、生徒会長についてだ。
担任の先生から担当の先生を教えて貰い聞きに行く。
「ありがとうございます。確認していいですか、立候補は受け付けるけれど居ない場合は全員で誰が良いかを選ぶんじゃなくて今の生徒会が候補者から推薦して選ぶんですね。」
先生が頷くと私達は少し安心した。ヴィヴィオを見て笑顔で頷く。
人気のある生徒を推薦してファン投票みたいな形で決まるのであれば間違い無く私達は渦中に巻き込まれてしまう。
初等科、子供でもある程度まとめ上げる力や頼られる人望がある人がいいし私達も少しくらいはあると思ってる。
でもそんなものよりも『何かの事件に巻き込まれる力』が人並み以上にあると思っている…認めたくはないけれど。
だから学院生活はなるべく平穏に過ごしたいというのが私達の望み。
そんな思いに気づいてか先生は笑顔で言う。
「高町さんが生徒会に入りたいのでしたら立候補してくださいね。」
「は、はい。考えさせて下さい。」
遠慮しますとも言えずにヴィヴィオは言ったけれど…あれ?私は言われなかった?
「? 先生、私は?」
「テスタロッサさんはもう候補者の1人ですよ。」
「えっ!? うそっ!」
「嘘ではありませんよ。学院祭の実行委員は生徒会の候補者です。2年前の生徒会長は前年の学院祭実行委員です。催しを通して学院運営を経験した生徒として含まれます。それと…言葉使い気をつけて下さい。」
ニコリと笑いながら言われて我にかえり
「すみません。気をつけます。辞退は…出来ませんか?」
「今まで辞退した生徒はいません。転校や病気や怪我、管理局・聖王教会の依頼で長期登校出来なくなった時は生徒会内で交替します。人数が多ければ候補になった生徒が途中から参加します」
聖王教会直径の学院、その生徒会長というのはそれなりの立場なのだろう。
「アリシア、その時はその時じゃない?」
まだ決まった訳でもないのに辞退しますとも言えないしこれ以上ここで話しても解決できないと諦める。
「ありがとうございました。」
頭を下げて職員室を出た。
「アリシア…どうするの?」
ヴィヴィオが心配そうに聞いてくる。
「う~ん、まだ時間あるし考えてみる。選ばれるって決まった訳じゃないし。」
私の頭の中では幾つかの思惑が浮かんでいた。
(簡単なのは今の生徒会や委員が私を選ばないようにすれば良いのよね~。最初に選ばれなかったら良いだけなんだから…、先に弱味を握って…とか? ああっダメダメ!!)
生徒会と言っても1学年上の先輩なだけだから大人よりも脇が甘い…と考えてしまった直後もう1人の私やはやてさんの考え方に似てきたのを自覚してブンブンと頭を振ってそれらをゴミ箱に投げ込んだ。
「どうしたの? 大丈夫?」
「平気、お昼休みもまだあるし教室に…」
【PiPiPi…】
教室に戻ろうと言おうとした時、バルディッシュからコール音がした。
「バルディッシュ?」
ペンダントを出すと誰かからの通信だ。
知らないナンバーに首を傾げながら繋げる。
「はい、どちらさまですか?」
【アリシア、ちょっとぶりや♪】
「「はやてさんっ!?」」
時空管理局ミッドチルダ地上本部司令、八神はやてさんからの通信だった。
職員室の近くで通信しているのも何か言われそうなので、はやてさんには少し待って貰ってそのまま校舎の屋上に出た。まだ寒いからか誰も居ない。
「お待たせしました。ヴィヴィオも居ますよ、代わります?」
はやてさんが私に用事があるとは思えず何か理由があって私のデバイスに通信を送ったのだと思い言うと
『ちゃうちゃう、今日はアリシアに用があるんよ。チンクからナンバーを教えて貰った。』
「別にいいですけど…私に?」
ヴィヴィオも知らないらしく首をかしげる。
はやてさんからの話は私というより管理局の方針についての話だった。
ママ―プレシア・テスタロッサが去年発表した魔力コアはリンカーコアが無い、凄く弱い者でも魔法が使えるようになるという魔法文化を大きく変える物だった。
そのまま公表すれば色々と問題も起きるので対策を講じる為に聖王教会は管理局と協力して先に専用のデバイスを幾つか試作しテストを始めている。
私の愛機【バルディッシュ・ガーディアン】は聖王教会側でのインテリジェントシステム内蔵型の試作機だったりする。
双方の試験が実働段階に進んで今は主要部隊からデバイスに追加されているらしい。
その一方で今までの魔力資質を基準にしていた入局基準や評価基準も見直されることになって魔力資質が無くても優れた能力を持つ者を集めていくのと同時に魔力コアに慣れさせていきたいと考えから、全国的な大会を主催していくことになった。
『今まで魔法が使えなかった子が使える様になると新しい発想も生まれてくる。とりあえずは魔導理論―新しい魔法を研究を発表する大会と魔導行使―実際に魔法を使って競う大会を予定してる。』
「はぁ…それが私に関係が?」
『ん~? まだわからん? その大会にアリシアも参加したら面白いやろ♪』
「「ハァッ!?」」
私は思わずヴィヴィオと一緒に聞き返した。
「どうして私なんですかっ! ヴィータさんとシグナムさんに教わって少しは魔法を使えますけど…その程度ですよ? 私よりヴィヴィオの方がずっと凄いです。」
勢いのまま言うとはやてさんは困り顔で頬をポリポリと掻きながら
『ヴィヴィオの方が凄いのは私も知ってるよ。もう私よりも強いし模擬戦をしたらシグナムやヴィータ、なのはちゃん、フェイトちゃんとも良い勝負すると思う。そうやね…ヴィヴィオもなのはちゃんと模擬戦…模範戦みたいなのをしてくれたら面白いな。ヴィヴィオのデバイスも魔力コアとはちゃうけど似た機能持ってるし…』
はやてさんが【自分よりも強い】と言っているのに驚いてヴィヴィオを見ると彼女も照れたように笑っていた。ヴィヴィオもそう思っているらしい…。
『そんなエースオブエースと互角に戦える子が大会に出たらどうなると思う? そもそもこの大会は魔力資質が弱い子でも優秀やって知って欲しいって目的があるから、ロストロギアクラスのデバイスを持った王様なんか入られたら企画が終わってしまう。そうやろ?』
彼女の言うとおりヴィヴィオが出たら大会優勝者はほぼ決まりだ、彼女に無茶苦茶な制約を付けるか、手加減しない限り…。
『でもアリシアは違う、寧ろアリシアみたいに魔法資質が弱くてもプログラムが得意な子、運動が得意な子を集めていきたいんよ。』
そう言われたら納得するしかない。
ヴィヴィオは時間移動や瞬間移動だけじゃなくて、本気を出せば管理局のセンサーを超える魔力を持っている。そんな彼女が入れば大会は成り立たないし、集めたいのは魔力資質が弱い子。その時点で彼女は含まれない。
「でも…」
『アリシアに宣伝役になって欲しいんよ。ジュエルシード事件と闇の書事件の映像は今でも凄い人気ある。なのは役の子にも声をかけたけど、あっちは大会の宣伝なら受けるけど実戦はダメって言われてな…。』
なのはさんの子供の頃を演じた子は同じ年で演じる方が好きで学生ながらにそっち関係の仕事をしているいわゆる【芸能人】。撮影は兎も角、幾ら安全と言われても模擬戦を含めてリアルな戦闘で怪我をさせた日には…と思うと納得する。
かと言って私が出るというのは別問題。
「………」
『アインハルトとミウラ…この前会わせた子も出る予定やし、主要世界の武術系の道場にも声をかける予定や。本局と各地上本部の広報も動くし聖王教会も協力してくれる。』
「アインハルトさんとミウラさんも?」
話題作りだけのイベントじゃなくてそれなりの本気度も感じる。
私は少し出てみたいと思った。でも…
「…私だけじゃ決められないから、今夜ママに相談します。返事はそれからでいいですか?」
『うん、ありがとうな。詳しく知りたいって言ったら説明に行くから遠慮無く言って。』
そう言うとはやてからの通信は切れた。
直後、私は深いため息をつく。
「もう、あっちもこっちも…」
以前ヴィヴィオに『トラブルから近づいて来る』と言ったけれど私も言える立場じゃなかったらしい。
「アリシア、私…はやてさんの話が気になるんだけど…あれって」
ヴィヴィオが何か言いかけた時鐘の音がした。午後の授業開始の予鈴だ。
「わっ! もうこんな時間。着替えなくちゃ!」
私達は急いで教室へ向かった。
~コメント~
更新が遅れてすみません。(理由は後で)
【なんでもないただの1日】はアリシア主点で既に文庫化したものを再編集しています。
VerAがアリシア視点で、VerVがヴィヴィオ視点で同じシーンをそれぞれの視点、考えを巡らせながら進んでいくスタイルで書いてみようと思っています。
ですのでアリシアの話だけを読みたい場合は奇数話を、ヴィヴィオの場合は偶数話を追いかけて貰えるとより楽しくなるかも知れません。
更新が遅れた理由ですが、仕事が多忙になったことが主な原因です。
医療関係に近い仕事をしておりまして、この季節はインフルエンザの内部対策に走り回っているのですが、年始から新型コロナの話が来て対策準備に追われています。
中国では相当な被害が出ているとニュースで伝えられており日々深刻さを増しており、日本でも感染者が出ています。
今のところ特効薬的なものは無いので対策として下記をオススメします。
「こまめな手洗い・うがい」
色んな所を触るので、なるべく清潔に保ちましょう。
「帰宅後は手だけなく、顔も洗う(手洗い後直ぐにお風呂に入る)」
鼻を掻いたり頬に触れたりと無意識にしているものです。さっぱりと風呂で洗いましょう。
「十分な睡眠時間とバランスの良い食事」
体調が悪くなると免疫も落ちます。ですので体調管理を心がけましょう。
成人だと6時間程度の睡眠を目標に
と…特に難しい事は書いていませんし、新型コロナやインフルエンザだけでなく基本的な対策です。
寒暖の差が激しい季節は体調を崩しがちになります。皆様も風邪を引かないようにお気を付け下さい。
因みに「マスク」についてですが、有れば外出時にした方がいいです。
冷たい外気を吸い込むと体温が奪われるので保温・保湿効果もありますし、手で直接触れないので細菌も入りにくくなります。
ただ、インフルエンザのような飛沫感染には一定の効果があります。(飛沫感染でも混んだ電車内とかだと同じ車両に感染者が居たらあまり意味ないですが)
今は品薄で手に入り辛くなっていますので、手洗い・うがいをこまめにして対処するしかないのかなと思います。
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