16話(最終話) 「それから」

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 拝啓 機動六課の皆様
 お元気でしょうか?こちらはキャリア共々平和な毎日を過ごしております。
 キャリアはそちらに居た時間がとても充実していたらしく、今でも毎日の様にそちらで過ごした時の事を教えてくれます。
そして、もう1人の娘、キャロもキャリアと一緒の生活に慣れてきたようで、今日も2人で私を時々困らせて楽しんでいたりと娘の元気になった姿を見て嬉しく思います。
 機動六課については1年間の試験運用部隊だとクロノ・ハラオウン提督より伺っております。運用期間が終わりましたら是非一度お越し下さい。
それでは皆様の御活躍を期待しております。

 トーリア・ドライエ
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 情報化の進んだ中、わざわざ手紙を書いて送ってくれた事にはやては少し嬉しかった。
 読み終えたはやてはふぅ~と息をついてお茶に口をつけ、あの時の事を思い出す。
 

 キャロが口にしたのははやても考えつかない方法だった。

「もう1人の私、キャロがキャリアと同化します。」

 ユーノが以前【キャロの魔法はミッドチルダと過去に滅びた魔法体系が組み合わさっている】と言っていたが、異なる魔法体系が重なることで回復系の魔法は強くなると共に本来の魔法、召還系の精度が落ちていたのかも知れない。
 事実、キャロが負傷してからキャリアの同化までフリード召還を使おうとしなかった。

 他の者の反応と言えば事実を知っていたフェイトやエリオ達フォワード陣を除いて、もう1人のキャロの存在に全く気付かなかったらしく驚きを隠せないでいた。

 キャロはユーノとトーリアが準備の為にと通信を閉じた後、今までの事を全てを話してくれた。
 目覚めた時、そこにはもう1人のキャロが既に出ていて望んでいた家族の団らんが目の前に広がっていて、キャロ自身が家族を壊していたのかと思い落ち込んでいたこと。しかし、六課が襲撃されてみんなが傷ついて守ってくれているのに何も出来ず、その時もう1人のキャロと初めて話が出来たこと。
 キャリアを治癒した後もずっと一緒にいようねと約束したこと
 でも、そのキャロがフェイトやエリオ、キャロの為でなく自身しか出来ないキャリアの為に出来ることをしようと決めた事。

 その話は最後は鳴き声が混ざり言葉になっていなかったが、その気持ちは全員に十分に伝わったと思う。

 翌朝、目覚めたキャリアにはその話を聞いたユーノとトーリアが直接やって来て彼女に今までとこれからの事を話した。
 キャリアはエリオを襲った事にショックを受けたが、母と同じ状態であるのを告げられ何かを決めた様に言った。

「だって私が居なくなっちゃったらお父さん1人ぼっちだもん。それに家族が増えるんでしょ♪」


 翌日、キャロとキャリアは対面した。
 キャリアの暴走を止めてから初めての互いの顔を見る
 2人とも複雑な心境だった。その中でキャロがキャリアに言った。

「良い子だから仲良くしてあげてね」
「うん、私も・・・ずっと一緒にいるよ。だから・・キャロはエリオ君と仲良くね」

 涙をこらえつつキャロは呟きはじめる。
 キャロの意志をリンカーコアの一部に集める魔法、そこにユーノがキャロに触れ魔法を唱える。
 術者がデバイスに組み込む為にコアの一部を取り出す魔法は良く使われる。
 ユーノ魔法を唱えていくとキャロの姿が一瞬ぶれた様に見え、直後半分透けたキャロが現れた。

「こうやって会うの、初めてだね。」
「うん、少し違うけど初めまして・・かな」

 透けた方のキャロは見守っているフェイトやエリオ、なのはや一同に向かって手を振った。

「ちょっとの間だったけど、ありがとう。ママ、お兄ちゃん・・みんな、またね」

 そう言うとキャリアの方へ歩いていく。

「キャリア、これからよろしくね」
「うん、キャロ・・・でいいのかな?」
「うん、キャロでいいよ」
「キャロよろしくね」

と答えた後キャリアの中に重なるように入っていった。2人が重なると現れた時と同じように、キャリアに重なり消えてしまった。

 キャリアは暫くリンカーコアが安定するまでの間、襲う対象だったフェイトやエリオから離れる必要があった。
 トーリアとキャリアはそのままユーノの為に仮設されたポートを使って本局に戻っていった。

 見送るキャロの震える肩をそっと抱くフェイトとエリオ。
 キャリアとトーリアの姿が消えるとキャロは2人に抱きついて暫くの間号泣していた。


 手紙をデスクに置いてはやてはふと自分を助ける為、別れた家族をふと思い出す。
 彼女しか出来なかった事、彼女もそれを理解し別れを告げたのだろう。
 2人が去った後、機動六課は隊舎を攻撃され、ヴィヴィオが連れ去られたりと色々あったが何とか切り抜ける事ができた。彼は多分風の噂でその辺の事を聞いたのであろう。
 六課が解散する前にもう一度遊びに来て貰えればいいな、ふと考えていた。


だが・・・


【コンコン】
「はい、どうぞ~」

 ドアのノック音が聞こえ答えるとそこには・・・

「こんにちは~はやてさんっ!じゃなかった八神部隊長。遊びにきました~っ!」
「暫くの間お世話になります。キャロとお兄ちゃん、ママどこ~?」
「突然すみません。もう大丈夫だと言った途端そろって遊びに行くんだと言いまして・・・」

リインに連れられたトーリアとキャリアが入ってきた。

「あ、ああ、おめでとうございます」

そう返しつつ、既に勢いに呑まれていたリインと共に賑やかな日が続くかも知れない。そんなことを考えていた。


Fin


~こめんと~

 この話はSS「守りたいものありますか?」のキャロSSの続きになります。
 StrikerSの時期としてはヴィヴィオが機動六課にやって来て、連れ去られる間に起きたサブストーリとして進めております。

 前話ではキャロを主人公に据えつつ、エリオやスバル、ティアナのフォワードメンバーやなのは・フェイト・はやての主軸メンバーの視点が変わり「記憶喪失のキャロ=実はロストロギア」がフェイトとエリオに寄せられていく様をメインにしていました。
 今話は最初10.5話『口は●●の元』の様なキャロSSの短編に近いSSと考えていましたが、その中でキャリアの性格が霞んでしまったり、もう1人のキャロがキーにならない等の理由から少し方針を変更し現在に至りました。
 「7話『再会』」は機動六課にやって来たトーリアもエリオを気に入ってしまい、キャリアと一緒に四方八方手をつくしリンディやクロノ、聖王協会まで巻き込んでエリオを家族に引き込もうとし、精神的に疲れたフェイトがあわや承諾しかけるという話でした。
 (それはそれで面白いかなとも考えましたが、フェイト達のメインキャラが崩れそうだったのと上記理由であえなくボツになりました)
 
 ですが、逆にそうならなかった為に「感染型としてのキャロの位置づけ」や「キャロとキャリア・エリオの仲」等が少しだけ掘り下げる事が出来たと思います。

 最後に、最初から読んで頂いた方、途中から興味を持って頂けた方、稚拙な文章&誤字脱字が多くて読みづらい点も多々あったと思います。本当にすみません。
 それでも読んで頂いた皆様、本当にありがとうございました。

                              2008年10月2日 ima

Comments

しいな
お疲れ様でした。
どう巻き戻すのかな?と思ってましたが、なるほどと思う部分もあって面白かったです。

ボツ集とかあればちょっと読んでみたいかも
2008/10/03 10:38 AM

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