01話 「想いの力・願いの力」

「―――」

 陽が沈み辺りが夕闇に染まった公園に1人の少女が立っている。
 彼女は瞼を閉じ、祈るような姿勢をとったままピクリとも動かない。それだけであれば誰も気に留めなかったであろう。
 だが通りかかった人は足を止めて彼女を見つめていた。
 彼女の胸元で輝く虹色の光球はそれ程美しかったのである。

「そうそう、集中してイメージをデバイスに流し込む感じで…」

少女の近くに立っている女性が言う。

「ハイッ!」
「気を散らさないで。集中しながら違う事を考えるの。一流の魔導師はみんな同時に幾つもの事を考えてるんだよ」
「はい…」

 彼女の声で再び瞼を閉じ集中する少女。

「うん、じゃあそれを的に向かって行く様にイメージして」
「―――」

 やがて虹色の光球は女性が言った通りの軌跡を描き、数メートル先に置いてあった空き缶に直撃した。

「上手上手♪ すごいじゃないヴィヴィオ!」
「…ふぅっ…ありがと、なのはママ♪」


 そう私こと高町ヴィヴィオは魔法の練習を母、高町なのはに見て貰っていた。
 元々ヴィヴィオは戦技と呼ばれる戦う為の魔法は誰かを傷つける魔法だからと嫌っており学ぶ機会があっても学ぼうとしなかった。
 だがそんな折、彼女に突然ある事件がふりかかる。

【ジュエルシード事件】
 13年前、彼女が生まれるずっと前にここから遠く離れた第97管理外世界で起きた事件。
 ヴィヴィオはその事件の最中に来てしまう。
 最初は夢か幻だと思っていた彼女も彼女の母、高町なのはが魔法と出逢っておらす普通の女の子なのを見て現実だと気付く。
 数年後になのはが大怪我をする未来を変えようと、当時のユーノに協力してなのはの代わりにジュエルシードを集め始めるのだが、この時からヴィヴィオを取り巻く未来は大きく変わってしまった。

 気付いたのは元の時間にヴィヴィオが戻った後だった。
 大切な友達ザフィーラが消えた世界に違和感を持った時。自分が原因なのを知ったヴィヴィオはなのはともう1人の母、フェイト・T・ハラオウン、2人の親友である八神はやてと一緒にザフィーラが消えた時間、13年前の冬に向かった。

 そこは既に【闇の書事件】の真っ只中だった。
 はやてが闇の書に魔力を奪われてしまうというアクシデントもあったが、闇の書や守護騎士シグナム・シャマル・ヴィータ・ザフィーラとの戦いの中で、当時の高町なのはやフェイト・テスタロッサ・闇の書の主である八神はやて達の協力も得られて、何とかザフィーラが消える未来を作らずに闇の書事件を解決に導いた。

 元の時間に戻ってからヴィヴィオは少し変わった。
 今まで嫌っていた戦技用魔法の練習を率先して行い、力を入れるようになったのである。
 でも彼女の心の中、『争い戦うのは嫌い』という気持ちは何も変わっていない。
 『戦いたくない争いたくない』というのと『力を持っていない』というのは意味も理由も結果も違ってくるというのに気付いたから。

「ヴィヴィオしか出来ない事じゃなくてヴィヴィオだから出来るんだよ♪」

 とあるきっかけで出逢って今は親友と胸を張って言えるアリシア・テスタロッサの言葉が彼女の背中を押していた。

 アリシア・テスタロッサ。彼女はヴィヴィオのもう1人の母、フェイト・T・ハラオウンの姉にあたる。
 ジュエルシード事件の前に亡くなっている筈の彼女は母プレシア・テスタロッサと共に助けられ、ヴィヴィオと共にStヒルデ学院に通っている。
 彼女達を助けたのが未来のヴィヴィオ本人だというのはヴィヴィオも知っていて、いつの日かアリシアとプレシアを助けに行かなければならないのを感じていた。

 それらはヴィヴィオに精神的な成長を促していく。
 ベルカ聖王縁の能力である【時を越える能力】に縛られない強さを得るために――



 ヴィヴィオがなのはと魔法の練習をしているのと同じ頃、時空管理局の本局メンテナンスルームでは技術士のマリエル・アテンザとフェイトの執務官補佐シャリオ・フィニーノが声を揃えて唸っていた。
 彼女達の前にはヴィヴィオのデバイス―レイジングハート2nd、通称RHdがセットされている。
 RHd―レイジングハート2ndはなのは達に頼まれてマリエル自身の技術を駆使して作ったデバイスだ。
 普段はストレージタイプの使用者を補佐するだけの何処にでもある様なデバイスだが、真価はデバイスの制限が外れた時にある。
 コアに高エネルギー体ロストロギア、通称『レリック』の一部分を内包しユニゾン時に使用者のリンカーコアと接続、リンカーコアとレリックの相乗効果によって使用者に負担が無い自己ブーストを可能にしている。
 それだけなら良かったのだが、前回のメンテナンス時にレイジングハートと同じフレームを使っていたのが何故か違うフレーム、よりにもよって欠番となったジュエルシードが組み込まれていたのだ。
 これら2つの高エネルギー体を扱える使用者は限られる。
 邪な願いや想いを持たず純粋な願いを持ったレリック適合者。故にRHdはヴィヴィオ専用デバイスとして扱われている。

「シャーリー何だろうね、このプログラム…」
「断片化しすぎててサッパリです。レイジングハートさんのシステムじゃないでしょうか?」
「でもね、私…こんなの組み込んだ記憶ないよ?」

 2人が唸っている訳、それはRHdに組み込んだ覚えの無いプログラムが幾つも見つかったからだった。
 何かの動作プログラムの様でもありそうだけれど、細かく分けられすぎていて何の為のモノなのか判らない。

「う~ん、RHdは元々特殊なデバイスだから、ユニゾンシステム…リインかアギトに見て貰わないと…」
「そうですね。ミッドに行った時にお願いしてみます。」
「シャーリーお願いね」

 このまま睨んでいても埒があく訳でもなく、2人は別の箇所のメンテナンスに移った。



 そんな事2人の会話があってから数日が経った頃、ヴィヴィオはいつも通りに教室で授業を受けていた。
 お昼ご飯を食べてすぐの授業、自然と瞼が重たくなる。重い瞼をゴシゴシこすりながら睡魔と戦っていると、突然辺りの光景が変わった。

(何処ここ…本局? まさかまた違う時間に…って今私デバイスも本も持ってないよ)

 一瞬前みたいに違う時間に飛んだのかと思ったが、肝心の【デバイス】も【本】を持っていないのを思い出して考え直す。

(でも何処かで…)

 前に見た…行った事がある。そんな既視感を覚えつつ辺りを見回していると声が聞こえた。

「おはよう。目が覚めたんだね。調子はどうだい?」
「…生体部分にも特に異常がありません」
(!! どうして…どうして2人がいるの?)

 モニタの向こう側に居たのは忘れもしない顔。
 ジェイル・スカリエッティとナンバーズⅠ ウーノ

 ヴィヴィオをさらいレリックを埋め込んだ張本人。 驚きと恐れから声が出ず、思わず後ずさる。
 その時

「ヴィヴィオ、ヴィヴィオってば!!」
「!?」

 呼ばれてハッと我に返った。そこはいつもと変わらない教室、隣に座っているアリシアが心配そうにこっちを見ている。

「どうしたの? ずっと前を向いたっきりで…大丈夫?」
「う、うん。何でもないよ、ありがとう」

 さっきまでの光景は一体何だったのか?
 ジトリとした汗が手と額からにじみ出ていた。



 ヴィヴィオ達が学院にいた頃、少し離れた所に聖王教会直属の研究施設、その一室で女性がモニタを見つめていた。

「これはやっぱり…」

 女性が呟いたのと同時に端末が鳴り女性の前にモニタが現れる。

『ごきげんよう、テスタロッサさん。頼まれた本は届いたかしら?』
「ごきげんよう、騎士カリム。ありがとうございます。おかげで今丁度解析しているところです。」

 にこやかな笑顔で聞いたカリムに答えたのはこの部屋の主プレシア・テスタロッサだった。
 プレシア・テスタロッサ。ミッドチルダ出身の研究者として有名だった彼女。
 その名前はかつて彼女自身の起こした事件【PT事件】としても記録されている。
 しかしそれは10年以上も過去の話であり、プレシアと娘のアリシアの2人共年齢が違い過ぎている事もあってか教会や研究員の間でも同姓同名の別人だと思われていた。

 ジュエルシード事件時、星の庭園崩壊直前にヴィヴィオによって助けられ、10年以上経った世界に連れてこられた彼女とアリシアは今までと全く違った魔法文化の無い世界で数年を過ごし、数ヶ月前にミッドチルダの聖王教会へと招かれたのだ。
 プレシアとアリシアが本人と知っているのは聖王教会の騎士カリムと時空管理局統括官リンディ・ハラオウン、なのはやヴィヴィオ達の家族と親友だけ。


『貸出期限は無いけれど、教会に古くから収められた本だから丁重にしてくださいね』
「ええ判っています。」
『それで、私に聞きたい事があるというのは?』
「お借りした書物ですけれど、いつ頃に収められていた物なのでしょうか」

 聞かれた通信相手、聖王教会の騎士カリムが手元の端末を操作して調べる。
 
『管理記録では記録開始当時にはあった物だと言う位で詳しい事は判りません。聖王統一戦争以前…ううん、わかりました。詳しく調べておきます。用件はそれだけかしら?』
「いえ、この研究施設に入らせて貰って数ヶ月、研究案件を何も頂いていないのに家や身の回りの物まで用意して貰って、とても嬉しいのですが…良いのでしょうか?」

 管理外世界での生活でもそうだったが、プレシアとアリシアの身の回りの物はほぼ全て用意されていた。
 プレシアの勤務する研究施設の研究室や機材だけでなく、アリシアのStヒルデ学院入学等の手続き関連やそれ以外の私生活までほとんど揃っていたのだ。
 恩を返したいと思って来た場所で上司から特に何も研究課題を言われず良いのかと考えながら、以前研究していたProjectFateについて更に知識を深めていた。
 そして、もう一つ恩ある友人から頼まれた事と共に…

『ええ、貴方の知識や能力は高く評価していますし、携わって欲しい参加して欲しいと頼まれているものも幾つかあります。でも今は貴方しか出来ない事をして欲しいの。詳しくは言えないけれど教会は近い将来それが必要になると考えています。私も同じ考えです』

 笑顔の中にある真剣な眼差し

「騎士カリムは古代ベルカ式の魔法でも特に希少なスキルを持っていると聞いています。それが関係しているのでしょうか?」
『ごめんなさい、私の魔法については何も言えないんです。もし言う機会があれば必ず貴方にも話します。』
「……ありがとう。それで十分です」
『そう、何かわかればこちらから連絡します。』

 モニタが消えた後、プレシアはフゥと息をついた。

「やはり、フェイトから聞いた話とこの書物型のロストロギアの解析を急がないと…間に合えばいいのだけれど…」

 それが何を意味しているのかは今は誰も、当時者でさえ判らない。



 プレシアがカリムと話していたのと同じ頃、時空管理局本局にある無限書庫では

「珍しいね。なのはが無限書庫に来るなんて」
「うん、ヴィヴィオとここで待ち合わせしているの。教導任務が早く片付いたからそれまでユーノ君とお話しようと思って。お邪魔だった?」
「ううん、いいよ。」

 無限書庫の司書長ユーノ・スクライアの元になのはが顔を出していた。普段あまり顔を出さない彼女に少し驚きつつも最近あまり会う機会も減っていたのでユーノは嬉しかった。

「そうそう、この前シャマルさんに会ったんだけど困っていたよ。『なのはちゃんが診察に来てくれない』って。」
「え~、この前診て貰ったよ。」
「この前っていつ?」
「…2ヶ月くらい前…」

 ボソっと言ったなのはにユーノはため息をついた。

「はやてやヴィータも気にしてたし、なのはに何かあったらヴィヴィオはどうするの? きっと凄く心配するよ? 定期的に診て貰わなないと」
「…ゴメンナサイ…次はちゃんと行きます。」

 申し訳なさそうに言うなのはに仕方がないなと苦笑いする。
そんな時、ユーノの端末からコール音が響いた。

「はい、無限書庫ユーノです。」
『こんにちは、ユーノ司書長』
「リンディ統括官、ご無沙汰しています」
「こんにちは、リンディ統括官」
「あら、なのはさんこんにちは、お邪魔しちゃったかしら」

 モニタに現れたのは時空管理局統括官リンディ・ハラオウンだった。クロノやフェイトを通じて聞いてはいても直接モニタを通して話すのは久しぶりだった。

「いえ、今日は何か調査依頼でしょうか?」
『ううん、今日はヴィヴィオさんに用があって連絡したの。今日無限書庫に来るって聞いていたから』
「私もヴィヴィオと待ち合わせしてるんです。もうそろそろ来る頃じゃないかと…」
『そうなの、じゃあこのまま待たせて貰ってもいいかしら。そうそう、なのはさんフェイトから聞いたわよ。シャマルさんの検診から逃げてるんですって?』
「ええっ!」

 驚くなのは。どうやらシャマルだけでなく八神家全員が色んな方面に話をしているらしい。
 ユーノにははやての意図が何となく読めた。
 なのはの周りを全て巻き込んで医務局、シャマルの診察を受けざるえない状況を作り出そうとしているのだ。
 きっとこの分だと地上本部や聖王教会・ヴィヴィオの担任辺りまで話は広まっていることだろう。

「ちゃんと診て貰って治さなくちゃ、ヴィヴィオさんも心配するわよ…そうだ、私からヴィヴィオさんにお願いしようかしら『シャマルさんの診察が怖くて行けないなのはママと一緒に行って欲しいんですぅ~』って。」
「リッリンディ提督!?」
「冗談よ。でも、またちゃんと行かないのを聞いたらその内本当になるかも知れないわね。」

 リンディにかかればエースオブエースと呼ばれるなのはも形無しだった。

「次は…来週はちゃんと時間取って行きますから。お願いします、それだけは」

 ユーノはリンディと涙目になったなのはのやり取りを聞きながら

(ナルホド、こういう方法になのはは弱いんだ…)

と新しいなのはの一面を見ていた。
「ごきげんよう、ユーノさん、リンディ提督。なのはママただいま~♪」
「ごきげんよう。ユーノ司書長、リンディさん、なのはさん」

 そんなやり取りをしているとヴィヴィオがアリシアを連れてやって来た。

「どうしたの、なのはママ? 泣いてるの?」
『ううん、あのね~』

 モニタ向こうのリンディが何か言い出しかけたのを慌ててなのはが遮った。

「なっ泣いてなんかいないよ。そうだよね! ユーノ君」

困り果てた顔にヤレヤレと思いつつ

「うん、なのはは泣いてなんかいないよ」

となのはのフォローをした。聞いたヴィヴィオはキョトンとしつつ首を傾げていた。



 なのはと待ち合わせた時間に遅れたヴィヴィオは無限書庫に急いでいた。
 アリシアの転送許可を取るのに思っていたより時間がかかってしまったのだ。
 無限書庫に入ったところでなのはの声を聞いている方を見るとなのはとユーノ以外に、モニタにリンディが映っている。

「ごきげんよう、ユーノさん、リンディ提督。なのはママただいま~♪」
「ごきげんよう。ユーノさん、リンディさん、なのはさん」

 一緒に来たアリシアと挨拶していると、なのはの頬に涙の跡を見つける。

「どうしたの、なのはママ? 泣いてるの?」
『ううん、あのね~』
「なっ泣いてなんかいないよ。そうだよね! ユーノ君」
「うん、なのはは泣いてなんかいないよ。」

 慌てるなのはの様子に首を傾げた。

『そうそう、ヴィヴィオさんに用があって連絡したの。預かっていたRHdのメンテナンスが終わったから帰る前にメンテナンスルームに寄ってね』
「はいっ! ありがとうございます」

 久しぶりに戻ってくるパートナーにヴィヴィオは嬉しかった。


 
 事の発端は【闇の書事件】から戻ってきた後だった。
 はやてのあるイタズラによってなのはとはやての故郷、海鳴にはやてとなのは・ヴィヴィオが行く羽目になってしまった。
 何とか事なきを得て帰る途中、本局ゲートでなのはが一瞬ふらついたのだ。
 それをはやてが見逃す筈もなく、ヴィヴィオと一緒になのはを医務局に連れて行って本人に有無を言わせず強制的に検査した。
 2人には心当たりがあった。ブースト魔法によるリバウンド
 元々完治していない状態で慣れない治療魔法と転送魔法を使い、最後はスターライトブレイカーを使ったのだ。それも出来る最大威力の自己ブーストを。
 なのはが精密検査を受けている間にヴィヴィオも一緒に簡単な検査する事になり、同時にRHdもメンテナンスに出す事になった。
 組み込まれたバリアジャケットを内部から改変し自分で騎士甲冑を構成、1人で1時的とは言え闇の書と渡り合った際の負担によって異常が出ているかも知れないと危惧したはやてと、彼女から連絡を受けたリンディが即断した。。
 それが製作者のマリエルの出向等も重なってしまい延びていたのだ。
 RHdは悪く言えばロストロギアそのものであり、ちょっとした異常がどんな事態を起こすか判らない。


 
 無限書庫に着いたヴィヴィオ達は無限書庫幾つか調べ物をした後、ユーノと別れメンテナンスルームにRHdを取りに向かった。

「失礼します。無限書庫司書、高町ヴィヴィオです。マリエル技官はいらっしゃいますか?」
「はーい、こんにちはヴィヴィオ。なのはさんもお久しぶりです、あと…」
「私の友達です。無限書庫で調べたいことがあって一緒に来て貰いました。」
「はじめまして」
 
 ペコリと頭を下げるだけであえて名前を言わないのはアリシアも心得ているらしい。

「リンディ統括官からデバイスのメンテが終わったって聞いたんですけど」

 詮索される前に手早く済ませようとマリエルに聞く。
 アリシアの顔を何処かで見たようなと見つめていたマリエルはヴィヴィオに聞かれて小さな箱を取り出してヴィヴィオに渡す。箱を開くと真っ赤な宝玉、ヴィヴィオのデバイスRHdが入っていた。

(今まで頑張ってくれてありがとう。これからもよろしくねっRHd♪)

 ヴィヴィオが心の中で言うとRHdが答えてくれた気がした。

「それでね、聞きたいんだけど…ヴィヴィオ、レイジングハートセカンド…RHdで何か変わった事なかった?」
「?」

 何の事を言っているのか判らず首を傾げる。

「例えば、今まで使ってて最近違った反応したとか…ない?」

 調べて貰う前を思い出す。

(メンテナンスルームに持ってくる前で変わった事…あっ!)
「あの…」
「何かあった、変わったところ?」
「あのですね…変わったところがありすぎまして…どこが変わって無いと言う方が…」

 最初に思い出したのが13年前に行った際にした闇の書との直接戦闘だった。
 アレは無茶しすぎだったとヴィヴィオ自身も思う位の無茶で、むしろどこが変わって無かったのかを聞きたい位だった。
 ヴィヴィオの話を聞いて思わず椅子からずり落ちそうになるマリエル。

「アハハハ…そ、そうなんだ。それじゃしょうがないね」
「マリィさん、どこか異常あったんですか?」
「ううん、少し気になっただけだから」

 心配そうななのはの表情にマリエルは笑って否定した。



「アリシア今日はありがとう。ねぇ夕ご飯食べていかない? ママもいいよね?」

 本局からミッドチルダ地上本部を通って家に帰る間、ヴィヴィオはアリシアを誘った。なのはも頷いている。

「プレシアさん、最近帰ってくるのが遅いんだって?」
「ええ、何か調べる事があるんだって凄く忙しいみたいです」

 少し寂しそうに言うアリシア。
 ヴィヴィオとなのはは勿論そうだが、アリシアもプレシアが何の研究をしているのか知らない。彼女が1人家で食事を食べているのも寂しいと思う。

「ねぇアリシアちゃんさえ良かったらプレシアさんのお仕事が落ち着くまでウチに来ない? その方がプレシアさんも安心してお仕事できるし、フェイトちゃんも喜ぶし…もちろんリニスも一緒にね♪」

 なのはの顔を見るアリシア、それを見てヴィヴィオもなのはに乗る。

「そうしようよ。アリシアと夜までお話できるし、きっと楽しいよ♪」
「…ちょっと待って下さい。ママに聞いてみます。」

そう言うと、胸のペンダントを取り出してプレシアを呼び出した。

『はいプレシア…アリシア。ごめんなさい、今日も遅くなりそうなの。』

 アリシアの顔を見てちょっとだけ顔をほころばせた後、申し訳なさそうに手を合わせる。

「こんばんは、プレシアさん」
「ごきげんよう」
『なのはさん、ヴィヴィオちゃん。こんばんは。』
「あの、プレシアさん最近仕事で夜遅くにしか帰って来られないって聞きまして、良ければ仕事が落ち着くまでアリシアさんを預からせて貰えませんか? 私達も任務で不在になる日はヴィヴィオ1人になっちゃう時もありますし、1人より2人の方が安心だと思うんです。」
『そんな、迷惑では…』
「フェイトちゃんもきっと喜ぶでしょうし、フェイトちゃんの家族だったら大歓迎です。」

なのはの言葉にウンウンと頷く。

『アリシアはどうなの?』
「私、ママのお仕事の邪魔したくないしヴィヴィオやフェイトとお話してみたい…ダメかな?」

 プレシアは暫く考えた後

『それじゃあお言葉に甘えていいですか、次の休みにはちゃんと帰るからそれまでお願いします。』
「はいっ♪」

思わずアリシアとハイタッチした。

「じゃあ、先にアリシアちゃん家寄ってリニスと着替えとか取りに行こうか。その後みんなでご飯食べよ♪」
「うん♪」
「はいっ♪」

 通信を切った3人で帰る道はとても軽く、ヴィヴィオは明日からの生活が凄く楽しいものになると思い胸を膨らませていた。



~コメント~
 今までのエピソードに今話のプロローグを追加した話です。
 ほのぼのとしたヴィヴィオを中心としたなのはやユーノ達管理局サイド・カリムに代表される聖王教会サイドとの日々関わり合いや暮らしに焦点をあてつつ、半オリジナルキャラなプレシアとアリシアがどんな風に関わっているのかを書いてみました。
 ヴィヴィオやなのは達がどんな風に活躍していくのか楽しんでもらえると嬉しいです。

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