12話 「集結」

「ヴィヴィオおいしい?」
「うん、ママのはおいしい?」
「うん。食べてみる?」
「あーん。おいしい、私のもはい、あーん」
「ありがと♪」

 マリンガーデンの中でヴィヴィオとなのははアイスを食べていた。
 海底遺跡以外にも海洋生物がそのまま見られたり、別世界の様に綺麗で凄くて…

(元の時間の方も行ってみたかったな…一緒なのかな?)

 そんな事を考えながらも、なのはと一緒にあっちこっち見て回ったり、お買い物したりとヴィヴィオは楽しんだ。
 でも、時々なのはは暗い顔をするのがすこし気になる。

(まただ…)
「ねぇなのはママ、楽しくないの?」
「ううん、ママも楽しいよ。とっても」
「ウソ、だってさっきから何度か悲しい顔してるの見たもん」
「……」

 そう言うとなのはは黙ってしまった。
 しばらくして彼女は口を開いた。

「ねぇヴィヴィオ、私…本当になのはママかな?」
「そうだよ。」
「…本当の私もこんな風にヴィヴィオと一緒に遊んだりお買い物したり…してたのかな? 私、偽物でもママ…できてるのかな?」

 少し悲しそうな顔で聞くなのは

(そうだったんだ…ママも悩んでたんだ…)

 ヴィヴィオが悩んでいたのと同じようになのはも悩んでいたのだ。本当の自分じゃない事に
 どう答えて良いか戸惑う。
 今までのヴィヴィオでは何て言えばいいか判らなかった。
 でも今のヴィヴィオには足枷から解き放ってくれたとっておきの言葉がある。

「うん。なのはママはなのはママだもん。どこの世界に行ってもママはママだよ♪ 昨日アリシアに言われたの。それが何なの、胸を張って私がヴィヴィオだよって言ってよって、私だから使える魔法なんだって」

 他の誰かじゃなくヴィヴィオだから使える魔法がある。

「ママも同じ。胸を張ってよ、私がヴィヴィオのママなんだよって! ねっ♪」

 ヴィヴィオの言葉に一瞬キョトンとするなのはだったが、直後クスッと笑って

「そうだね、私がなのはママがヴィヴィオのママなんだよね。ありがとうヴィヴィオ」
「イエイエ♪」

 親友の真似をして答える。
 晴れた彼女の笑顔にヴィヴィオはほんの少しこの時間でも良いような気がしていた。



「はやてちゃん久しぶり~」

 ヴィヴィオ達がマリンガーデンでアイスを食べていた頃八神家には珍客が訪れていた。

「すみません、急に呼んじゃって…あの家の方は」
「大丈夫、ちゃんと留守頼んできたから。それで…本当にするの? こんな事言ってなんだけど…大丈夫?」
「モチロン。責任は私が持ちます。みんなもそろそろ着く頃ちゃいますか?」
「そっか、久しぶりの同窓会だね。」
「同窓会みたいに楽しく終われば良いんですけどね」
「じゃあ早速出発しましょうか。」
「そうですね。みんなも行くよ」

座って茶を出す間も無く、7人は家を後にした。



 ~同じ頃、クラナガンにある空港でも~

「スバルさ~ん、ギンガさ~ん♪」
「久しぶりエリオ、キャロ元気だった?」
「エリオおっきくなったね!、キャロも大人っぽくなった」
「私の身長が縮んじゃってるんじゃないかってくらい伸びてるんですよ。エリオ君」
「やっぱり男の子だね~♪」
「キュルルー」
「フリードも久しぶり、ちょっとおっきくなった?」
「もうすぐヴォルテールに追いつくぐらいおっきくなってますよ」
「ウソっ!」
「冗談です」

 周辺世界から久しぶりにミッドの地を踏んだエリオ・モンディアルとキャロ・ル・ルシエ、彼女の使い魔フリードリヒは迎えにきていたギンガ・スバルと合流していた。

「あの途中で聞いたんですが、本局と連絡が取れなくなってるって…管理局はどこも大混乱だって…大丈夫なんですか?」
「うん、父さん…ナカジマ3佐がちゃんと休暇申請受理してくれてて、スバルのところのヴォルツ司令にも話を通してくれたから…」
「子狸の嬢ちゃんとこで頑張ってこいって」
「それで…そのティアナさんはやっぱり…」
 
 少し微妙な表情をするスバル。

「うん、でも大丈夫。メール送ってあるし何かあったら連絡してくるよ」
「そうですね」
「じゃあ、行きましょうか」
「ちょっと待って、あと1人…あ、来た来たオーイ!!」

 スバルが手を振って合図した方を振り向くエリオとキャロ。
そこには

「「ルーちゃん!?」」
「こんにちは」

 辺境世界で保護観察になっている筈のルーテシア・アルピーノがペコリとお辞儀をした。

「どうして?」
「まだ保護観察中じゃないの?」
「出てきて良いと言われたから来た。」
「ここに来るから迎えに行って欲しいって私も言われてただけなんだけど…聞いたときビックリした。」
「そうでしょう…」
「ウンウン」

 タハハと笑うスバルにエリオとキャロも頷く。

「ルーテシアさん…で良いかしら」
「はい」
「魔力の解放は私達には権限が無いの。合流の後行いますがそれでいい?」
「「ええっ!!」」
「はい」

 驚いているエリオとキャロを横目にギンガに頷く。

「これで全員集まったから行きましょうか。」
「はい。」
「一体どんな魔法を…」
「使ったの??」

 何がどうなってるのかさっぱりわからないエリオとキャロはただ目を白黒させるだけだった。



「こっちから転送可能になったらすぐに追いかけます。
「うん、待ってるから、シャーリー」
「はい。無理しないで下さいね」
「フェイト、ティアナ、なのは達の事よろしくお願いします」
「わかりました」
「うん、わかってる。ユーノお願い」

 無限書庫司書長ユーノ・スクライアはフェイトとティアナを中心に魔方陣を作り広げた。
 ミッドチルダへの飛べる程の転送魔法は彼には使えない。だから、近隣世界へ一度2人を送りそこでミッドチルダへのゲートが生きていれば転送、無ければフェイトが転送魔法を使って飛ぶ2段転送を行おうとしていた。ユーノも一緒に行きたかったが3人が転送させるには距離が足りないし、ユーノがフェイトと一緒に向かった場合、途中で2人とも魔力を使い切ってしまう危険もあるし、管理世界間の転送は執務官だと事後報告でも了承される。

「転送っ!!」

 ユーノが叫んだ直後2人の体は光となって消えていった。

「頼んだよ…フェイト」

 ユーノにはもう2人が無事にミッドチルダに着くのを願うしか出来なかった。
 
  

「ねぇ、アリシア…」
「何?」
「そこにあるファイルを取ってくれない?」
「…はい」
「ありがとう」
「……」
「………」

 プレシアの研究室では今まで感じたことの無い空気が流れていた。
 もし誰かが入ってきたら、その者は第一声で「何かあったの?」とプレシアかアリシアのどちらかに聞くだろう。
 確かにアリシアはプレシアを手伝いに来ていた。研究資料や雑貨がごちゃ混ぜになった机の上を片付けたり、ゴミを集めては捨てに行ったり…研究に没頭していたプレシアにとってはとてもありがたく嬉しい行動ではあるのだが…

「ね、ねぇ、喉渇かない? 何がいいかしら?」
「そこにあるよ。私のはここにある」

 彼女が指さした所にはちゃんとティーセットが用意されていた。いつ飲みたくなっても暖かいお茶が飲めるようにと保温機に入れてある。横には摘めるお菓子も置いてある。

「そっそう…ありがとう」
「……」

 再び黙々と掃除を始める。

(どうしてかしら、息が詰まるわ…)

 いつもは談笑しながらお茶を飲んだりして楽しい時間なのに、今日はそんな素振りどころかアリシアから何も話さないのだ。
 何故かはプレシアも判っている。
 自分がヴィヴィオに話したせいで彼女が落ち込んでしまい、アリシアはそれに気付いた。だから話したプレシアに対して怒っている。
 そこまでは判るのだけれど

(私何か変な事を言ったかしら?)

 ヴィヴィオもアリシアも確かに多感な年頃ではあるけれど、娘ながらこんなにあからさまに怒るのは初めてでどうすればいいか皆目見当がつかない。こういう面では普通の家庭と変わらない。

「片付け終わったよ。他にお手伝い出来る事ある?」
「えっええ、ありがとう。今は無いわ」
「じゃあ、ロビーに行ってくる」
「い、いってらっしゃい」

 ドアが閉まった直後、深いため息をついた。

「アリシアもあの頃のフェイトも同じ位の年頃よね。フェイトは本当に優しい子だったのね…」

 ジュエルシード事件時、酷い仕打ちにも耐えてただひたすらに行った事を守ろうとしたフェイト。今更ながらにフェイトがどれ程一生懸命尽くしてくれていたのかを感じた。

「後で、ヴィヴィオに聞きましょう。遅いけれどフェイトにも…」



「クシュン!」
「フェイトさん、大丈夫です?」
「ええ、クシャミが出ただけだから。きっとなのは達が噂しているのかも」
「きっとそうですよ」

 噂をされたのかクシャミをするフェイト。フェイトとティアナが居たのは、本局とミッドチルダの間にある管理世界『スループス』。自然保護地域として指定され定期運行船も少ない世界。
 ここからヴァイゼンへ転送魔法で移動し、すぐに動く船が無ければ3度ミッドチルダへ転送する。
ただ移動するだけなら余裕で移動出来る距離だけれど、現地で何が起きているか判らない今出来るだけ余力は残したかった。

「ティアナ、しっかり掴まっていて。ヴァイゼンへ飛ぶから」
「はいっ!」

ギュッと掴まれたのを感じてフェイトは転移魔法を起動した。


~コメント~
ヴィヴィオがもしなのはStrikerSの世界にやって来たら? 
なのはとヴィヴィオの仲良し親子とちょっとギクシャクしたテスタロッサ親子にゾクゾク集まる仲間達。
今話から3章スタートです。
3章は2章と違って戦闘面が多かったり視点の切り替えが多いので少しわかりにくいと思いますが、それぞれ捉えて読んで頂けると嬉しいです。

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