13話 「再び」

「「ただいま~」」
「おかえり、ヴィヴィオ楽しかった?」
「うん♪」
「いっぱい甘えたか?」
「私甘えん坊じゃないよっ!」
「これおみやげです。」
「わぁ~ありがとうッスなのはさん!」

 夕方ヴィヴィオ達は研究施設に戻ってきた。遊んでいる間に何も起こらなかったらしい。
 出迎えてくれたアリシアやノーヴェ・ウェンディの顔を見て自然と笑みが溢れる。
『もうすぐいつに行けばいいか判るみたいだよ。ママの所に行ってみて。』

 目の前にいるのに念話…彼女の場合デバイスを介した通信が届く

『うん。目の前にいるのにどうして念話なの?』
『えっと…それは、そうそう、ママがヴィヴィオにごめんなさいって謝ったら教えてね。私もママにごめんなさいって言うから』
『プレシアさんとケンカしちゃったの!?』
『だって、ママはヴィヴィオを虐めたんだよ』
『違うよ、あれはプレシアさんが知らなきゃいけない事を教えてくれただけで…』
『でも、あの時言わなくても良いよね』
(そう言われたらそうなんだけれど…)
『だから、後で教えてね♪』

 そう言うとアリシアはノーヴェ達の所に走って行った。

(あ~もうっ!)

 気遣ってくれてるのも知ってるし何度も助けてくれたけれど、違う意味でヴィヴィオを悩ませる。
 そういう意味ではプレシアとアリシアは2人はそっくりだと改めて感じた。



「失礼します…プレシアさん、行き先が判ったって聞いたんですけど…」
「ヴィヴィオ、もうすぐ結果が出るわ。そこで待っていて頂戴。」

 研究室に入って声をかけると待っていたかの様にプレシアが振り向いた。彼女が指さした所に長椅子があった。服や資料に埋もれていたから気付かなかった。周りを見ると綺麗に掃除されている。
 きっとアリシアが片付けたのだろう。

「これであとは結果待ち、ヴィヴィオ少しいいかしら?」
「はい」

 プレシアも長椅子に座る。

「昨日話した事で迷わせてしまったなら謝らなければならないわ。ごめんなさい。でもね虐めようと言った訳ではないの。知っておいて欲しかったのよあなた…ヴィヴィオの能力について」
(プレシアさんもも闇の書リインフォースさんと同じなんだ…危険性をあえて教え見させて私に使い方を教えようとしてくれてる)

「ううん、ありがとうございます。それとごめんなさい…アリシアと…」
「いいのよ、私が悪いのだから」

 そう言うと優しく抱きしめられる。なのはとは違うけれど、ヴィヴィオにとっては安らげる暖かさだった。



その時、端末からコール音が聞こえた。

「解析が終わったようね。ヴィヴィオ、アリシアを連れてきて貰えるかしら」
「はい」

頷いて部屋から出た。



同じ頃

「フェイトちゃん…何? ノイズが入ってて聞こえないよっどうしたの?」
『…から…ティが…だか…』
「ノイズが酷くて聞き取れないな…」

 人間より遙かに良い耳を持っているチンク達でも言葉が拾えない。

「このノイズだとミッドじゃなくて他の管理外世界からじゃないか?」

 丁度そのタイミングでヴィヴィオがやってきた。

「アリシア~、プレシアさんが…ってどうしたの?」
「ヴィヴィオ、レイジングハートにフェイトから通信が届いたんだけどノイズが酷くて聞き取れないの」
「フェイトママから!?」
「フェイトちゃん!! 答えてっ今どこに居るの?」

 なのはが何度か通信を試みるがフェイトに繋がる事は無かった。

「管理世界間用の通信施設が使えたら良いんだけど…」
「ママに聞いてみる」
「そうそう、アリシア一緒に来て。次に行く時間が判ったんだって」
「わかった。先に行ってるからヴィヴィオはなのはさん達と一緒に来て」

 先にプレシアに謝って仲直りするつもりなんだろう。走って行くアリシアを目で少し追いかけた後

「なのはママ、行こう」
「う、うん」

 手を取ってアリシアの後を追った。



「フェイトさん、どうですか?」
「少しだけ届いたけれど、次元間が不安定になってるみたい。」

 ヴァイゼンまでやってきたフェイトとティアナはバルディッシュでなのはと通信を試みていた。
 ノイズの状況からみれば彼女はミッドチルダに居るらしい。
 まだ通信を受けられる余裕はあるということだ。

「中央港までいってミッド行きの船に乗ります?」
「不安定な状態が続くと船も止まっちゃいますけど…」

 次元間の流れが不安定になると次元運行船も止まってしまう。対応出来るフィールドを持っている本局からの巡航艦で送って貰えればいいが管轄が違い過ぎる。

「次に通信が通ったらその瞬間を狙って転移しよう。ちょっと危険だけど…」
「わかりました。でも、それまでただ待つのも…一応船のチケット取ってきます。」
「そうだね、ティアナお願い」
「はい」

 そう言うと駆けていった。



「ヴィヴィオ…全員来たのね」
「何の役にも立たないかも知れないが聞かせて貰いたい。構わないだろうか?」
「ええ、構わないわよ。」

 そう言ってアリシアのペンダントをヴィヴィオに見せた。

「これにはアリシアを守る以外に幾つかのセンサーが組み込まれているわ」

 モニタに出された映像には炎で赤く染まったエントランスが映し出される。ペンダントに入ったセンサーだからアリシアが動くと大きく揺れている。空港火災時の映像らしい。

「映像の中に砲撃魔法で開いた大穴があって周囲を違うフィルタをかけたらヴィヴィオ達が時間移動した際に起こる物と同じ物を見つけたのよ。そこから移動時間先を調べて…新暦75年5月、場所は湾岸エリア。」
「わかりました。じゃあ今から…」

 そう答えた時、レイジングハートからコール音が聞こえた。

「はい、高町です。」
『なのはちゃん、そっちは無事か?』
「はやてちゃん、無事って?」

 いつもは冷静なはやてが少し慌てている。

『今、聖王教会を通じて管理局から応戦要請があった。ミッドチルダ地上本部が戦闘機人の襲撃を受けてる』
「ええっ、何でっ!!」

 現れたモニタに出て来たのははやてだった。

「はやてさん、戦闘機人って…みんなここにいるよっ!!」
「ああ、7人とも揃っている」
「ちゃうちゃう、えーっと何て言うたら…プレシアさん、そっちのモニタに繋げます?」
「ええ、良いわよ」

 プレシアが端末を操作すると、はやてから送られてきた映像が映された。

「…ウソ…」
「何でっ、あれ私じゃ…トーレ姉!!」

 ガジェット・ドローンに混じって砲撃と一瞬人型の飛行物体が映る。

「クア姉とディエチもいる!?」
「屋上で情報遮断してるの…オットーだよな?」

 ノーヴェにコクンと頷くオットー。
 何がどうなっているのか、こっちにいる者がむこうにもいる…

『あと未確認情報やけど、ジェイル・スカリエッティから地上本部へ何か通信があったらしい』
「こっちのあなた達ね。私達はヴィヴィオ以外はイレギュラーな存在。こっちのあなた達はあのマッドドクターの部下に戻ったようね」
「チンク姉の言った通りになっちゃった…」
「ああ…」
『プレシアさん、もう一度確認しておきたいんですけど…今の私達は本当の時間に戻る迄の仮の姿…なんですよね?』
「そうよ。次に行く時間がわかってヴィヴィオに教えていたところよ」
『判りました。…今からそちら側の防衛に向かいます。』
「!!」
『代わりにというかお願いですけど…絶対元の時間に戻してくださいね』
「ちょっと!! はやてちゃん」

 はやての顔をじっと見つめるプレシア

「……」
「……」 
「…ええ、約束するわ」
『ありがとうございます。なのはちゃん、フェイトちゃんから連絡あった?』
「う、うん、でもまだ別世界にいるみたいなの」
『じゃあ、フェイトちゃんはこっちで合流する。今からそっちに向かうからそれまで頼むな』

 そう言ってはやてからの映像は消えてしまった。



「フゥ…」

 なのはとの通信を切ってはやては安堵の息をつく。
 管理局本部が狙われる前にヴィヴィオの居る研究施設が先に襲撃されているのではと考えていたからだ。だが、地上本部が落ちれば次は聖王教会…か直接行くだろう。もしかすると先に向かわれているかも知れない。

「エイミイさん、行けそうです?」
「うん、あと10分」
「判りました。急いでお願いします。」
「後でさっきの話教えてよね。本当の時間とか…」
「はい。モチロンです。みんな揃ったら知ってる事を全部話すつもりです。」

 あと少しで呼びかけた者もやってくる。

(あと少し…あと少しなんや)
 


「プレシアさんあとの…ヴィヴィオの事お願いします。本局との通信障害、戦闘機人の地上本部襲撃…ここも無関係とは思えません。私ははやてちゃん達が来るまで防衛に入ります。」

 はやてからの通信が切れた後、黙っていたなのはがプレシアに言った。

「私も手伝おう。」

 チンクが1歩前に出て言う

「でも…」
「私はここの者ではないからな。ここが襲われてしまえば戻るにも戻れなくなってしまう」
「そうッスね」
「そういうことだ。私達の事は私達が1番良く知ってるんだから」
「迎え撃つ」
「ママ、私も手伝う。今ならRHdも使えるし、聖王の鎧でここも守れるよ」  

 なのは達がここを守るなら手伝いたいと思ってヴィヴィオも言う。しかし

「ヴィヴィオはダメ。ヴィヴィオにはしなくちゃいけない事があるよね。」
「でもっ!」
「なのはさんの言うとおりだ。何故私達がここから逃げずに迎撃するのかを考えるんだ。」

 そう、誰も怪我しない為にはここから逃げて隠れればいい。でもなのはやチンク達は守りに入ると言った。

「私が…私が元の時間に戻そうとしてるから?」
「うん。きっとはやてちゃんも一緒の気持ちだと思うよ。さっきはやてちゃんがプレシアさんに聞いていたよね『私達は仮の姿なのか?』って、はやてちゃんの所には管理局からも聖王教会からも救援・応援要請が入っている、でもはやてちゃんはそれを全部無視してここに来るって言った。はやてちゃんはヴィヴィオを信じてるんだよ。ヴィヴィオが元の時間に戻してくれるって」
「……でもっ! プレシアさんもチンクも前に言ってた。家族を助けるのは心の問題だって! そうだ、先にここに来るスカリエッティ達を捕まえてからさっき言った時間に行けば」

 自分を守る為になのはやチンクやノーヴェ…みんなが傷つくのは見たくない。

「ヴィヴィオっ、だから…」

 ノーヴェが何か言おうとするのをなのはがそっと制して

「ヴィヴィオ…ママもヴィヴィオが魔法も勉強も頑張っていて手伝ってくれるのは嬉しいよ。でもね、ヴィヴィオが本当にしなくちゃいけないのは何かを考えて欲しい。私じゃない本当のなのはママやフェイトママを助けられるのはヴィヴィオだけなんだよ。だから、ねっ…」
「でも…」

 プレシア達が言った通りこれは心の問題。だからこそヴィヴィオには納得ができなかった。

「ヴィヴィオ、今なら詳しい時間、場所がわかるわ…でも、ここが襲撃されて壊されてしまったら次は何処に行けばいいのか判らなくなってしまうわよ。それにアリシアや私、彼女達は本当はこの時間に居ないのを無理矢理介入している。ここのシールドが壊されてしまったら、消えてしまうのも時間の問題」
「マジっすか!ちょ…ングッ」
「ウェンディ、黙ってろ」
「行くのは今しかないのよ。どうするかはヴィヴィオ、あなたが考えなさい」

 アリシアやチンク達はプレシアの作ったブレスレット型のフィールド発生デバイスによってここで動いていられる。でも、それは長時間使えないから建物自体にフィールドの張られたここからむやみに出られない。
 彼女達はここから逃げられない。
 だったらどうすればいい?
 元の時間に戻すしかない…

(私だけが出来る事…私だから出来る…元の時間に戻るんだ)
「ママ、私…チェントを追うよ。それで元の時間に戻してなのはママやフェイトママ…みんなを助けるの。」
「うん、だったらこれを…」

 なのはがポケットからレイジングハートを取り出してヴィヴィオの手に持たせた。

「これ…ママの…」
「ううん、これはなのはママとフェイトママがヴィヴィオにって作ってた物。ヴィヴィオが同じ物を持っていたから渡そうかどうしようか迷っていたんだ。元の時間に戻っちゃったら無くなるかも知れないけど、きっと何かの時に役に立つから…」
【Nice to meet you.My Master】
「喋った! はっ、はじめまして」

 レイジングハートとバルディッシュ以外から話しかけられた事の無かったヴィヴィオは驚く。

「ヴィヴィオにあわせて調整している最中だったんだけど…」
「そうだ…私からも、前に使ってしまったと聞いたから作っておいた。」

 チンクから小さなマスコットを受け取る。

「うん、ありがとうなのはママ・チンク。行ってきます。アリシアもいい?」
「うん、準備OK♪」

 そう言ってRHdから時の魔導書を取り出した。


―願うは遠き過去―

  ―わだつみと扉が集う地へ―

―時は青葉茂る季節―

  ―望むは我と類する者の所へ―

「我の願う時へ…」

 ヴィヴィオが呟くと2人を虹色の光が包み込み、光が消えたあとには床に眠った2人の姿があった。



~コメント~
高町ヴィヴィオがなのはStrikerSの世界にいったら?
ほぼ毎回書いている文句ですが、ヴィヴィオ達は再び旅立ちました。
5月というと3話から数話ある季節です。一体どこに飛んだのでしょうか? お楽しみに

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