14話 「舞い上がる翼」

「リイン、調整次第フェイトちゃんを呼び出して」

 席に座ったはやては通信系端末を調整していたリインに言う

「はいです。でも本局とは通信無理かと思いますよ」
「さっきなのはちゃんが近隣世界からフェイトちゃんの通信があったって教えてくれたんよ。フェイトちゃんきっと転送魔法を使って本局からこっちに向かってる。」
「なるほど~、バルディッシュの反応をキャッチしました。はやてちゃんの言った通りヴァイゼンにいらっしゃいます。メインモニタに映します。」
 個人端末では追い切れなくてもここでなら捕まえれるとは踏んでいたが、思ったより簡単に捕まえられた。

『誰からっ?…はやて!?』
「フェイトちゃん久しぶり~元気にしてた?」

 目を白黒して相当驚いている

『はやて部隊長!』
「ティアナも一緒か? 丁度良い、今からそっちにゲート作るからこっちに来て?」
『でも、私達ミッドチルダに急いで行かなきゃいけないんだ…』

 なるほど、フェイト達はどこから通信しているかはこれだと判らないらしい。
 ちょっとイタズラしたくなるが、そうも言ってる余裕はない。

「急いでる理由も知ってるよ。だからゲート作るな。リイン転送スタート」
「はいですっ。座標特定、転送します」
『ちょっと待っ』

 フェイトがそこまで言った瞬間、バルディッシュとの通信が切れてしまう。次の瞬間、はやての背後にある転送ゲートからフェイトとティアナが現れた。

「てよ!!」
「いらっしゃい。フェイトちゃん、ティアナ」
「転送? どこに? 部隊長」

 ゲートの前にいる2人に近づいて握手をしようと手をさしだしたが、握手の代わりにフェイトからペシッと頭を叩かれた。

「はやて、無茶しすぎ。管理世界間の次元転送なんて…」
「イタタッ、でもフェイトちゃん急いでたし」
「だから急いでミッドチルダに行かなきゃって…ここは…何で?」
「ここってまさか…」

 やっと2人ともここがどこか判ったようだ。

「みんなもう集まってるよ。エイミィさん、準備出来たら教えて下さい。あとこっちの話モニタに出しますんで」
「了解~♪ フェイト久しぶり。元気してる?」
「お姉…エイミイ!? 何で…」

 驚きっぱなしなフェイトを見て相変わらずだと思った。

「驚きっぱなしのところ悪いけど、更に驚く話もあるから一緒に来てくれるか。リインなんかあったらすぐ連絡な」
「はいです」

 そう言って2人を連れてその場を後にした。



「ティア、久しぶり~」
「こんにちは、ティアさん」
「お久しぶりです。」
「こんにちは」
「スバル!、エリオ、キャロ…なんでルーテシアまで!? あんたまだ保護観察中じゃ?」
「同じ話何度もしたくない…」

 はやてに連れてこられた部屋に入ると知った顔が何人もいて、ティアナは入るなり素っ頓狂な声をあげた。

「ルーテシアは私が呼んだんよ。ギンガ、封印解除出来た?」
「はい。AAAランクまででそれ以上は・・・」
「まぁしょうがないか…ルーテシア、完全解除は無理みたいや。ゴメンな」
「十分…」
「封印解除!? どうやって…」
「それは秘密♪」

 彼女はそう言ってニヤリと笑みを浮かべた。
 どうも、想像以上の異常事態になっているらしい…


 
「と、まぁかいつまんで話したけど今はそんな状態や。時間が残り少ないし、知らん事もあるから私に聞いても答えられるか正直微妙や。」

 はやては集めた者達に知る限りの情報をかいつまんで話した。
 現地で作業中の者の為に通信も開放している。今更隠しても意味はないと判断したからだ。
 ヴィヴィオが時間移動能力者であり戦闘機人の中にも同じ能力者が居ること、戦闘機人によって変えられた時間をヴィヴィオが戻そうとしていて、それにタイミングを併せてた様にスカリエッティ達が現れたこと。そして今この時間がヴィヴィオ達によって変えられていく過程であり、自分達が全員仮の姿だと言うことこと…
 目の前の者全てが狐に騙された様な顔か何の話かわからないといった顔をしている。すぐに理解しろと言っても無理があるからそうもなるだろう。

「はやて…その…今の話が全部本当なのか信じにくいんだけど、今の話で説明がつくんだ。昨日、軌道拘置所のスカリエッティと観察期間中の戦闘機人が全員消えてしまったんだ。最初は内部からの手引きも考えられたんだけど、映像やセンサーにもそんな痕跡が無くて…」
「それが地上本部を襲った連中か…」

 ヴィヴィオと同じ時間移動能力者が相手に居るならやっかいだ。 フェイトの考えている通り時間移動するなら突然消えてしまったのも説明がつくし、簡単に地上本部が落ちたのも納得がいく。
プレシアが次の時間が判ったと言っていたからもうヴィヴィオは旅立った後だろう。
 そう考えていると

「はやてちゃん待たせてゴメンね。準備完了、いつでも出られるよ」
「通信系も全部OKですっ♪」

 こういう時は考えるより先に動いた方がいい。

「ありがとうございます。リイン、艦内に中継」
「どうぞです」
「元、機動6課部隊長の八神はやてです。管理局・特別救助隊、陸士隊…忙しいのに突然の呼び出しに参加してくれて礼をいいます、ありがとう。今から私達は聖王教会へと移動します。目的は周辺施設の防衛と襲撃者の逮捕・保護。」
「みんなもまだ混乱してると思うけど、さっきも話した通りここは本当の世界ではありません。でも今必死に本当の時間を世界を取り戻そうと頑張ってくれてる人達が居ます。私は彼女達を元の時間に戻してあげたい。彼女達が戻った後、ここが消えるかそのまま残るのかは誰にも判りません。」
「…でも違う世界の私達を助けようとしてくれてる人達。彼女達を襲撃者から守りたい。それが私の気持ちです。」
「さっき、陸士部隊からミッドチルダ地上本部が沈黙したという連絡がありました。地上本部を襲撃した集団はそのまま聖王教会へと向かうでしょう、それを迎撃します。みんな私に力を貸して」

 そこまで言ってはやてはフェイトの顔を見る。
 頷くフェイト、ティアナ・スバル・ギンガ・エリオ・キャロ、ルーテシアも頷いている。

「元機動6課出動。アースラ起動、浮上開始っ」
「アースラ浮上開始します。各ロックアーム・ワイヤーカット」
「おうっ!」
「了解です」

 臨海公園でアースラを固定していたアームとワイヤーがシグナム・ヴィータの手によって切断され壊されていく。
 地上の枷から解き放たれた巨体は風を巻き起こしながらその身を空へと押し上げていく。

「安全圏まで浮上後、出力80%で移動開始。目標はミッドチルダ北部聖王教会本部」

「了解。アルト安全圏までのカウントよろしく。初めてなのに頼んでゴメンね。」
「いえ、ルキノの分まで頑張ります。あと15…10…OKです」
「休んでる所ごめんな…もう一度力を貸して…アースラ」

 呟いたはやての言葉に応えるかの様に、再び舞い上がった翼は徐々に速度を上げ北の空へと姿を消した。


~コメント~
 高町ヴィヴィオがなのはStikerSの世界に行ったら?
 ヴィヴィオの時間移動における最大の弱点、それは元の時間に体が残ってしまう事です。それも無防備な状態で、今話はそんなヴィヴィオを守ろうと動くはやて以下機動6課メンバーが主役でした。

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