24話 「Start Spot of VIVIO」

「見ての通り今は現在が決まらない不安定な場所。だからこちらの記録を照合して何時の時間に行けばいいのかは調べられないわ。でもアリシアのペンダントに入っていた転送軌跡は新暦75年6月中旬頃で、彼女も傷ついてるから移動もできないでしょう。あとは時間が不安定な理由もそこにあるわ…」
「6月…不安定な理由」

 プレシアの話を聞いて時期を思い出す。

(6月、私がなのはママ達…機動6課へ行った頃…)

 頭の中でモヤモヤしたものが浮かんでいる。考えていても仕方がない。
「プレシアさん、チンク、ノーヴェ…行ってきます。アリシアに待っててって」
「ええ、伝えるわ。気をつけて…あとこれを」
「はい」

 プレシアからアリシアのペンダントを受け取る。

 RHdから時の魔導書を取り出して開き瞼を閉じ、行きたい時間と場所をイメージする。
 すると自然に言葉が浮かんでくる。


―願うは我が目覚めし時―

   ―旅人達の集う地へ―

 ―時は青葉茂る季節―
 
    ―望むは我と同じ者―

 呟くと同時に虹色の光がヴィヴィオを包み込み、消えた時そこには眠った彼女の姿があった。

「気をつけて…」

 プレシアの呟いた一言、全員が同じ気持ちだった。



「っと…ここは、市街地の近く?」

 トンッと降りた地は市街地を見下ろすビルの屋上だった。

「クラナガンの外れあたりかな? ねぇアリシ…」

 隣を向いて声をかけようとして途中で止める。ヴィヴィオの向いた先には誰もいない。

「しっかりしろ私っ!! とりあえず先に何時か調べないと…大通りに行けば判るよね。RHdおねがい」

 そう言いデバイスを纏ってビルから飛び降りた。

「私がママ達に会うちょっと前みたい…これからどうしよう」

 時間はすぐにわかった。でもこの後どうすればいいのか…アリシアのデバイスを見る。操作方法はわからないけれど、チェントが移動してくれば教えてくれる。
 そう思って人通りの多い市街地へ行くのに駅へ向かう。
 この時ヴィヴィオはまさかあの2人に会うとは考えもしていなかった。



「えっと、シャーリーさんが作ってくれた今日のプランは…」
「うん」
(ウソっ!?)

 知った名前を耳にして声のする方を振り向くと…

「まずはレールウェイでサードアベニューまで出て…」
「食事はなるべく雰囲気が良くて会話がはずみそうな場所でって、なんだか難しいね」
「とりあえず順番に頑張ってみよう」
「うん♪」

 視線の先にはエリオとキャロの姿。

(2人ともオフシフトで何処かに遊びに行くみたい…もしかするとついていけば何かわかるかも)

 そう思いレールトレインに乗る2人を追いかける。
暫くの間エリオとキャロの様子を少し離れて覗う。

(2人で楽しそう…そうだ!2人に話しかけてみれば。)

 アリシアもそうすると思って、2人に近づいて

「あの…隣いい?」
「はい」
「どうぞ」

 キャロにそう言われヴィヴィオは彼女の隣に座った。



(エリオもキャロもまだ私のこと知らないみたい…やっぱり私が行く前なんだ。)

 もし幼いヴィヴィオが既に機動6課に居れば今のヴィヴィオを見て違ったアクションをすると考えた。

「あの…その制服、もしかして」
「Stヒルデ学院初等部に通ってるの」
「じゃあ、同い年くらい?」
「うん、9歳だよ」
「私10歳。良かったらお話しない? 私達サードアベニューに行くんだ」
(サードアベニュー…この後で私を見つけるんだ…)
「いいよ、私はヴィ…! ア、アリシア!」

 一瞬そのまま自己紹介をしそうになって慌ててアリシアの名前を使った。
しかし…

「アリシア、良い名前だね。私達の知ってる人のお姉さんも一緒の名前なんだ。私はキャロ、彼はエリオって言うの」
(あ…しまった)
「よ、よろしくね。キャロ、エリオ」

 笑みを浮かべながらも頭の中ではどうやって誤魔化そうかと頭をフル稼働させて考えていた。
 ヴィヴィオの使った名前、アリシアはフェイトの姉なのだからフェイトが保護者のキャロとエリオが知っていて当たり前。

【サードアベニュー南口、サードアベニュー南口。ワンダーゲート…】

「着いたみたい。行こう」

 2人と話し込んでいると目的の駅に着いたらしい。
 列車から降りる際にキャロが迷って立ち止まってしまう。そんな彼女にエリオが手を差し出す。キャロはエリオの手を取って列車から降りた。

「ありがとう」
「行こう」
(エリオとキャロ…この頃から仲良しなんだ…)

 知っている2人は自然保護隊でも仲が良い。2人の絆は機動6課で作ったのだろう。

(このまま2人の邪魔するのも…あっ!)

 立ち去ろうと思った時、外にある輸送車が目に止まった。

「何…アレ…私覚えてる…」

 知ってる…どこで? どこにでもあるのにどうしてそう思うの?
 考えていると自然に足が動く。

「アリシア、お待たせ~…あれ?」
「どこに行ったんだろう?」

 キャロとエリオがやって来た時、そこにヴィヴィオの姿はもう無かった。



(追いかけなきゃっ)

 走って近づこうとした時、輸送車は走り始めてしまう。
必死に後を追いかけるが子供の足で追いつける筈も無く。

(…路地裏へっ)

 路地裏に入り人目が無いのを確認した後

「RHdお願いっ。セットアップ」

 バリアジャケットを纏い飛び立った。

「さっきのどこに…いたっ」

 真上を飛びながら追っていく。

「どうして私こんなに気になるの? トンネルに入るみたい。」

 高度を下げヴィヴィオも後を追ってトンネルに入り死角に回り込んで追いかける。

その時

【Caution Emergency.Someone aims】

アリシアのデバイスではなく、RHdが警告を告げた。

「狙われてるって、どこから?」

行く先を見ると虹色の光球。そしてその奥には

「チェントっ!!」

 トンネルという密閉された空間で起きた爆発と爆風は何倍もの威力になる。もし砲撃魔法で爆発させられたら・・・
 ここには輸送車以外に何台も車が走っている。
 何を狙っているか知らないがここで撃たせる訳にはいかない。

(行くよヴィヴィオっ!)

そう自分に言い聞かせて一気にスピードを上げ飛び出した。



「これで終わり。後はマスターを助ければ…」

 虹色の光球は更に輝きを強め白く輝き辺りも白く変えていく

「クロスファイァアアア、シュートッ!!」
「!!」

 しかし、その光球は放たれる事なく2本の虹色の柱が突き刺さり

【ドォオオオオオオンッッ】

 トンネル内を爆発と凄まじい爆風を起こした。



「サードアベニュー付近で爆発。付近より避難指示発令」

 機動6課に残ってフェイトと一緒に話していたなのはニュースを見て驚いた。

「サードアベニューってエリオとキャロが今行ってる場所じゃ。エリオ、キャロ!!」

 フェイトが慌てて2人に通信を送る。しかし2人と通信は繋がらない。

「私、はやてちゃんの所に行って詳しい情報入ってないか聞いてくる。フェイトちゃんは2人を呼び続けて」
「うん」

 まさかとは思うが、フェイトの脳裏に嫌な予感がよぎっていた。



 同じ頃

「はい、エリオ君。」
「ありがとう、キャロ」

 2人はサードアベニューの湾岸地区にやってきていた。

【PiPiPi】
「フェイトさんからだ。はいキャロです。」
『キャロ、無事で良かった。エリオは?』
「はい、僕もここにいます。」

2人の声を聞いてフェイトの声が落ち着いた様に聞こえた。

『良かった。さっきその近くで爆発があって、呼び続けてたんだよ』
「すみません、さっきまで人が多い所に居て」
「ごめんなさい」
『ううん、責めてる訳じゃないから。ゆっくり楽しんできてね。』

そう言うと切れてしまった。

「爆発だって…アリシア大丈夫かな?」
「でも、僕達が気付かなかったんだから北の方であったんじゃないかな。こっち南側だし」
「そうだね。それじゃ次は…」

 爆発事件そっちのけで2人はシャーリーから出されたコースを確認していた。


『なのは、2人と連絡が取れた。人混みの中にいて気付かなかったみたい。』
「良かった。」
『それで爆発の方は?』
「直接の指揮はエリア担当の108部隊が動くと思うよ。レリックが関係してたらナカジマ三佐から連絡入ると思う。」

 いくら近いとは言え管轄外の部署が入って良いものでも無いし、仲の良い部隊とは言え関係のない部隊が入れればゲンヤもいい顔はしない。

「そうだね。そうそう、シャーリーから私達のデバイスもメンテナンスするらしいからはやてちゃんのも持って行って良いかな?」
「うん、なのはちゃんお願いな。」

そう言いはやては机の引き出しから待機状態のデバイスを渡す。
 機動6課が動き始めるのはこれから1時間程経った頃である。



「聖王の鎧でっ!」
 砲撃特性のあるインパクトキャノンではなく、魔力弾を操作し離れた場所からでも対象に打ち込め起動も速いクロスファイアシュートを選んだ理由、それは無関係な人を巻き込まない様にしたかったからだった。
 爆発と同時にトンネルの手前と奥と手前に聖王の鎧を広げ蓋をする形を取った。
 次元震程強くは無いが、失敗するとトンネルの向こう側や外にも影響する。
 爆発のエネルギーを遮断するのでは無く相殺する。
 やがて爆風が収まったのを見て降り立ち振り返る。

「…吹き飛ばされてる。あれはっ!」

 密閉された空間での爆発が簡単に押さえられる筈もなく輸送車が荷物をまき散らして横転していた。
 その中に・・・
 
 どうして元の時間が真っ暗なままだったのか、何故輸送車が気になったのか、そしてチェントがどうして私と同じ車を狙ったのか?
 その理由がやっと判った。
 輸送車から落ちた荷物を見て納得がいった。


 中のカプセルで眠る幼い少女の姿…

(私だったんだ…)

 高町ヴィヴィオ、機動6課で保護される前のヴィヴィオ自身…

(真っ暗だったのはここで私が私を助けなかったら私が消えてしまうから。チェントも…)

「そうだ、チェントはっ?」

 彼女が立っていた場所を見るとトンネルに大きな横穴が開いていた。

「追いかけなきゃ…でも」

 ヴィヴィオは立ち止まってカプセルを開けて壁に寝かせる。そして輸送車のドライバーも…

「頑張ってね昔の私。運転手さん…巻き込んじゃってごめんなさい。」

 そう言うとチェントを追いかける為に横穴へと飛び込んだ。



 ヴィヴィオが飛び込んで数分後、壁に身を預けていた少女は目を覚ます。

「・・・いかなきゃ・・・」

 トランクを繋げた鎖を持ちその場から姿を消した。
 


~コメント~
 複製母体を同じとするヴィヴィオとチェント、彼女達にとって外せない出来事と言えばヴィヴィオが機動6課に保護される時だと思います。
 あらすじとして初期から考えていた話でしたが、勝手に動いてくれた感が強かったです。


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