27話 「約束の空へ」
- リリカルなのは AgainSTStory > 5章 高町ヴィヴィオ
- by ima
- 2010.08.17 Tuesday 09:44
「なのは、大丈夫?」
「ヴィヴィオ、ヴィヴィオこそ大丈夫なの?」
「ヴィヴィオ、ママーヴィヴィオはわたしっ!」
ヴィヴィオの放ったスターライトブレイカーによってチェントのレリックは粉々に破壊された。
スターライトブレイカーの余波は凄まじく、彼女の背後射線上にあった駆動炉に直撃しこちらも粉々に撃ち砕いてしまった。
一瞬で主と供給源を失ったゆりかごは落下を始める。
ヴィヴィオが大穴の開いた玉座の間から気を失ったチェントを抱いて元の場所、ゆりかごへと戻ってくるとこっちも戦闘は終わっていた。
なのはに抱えられる昔のヴィヴィオ自身を見てヴィヴィオもホッっと安堵の息をつく。
「ヴィヴィオ、ヴィヴィオこそ大丈夫なの?」
「ヴィヴィオ、ママーヴィヴィオはわたしっ!」
ヴィヴィオの放ったスターライトブレイカーによってチェントのレリックは粉々に破壊された。
スターライトブレイカーの余波は凄まじく、彼女の背後射線上にあった駆動炉に直撃しこちらも粉々に撃ち砕いてしまった。
一瞬で主と供給源を失ったゆりかごは落下を始める。
ヴィヴィオが大穴の開いた玉座の間から気を失ったチェントを抱いて元の場所、ゆりかごへと戻ってくるとこっちも戦闘は終わっていた。
なのはに抱えられる昔のヴィヴィオ自身を見てヴィヴィオもホッっと安堵の息をつく。
「彼女もヴィヴィオなんだよ。ヴィヴィオ、その女の子は?」
幼い頃の自身と対面するのはちょっと恥ずかしい。
「チェント、さっきの子。私にそっくりでしょ」
「本当によく似てる♪」
笑ったら騎士甲冑が消えて元のバリアジャケットに戻ってしまった。
(戦意がなくなると元に戻っちゃうんだ…)
「なのはちゃーん!」
「はやてちゃん。」
「はやてさんにリイン」
「ヴィヴィオ…ってやっぱりヴィヴィオちゃんや! って、ええっ!? ヴィヴィオとその子…ヴィヴィオちゃんが3人?」
「えーっと、アハハハ…」
同じ顔が3人揃っていて事情も知らないんだから驚きもするだろう。苦笑するヴィヴィオ。
「いっぱい話したい事あるんだけどもう時間が無いの。ここから急いで出ないとクロノさんが来てる。だからね…」
今頃既にクロノ提督率いる部隊はゆりかごを補えているだろう。
プレシアから預かったカード型のデバイスを取り出す。
「…なのは、はやて、リインさん、ヴィヴィオ…ここでの私の記憶消すね。みんなが私の事知ってると未来が変わっちゃうから…」
「うん」
「わかった」
「はいです。」
全員の額にカードをあてた後、
「ママ、みんなまたね。元の世界へ…」
そう言い残しその場を後にした。
「…ただいま…」
ヴィヴィオが瞼を開けた時
「おかえり、ヴィヴィオ」
「おかえりなさい、ヴィヴィオ」
「おかえり。お疲れ様」
「ヴィヴィオ、よく頑張ったね」
アリシアと一緒に、なのはやフェイトの顔があった。
ずっと会いたかった人の顔がある。
横でプレシアが頷くのを見て涙が溢れ出す。
(やっと…やっとママに会えた。元の時間に戻って来れたんだ…)
「ヴィヴィオ、どうしたの?」
「嬉しいの…なのはママっ、フェイトママ、ただいまっ!!」
頬をうれし涙で濡らしながらヴィヴィオは2人に抱きついた。
その後、ヴィヴィオが連れ帰ったチェントは体内に残されたレリック片を完全に除去した後、戦闘機人達と同じ様に更正プログラムの適用が決定した。
完全に除去された事でレリックを取り込む前の姿を見て関係者を驚かせる。3歳児くらいの容姿。彼女はヴィヴィオの想像通り、彼女が保護された時より幼かったのだ。
これまでの顛末をヴィヴィオ・プレシア・アリシアから聞いたフェイトはヴィヴィオの能力を知る管理局・聖王教会関係者としてリンディとカリムに報告した。
世界を作り替えた彼女の行為そのものはこの時間で裁けるものではない。それに彼女は善し悪しのわからない程幼ない子供を罪に問えるのかと聞かれてもフェイトには即断できない。
しかし話を聞くとJS事件以上の規模の事件なのも事実。
これらが執務官としてのフェイトが迷った理由だった。
だが、フェイトがチェントの事を管理局へ報告したのを聞いて口を閉ざした者がいる。
それは事件の最初から最後まで関わってきたヴィヴィオやテスタロッサ親子、チンク達元ナンバーズ達だった。
全員がそれ以降の証言を拒んだのである。
そしてトドメが
「フェイト、子供を虐めるような妹は私、だいっきらいっ!!」
「…姉さん…わかりました。」
管理局の体裁としては別の形に落ち着いたのだが実際はこの一言で決着がついたとも言える。
同じ頃、聖王教会上層部でもまだ子供でありしかも聖骸布から生まれた者を罰するには異論が噴出し、配慮した管理局も保護観察処分が適当と結論を出した。
チェントについて決着がついたのと同じ頃、ヴィヴィオが使っていた『刻の魔導書』は近いうちに聖王教会へと戻される事が決まる。
ヴィヴィオはそのまま持っていても良いとカリムから言われていた。しかしヴィヴィオ自身、高町ヴィヴィオであって聖王ではない。
聖王で無い者がベルカ聖王が持っていた物を持つのはおかしいと考えカリムの提案を断った。
とは言っても暫くの間は壊した写本を直す為に写本共々プレシアの手元に預けられるのだが…。
「それで、チェントは今どうしてるの?」
放課後、チェント達と初めて会ったカフェでヴィヴィオとアリシアは話していた。
チェントとスカリエッティと入った店。あの時は名前だけで決めたけれど、そのケーキはとても美味しくて前に一口もつけなかったのはもったいなかったとちょっぴり後悔していた。
「うん、ルールー達が受けたのと同じ更正プログラムを受けてるんだけど、まだ文字とかも読めないみたいでギンガさん苦労してるみたい。」
「チンクやノーヴェ達の保護責任者のゲンヤさんは娘も多いから今更孫の1人や2人増えたって気にしねぇって言ってるらしいし、このままプログラムが進めばギンガさんとスバルさんが保護責任者になるんじゃないかな。」
ノーヴェとウェンディからギンガが毎日酷く疲れて帰ってくると聞いていたから、更正プログラムを受けさせるのはかなり大変なのだろう。
「フェイトとなのはさんは保護責任者にならないの? ヴィヴィオの妹だったらみんなが納得するんじゃない? 最後に助けたのもヴィヴィオなんだし」
「う~ん…私はいいんだけど、数年経てば私そっくりになるからママ達困っちゃうんじゃないかな。ほら、大人になったら6歳くらい変わらないじゃない。それに本当に妹だったらいいんだけどね…何て言えばいいかな…私とじゃケンカになっちゃう。」
チェントの瞳もヴィヴィオと同じ色をしている。姉妹だと言った方が周りも納得するとヴィヴィオも考えた。
でもチェントが望んだ現実を奪ったのはヴィヴィオあり、チェントにとってはヴィヴィオは家族を奪った敵。
更正プログラムでチェントの感情、考え方がどんな風に変わるかはわからない。
それでも2人の中に相容れないものは残っている。
ヴィヴィオもそれは判っていたし、なのはとフェイトもヴィヴィオの様子から何かを感じ取っていたのだろう。
それにヴィヴィオとチェントは姉妹ではなく、同一人物。ある日突然同族嫌悪が出て来て聖王同士の姉妹喧嘩が起きたら…ご近所迷惑もいいところだ。
笑うに笑えない。
そんな事を考えながら苦笑いする。
「そうなんだ…じゃあ…あのね…ヴィヴィオ、私…ううん、ママと私からお願いがあるんだ。」
「何? 急にあらたまっちゃって」
アリシアの表情が真剣なものに変わる。
「チェントの保護責任者…ママがなりたいって、ヴィヴィオから話して貰えるかな? 私も年下の妹が居たらいいなって…」
少し頬を染めて言うアリシア。でもヴィヴィオは目を点にして
「…ママってプレシアさん?」
「うん」
「…保護責任者って…チェントの?」
「うん」
「……」
「……」
「……ええーっ!!」
予想もしていなかったアリシアの言葉に声をあげた。
周りの視線が2人に集中する。
声をあげたのに気づき慌てて頭をペコペコさげて椅子に座ると小声でもう一度聞く。
「でも、あのチェントだよ。アリシアもうちょっとで殺されるとこだったんだよ?」
「でも、あれはあの子の中にあるレリックがそうさせてただけなんでしょ。それに…ママが言ってたの。長い間レリックを中に入れてるのは体にも負担はあるし、それが幼い子供だったら尚更だって。」
「……」
「もし何かあってもママだったら何とか出来るんじゃないかって」
(初めてチェントと会った時、ううんそれより前から彼女はレリックを取り込んでいた。…辛かったんだ…凄く)
常に強制的に戦意を駆り立てられ、チャージの長すぎる砲撃魔法は魔法が苦手だったんじゃない、出来なかった、使えなかっただけ。
それでもレリックからの溢れる魔力に振り回されない程純粋で強い想い。
「わかった。ママ達に言ってみる。」
「お願い。」
改めてチェントの事を考えた時、プレシアとアリシアの家族になるのが良い気がした。
(でも…アリシアの家に…遊びに行ったらいるんだよね…私と同じ顔が…)
プレシアが保護責任者になれば彼女の家に遊びに行く度に自分そっくりなチェントと何度も顔を合わせ、ゆくゆくは初等部にも…それはそれでかなり複雑な気持ちだった。
「でも…きっといつか…会わせてあげたいなチェントの…マスターと姉様に」
ゆりかごや何度か見たスカリエッティとウーノに対しての気持ちは組み込まれた物でも、プログラムされた物でもないと信じたい。
それ程にまで純粋で強い気持ちと願い。
今はまだ2人に会えないけれどいつか会える様に。
戦闘機人でも造られた命でも感情があるのは知っているのだから。
「そうだ、アリシア…ごめんね、それとありがとう」
「へっ?」
「ゆりかごの中で私を止めてくれたよね。だめぇええって」
「ああ、あのこと。いいのいいの、家に帰ってママに怒られちゃった。ヴィヴィオの怪我治す前に自分が怪我してどうするのって」
「えっ私の怪我? 私そんなに…」
「え~、ヴィヴィオ…」
(きっと、ううん絶対ずっとアリシアとは一緒に歩いて行ける。なのはママとフェイトママ、はやてさん達みたいに)
そんな事を思いながらヴィヴィオは一時の時間をアリシアと話すのだった。
~~FIN~~
~コメント~
AnotherStoryはもし高町ヴィヴィオがジュエルシード事件時に行ったらというところから生まれました。同じ様にAgainStoryはヴィヴィオがもしなのはA'sの時間に彼女が行ったらという流れから続きました。
今話、AgainSTStoryはご推察の通り、なのはStrikerSの世界に行ったら…という所からはじまりました。
でもそれはきっかけであってコンセプトではありません。
今話のコンセプトは「ヴィヴィオ自身との対峙」です。
ヴィヴィオが古代ベルカ聖王の遺物より生み出された命なのに注目し、スカリエッティがもし聖王化したヴィヴィオを止める為の安全装置として複数の聖王のマテリアルを作っていたら? と考えた所から始まりました。
ヴィヴィオと同一人物でありスカリエッティを慕うマテリアルでありナンバーズ。数字の100のイタリア語「cento=チェント」が生まれます。
チェントはヴィヴィオと同じ様に【時空転移】能力を持っています。彼女は捉えられたスカリエッティ達を助け出し、彼達を捕らえた者達が再び邪魔をしないように過去で彼女達を消して今を変えてしまいます。
そんな彼女に対しヴィヴィオが何を見てどういう風に考えていくのか?
ヴィヴィオのヴィヴィオとしてのあり方を見つめ成長していって欲しいと思い、あえてオリジナルキャラを登場させました。
そんなヴィヴィオがなのは達を消されて湧き出たチェントへの怒りと悩み、時には落ち込むのをアリシア・プレシア親子と元ナンバーズ達が支えます。
もしStrikerSに沿った話を作るならと第1作「AnotherStory」最終話で成長したヴィヴィオが魔導炉事故で亡くなる前のアリシアと虚数空間に呑み込まれるプレシアを助ける話が今作に直結しています。
これでStrikerS編は一旦終了です。
少しSoundStageみたいな話を書いてみたいなとは思いますがひとまずヴィヴィオこれまでお疲れ様っ!
最後に続けて読んで頂いた貴方様、ありがとうございました。
Comments
はじめまして、AnotherStory~AgainSTStoryを読んで頂きありがとうございます。先2作と違って今作はオリジナルキャラの登場や時間を行き来したりパラレル世界を作ったりとなのはStrikerSからかなりはみ出していたりと毛色が違うので気に入って貰えるか心配していました。でも気に入って頂けている様で嬉しいです。
またこういう風に描けたらいいなと思ってますのでその時はまた読んで貰えると嬉しいです。
ジュエルシード事件編、A's編、StrikerS編の3編とも、全部読ませて頂きました。
無事完結お疲れ様です!
私はなのはキャラの中でヴィヴィオとなのはが好きなので、
ここの小説はとっても気に入っていて、いつも続きがきになって、まだかな?まだかな?と思いながら、読ませて頂いてます。
何度読んでも読み飽きないので、暇を見つけては読み返しちゃうくらいです。
またヴィヴィオが主人公の小説が更新されたら、絶対読みにきますね!
これからも小説更新頑張ってください、応援してます。
長々と書いてしまってすみません。
それでは失礼致します。