番外編 「そして刻は」

「ねえ、本当に行くの?」
「うん。明日行こうと思ってる・・・母さん達にはもう話した。」

 学院近くのカフェテリアでStヒルデ中等部の制服を着た2人が話していた。

「ねぇ、やっぱり私も一緒に」
「ううんアリシア・・・これは私、1人で行かなきゃ。アリシアもプレシアさんも今のアリシアには会ってないでしょ。」
「うん・・・それはそうなんだけど・・・」
「待ってて、それで明後日一緒に行こう。」
 明後日、私と彼女は一緒に聖王教会と時空管理局へと赴く。
 騎士見習いと候補生として。
 過去にあまり例がない同時入局、でもそれが私たちの望んだ未来。私たちの為に上層部を説得してくれた家族や友人達に心からありがとうと言いたい。

「うん・・・あっちの私とママによろしくね。」
「うん。」
「お姉ちゃ~ん!」
「お帰り、チェント」
「ごきげんよう。チェント」
「あっ・・・ごきげんよう。」

 アリシアと話しているとチェントの声がした。彼女も今は同じ学院の初等部に通っている。
 変わったといえば1番変わったのは彼女のだろう。
 管理局から聖王教会へと彼女が預けられた後、保護責任者になったプレシアの家へと預けられた。
 当初は色々苦労したそうだが、やはりその辺は1児の母としてのプレシアとアリシアの教育もあってか彼女、チェント・テスタロッサとしての生活は順風満帆とはいかないまでもそれなりに順調に始まっていた。
 つい先日、フェイトやプレシア・アリシアと共に軌道拘置施設へと行きスカリエッティとウーノに会ったそうで、その際2人は局員に見せない優しい顔を見せたらしい。

「チェント、聞いていい?」
「何?」
「その髪型は?」

 彼女はまだ警戒しているのか本能的になのかはは判らないけれど、私のことが苦手らしい。そんな事より腰まで伸びた髪と左右でまとめたおさげ・・・そして彼女の瞳の色・・・

「お姉ちゃんにしてもらってる」
「アリシアっ!?」
「チェント、こっちの方が先生もシスターも優しいでしょ。」
「うん♪」
「昔ね、同じ髪型で大活躍した人がいたんだ。チェントのクラスメイトは知らなくても先生やシスターに知らない人は居ない位有名人なの♪」
「あ・・・」
「そういう事♪ 私の妹より誰かの妹だって思って貰った方が効果抜群。色々【ツブシ】も効くしね♪」 
「・・・・・・」

 彼女を見て誰が1番驚くか・・・十分に予想出来る。少し先生が気の毒になった。

『それに、私とママ以外から聞けばわだかまりが無くなるかも知れないよね』

 デバイスを通した念話を聞いて真意を理解する。

(やっぱりかなわないな…)
「チェント、だからって先生の言うこと聞かなかったり、悪いことしちゃダメだからね。」
「そんなの言われなくてもわかってる」
「ふ~ん・・・でも一昨日上級生とケンカしてたよね?」
「お姉ちゃん!? どうして・・・ちゃんと制服の汚れも落として帰ったのに・・・」

 どうやら『聖王のコピー』には揃って適わない人はいるらしい・・・
 苦笑していると、笑われたと思ったらしく

「違うっ、だってあの子・・・私のクラスメイトが大切にしてた花壇のお花踏んじゃって、謝らなかったから・・・」
(・・・あっ・・・)
「それでちゃんと謝ってって言ったんだけど」
「謝ってくれなかったから、ケンカしちゃったんだ?」
「うん・・・」

 ショボンとするチェントにアリシアは優しく、そして

「でも・・・力任せに話をしようとしたらチェントも一緒だよね。その子わざと踏んだ訳じゃないかも知れないし、チェントみたいに友達が虐められて助けようと花壇を通ったのかも知れないよね」
「うん・・・でも・・・」
(チェントも同じなんだ・・・)

『お話しよう』と言ってくれた家族の顔を思い出す。

「じゃあ、戻ってその子に聞いてみようか? まだ学院にいるかも。お姉ちゃんも一緒にいってあげる。」
「・・・うん・・・」
「という訳だからまた明日・・・ううん明後日ね」
「いってらっしゃい」



 ちゃんとお姉さんをしているアリシアを見てつい笑みが溢れた。

「明日、絶対にアリシアとプレシアさんを助けに行くんだ・・・」

 その前にアリシアの代わりに研究中の素体を持って行き、幼いアリシアをリンディさんの所へ連れて行く。
 それから星の庭園からプレシアさんを助けて同じ場所へ連れて行く。プレシアさんとリンディさんから詳しい時間と場所は聞いている。
 それが私、高町ヴィヴィオが高町ヴィヴィオとして進む道なのだから。
 手を繋いで行くアリシアとチェントを見て何度目かの心に決めた刻だった。


~ Fin ~
 今回はimaさんが多忙との事で代わりに更新させて頂きました。

 AnotherStoryからAgainStoryへと続き、AgainSTStoryへ
 6月のイベントが控えて公私ともに慌ただしかった時、imaさんから1通のメールが届きました。 メールの中身はと言いますと、「AS3(AgainSTStory)を書き終えたから読んで欲しい」というものでした。全27話と後日談2話の計29話で全て読み終え驚かされました。
 imaさんと私の間ではSSを含んで発刊した本や今後の予定的なシナリオを1ファイルにまとめてやり取りしています。
 AgainSTStoryも4月頃に最後までのあらすじを見せて貰ってました。でも、18話あたりから大きく違っていました。

 元の話はアリシアに危害を加えられそうになって切れたヴィヴィオがスカリエッティとウーノを消してしまいます。その後アリシアに呼ばれて我に返ったヴィヴィオは落ちていくゆりかごから元の時間に戻ります。
 元の時間に戻った時、ヴィヴィオとアリシアは変わり果てた施設を見て呆然とします。二人が戻る少し前にチェントが研究施設を破壊しチンク達とプレシアは重傷を負い虫の息だったのです。プレシアに寄り添い眠るアリシアを置いてヴィヴィオはアリシアのペンダントに誓ってチェントを追おうとした時、ペンダントが映し出した映像を見て愕然とします。彼女の憎しみを植え付けたのはヴィヴィオ本人だったのですから。
 
 あらすじを読んでいた時は「ちょっと暗いけどこういうのもアリかな~」と思っていました。
 でも、6月に出来たのは掲載された話とほぼ同じ。
 こっちはこっちで面白かったんですけど、何故前の話を大きく変えたのか?と聞いたところ
「人を殺めるのを子供にさせて簡単に片付けられる傷じゃない。前話までも通してヴィヴィオの成長を書いているから今話もその路線を守りながらヴィヴィオが複製母体から生まれた命じゃなくて、【高町ヴィヴィオ】は自分だけだと自覚して貰いたかったから」と教えてくれました
 ナルホド…確かに言われる通りですよね。
(個人的には先の話の決着というか着地点みたいなのも気にはなっているんですが…)

 AnotherStory・AgainStory・AgainSTStoryと執筆お疲れ様でした。ヴィヴィオもお疲れさま~。
 次はVividのヴィヴィオが頑張ってくれるんですよね(笑)
                           by静奈

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