第3話 「繰り返される時間」

 翌朝、起きたヴィヴィオは早速RHdに頼んではやてにメッセージを送った。程なくして彼女から返事が返ってくる。少し位なら時間が空けられるそうで放課後に行くと返信し登校した。
 そして放課後・・・

「失礼します。ごきげんようはやてさん」
「ごきげんよう」
「久しぶりや、ヴィヴィオ、アリシアもごきげんよう。座って座って」
 クラナガンの地上本部にある彼女の執務室を訪れた2人ははやてに薦められソファーに座る。
 彼女は彼女のデバイス、リインフォースⅡに飲み物とお菓子を頼みヴィヴィオ達の前のソファーに腰を下ろした。

「それで何か用事があって私のとこに来たんやろ? おもしろそうやな話なら直ぐに受けるよ♪」
「いいえ、今日ははやてさんに聞きたい事があって来ました。はやてさんの知る【闇の書事件】について詳しく教えて欲しいんです。」

 闇の書という言葉を聞いた途端、彼女の顔から笑顔が消える。

「闇の書事件…何かあったんか?」

 先に話したほうがいいか? 悩んだヴィヴィオはアリシアの方を向くと彼女はヴィヴィオを見て頷いた。先に聞いても後に聞いても変わらないのだから先に彼女の心配を解消した方が良い。

「…私にもよくわからないんです。」

 ヴィヴィオははやてに夢の中の光景を話した。ヴィヴィオそっくりの女性が大切な人を助けて欲しい。闇の書が蘇ると言っていた事、そしてチェントも同じ様な夢を見ていたらしい事。

「私達はともかく、チェントは闇の書を知りませんし聞いたこともありません。でもアリシアは彼女が闇の書と言ったのを聞いています。それで…」
「なるほどな、なのはちゃんやフェイトちゃんにユーノ君、闇の書事件の関係者じゃなくて当事者の私に聞きに来たと…闇の書…リインフォースが完全に消滅したかを。」
「それと私が知ってる闇の書事件と同じかどうかも…」
「…わかった。機密事項もあるけどもう10年以上前の話や、ここでの話を黙ってくれるならいいよ」
「ありがとうございます。」

 その後、はやてから闇の書事件のあらましを聞く。
 当時のリンディが提出したレポートを以前読んでいたり、ヴィヴィオ自身の体験を思い出しながら聞いていたが彼女の話はそれらを裏付けるだけだった。
 どうして闇の書が蘇るなんて夢を見たのか? しかもチェントと2人だけだけ。

「何か参考になったか?」

 話し終えたはやてが聞いてくる。彼女の話を聞く限りでは闇の書―夜天の魔導書が蘇るような話はない。

「特に気になる話は…」
「そうか、力になれんでゴメンな。何か判ったら教えて。協力は惜しまんつもりや、その代わり…」
「模擬戦は嫌です。」

 先に釘をさす。その答えに苦笑いをしながら

「来是非にと頼まれてたんやけどな…シグナムとヴィータから。ヴィヴィオが来たら教えてくれと」
(ヴィータさんまで…ここにはあまり来ない方がいいかも…)

 八神家内ではバトルマニアが増えてきているらしい…

【PiPiPi】

 そんな事を考えているとRHdからコール音が鳴る。

「ママかな? はい、ヴィヴィオです。」

 モニタを開くと現れたのはプレシアだった。

「プレシアさん?」
「ママ?」
『ヴィヴィオ、アリシアも一緒なのね。これからこっちに来て貰えるかしら?』
「何かあったんですか?」
『魔導書に手書きの文字が現れたの。突然』

 ヴィヴィオはそれを聞いてゴクリと息を呑む。

(やっぱり何かあるんだ…何かが起こる…ううん、もう起きてる)

 プレシアの言葉を聞いて何かの渦に巻き込まれている。そんな感じを受けていた。


「ママっ!」
「プレシアさん」

 プレシアからの通信を一緒に聞いていたはやてに飛行許可を貰ってバリアジャケットを纏いアリシアを抱きかかえ文字通り飛んできた。

「早かったのね。まぁいいわ、最後の頁を見て」

 刻の魔導書を手にとって最後の頁を見るとそこには殴り書きされた文字があった。ヴィヴィオにもこの文字は見覚えが無い。

「家族を…異なる…ゴメン読めない、ヴィヴィオなんて書いてあるの?」
「『異世界の家族を助けて』って…異世界?」
「ヴィヴィオなら異世界が何を指すか判ると思ったんだけど…その様子じゃ判らないみたいね」

 異世界とは一体? ヴィヴィオが首を傾げる。ヴィヴィオが行けるのは未来と過去、それも20年前後だけ、これを使ったら行けるのか?

「ヴィヴィオ、異世界ってパラレルワールドですか?」

 横から魔導書を覗き込むように入ってきたのは

「リインさん、どうして!?」
「ヴィヴィオ達の後をついてきたですよ。それより異世界ですが、昔はやてちゃんが読んでいた本に異世界…パラレルワールドの話があったです。今と同じなのにちょっと違う世界に行った話で…」
「「!?」」
「リインさん、それ本当ですか!!」
「え、ええ。」

 彼女の話に心当たりがあった。チェントを追う中で少し違う現在となのは達に会っていた。もしあの世界が今も続いていたら? 違う世界が幾つも連なっていたら?

「時間の定義には幾つかの法則が唱えられているわ、過去が変われば現在や未来に影響する法則、もう1つが変えた時点で複数の未来を生み出す法則。」
『時間の流れは幾つかの方法で表されるが、集約すれば大きく二つのパターンに分けられる。「大きな輪の様な世界」と「木の枝の様に分かれる世界」』

 ヴィヴィオも昔読んだ本を思い出す。

(あの時ユーノさんは修復値の変動とか言ってた…時間に元に戻そうという力が働いたら…写本にはなくて、オリジナルにその干渉が出来る力があったら…)

 ヴィヴィオの頭の中で気になる物が次々と現れる。

「…魔導書はストレージ…」
「ヴィヴィオ、どうしたです?」
「…オリヴィエは私達の事を…違う世界を…」
「ヴィヴィオ?」

 本を持ったままブツブツと言うヴィヴィオに話しかけるリイン。

「リインさん、少し待ってあげて下さい。何か考え始めたらヴィヴィオこうなっちゃうんです。」
「そうなんですか…」

 何か気にかかる所があったのだろう。アリシアは暫く彼女の考えがまとまるのを待つことにした。


(刻の魔導書は元々ストレージデバイス、オリジナルを私が使えたって事はオリヴィエがそのまま管理権限を持っていたって証拠。)

 何かがヴィヴィオの中で繋がり始める。

(オリジナルに細工が出来るのは本人だけ。オリヴィエは私達の事を知っていた…彼女は違う世界も見ていたのかも…)

 聖骸布から生み出された命、ヴィヴィオとチェントに宛てた手紙がそれを証明している。彼女がそれを知るには何らかの方法で遠い未来を見なくては判らない。その時彼女が別の世界を見ていたら…
 理屈は無茶苦茶だけど筋は通る。そして、その答えを知る方法はただ1つ。

「プレシアさん、私…行ってみます。その世界・・・ううんその時間に」

 行けばいい、その異世界に。


「プレシアさん、私…行ってみます。その世界に」
「前と違ってどこで何をすれば良いかは判らない。それでも?」
「はい、きっと…何か理由があって私とチェントに伝えたかったんだって、そう思うから」

 プレシアはヴィヴィオの瞳を暫くじっと見つめた後

「判ったわ…アリシア、チェントを連れてきてくれる? きっとチンクと一緒にいるから」
「うん、もしかして…」
「そうよ、ヴィヴィオだけじゃ心配でしょう。それに今はチェントも関係している。」
「あっ!」

 ヴィヴィオと刻の魔導書だけであれば今まで何度もメッセージを受ける機会はあった。でもそこにもう1人の自身、チェントが加わって初めて夢を見て、メッセージを受け取った。2人の管理者と刻の魔導書が揃ったのは今が初めて


『…どこかへ行く相談をしてるです。』
『やっぱりな、気づかれん様に付いていけるか?』
『わかりました。』
『もしかしたら、会いたい人に会えるかもな』
『どういう意味ですか?』
『行ってみてのお楽しみや。頼むな』

 ヴィヴィオ達が話してる時、端で見ていたデバイスは主の命を受け動き出そうとしていた。


「じゃあ、行くねアリシア。」
「チェント、これを持って行きなさい」

 ヴィヴィオが刻の魔導書を使おうとした時、プレシアがポケットからペンダントを取り出してチェントの首にかけた。
 アリシアの持ってるのと同じデザイン。

「うん。」
「これは…アリシアと同じ物ですか?」
「そう思って貰ってもいいわ。」

と言葉を濁すプレシア。気になったが無防備な彼女を守る為の物だろうと解釈し

「うん、アリシア・チェント手を離しちゃダメだよ。」

コクン。微妙な表情をしながら頷くチェントを見て、イメージを刻の魔導書へ送る。

(異世界…闇の書と…ママ達)


 ― 旅の扉が集う地から ―
  ― 隔たる目下の地へ ―
― 願うは遠き過去 ―
  ― 潮の鳴る地 ―
 ― 時は雪の舞う季節 ―
  ― 望むは我が想い人 ― 
  
 いつもの4小節から成る言葉じゃない。2小節が加わっている。きっとこれが異世界へと繋がる鍵なのだろう。

「我願う時へ」

 ヴィヴィオが呟くと3人が虹色の光に包まれ、光が消えた時そこにはヴィヴィオ達が寄り添うように眠っていた。

 
「チンク、忙しいところ悪いんだけど、アリシア達を寝かせるの手伝って貰えるかしら?」
『プレシアの予想通り行ったんだな。3人とも…』
「いいえ、4人よ1人おまけでついて行ったわ」
『おまけ?』

 クスクス笑うプレシアにモニタ向こうのチンクは首を傾げるだけだった。


~コメント~
 今話は前作までの1期・As・StrikerSの時間にヴィヴィオが行ったらという話をベースにあるコンセプトを踏まえたスピンアウトSSです。
 既にお気づきの方もいらっしゃるでしょうが、AgainStory2と銘打ったのは…
 引き続き楽しんで頂けると嬉しいです。

 

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